緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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如何して発目は変われたのか。

「シャォラァッ!!」

 

目の前に居る仮想敵、それはウルトライブ・シミュレーションの技術を応用した体感式シミュレーションシステム。本来は怪獣などを相手にする事になっている筈なのだが今出久の相手をしているのは怪獣などではなく―――人形。前腕から飛び出している二刀のギンガセイバーを完璧に捌きながら徹底して自らの得物の距離を理解した上で戦い続けるそれは最早人形ではなく一つの生命、度重なる戦いを生き延び続けた練達し技術に老成した経験が成せる業の組み立て。

 

「やっぱりこのレベルは強いっ……!!」

『―――。』

 

一切言葉など発さぬ人形、紅い宝玉を思わせる鮮やかな色の中に流れる渋く輝く燻銀のライン、それが持つのは大剣にも槍にも見えるような得物。それを縦横無尽、身体の一部のように変幻自在に操りながら戦うそこに自分の目指すものがある。

 

「ディァッ!!」

 

咄嗟にギンガセイバーの刀身を光弾として発射する。エネルギーを刃の形にして固定しているからこそ出来る芸当、だがそれは虚すら付けない。振り回してからの突きで二つの刃を一瞬で砕く。がっ直後に真上から再度二刀で斬りかかる―――と見せかけながら地面を蹴り砕いた。足場が不安定になると体勢が崩れ、得物でバランスを取ろうとするのを見てセイバーを突き刺した、がそこに人形の姿はなかった。

 

「上っ!?」

『―――。』

 

バランスを取る為に地面に突き刺さった武器、それを支えにするように身体を腕の力だけで持ち上げて渾身の突きを回避した。そして喉を蹴り付けられ倒れる、その流れのまま倒れるようにしながら武器を引き抜くと心臓へと向けて刃先が突き立てられた。

 

「また、負けたぁ……」

『―――。ウルトライブ・シミュレーション、レベルインフェルノを終了します。』

 

そんな音声と共に人形が消え去っていく、身体から消えていく武器の重みを感じつつも悔しそうにしながらも身体を引き起こしてギンガセイバーを収める。

 

「またクリア出来なかった……まだまだ使いこなせてない証拠だなぁ」

 

エネルギー活用万能戦闘型スーツ:GINGA。その扱いにもかなり慣れ始めている出久だがそれでもまだまだだと思う部分が多々ある。だがそんな出久へ麗日と梅雨は溢れんばかりの称賛をもって出迎えた。

 

「出久君凄すぎひん!!?見てて凄いハラハラドキドキやったよ!!」

「あれが達人同士の果し合いっていうのねって見てて初めて思ったわ。私達にも参考になる凄い物だったわ」

「有難う、でもまだまだなんだよね。言い訳になっちゃうけどこのスーツを使いこなせてない」

「あれでそうなん!?」

 

思わず尋ねてしまう麗日に頷きで返す。あくまで慣れ始めているだけ、ゲームで言えば新しく始めたゲームの操作感やコンボの出し方を覚え始めたに過ぎない。それらを十全に扱い戦術に組み込むという事がまだまだ出来ていない。その証拠にギンガセイバーだけしか今回は使えていない。

 

「今思うと飛ばした時にまた二刀でやる必要はなかったなぁ……それだったら最後のあれにサンダーボルトで対応出来てたし……」

「緑谷ちゃんとしてはまだまだ改善点がいっぱいあるって事なのね、凄いわ……私ならあそこまで出来たって安心しちゃうと思う」

「ウチもそうだと思う」

「いやそれは普通に良い事だよ、僕の場合は普段のスーツなら勝てる相手なのに勝てないのが唯悔しくて認めたくないだけの負け惜しみだから」

 

恥ずかしいけどねっと笑っている出久だがそんな彼の下に発目が端末を持ったままやってくる。

 

「お疲れ様です、如何ですクリスタルセルの変換効率を少し上げてみましたけど」

「うんバランスもいいしセイバーの威力も上がってるからいいと思う」

「それじゃあこのまま推し進めちゃいますねぇ~……というか出久さんはちょっと変な方向に卑屈なんですよ、使ってるものも違うなら勝率も大きく変わってくるのは当然なんですしこのGINGAだって普段から使うとは限らないんですから」

 

御二人は気にしないでくださいね、とこの後スーツを着用して試運転を行った後に自分達の個性を組み込んだ動きがどんな風に変わるかを体験する二人に忠告しておく。スーツを使ったらどの程度動けるのかの例として模擬戦をお願いしたのだが……出久は結構マジになって戦っていた。

 

「それにお二人が戦うのはあのレベルじゃないんですから……というかなんでインフェルノ選んじゃったんですか、高すぎてお手本にならないですよ」

「いやそれは僕の意地と言いますか……」

「やれやれ全く……んじゃまあ御二人分の機材持って来て貰えます?」

「今直ぐ!」

 

地味にフルカウルを発動させながら高速移動しながら走っていく出久、その意地も理解出来なくもない。何せのあの人形はマグナのデータが組み込まれているのだから。当人には遠く及ばないが、それでも迫る強さはある。だから相棒である出久はそれを越えたくてしょうがない。だからと言っても見本でそれをやるのは頂けないが……。

 

「……えぇぇぇとすいません、仮免前にお会いしたと思うんですけど……ごめんなさいお名前なんでしたっけ、忘れちゃいました」

「麗日 お茶子ですっ!!」

「蛙吹 梅雨、梅雨ちゃんと呼んでね」

 

梅雨は普段通りのそれだが麗日は何やら力を込めている、矢張り名前を忘れてしまったのは不快だったかなぁと頭を掻きながらも今度は忘れませんと言いながら謝罪する。と麗日は慌てたように強く言い過ぎてごめんなさいと謝罪し返す。

 

「私思ったことを直ぐに言っちゃうの、だから気を悪くしたらごめんなさいね」

「いえいえいえどうぞどうぞ、それ言われたら前の私なんて完全なキチガイですから」

「ええっ本当に発目ちゃんって変わったって思うの、私達は緑谷ちゃんどころか轟ちゃんや爆豪ちゃん程も貴方と付き合った事もないから分からない。それでも貴方が変わったって本当に思うの、何がそこまで貴方を変えたの?」

 

出久の戦闘データを整理しながらも素直に参ったなぁと言いたげな表情を作ってしまう発目、やっぱり自分ってそう思われてるんだなぁっと自覚すると恥ずかしくなってくる。

 

「同じレベルというか格上の博士に当たるデヴィッドさんやメリッサさんと一緒に居る事が増えたからですかねぇ、同じでレベル帯の人がいると話も合いますし隠して敢えて口にしないことまでは全部吐き出せますし」

「発目ちゃんは結構ストレスを溜め込んでたのね?」

「そんな所ですかね~」

「でもそれだけなん?」

 

と麗日から問いかけられて思わず手が止まってしまった。何処かのんびり屋的な空気を感じていたが思っていた以上に鋭い面があるらしい。

 

「……まあ端的に言えば出久さんですかね、出久さんが私を変えました」

「やっぱりっ……」

「緑谷ちゃんとは凄い一緒にいるみたいだものね」

「まあ当時の私からしたら出久さん以上に適したテスターはいませんでしたからね!!」

 

だけど今は違う……違っている、出久に求めているのはそんなのではない。

 

「何て言ったらいいですかねぇ……私、置いて行かれたくないって思ってます」

「置いて行かれる?どういうことなの」

「う~ん改めて言葉にするのは難しいですね、出久さんを見てるとなんかそんな風に思っちゃうんですよね……」

 

―――足を止めたらあっという間に、手の届かない何処かに走り去って行ってしまう……そんな感じがする。

 

それは発目の胸の中にあった物だった。それは最近になって現れた一種の不安に近い何か、モルスとの闘いを通して彼女も何かを感じた。だがそれが明確には分からずに首を傾げつつも出久の傍に居続けられるように努力し続けているというのが現状。

 

「だから変われたの?」

「だからと言われたら何とも言えませんけど……だから変わったと言いますか、ううん良く分かりません!!取り敢えず今はお二人のサポートに徹しますね、何でしたら出久さんの胸だって貸しますから、大丈夫ですって私が言いくるめますから」

「いやいやいやデク君の胸借りるとか畏れ多すぎるってば!?」

「お茶子ちゃん落ち着いて、そういう想像とは違うわ」

 

質問から必死に考えて言葉を作っていると自分は何処かで気付いた、置いて行かれないようにしている……手が届かない……正しくそれだ。いや出久に行って欲しくないと思っているんだと確信する、自分はどうしようもなく不安なのだ……

 

―――出久がマグナと共に宇宙へと行かないかと、不安に感じている。

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