「爆豪、そろそろ時間だぞ」
「チッ……おいテメェら15分休憩だ」
その言葉に一斉に倒れ伏していくA組の姿に鼻を鳴らし呆れ果てている爆豪、それでもそこに馬鹿にする意図などがないのは倒れた皆にも分かるのと焦凍の存在は絶対的な安らぎに近かった。
「むっ……むっずぇぇぇ……」
「い、今まで出来てた動きが全然出来ねぇってどういう事なんだよ……」
皆が纏うのは初代ウルトラマンこと、マン兄さんを模している初期型ウルトラスーツ。初期型と言ってもそれは初期に作られたという訳ではなく、ウルトラスーツは此処から様々なアタッチメントや装備を換装して様々な目的を果たす事を目的としているので初期型と呼ばれているだけ。それでもそこに宿るのは人間サイズのウルトラマンの力と言ってもいい。今まで出来ていた事はあっさりと出来なくなっていた。
「個性の出力だって馬鹿みたいに上がってるぜ……俺っ何回壁に……ぶつかってたよっ峰田……?」
「27回……因みにオイラの方は……?」
「マジか……お前は32回」
「マジかよ瀬呂……」
「それは俺の台詞だっつの……」
ウルトラスーツによって向上するのは身体能力だけにあらず、個性因子の活性などを検知してパワーセルが同調してそれを引き上げる。故に瀬呂は今まで出来ていた筈のセロハンによる空中制動移動が出来ずに壁や地面への激突を繰り返し、峰田はもぎもぎによる反発移動に失敗し何度も犬神家をしていた。
「ハァハァハァッ……」
「ウェェェェェェェイッッッッ……」
「響香さんお加減は……?」
「それは、隣の馬鹿に言ってやって……駄目ッ音じゃなくて色々な気配が筒抜けになって……」
耳郎は音を聞く能力が過剰なまでに引き出され何もせずとも周囲の環境の把握が出来るようになった、が処理が追い付かずにパニックを起こす。八百万は創造の際の消費カロリーがパワーセルによって代用可能となっているだけでそこまでの影響はない。そして上鳴は調子に乗り過ぎて放つ電撃の威力を上げ過ぎて脳内は完全にショート。
「うっわぁっ……他の皆凄い事になってるよぉ……いやこっちも凄い事になってるけど」
「―――っ……!?」
「轟大変だ青山がやばい事になる一歩手前だ!!」
「そっちだ」
爆豪のハードルが高めであったのもあるがそれでもウルトラスーツ初体験故に正しく死屍累々というような光景が広がっている、それは焦凍が見ていた班も同じくであり青山を担ぎ上げて大急ぎてトイレに駆け込んでいく切島と口田。中にはウルトラスーツの影響がそこまでない、直ぐに慣れている子もいるのでこの辺りは完全に才覚などに左右されてしまうという事だろう。
「あの光士さんっこのウルトラスーツは少々強すぎるのではないでしょうか!!?」
「う~ん……甥っ子の意見があるからこれでも大分マシにはなってるんだよ」
「えっこれで!?王水みたいな酸出せちゃったのに!?」
「あれは正しく驚愕した、それを浴びて平気なダークシャドウにも驚愕したが」
『俺モマジデビビッタ』
とウルトラスーツにもうまく適応出来ている生徒らから流石に不味いのではと言われるのだが、これでも大分実戦配備に向けて進んでいる方。今までは出久でなければ確実に耐えきれない物だったのに、多少反動が来る上に習熟訓練が必要になる程度に落ち着いている。だがそれは慣れている出久の意見を取り入れ過ぎたかもしれない……と思い始めた。
「それを言われると緑谷君はどれだけ凄まじい性能でテストをし続けたんだ……!?」
「アタシが振り回されてるのもそれで済んでるってレベルなんだろうね多分……」
「正しく日進月歩、苦悶の日々の末に今があるという事か……」
まあ実際はこれらはまだ成長途中であるヒーロー候補生である彼らの使用を前提にしていない為の調整不足もあるだろう。それなのにあっさりと使いこなしてしまった焦凍と爆豪は矢張り身体と個性のレベルがずば抜けていると言わざるを得ない。
「では私達も休憩にしましょう、後爆豪君飛ばし過ぎですよ。30分にしてあげて下さい」
「アァンッ!!?甘ぇんだよっこの位出来て当然だろうがよ!!」
「私の顔を立てると思って、お願いします」
「チッ……わぁったよ」
何処か拗ねたようにしながらもフルーツバーを齧りながら自販機へと向かって行く姿に肩を竦めると峰田たちからまるで神でも見るような目で見られる。
「マジであんがとうございます……オイラマジで爆豪に殺されるかと思った……」
「本当に有難い……有難う御座います光士さん……」
「いやマジであんがとございます緑谷のおじさん……」
「いえいえっおじさんは何もしてませんよ~」
と感謝されるのを何処か軽く受け流しながらも爆豪へのフォローもしておく。
「焦凍君も分かってると思いますけど、あの濃さは皆さんならば確実に出来ると思ってこそです」
「それは如何なんでしょうか……爆豪さんの言葉も自分ならという事だと思いますが……」
「仮にも指導役を任されている彼ならばそんなことはしませんよ、まあハードルが高めなのは事実でしょうが本気で取り組んでいるならばできると思っているのも事実」
「ペースは速ぇけど俺もそう思う、実際八百万は出来てるだろ」
全く以て素直じゃない信頼の仕方だと言わざるを得ない。決して口に出さず妥協もしないそんな姿にはレオを鍛え上げていたセブンの姿を想起させる。そして同時に知らせている、PLUSに進む進路を選んだ場合に待っている物を。厳しくありながらも優しい少年だ。
「取り敢えず上鳴君も確り休憩しなきゃダメですよ」
「ウェェェ~イ……」
「でもこのまま放置するしかないですかね……」
「こういう時は―――テイッ!!」
『チョップ叩き込んだ!!?』
「―――ウェイ!?あれ何やってんだっけ!?」
『昔のTVかよ!!?』
「凄い凄いっ!!ウチ自在に空飛んどる!!」
「凄いわねお茶子ちゃん、私も頑張らなくちゃ」
四苦八苦しているクラスメイトの中でも麗日と梅雨の二人はかなり上手く行っている方であった。開発者である発目とテスターとしてずっとウルトラスーツの実験に携わってきた出久が居るのでコツを掴むのも早かった。加えて麗日の場合は個性の相性も良く増強する方向性が許容量の増加に働いた為に基本的に普段通りに動けている。梅雨の場合は身体能力の強化だが、当人のセンスが素晴らしく直ぐにものにしている。
「凄いなぁ……もう完璧に扱い切ってるよ」
「個性によってウルトラスーツの干渉も違ってますねぇ……単純に能力を上げるのもあれば限界値だけを伸ばすのもある。こんなムラがあるのは驚きです……確かにこれは出久さんではわからなかった事ですね」
元々出久にはウルトラ・フォー・オールという個性があるがその場合は増強されるまでもなく膨大すぎる、されていたとしても微細過ぎて気付けない程度の物でしかない。加えてマグナと共に居たので制御関係についてかなり入念に鍛え込んでいるのも影響している。
「これって何時か配備する時は大変じゃない?」
「そうですねぇ……個性を伸ばすという汎用特性を持たせずに身体能力のみの強化に留めた方が良いかもしれないですね。任意で個性干渉出来るようにするようにした方が色々便利ですかね?」
「便利だと思うよ、ハイテクは使う人によって違うし」
「それじゃあそうしますね~出久さんの意見って本当に参考なりますね」
実際コンセプトと機能が方向性を持っている状態とまだ方向が決まっていない状態では大きく違っている事が分かった、これは本当に色んな意味で貴重なデータと成り得るだろう。
「これからは僕だけにテストを頼むのはあんまり良くないんじゃないかな」
「うっ……まあそうですけど……それはそれで出久さんと二人の時間が……えっえっとほらっ失敗した時とかは出久さんじゃないと耐えられませんし!!」
「ああうん確かに……」
そのようなやり取りをしている時の事だった、アラートが鳴り響いた。警戒状態を知らせる物であり第二戦闘配置への移行を示す物、咄嗟に出久はナイトアイへ連絡を取る。
「何事ですか!?」
『怪獣が出現した、A組の皆をミーティングルームへ誘導を頼む』
「分かりました、その後に司令室に」
『いやミーティングルームで説明する、誘導を頼む』
兎も角今は皆をミーティングルームへの誘導が先だと動き始めて行く。ナイトアイの言葉にやや疑問を覚えるが、素直に従う。その理由は直ぐに理解出来た、何故ならば―――怪獣によって人の命が危険になっているからである。
次回―――PLUS&ヒーロー共同戦線!?