「A組の諸君、突然だが力を貸していただきたい」
ミーティングルームにて集まったA組の皆に対してナイトアイは真剣な眼差しを持ったまま頭を下げた、突然すぎるそれは皆を驚かせる。実質的なこの組織のトップが見学に来ている学生に頭を下げるなんて普通ではあり得ない事だから。
「ナイトアイ参謀、理由をお聞かせください。如何してウチの生徒達にそれを?」
「理由は先程のアラート、あれは怪獣出現を示し出撃準備を示す物になる……だが今回はそれが問題となる」
正面のモニターが切り替えられ映像が投影されていく、そこに映し出されているのは海辺の街並みが広がる。漁港もある多くの人達で賑わっている―――なんて事はなく静まり返っている。いやそこにあるのはある筈の漁港の姿ですらない。
「此処って……」
「千葉県にある古山港、俺行った事あるぜ。此処の海産物くっそうめぇんだよな」
と瀬呂が言った直後に巨大な影が飛来する、それは何処からか持ってきた巨大な鉄くずを咥えながら漁港へと降り立った。それは一言で表せば巨大な鳥、赤い頬袋が特徴的な赤いが青くもあり巨鳥は雄叫びのような声を上げると再び空へと飛び上がっていった。
「火山怪鳥バードン。この怪獣は浅間山から飛び立つ姿が確認され、その後南房総地域の古山港に降り立った。まるで巣を作っているかのような行動を見せている、巣を漁港に作っているのも問題だがそれ以上に問題なのは―――これだ」
手元の端末を操作してサーモグラフィーに切り替える、巣を上空から移した物になるのだがその巣を構成しているものが大問題。そこにあるのは鉄塔や漁船、マンションなどの住宅も見受けられる。そしてその内部には多くの人が残っている状態になっているのである。
「マジかよこれ……!?」
「怪獣の巣作りってどんだけダイナミックなんだよぉ!?というかなんで火山から海沿いに出てんだよ此奴!!馬鹿なんじゃねぇのか!?」
「理由があるんだろ、鳥……鳥だな、鳥が巣を作る理由って何だ?」
「―――餌か、雛の」
焦凍の言葉に爆豪が納得と関心を寄せたような声を呟くとその場の全員が思わずゾッとした。そう、あのバードンは繁殖の為に火山から出てきたのだ、サーモグラフィーで確認してみてもバードンの腹部の温度は低い。これを見たナイトアイはバードンは卵を冷却する事で孵すのだと理解、その為に海沿いで気に入った場所に巣を作っているのだろう。そしてその巣に適した素材は人間社会から調達、最終的には孵った子供にはついでに捕らえた人間を与えようとしている。
「現地ヒーローが救出を試みたが、繁殖期のバードンは酷く警戒心が強くなり凶暴化しているらしく近づけない。故にPLUSはバードンへの対処と救出を同時に行う事になった―――が」
「そうか、最悪すぎるタイミングだ……」
思わず毒づく光士。現在在中している元ヒーローのPLUS隊員は少ない、というのも怪獣災害対処指導などの為に各地方へと散っているのである。新興の組織という柵もあり、地方などにも有用性のアピール、中にはくだらないイベントへの参加もを政府からの要請で求められていた。それが今最悪のタイミングで襲いかかってきている。
「現在怪獣への対処が出来るのは少数だ、だがそれではバードンへの対処で精いっぱいだ。故に……私は、司令官代理として要請したい。諸君、バードンの巣に囚われてしまっている人々の救助を手伝って頂きたい」
大きく頭を下げるナイトアイ、怪獣災害を想定している組織なのになんて情けないんだと自分でも思う。だが今はそんな事を言っている場合ではない、一刻も早く対処しなければ一大事になるのだ、だから力を貸してほしいと懇願する。現場の危険性を考えてもウルトラスーツを用いた作戦が強いられる、故にスーツを纏ったままで皆に現場に向かって欲しいと。
「酷く危険な作戦になる、だがそれでも力を貸してほしい!!皆の身も守る為に全力を尽くす、だから―――」
「それ以上言わなくていいっすよナイトアイ参謀!!俺達はヒーロー目指してんすよ、助けを求められれば答えるのが当然っすよ!!なあ皆!!」
真っ先に声を上げた切島、ヒーローを目指している自分達にPLUSが助けを求めている。そしてその先では助けるべき人々がいる、だったら決まっている。助けに行くしかないだろう。
「そうですわねっ危険ではありますがだからこそヒーローを目指す者として尽力しなければいけませんわ!!」
「アタシも同感!!此処で立たなきゃ乙女が廃るっしょ!!」
「無論、我も行く。修羅が座す地であろうが我らの手を求める手がある」
「お、おう当然だぜ……!!怖いけど、怖いけどオイラだって行くぜ!!USJの緑谷みてぇに助け出してやるぜ!!」
「良い事言うわね峰田ちゃん、それを言われたら私も行かない訳には行かないわよね」
「―――ウムッ参謀、A組一同助太刀致します!!いいですね相澤先生!!」
「……十分に注意をしろ、相手は正しく生きる災害だ。PLUSの指示は絶対、そして全員必ず生きて帰れ。それが条件だ」
『はい!!』
反対しようとした相澤、だが生徒達が此処まで自分達の意志で怪獣という新たな脅威に立ち向かおうとしている。これからの時代は如何あがいても怪獣の脅威という物は迫りくる、ならばPLUSからのバックアップが得られる段階でそれを体験する事は為になると判断して許可を出す。それを見てナイトアイは心からの感謝を述べながら作戦を説明する。
「これよりアートデッセイ号へと搭乗し現場へと急行、轟と爆豪は2チームに別れながら救出作戦を決行。それぞれには追加で現地でプロヒーローが合流する、緑谷は発目と共にファイターGXにて状況解析とバードンに関する情報収集、可能であればバードンを誘導するMt.レディらの援護を行え、以上だ、行動開始!!」
『了解!!』
すぐさまにA組は焦凍と爆豪の誘導を受けてアートデッセイ号へと向かって行く、出久と発目は光士と共にその場に残りながらナイトアイと話をする。
「貴方も凄い事を考えますね」
「責任は私が全て取ります、バードンの影響を考えると如何してもウルトラスーツが必要となってきます。だが……クソッ何故こんな時に……!!」
苛立たし気に舌打ちをしながらも足踏みをしてしまう。本来動かせる筈の実働部隊が政府の要請のイベントに出てしまっているせいで必要な時に動かせないなんて……これも予算問題やマスコミへの事も考えた末の事だが、こんな影響を生んでしまった自分の判断が腹立たしい。だがそれを直ぐに収めると真面目な顔で言う。
「オールマイトとホークスとの連絡が取れました、現地で合流し救出チームの応援を務めてくれます」
「オールマイトとホークスなら心強い……!!あっそれならGAIA持って行かないと!!」
「ですね、確りと積んでいきましょう」
そんな二人を他所にナイトアイは深々と、いやその場で正座しながら光士へと土下座をした。
「申し訳ありませんマグナさん……私は貴方から信頼されてこの組織の参謀という立場にあるのに……子供達を怪獣の居る場に送り出そうとしている……!!なんて情けない事か……私は私はっ……!!」
後悔と怒りに塗れた言葉、全て自分の想定の甘さや不手際のせいでこうなったと全ての責任を被ろうとしている彼にそっと手を差し伸べる。
「貴方も貴方でオールマイトそっくりですね、世の中完璧に物事をこなすなんて出来ない物です。だからこそ協力して問題に立ち向かうんです、組織としての柵も理解しているつもりです」
「有難う御座います……!!」
感謝の言葉を述べながらも立ち上がる、そして自分に出来る事をする為に彼は襟を正すと司令室へと走っていく。その姿を見送ってから光士は言う。
「相手はバードン、唯でさえとんでもない怪獣なのに今回は繁殖期を迎えている個体。油断は出来ないぞ」
「はいっ全力を尽くします!!」
「私も頑張りますよマグナさん!!」
「よしっ行こう!!」
「「はい!!」」
大きな揺らぎに包まれる房総半島、浅間山より飛び立った火山怪鳥バードン。地球怪獣の中でも最強格とも言われる巨鳥の羽ばたきは何を運ぶのか、新たな命をその身に宿した巨鳥は間もなく生まれる我が子を愛おしく思いながら囀る。この日、人類は知るのだ―――地球を故郷とする怪獣の強さを。
―――キィィィィィッ……。
地球産怪獣、その中でも屈指の強豪、バードン=サンのエントリーだ!!
ウルトラシリーズの鳥怪獣は強敵、という伝説もこのバードンスタートだったりする。そしてこいつがやらかした事はインパクト抜群。何せ登場した回のサブタイトルが
第18話「ゾフィが死んだ!タロウも死んだ!」
何この凄いサブタイのインパクト。そして実際に倒している上に隊長を語る上で欠かせないあの伝説を作った怪獣。因みに、隊長の例のあれは事故じゃなくて演出の一環で行われたらしい―――だからって燃やすか……?