PLUSの職場体験という一大イベントは唯のイベントでは済まなくなった。唐突に出現した火山怪鳥バードンによって出動が余儀なくされ、出動隊員を補う為にウルトラスーツを試着していたA組が救出隊に参加しての作戦、B組はライドメカなどの見学や整備体験も行っていた為に其方で活躍していたとの事。雄英の生徒達は怪獣災害に一丸となって立ち向かってくれたのは紛れもない事実。
同時にPLUSへの特別隊員は一人増えた、新しく口田 甲司が特別隊員として登録された。彼の導きもありリドリアスは鏑矢諸島の怪獣保護区へと住まいを移した、普段は海沿いに作られた巣で寝ているか、空を飛び回ったりするなど、現地職員達とも上手くやられているとの事。これからも彼は定期的に鏑矢諸島へと足を運びリドリアスの様子を見る事になるという。
「本当にバードンはあのままで良いんですか?」
「グルテン博士がバードン用に調整した特殊な食料を開発しそれを提供する事で人間を襲わないという交渉は既に成り立っているらしいよ」
「えっ何時の間に」
ウルトラスーツのテストを終えて発目の研究室に居る出久、マグナそして発目。その中で不意に問いかけるのはバードンについて。浅間山に戻り巣を作り直し、無事に卵を産む準備が整った為に巣でじっとしているらしいが、バードンはウルトラ戦記 タロウの章にて聞いた通り肉食の大怪獣。家畜どころかマンモス団地を襲撃した事も聞いているだけに不安が絶えない出久だが、そんな彼に発目が言う。
「何でも博士の星にあるシーピン929という食料を極めて肉に近い状態に改良したんですって、それをえ~っと……そうそう口田さん同伴の元バードンの下に持って行ったら喜んで食べてくれたみたいんですよ」
「シーピン929って確かメビウスの章に出てきた……」
肥大糧食シーピン929。嘗てファントン星が重大な食糧危機に陥った際に開発された食料で主成分はタンパク質、しかもこのシーピン929は大気中の窒素や二酸化炭素を吸収する事で無限に成長するという性質を保持しており、好物とされていた芋虫のような怪獣であるケムジラを食べ尽くしてしまう程の大食漢であるバードンの腹を十二分に満たす事が出来るとの事。
「そのシーピン929を開発したファントン星人がメビウスが居た頃の地球に行ったのさ。そして今や彼は星の偉人となっている、今回はその知恵をお借りしたという訳だ」
「窒素や二酸化炭素を吸収してタンパク質が増殖って……ある意味究極のエコ食品ですね」
「でも放置しているとマジで無限に増殖するらしいので星一つを潰す可能性があるので厳重な管理が必要なのは変わりないですね」
現在改良型のシーピン929はグルテン博士が厳重に管理しながら適度な窒素や二酸化炭素を与えながら圧縮をする事で必要な量だけを生み出しているとの事。
「バードンも無事に子供が生まれたら鏑矢諸島の火山島にお引越ししてくださるそうですよ」
「口田君すごっ!!?」
「いやはや同感だよ、まさか怪獣と対話が成立するとは思わなかった」
コスモスの変身者である春野 ムサシも彼の力を知ったら酷く羨ましがるだろうし同じチームにスカウトしたくなる事だろう。実際対話が出来ればスムーズに保護が進んだと思えるような怪獣はコスモスの世界にも存在していた。この地球では出来るだけ上手く行って欲しいと思う中で不意にマグナは窓の外を見ると―――曇り空から雪がチラつき始めた。
「もう12月か……光の国では見る事のない物なのに大分見慣れるようになったなぁ……」
このような発言をしていると改めて自分がウルトラマンとしての今に馴染んでいる事が分かる。記憶を取り戻してからウルトラマンとして生きて早数千年、人間の感覚で言えばあり得ない時間なのに今の感覚ではあっという間と思えるのだから恐ろしい。
「12月、クリスマスも近いですねぇ」
「クリスマス?ああそうか、済まない一瞬降臨祭とごっちゃになった」
「降臨祭って何ですか、逆に私そっちが分からないんですけど」
「えっとね、マグナさんの宇宙の地球だとウルトラの父降臨祭ってのがクリスマスの代わりなんだって」
「えっ何ですかそれ凄い興味沸くんですけど」
ウルトラ戦記 メビウスの章に関連付けて話しているので出久も十二分に知識があるのでそれを解説していく。そんな光景を見つめながらもマグナは窓の外を見つめてみる、ウルトラマンとしては冷気などには弱い筈なのに日本人として生きた自分は冬を懐かしく嬉しく思いながらその象徴である雪にテンションが上がっている。我ながら奇妙な物だと思う。
「しかし私が言えた口ではないが……君たち好い加減雄英に行ったら如何だい?」
「そうしたいですけど……緊急出動の場合はこっちに居た方が便利ですし」
「私の場合、研究&開発そしてヒーローに渡す用のスーツ調整で忙しいですから。まあコーヒー啜りながらだと説得力薄いでしょうけどこれでも大忙しな身なのです」
実際この二人が担っている事がこれからの社会の重要な側面を担っているので致し方ないというのもある、だが二人はまだ子供なのだから出来る限りは学業に精を出すべきだろう。そうでなくてももっとこう……学生らしい事をした方が良いだろうに……。
「おっとそろそろ鏑矢諸島に行く時間ですね、島を囲うバリアのセッティングに行かないと」
「諸島を丸ごと覆うなんて凄いスケールだよね……僕も手伝うよ」
「当然手伝って頂きますとも~」
そう言いながら出久の手を引いて部屋から飛び出していく発目をマグナは見送りながらも自分もそれを追いかけるように歩き出していく。
「ドクター、こいつは何時になったら使るようになるんだ」
『早くてそうじゃな……数か月じゃろう。ワシにだってこんな宇宙のバケモンなんて専門外じゃ、これでも急いでる方だ。じゃが……面白い玩具は直ぐに使えるようには出来るぞ』
「……ほぅ?」
『アウローラの落とし子、それを楽しませる為にはまだ進化を促す必要がある。その為に―――ある怪獣を暴れさせ、それが巻き起こすエネルギーを利用する』
「怪獣……まだ残りがあるんのか」
『あるぞ、アウローラが居なくて調整が出来てはおらんがそれでも繭の状態だったが故に進化をし続けている最強の怪獣が―――』
赤黒い繭の中から聞こえてくる鼓動にも似たそれは、静かに、静かに規則正しく波打ち続けていた。だが僅かに見える内部から見えたのは……世界を滅ぼすだけの力を秘めた邪悪の化身、それが今目覚めを目指して唯々進化し続けている。
―――グモォォォ……ォォォン……
バードンにはシーピン929を与える事にしました。というかまあファントン星人いるんだし分かる人には分かるネタなんですけどねこれ。
後ラストの怪獣も分かる人にはピンッと来るはず。だってあいつだもん。