間もなくクリスマス、それが迫りだすと世間はクリスマス一色へと染まりだしていく。クリスマスが過ぎればあっという間に年越しでお正月、何とも忙しい年末を過ごす事になる日本の文化にウルトラマンとなってから色んな意味で曖昧なんだなぁと思い始めているマグナ。良くも悪くも宗教が此処まで好い加減な国も珍しいだろう、神社でお参りしたと思ったら教会で結婚を祝う、かと思いきや―――まあこれが日本という国の特性なのだろう。
「おっ~緑谷!!なんか久しぶり~!!」
「うん久しぶり」
もうそんな風に思われてしまう程に顔を出していなかったかと思うのだが、自分の中では不思議な程に寂しいなどの気持ちなどはなかった。いや感じる暇もない程に激動過ぎる毎日が当たり前になっていて自分もそんな濃厚な毎日が基準になってしまっていたのだろう。
「あっ緑谷君、あのっリドリアスってどんな感じ?」
「元気らしいよ。鏑矢諸島の研究員さんとも上手くやってて普段は海沿いの巣で寝てるか空を飛んでるって」
荷物を一旦降ろしながらも同じく特別隊員になった口田の質問に答える。確かに彼は特別隊員だが活動する時は基本的には直帰で鏑矢諸島に行ったり保護した怪獣とのコミュニケーションが主。その他にも太平風土記を基にした調査にて遭遇した怪獣との交渉などが担当なのでPLUS基地には顔を出す事は少ない。
「緑谷さんPLUSの方は宜しいですの?」
「ナイトアイから休暇を貰えたんだ。偶には子供らしく大人を頼れ、学生らしく勉強してろってさ」
「ハハッなんか言いそうだな!!」
という言葉の中には複雑な意味もある実は相澤からそのように融通をして欲しいという連絡が来たからである、それは当然まだ子供であり学生であるからには学業に励むべきというのもあるが……それ以上に平和を感じて欲しいという切実な願いがあった。
『相澤先生から言われましてね、大人が子供に頼って情けないし心苦しいと』
『でしょうね……言うなれば教え子に軍属にさせているような物ですし』
そんな会話がナイトアイとの間にあった事をマグナは知っている。ナイトアイに自分から怪獣の知識やデータを渡してそれを活用して貰ってはいるがそれでもまだ足りない所がある。それを個人の才覚や実力という物で補っているに等しい、それだけこの世界の防衛能力は低いのである。発目の開発力や出久の尽力は正しくそれ。加えて彼らは迷うことなく前線に出る、それが教師としては辛い。
「つってももう終業してるから勉強はしなくていいんじゃねぇの?」
「いや僕はまだ公欠分の補習があと少し残ってるから」
「あ~……轟と爆豪以上に公欠してるもんなぁ」
既に雄英は終業しているが、それでもまだ公欠分の補習は完済しきっていない。リモートでの授業で何とか対応してきたが……まだ宿題のように残っている。
「でもお前も大変だよな、結局仮免から後ずっとPLUSで働き詰めだったもんな」
「うんっでも僕はこれでいいと思ってるよ」
掌を見た後に力強く握り込む。休暇というかそれにも此処までズレ込んでしまったがそれでも出久としては別段何も思っていない。
「それじゃあ今日はさっさと補習終わらせちゃうね」
「応っ明日は皆でやるクリスマスパーティの準備だから遅れるなよ~」
「発目に呼び出されるって言うのは無いようにな」
「流石に発目さんもお休み貰ってるよ」
そんなからかいを受け流しながら久しぶりに自分の部屋へと戻ってきた。一応掃除ロボットが清掃を掛けてくれていたのか綺麗なままでPLUSに掛かりっきり前の部屋なのに、なんだか……随分とこの部屋が狭く感じられてしまう。荷物を置きながら机の上のオールマイトグッズを手に取って眺める。
「僕の部屋なのに、なんだか不思議……もう子供の、ずっと帰って無かった実家の自分の部屋みたいに思えちゃうな……」
グッズを置きながら椅子に腰かけながら空を仰ぐように上を見上げながら腕を伸ばした。同時に指に嵌められたマグナリングが輝く。
「……マグナさん、僕って変わりましたかね」
『随分と藪からな質問だね、如何したんだい急に』
「いえなんか急にこの部屋が狭く思えちゃって、なんか子供の視点だと広かった公園が大人になってから来たら急に狭くなったみたいな」
『それだけ君が成長したって事さ。ウルトラ・フォー・オールの事だけ以外の事でも色々あったからね……もう君も随分と立派になったもんさ』
マグナからの視点で見ても出久は本当に強くなった、それは相棒としての贔屓目を一切抜きにしてだ。新たな始まり、ウルトラ・フォー・オールの担い手となり、彼個人でも宇宙有数のヒットマンであるモルスに認められるだけの力を身に着けている。これを立派と言わずして何を言うのか。
『私も君には感謝しているよ、君がいなければこの星の危機を救う事も出来なかったしアサリナの仇を討つ事も出来なかった』
「それは僕だって同じって奴ですよ。マグナさんが居なかったら僕、死んでたんですから」
溢れ出してしまう過去と今が紡ぎ出す絆の山々、語り出せば語り尽くす時には日は落ち、また昇り、また落ちて昇る事だろう。それ程の日々を共に過ごしてきた二人。そんな日々の中で出久も出久で気付いていたのかもしれない、だが敢えて口には出さずにからかうようにして口にだす。
「僕の事なんかよりカトレアさんとの事が大変なんじゃないですか、戻ったら即座に国を挙げての結婚式でもおかしくないですよ。何せ王族相手ですし」
『やめてくれよ……考えないようにしてたのに……ああもうそんな事言われたら帰りづらいじゃないか……もういっそのこと永住してやろうか……』
「多分、マックスさんとかが連れ戻しに来ると思いますよ」
『あ~……マックスは不味い、絶対来そうだから困る……』
そんな軽口を叩き合いながら出久は課題を広げるとそれに手を付け始めるのであった。残っているのは簡単な問題集程度、早く終わらせてしまおうとペンを走らせていく。
『もうあれだ、ぜってぇ王族紹介しまくる。私を祝った奴を集中的に紹介の的にしてやる』
「それって、同僚さんが主に被害に遭うって事じゃ……」
『マックスにネオス、ゼノン辺りは確実かな。フッフッフッ……覚悟しておくがいい……』
―――我が母、アウローラは死に絶えたか……成程、繋がりを感じぬとは魂も完全に消滅したという事か……。ぬぅぅぅぅんっっ!!!!
その時、世界は一瞬死に絶えた。そして即座に生き返る。深い深い眠りに付きながらこの世界に生まれ出る日を待ち続けていた者がこの時、産まれてしまった。それの誕生を目にしたとき、死柄木は余りの事に言葉が出なかった。それはドクターも同じく、だったがそれは驚愕からではなくそれが放つエネルギーが今まで観測されたあらゆる物を凌駕していたからだろう。それだけの力を秘めた存在が目の前にいる事への喜びで震えているのだ。
―――痴れ者が……去ね。
唯一度、腕を振るった。その時に溢れ出す力は空間を歪める、歪んだ空間の中に囚われながらも無間の苦しみを味わう事になるがそんな事など如何でもいいと言わんばかりに笑い続けるドクター。唯々笑い続けるドクターの声が木霊する中、死柄木は冷や汗が止まらない中で言葉を口にした。
「聞いていいか、お前は何だ」
―――レイブラッドの継承者たるアウローラ、そして偉大なる光の勇士マグナ。我はその二つを受け継ぎし者、そして我は世界を終焉へと誘いし者。
姿が掻き消える、同時に圧力から解放されるが死柄木は膝をつきながら思わず嘔吐する。あれは明確に人が見るべき次元の物ではない、発狂もせず耐えきった時点で異常とも言える存在。そして理解する、あれが纏っているのは―――自分が齎す破壊ではない、全てを飲み込み消し去る無だと。
「さて、如何なる事やら……見せて貰うぜウルトラマン、お前はこんな世界を守るのかどうかを……」
「我は此処に顕現せり……。さあ我が父よ、矛を交えようぞ……マグヌスもそれを望んでいよう……母無き今、この世界で繋がる絆は貴方しかありえぬのだから……フフフッハハハッハハハハハハハハ!!!!」
笑う度に空間が震撼し暗黒の稲光が煌いた。世界を終焉へと誘う魔神は渦を作りながら聖夜を迎えようとする人間たちの都市へと降り立とうとしている。そしてその場所は……雄英がある街、今、マグナと出久がいる場所でもある。
出久「突如現れた魔神、それは終焉を誘う魔神と名乗りながらマグナさんに姿を現せと言いながら街を破壊していく。ゼットさん達と共に立ち向かうけど、そこでまたマグナさんの胸を抉る真実が語られる。ふざけるな……これ以上マグナさんを苦しめるなぁぁぁ!!
僕だって、ウルトラマンだぁ!!」
最終局面、突入。終わり近づく物語を、見逃すな。