その身に宿した力に恥じぬよう、自らが本当になる為に、そして―――この地球を守る為、自らの子供を魔神にしないためにマグナは立ち上がった。
『しっ師匠……!!』
ゼットは唯々嬉しそうな声を上げてその背中を見つめていた、その背中は自分が敬愛するもう一人の師と酷くよく似ていた。堂々としながら力強く猛々しい光の姿。あれが自分の師匠だと叫びたいぐらいだと思う中で大剣の切っ先がマグナへと向けられる、それに合わせるようにそれの槍が握られる。
『あの程度で終わるとは思ってはいなかったぞ、我が父よ』
『お前が魔神を名乗るならば好きにしろ、だがそうしたくば父を越えてみろ。私という存在を踏み越えて勝鬨を上げて見せろ、だが簡単に乗り越えられると……思うな』
その手に握る槍を構えながら対峙しながらもマグナは目の前の存在を自らの子供として認めた、きっと真実なのだろう、紛れもないそれを否定せずに真正面から向き直る父にグノスは声色を少し高くしながら笑った。
『ならば―――越えて見せよう、それが我が母の望みでもある』
その言葉と共に一気にグノスは踏み込んだ、一歩深く踏み込むと同時にマグナとの距離が一気に零になると同時に振り上げていた剣が振り下ろされていた。
「シュァッ……ディァ!!」
「ヴェア!!」
一拍の無音の直後に幾重にもぶつかり合う重低音が世界に響き渡っていく。無を司る大剣と究極の槍が無数に残滓を空間に残しながら切り結ばれていく、だが確かにマグナはグノスの無と戦えていた。
『すげぇっマグナさん、攻撃が全然無効化されてない!!』
『ど、如何やってるんで御座いますか!?』
『単純な話だ、それだけあいつの存在が強い』
ベリアロクの見立てでは自分と同じように宇宙の穴を塞ぐ力による無への干渉する力はない、単純にマグナという力の存在が無を埋めてしまっている。ブラックホールのような無でも飲み込めない程にその存在が大きく強い。
「チェェヤッ!!」
「グヴァァァ!!」
踏み込みながら渾身の力を込めた突きを放つ、振り下ろされた大剣の刃を砕きながら突き進んでいく。それを受け止める為に無が広がるが同じように無効化されてグノスの胸部へと突き刺さる。それを見逃がす事も無くマグナは更に槍を押し込んでいく。
『「サンダー・ビッグバン!!」』
―――ヌ"ア"ァ"ッ!!
雷撃がグノスへと流れ込んでいく、それはベリアロクと同じようにその肉体を確実に傷付けて行く。そしてそのまま雷撃を纏ったまま引き抜きながらも袈裟斬りにする。その傷を撫でながらもグノスは笑いながら両手からどす黒い光線をマグナへと向けて放った。光線の余波で途轍もない衝撃波が周囲を駆け巡っていく様からその威力が窺い知れるが―――それに向かって駆けた。
『「
―――テァッ!!
「ォォォォオオオオッ!!タァァァアッッッ!!!」
金色の斬撃を纏った槍、それは光線を切り裂くと同時に槍の周囲にそれを留めるかのように纏った。帯電する電気のように纏わり付いたエネルギーをそのまま返すかのように再びグノスへと叩きつけた。無と無がぶつかり合う、マイナスとマイナスがぶつかり合った時に生まれるのが強烈なプラスとなり無が有へと変わった。
『これはっ……!』
『この技はお前の母の物だっアウローラなどという偽りではなく真実のな!!』
『うおっ……!!』
槍を放り投げながら懐へと飛び込みながら超連続の拳と発勁を連続して叩き込んでいく。
『「INFERNO SOL SMASH!!!」』
両手にはまるで太陽の如き輝きの熱が帯びていた、その温度はゼットンの火球と同じ程の膨大な熱量を帯びながらもそれを的確にグノスへと叩きこんでいく。攻撃と防御の起点とも言える無が消え、実態が明らかになったと言ってもいいグノスはその攻撃を受け続けて行く。その肉体強度は高い物だがそれでも苦し気な声が漏れてしまう。
―――名前、考えてくれた?
―――うんっでも僕が決めていいの?
―――私はセンスがないからね。
『これっはっ……』
―――そうだねぇ~……マグヌスなんて如何かな。マグナみたいになって欲しいしきっとなるから。
―――フフフッもう親馬鹿かい。
「テェイヤァッ!!」
「グヴォォォッ……!!」
揺れる視界と身体、その奥でもっと別の物が動き始めていた。身体を抉る一撃が炸裂する度に内側に流れ込んでくるエネルギー、身を焦がすような熱と共に入って来る眩い思いが……グノスを苦しめていた。
―――ねぇねぇっ僕達に憧れて宇宙警備隊を目指してくれるのかな。
―――私は別に何でもいいよ、この子が望むなら警備隊じゃなくても。でも平和の中で生きていてほしいって言うのは我儘かな?
―――そうだね、何でもいいよねなりたいになってくれれば。
「ッ―――ヴォオオシェァァ!!」
「ダァッ!!」
熱を振り払うかのように拳が飛ぶ、それを受け止めるマグナだがその時に変化が起きていた。黒く染まっていたグノスの肉体が僅かに光を帯び、胸の宝玉にも光が灯ろうとしていた。その様はまるで―――カラータイマーのように。
『我にっ何をした……!?』
『何もしていない。唯……本当の母と父の愛情って奴を叩きこんだだけだ』
ちゃんと愛情なのかは分からないけどなと呟くマグナに出久は少しだけ笑った。だけどそれは確りとした愛情である事は間違いなかった、それこそがグノスに変化を告げている。母と名乗るアウローラの呪縛と言っていいそれに囚われ続けているグノスを救い出す事は出来るかは分からない、だからやろうとした事は単純明快。本当の親の愛を注ぎ込んでやるだけだった。如何すれば良いかなんて分からない、だがそれでも自分達はこんな風に思っている事だけは知ってほしいという想いを注いだ。
『……これはっ……我が、生まれる前の、記憶っ……!?何だ、なんだこれは知らないぞ……!?』
濁流のように押し寄せてくる無数の景色と次々と浮かび上がって暖かな感触と思い、それはまだ生まれる前にアサリナとマグナが自分に向けて問いかけていた言葉なんだと分かった。知らない筈なのに知っている、分からない筈なのに分かる、体験していない筈なのに懐かしく思えるそれらに混乱し始めて行くグノス。それを見た時にマグナはその手に槍を握り直し、光の弓を展開しそこに番える。
「ォォォォッ……シェタァァ!!」
螺旋を描く光の矢となった槍はグノスの胸を貫く――――のではなくその内部へと入っていくかのように染み入っていった。光が闇と一つになっていくかのように同化していく、それと同時にその肉体が帯びる光が更に強くなっていく。
「グァァァァヴォォオオオオ!!!」
雄叫びのような悲鳴を上げる、宇宙の闇のような身体に輝きが齎されていく。そして―――その光が全身を包み込んだ時だった……胸のカラータイマーが青く染まりその瞳に確かな灯火が輝きを持ち確かな理性を携えながら此方を見た。
『―――有難う父さん』
『マグヌス……済まない』
謝罪の言葉を述べようとするのが止められる、そこにいるのはもう魔神などではない。アウローラによって歪められた命などではなくマグナとアサリナの子供、マグヌスがそこにいた。だがその肉体は既に消滅し始めているのか、風に攫われていくように光の粒となって消え始めている。アウローラによる物が消えてもうこの世界に繋ぎ止めていた物が無くなった物は自然と消える、当然の摂理。
『謝らないでよ、父さんは悪くないよ。例え別の世界の父さんだとしても父さんは父さんだから……俺の永遠の憧れで大好きな父さんだよ』
『だったら、また私の子供として生まれて来てくれ』
『そうだったら……幸せだな……』
そう言いながら空を見上げる、真っ青な空が広がる景色に心と身体を染めて穏やかな表情のまま―――マグヌスは光となって消えていった。その光はマグナへと吸い込まれていくかのように無へと還っていく。もう何も苦しめる事はない安らかな世界へと―――還っていった。
『またね……マグヌス』