過ぎた月日。
個性、超常社会においてそれは最早当たり前のものと化し超常という言葉すら何処かに消えてしまいそうになっていた。だが其処に出現した個性などを凌駕する存在こそが怪獣。その怪獣に対抗するために人類が設立した組織が Prowess Luster Unique Spirit Fencer、通称PLUSなのである。今日も人々の平穏を守る為にPLUSは戦い続けている。
『進入コース適性、維持しつつ帰還されたし』
「了解」
PLUS本部、世界初の防衛組織の拠点として設立されたそれは今では空中要塞とも言える基地が作られても未だに稼働し続け人類防衛の要として象徴的な役目を背負い続けている。そんな基地へと帰還する巨大な機械の巨人、それこそPLUSが誇る対怪獣特殊空挺機甲、特空機一号レギオノイド・フェンサー。任務を終えて帰還したレギオノイドは各部から炎を噴き出しながら姿勢制御を行いながらも帰還する。
『着陸確認。これより格納作業に入ります、お疲れ様でした』
「いえっ慣れたもんです」
管制官のねぎらいの言葉に感謝を浮かべつつも各部のチェックに入りながらもモニターではレギオノイドの各部を拘束するように固定されていき、地下へと格納されていく。これからメンテが始まるので動力炉の火も落としておかなければ……と様々なチェックを終えた頃には固定は完全に終了したのでハッチを開けて外へと出る。
「お疲れい、今日も大活躍だったな」
「レギオノイドの性能のお陰ですよ」
格納庫の灯りに照らされたパイロットは対怪獣災害想定コスチュームであるウルトラスーツを纏っていた。特空機の操縦は身体にも相当な負担とGが掛かる為に直接操縦の際にはパイロット用に調整されたウルトラスーツの着用が義務付けられている。まるでウルトラマンのようなヘルメットを外しながら一息吐こうと柵に背中を預けた時、飲み物が差し出された。
「お疲れ様です出久さん」
「有難う明、今日も頑張ってきた」
ウルトラマンが去ってから7年の月日が経過した。出久は雄英卒業後、PLUSへと正式入隊。実働部隊へと入りつつもハルキが残してくれたデータやマグナと共に戦い続けた経験を活かし特空機のパイロットを志し今では立派に特空機のパイロットを務めている。
「今日の相手は結構大変だったんじゃないですか」
「ちょっとヒヤッとした場面もあったけどなんとかなったよ、流石アーストロンだ」
今回出現した怪獣は凶暴怪獣 アーストロン。そのパワーに圧倒されフェンサー・ゴモラとも互角にやり合う怪獣だったがレギオノイドの動きで翻弄しながら、フェンサー・ゴモラと連携を取る事で倒す事に成功した。被害も最小限に抑える事も出来たので一安心である。
「にしてもゴモラと互角なんてビックリしたよ」
「それには私も驚きましたよ、まともにゴモラとやり合うなんて……これは私がマグナさんがいた頃から考えていたけど実現出来なかったプランを遂に実行する時が来たかもしれませんねぇ……!!」
「おいおい何を考えてるの」
若干呆れつつもドリンクを啜っている出久、彼女との付き合いも本当に長い事になるがこうなってしまった彼女のテンションにはいまだについて行けない。いや自分が一番ついて行けている部類だと考えるとまだマシなのだろうか……このテンションの上がり位はまだまだ白熱するだろうが……。
「ゴモラはアートデッセイ号に搭載する以外ですと専用ファイターで牽引するしか長距離移動手段がないじゃないですか、だからそれを解決しつつ出力のパワーアッププランとして専用機を作るんです!!それとゴモラが合体する事で飛行能力の付与と各部出力の向上と武装の強化を図るのです!!」
「そりゃまた……随分と気合の入ったプランだね」
ヒートアップしている彼女を見つつも何だか懐かしさに浸ってしまう、マグナがいた頃に自分は発目の発案に振り回されて色んな苦労をしていた。今思えば良い思い出……思い出……かは置いておくにしても歳を重ねて自分も発目も随分と落ち着いてきたのでこんな風にヒートアップする姿を見るのも久しぶりな気がする。
「そう、昔に私が開発に漕ぎ着けなかったのはその専用機とゴモラの合体を大袈裟且つ仰々しくし過ぎてしまったからなのです。ですので今回は背中に背負うような形で接続するような形に簡略化する事で開発しゴモラ側の改造の少なさを強調する事で予算の確保も容易く―――」
「よぉあんちゃんお疲れ……なんだ嬢ちゃん久しぶりにトリップってんのか?」
「ええっ久しぶりに」
声をかけてきたのはモルス。7年たった今でも特別筆頭教官としてPLUSに所属し続けている、本人曰く地球が気に入ったからというかららしいが……本当の所は分からない。
「やれやれ大変だねぇ」
「教官殿ほどじゃありませんよ」
「あんちゃんも言うようになったねぇ」
確かに昔に比べて度胸も付いた、爆豪に言わせればふてぶてしくなった、焦凍からは爆豪みたいになったと言われてしまったがそれも何処か納得してしまっている自分がいるので何とも言えない。日夜怪獣と戦うような仕事についているのだからそんな風になっても可笑しくはないだろう。
「んであんちゃん今日はもう上がんだろ。如何だいこれから、一杯奢るぜ」
「いえこのまま帰りますよ、明をこのまま放置しておく訳にも行きませんから」
「あ~……そうだわな、んじゃ今度の休日にでも繰り出そうぜ。嬢ちゃんの相手は任せた」
「任されました」
そんな約束を取り付けて去っていくモルスを見送りながら未だに何やらブツブツ言い続けている発目を好い加減に現世へと呼び戻す事にする。
「明、明。そろそろ僕は上がるよ」
「っという訳で名付けてスーパー・ゴモってあっそうでしたねそれじゃあ行きましょうか、いやぁ久しぶりにスイッチは行っちゃいましたよ~」
アハハハハッと笑いつつも出久の隣を歩いて行く発目。出久はウルトラスーツを脱いでから軽く汗を流した後に待っていた明と合流するとそのまま共に歩いて行く。何時からかこんな関係になったのだろう、いや彼女と出会った時からこうなる事はある意味決定されていたのかもしれない、そんな風に思いつつも自然と手が重なって指が絡み合う。
「出久さん、明日は休日ですし久しぶりにデートにでも行きませんか?」
「それもいいね。でもそれデートと言う名の実験じゃないよね」
「デートの定義って知ってます?親しい間柄の人が日時や時間を決めて合う事、だからそれもデートですよ」
「やれやれっまあ僕じゃないとお相手は務まらないし、精一杯務めさせてもらうよ」
「えへへっ流石出久さん、分かってますねぇ」
こんな役回りになるのも慣れっこだし……個人的に譲るという気持ちも沸かない。何故ならば―――
「さあっ我が家に行きましょう出久さん」
「はいはいっ分かってるよ」
彼女、発目 明の隣は自分の特等席で専用席なのだから。そんな思いを秘めながらも出久は空を見上げる、見上げる度に想う事は唯一つ……
「(マグナさん、僕頑張ってます)」
嘗て共に居た相棒、尊敬すべき師へと放ち続ける言葉。