緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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悪夢の第一楽章

救助訓練の会場となる場に到着してバスから降りていき、相澤引率の元、中へと入って行くとそこにあったのは驚きの光景だった。そして思わず口を揃えて言ってしまった。

 

『USJかよ!!?』

「水難事故、土砂災害、火事、etc(エトセトラ)……此処はあらゆる災害の演習を可能にした僕が作ったこの場所――嘘の災害や事故ルーム――略して"USJ"!!」

『本当にUSJだった……!?』

 

と皆が言葉を漏らす中でマグナがぼそりと

 

『そう言うのって権利関係問題ないのだろうか、あくまで教師内での呼び名とか勝手に呼んでるだけという事なら別に問題はないのか……正式名称は別にある訳だし……いやだからと言っても普通にそこまで堂々と被らせる事は普通しないと思うが……』

 

と何やら割かしガチな考察をしているのを出久は聞こえていたので僅かに口角をピクつかせてしまっていた。そんな事を聞いていると登場したのは宇宙服のような戦闘服を纏っている一人の教師であった。スペースヒーロー 13号。宇宙服に似ているコスチュームを着用している為に素顔は見えないが、災害救助の場で大きな活躍をしているヒーローの一人だった。

 

『これは何とも解り易くていいね、私としてはなじみ深い感じがするのが良いねぇ』

 

と好印象な13号は言いたい事があるらしく言葉を綴った。個性には人を殺してしまうほどの力を持っているものがあると。この授業ではそれを人を助ける為に使う事を学んでほしいという強い思いがあった。それを聞いた出久は思わず強く拳を握り込みながら改めて自分の力の責任を思い知る。何故ならば自分の必殺技でも光線技は撃つ相手を選ぶ、そして出力を間違えれば命を奪いかねない物だからである。だからこそマグナはイズティウム光線の使用を真っ先に禁止にしたのだろう。それらを感じながらもっともっと精進する事を心に決めた所で授業に入ろうとした時の事―――

 

『出久君戦闘態勢!!敵が来るぞ!!』

「っ!!相澤先生、何か来ます!!」

 

嘗て、ヘドロヴィランの経験があるからかマグナやオールマイトにも指導された素早い意識の切り替え鍛錬が役に立ったのかすぐさまにフルカウルを発動させながら戦闘態勢を整えた出久。その直後、USJ全体の照明が一瞬消え、不気味な雰囲気を醸し出す。直後に相澤は出久の言葉通りに悪寒を感じ、噴水広場に反射的に顔を向けた。そこに黒い靄が空中で不気味に渦巻きその中心からは悪意と殺意が漏れた。噴水前の空間が奇妙なほどに捻じ曲がるかのようにどす黒い霧のような広がっていく光景に素早く指示を飛ばしながらゴーグルを装着し、13号も動き出す。

 

「皆さん後ろから出ないように!!これは演習などではありません、完璧な非常事態です!!」

 

まだ何が起こっているか分からないという風な生徒達はきょとんとしていたが、ただならぬ雰囲気を察し直ぐに13号の背後へ集まっていた。出久は何時でも光線を撃てるような体勢を維持し続けながらも全周囲を警戒し続けながらも瞳が黒い渦からゆっくりと大勢の人間が出現したのを見た。

 

『ひい、ふう、みい……参ったな相当な戦力がいるな。ご丁寧に射撃系に近接系と個性まで別けているとは……』

「相澤先生、見える範囲で射撃個性と近接系異形個性なんかが多いです!!」

「合理的な報告ご苦労、前情報でそれだけ分かればやり易い。緑谷お前も引け」

 

出久は相澤の纏っている空気が活動を開始する時のオールマイトに似ている事から抹消ヒーロー・イレイザーヘッドとして活動しようとしている事を察してマグナが出してくれた情報を相澤へと伝達する。相澤はそれを素直に受け取りつつも自分の作戦を決めつつも13号に生徒達を任せるとそのまま飛び出してヴィラン達をかく乱していく。個性:抹消にてヴィランの個性を封じる事で出鼻をくじきながら相手の最大戦力を使えなくし自分のフィールドで戦う、それでヴィランの注目を集めている間に13号が生徒達をUSJから逃がそうと画策するが……

 

「逃しませんよ、13号と生徒の皆様方」

 

瞬時に移動し、出口への道を封鎖するかのように立ち塞がる霧のような姿をしているヴィラン、他のヴィランをここに連れてくる役目も背負っている黒い霧のヴィランは何処か紳士的な口調をしながらも明確な敵意と悪意を向けてくる。それらから守る為のように13号が一歩前に出ながらも出久は何時でもフォローできるように準備を固めておく。

 

「はじめまして生徒の皆様方。我々はヴィラン連合。この度、ヒーローの巣窟であり未来のヒーロー候補生の方々が多くいる雄英高校へとお邪魔致しましたのは他でもない。我々の目的、それは平和の象徴と謳われております№1ヒーローであるオールマイトに息絶えて頂く為でございます」

 

その言葉に思わず皆の意識が一瞬死んだ。あのオールマイトを殺す為に態々雄英に乗り込んできたというのだろうか、単純にオールマイトを目的として事件を起こすだけでも狂っているとさえ思えるのにオールマイトだけではなく多くのプロヒーローが教師として在中している雄英高校に乗り込んでくるなんて普通ではない。だがヴィランの瞳に嘘が滲んでいない、本気で殺すつもりで来ている。そして直後―――

 

「そして生徒の皆様が金の卵という事も承知しておりますので―――散らさせて頂き嬲り殺しにさせて頂きます」

 

今度は黒い霧が伸びて自分達を包み込んでいく。身体が何処かに飛ばされているかのような感覚を味わうが直ぐにそれは明らかになった、身体は空中に放り出され真っ逆さまに真下にある巨大な湖のようなプールへと落下していた。

 

「嘘ぉっ!!?」

『ところがどっこい嘘ではありませんっと言っている場合ではなかったね』

「スペシウム光線、シェア!!!」

 

咄嗟に出久はスペシウム光線を発射しその勢いで真横へと自らを吹き飛ばした。そしてその先には恐らく訓練の為にあったと思われる船がありそこへと着地をする。

 

「うおっ緑谷!?お前そんな事まで出来るのかよ!!?」

「良かったわ緑谷ちゃん、私もう一度潜ろうかと思ったけど余計なお世話だったみたいね」

「峰田君に蛙吹さん、じゃなくて梅雨ちゃん!良かった二人とも、無事だったんだね!!」

 

着地した先には先に転移させられ、此処に避難してきたと思われる二人がいた。そこは13号の説明で言われていた恐らく水難ゾーン、そこに転移させられてしまったのだろう。兎も角互いの無事を喜びつつも大変な事態になってしまったと溜息をついてしまう。

 

「それにしても大変な事になっちゃったわね……まさかオールマイトを殺すなんて目的をもってしかも雄英に来るなんて……」

「うん、凄い自信だった。多分対オールマイトの策を考えてきたんだと思う」

「で、でもさオールマイトだぜ!?天下無敵の№1ヒーローだぜ!?今までだってオールマイト相手を考えてたヴィランを倒してきたオールマイトが負ける訳ねぇって!!」

 

と不安になる心を無理矢理奮い立たせ気持ちを隠そうとする峰田、そんな様子を察して言葉にはしないが梅雨と出久の二人はヴィランが明確な策がある事とそれも向こうが知っている筈であり、確実な対策があるからこそ来ているのだと改めて考える。

 

「兎も角、先生たちが助けに来るまで此処で待つのは危険だよ。見て」

 

出久がそちらを見るようにとそっと目配せをすると無数の水影が見える、恐らく水中であるならば無類の強さを発揮出来たり相性のいい個性を持つヴィランがいるに違いない。此処は完全にホームグラウンドという事になる、このまま先生を待っていたら確実に先制攻撃を受けて水中に引きずり込まれてしまう。何とかしなければならない……故に二人の個性を聞いて作戦を立てようとした時だった。

 

『待て出久君、水中の様子が可笑しいぞ。何だこのプレッシャーは……』

「―――えっ」

「緑谷ちゃんっ気のせいかしら、私は個性は蛙っぽい事なら出来るのだけど……それが関係あるか分からないけど何か水の中が変な感じがするわ……」

 

マグナが発した言葉、それに同調するような事を言う梅雨。顔を見合わせながらそぉっと水中へと目を向けてみると―――何やら巨大な影がうねる様に見えた、そして水中のヴィランと思われる影がまるで痙攣するかのようになりながら水面へと上がってきた。

 

「ひぃぃぃっ!!?」

 

峰田が声を上げるが、それは死んでいない。痺れているかのように痙攣しているだけ―――だが直後に多くのヴィランが絶叫を上げながら何かから逃げ惑っていた。

 

「馬鹿が怒らせるなって言ったじゃねえかぁ!!?」

「俺のせいじゃねえって!?」

「言ってる場合か逃げろぉ!!」

 

「な、なんなんだよ何が起きてんだよぉ!!」

「何かが、水中から来るわ!!」

「皆船に確りと掴まって!!」

 

刹那、まるで爆発でも起きたかのような水柱を上げながらそれは姿を現した。それは上半身だけで15mは硬いであろう途轍もない巨体、黄色っぽく白にも見える体表に黒模様が走っている。本来の動物なら眼がある場所に回転する三日月形の角があり、それは対空レーダーのように回転し続けており目の役割をしているのではと思わせた。そして水中からは酷く長い白い尾と思われる物が伸びておりそれは常に帯電していた。そしてそれは姿を見せると共にキィィィィッッ!!!という甲高い咆哮を上げた。

 

「こ、これって……!?」

『宇宙怪獣 エレキング!?何故こんな所に此奴が!?』

 

出久達の前に姿を現したのはマグナの居る宇宙に存在する宇宙怪獣の一種、エレキングであった。




ウルトラ怪獣からエレキングの堂々のエントリーだ!!いきなりエレキングは攻めすぎかと思いましたがやっぱり解り易く知名度もあった方が皆さんも良いと思いましたしエレキングは魅せやすい上にこの子、電波妨害まで出来るのででこのUSJではかなりの適役だと思って出しました。

あと私がエレキング大好きなのもある。

前回のサブタイトルはウルトラマンエックスの第17話『ともだちは怪獣』が元ネタというよりも着想を得ました。

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