「お疲れ様緑谷少年、マグナさん」
「あ~……何だろう、まだ目が回ってるような気が……」
変身を解除した出久はそのままセントラルタワーへとバレないように帰還したのだが、如何やらウルトラ一族の伝統技で目が回っているような錯覚があるらしい。マグナと同化していたとはいえ、人間の三半規管にはウルトラマンの高速回転がかなり負担になるらしい。
『済まなかったね。でも光の国のウルトラマンは冷気が苦手でね、ああでもして対策しないといけないんだ。バリアも無い訳じゃないんだけど……あれはあれでエネルギーを大量消費するから緊急事態以外じゃ使いたくないなぁ……』
「な、成程……あれはエネルギーを抑える狙いもあった訳ですね……?」
『まあ役に立たなかった時もあったがね』
顔を反らしながらも何処か自虐的に鼻を鳴らすマグナにオールマイトと出久は何があったんだと……と聞きたくなった。ベリアルの乱の時が該当するのだが……まああの時はベリアルに手も足も出なかったせいとも言えるが……。
『シールド博士、御怪我はありませんでしたか?出来るだけI・アイランドに被害が出ないように心掛けましたが』
「は、はい。今連絡をしてみましたが、大パニックが起きる寸前にマグナさんが現れた事でパニックが抑制されたようです」
「私もマグナさんの背中を見てたら何だか、落ち着いちゃってたし……というかあんな戦いをしながらもそんな注意もしてたんですか!?」
『勿論。寧ろ冷凍能力があるレイキュバスだったからある種楽だったね、津波の心配をしなくて良かったから』
それを聞いて二人は益々驚きを深めていた。あんな巨大な化物と戦いながらもI・アイランドへの被害も留意していたのに、寧ろ楽だったというのだから。確かに途中でマグナの背後、つまりI・アイランド周辺近くの海が凍結した事で波の被害は皆無だった。そう言う意味ではラッキーだったのかもしれない。
「それでマグナさんレイキュバスの細胞のサンプルは!!?」
『取って来てる訳ないでしょうが』
「えええええええええ!!!??何ですか良いじゃないですかちょっと位サービスしてくれたって精々社会がちょっと揺れる位のブレイクスルーしか起こしませんって!!」
「いや発目少女、ブレイクスルーさせる事自体が不味い事だからね。君の発明品の大半だってそれに値するって理解しようね?」
「ハッ!!偉い人は言いました、常識やタブーとは人が作る物に過ぎないと!!」
「発目さんの場合はそれを一回り飛び越えるじゃすまないからマグナさんに止められてるんだってば!!それを理解してくれないかなぁ!?」
「理解はしてます、無視してるだけです」
「「『尚性質悪いわ!!』」」
平和の象徴、ウルトラマンの相棒、ウルトラマン本人に同時にツッコミを受けておきながら平然としているこの発目が一番地球人というカテゴリーから超越しているのかもしれない……そんなやり取りをしている三人にデヴィットは勇気を出すように声を出した。
「マグナさん。貴方の力はあの怪物、トシは怪獣と呼んでいましたがそれと戦う事は出来る。それなのに私の力は必要とされるのは何故なのでしょうか……?私達のような小さな人間に何が出来るのでしょうか……」
『逆ですよ博士、私は地球人である貴方達にこそ協力を願いたいのです』
「私達、だからこそって……?」
この世界の人間からしたら理解出来ないかもしれないが、人間だからこそなのだ。人間だからこそ強い力を絆によって作り出せる、その地球人の心を、力をウルトラマン達は信じている―――ずっと、ずっと昔から。その気持ちは脈々と受け継がれてきた歴史というバトンでもある。
『ウルトラマンと言えど、限界はあります。時には私達ですら倒せない怪獣もいる、だけどそんな我々のピンチを救って来てくれたのは貴方達人間なんです』
「私達が……ウルトラマンを……」
それこそ数えきれないほど、同時にそれは地球は自分達でも守れるという意志表明でもある。守り守れるではなく、何れ並び立てるような……。
「本当に、そんな風になれるでしょうか……」
「なれるよデイヴ。もうその答えはあるじゃないか」
「答えってマイトおじさまもしかして……」
「そう、緑谷少年とマグナさんさ!!」
力強く背中を叩かれていたそうにしつつも懸命に背筋を伸ばしている出久にデヴィットは目を丸くしてしまった。既に助け合うという点において相棒関係という最高の関係を築いている二人がいる、これこそ人類とウルトラマンが助け合う事が出来る証明でもあるんだとオールマイトは言う。そこへ発目も混ざった。
「おっと私を忘れて貰ったら困りますよぉ!!私だってグルテン博士っていう異星人と仲良くやってますからね!!」
「そうだったね、ごめんごめん。こんな風に既に私達は次のステップを踏む準備自体は出来ているんだよ、後は勇気を出して一歩を踏み出せるかどうかにかかってる」
「トシ……」
「さあデイヴ、君も勇気出そう!!Plus Ultra!!」
それを聞いて思わず目を見開いてしまったデヴィット。同時に分かった、自分がどれだけ臆病になっていたのかを……オールマイトの個性喪失や怪獣の存在を実感して気付かぬうちにネガティブになってしまっていたらしい。オールマイトのサイドキックらしくない考えだ。
「―――うん、そうだなトシ。私とした事が……忘れていたよ、Plus Ultraって奴を」
「パパ……うん、私もやってみる、Plus Ultra。だっておじさまもマグナさんもいるだったら恐れる物なんてないよね!?」
「そうですよ御二人も私の側に来て魅惑的な宇宙のテクノロジーに手を伸ばしましょう!!目指せ地球超越テクノロジー!!」
「だからそう言う勧誘やめてってば発目さん!?既にどんだけマグナさんに怒られてるのか分からない訳じゃないでしょ!?」
「ハッあの程度でめげてたらGAIAなんて作れないんですよ!!!」
先程まで本当に迷っていたのがバカらしくなるようなやり取りを見て二人は噴き出してしまった。そうだ、最初は好奇心で手を出すぐらいがちょうどいい、その後は自分達を自制しつつもワクワクしながら前に進んでいこう。勇気を出して―――
「そうだね、宇宙テクノロジーを逃す手なんてないもんな」
「そうよね凄い興味深いもん!!」
「ちょっとデイヴにメリッサ!?君達ももしかして発目少女気質だったのかい!?」
「何だ気付かなかったのかいトシ」
「技術者って奴はこういう感じですよおじさま」
「発目少女のストッパーお願いしたいと思ってたのに~!?」
「ああ、これからも僕がやるんですね解ります……」
『まあ何時もの事だね』
遠い目をする出久と呆れたような声を出すマグナを見たデヴィットとメリッサは思わず吹き出して大きな声を上げて笑ってしまった。
「そうだ、もしかしたら私の技術……役に立つかもしれないな、怪獣の事もあるからもしかしたら……」
「何か既に開発してたのかい?」
「まあ圧力を受けてしまって凍結を受けてしまったんだが……怪獣の事を踏まえると許可が下りるかもしれない―――それは個性を増幅させる事が出来るんだ」