緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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雷の王者

水難ゾーンの水中から姿を現したのは龍のようにも見える巨大な怪獣、だが出久達にとってそれらは初めて遭遇する超巨大生命体に驚愕し言葉を出す事が出来なくなっていた。ヒーローでも巨大と言えば近年デビューしたばかりのMt.レディだが彼女でもその大きさは2062㎝でしかない、それなのに目の前の巨大怪獣は水面から出ている上半身だけで15mはあろうかという巨体。感じた事も無いスケールの大きさに圧倒されるしかない。

 

『出久君確りしろ!!君には私がいる、エレキングとも戦闘経験がある私がな!!だから確りしろ!!!』

「―――はっ!?ふ、二人ともしっかり気を保って!!」

「ケ、ケロッ!!?」

「やっやべぇマジで飲まれてたっつうかでかすぎだろなんだこのヴィランンンッッッ!!!?」

 

絶叫を上げながらも咆哮を上げ続けているエレキングを見上げてしまう、如何にも機嫌が悪いのかエレキングは何処か濁りのある咆哮を上げながら電撃を放出しながら周囲にヴィランを痺れさせながら唸りを上げ続けている。余程この水難ゾーンの居心地が良かったのか、自分の縄張りとする事を決めたのか荒ぶりを見せているエレキング。

 

「(マ、マグナさんこれが噂の怪獣って奴ですか!?)」

『ああっ正真正銘の宇宙怪獣、ピット星出身のエレキング。まさかこの地球で初めて出くわすのが此奴とは……』

 

エレキングはマグナにとっても因縁のような物がある。彼の友人であるマックスも戦闘経験があるのもそうだがマグナ自身も同種と戦った事がある、その時は単純な他の惑星に生息していた個体で他の怪獣によって負った怪我の影響で凶暴化していただけなのでマグナヒーリングパルスで治療する事で鎮静化させたのだが……今回ばかりはその手を使ったとしても無駄だろう。

 

『エレキングはその名通りに体内で膨大な量の電力を生みだす、それと長い尾を武器にする。絶対に掴まるな私と融合しているとはいえ君でもただでは済まないぞ!!』

「な、何とかしないと……!!そうだっ!!」

 

エレキングの情報を貰うが聞けば聞くほどに厄介さが深みを増して行く。そして今するべきなのはこの怪獣から一刻も早く距離を取る事だ、マグナリングを使うにしても梅雨と峰田に見られてしまう。個性だと言い張ればいいかもしれないがそれは本当に最終手段、マグナから出来るだけ正体はバレない様に気を付けてくれと言われているので控えたいと思いながらある事を思い出した。

 

「二人とも僕の身体に掴まって!!此処から逃げるよ!!」

「で、でもどうやって逃げるの!?あのおっきいヴィランは水中に潜んでたって事は水中がきっとホームグラウンドよ!?だから私が二人を連れて逃げるにしてもあの巨体じゃすぐに追いつかれるわ!!」

「良いから僕の身体に!!急いで!!!」

「わっ分かった緑谷信じるぜ、信じていいんだな!!?」

「信じて!!!」

 

不安げな二人の言葉を打ち消すかのような言葉、その言葉に含まれた強さに二人は顔を一旦見合わせながら頷くと出久の身体にしがみ付く。梅雨が峰田を蛙のような長い舌で掴み出久の脇腹辺りに、梅雨は出久の後ろに負ぶさるような形にしがみ付いた。そしてそれに気付かれたかエレキングは此方を振り向いてしまった。

 

「いやあああああこっち向いたぁぁぁあああああ!!!!??」

「二人とも確り掴まってるんだよ、絶対に僕を離しちゃだめだからね!?」

「分かったわ信じるわ緑谷ちゃん!!」

「オ、オイラのもぎもぎをお前に付けさせてもらうぜ!?こいつは超くっつくから!!」

 

と峰田は出久の身体に頭の紫色の球体をくっつける、それは峰田の個性のもぎもぎ。単純明快で超くっつくという物で峰田にはそれは発揮されないがそれをくっつけて掴むようにしてよりがっしり掴み掛る。

 

『キイイイイィィィィィィッッッッ!!!!!』

 

振り上げられたエレキングの腕、それは船を瓦を割るかのように一気に叩き下ろされ船を一瞬で潰し割って爆発させてしまう。エレキングは潰したと思ったが自分の顔よりも高い位置で浮遊している出久の姿を見て首を傾げるようにした。

 

「す、すっげぇ緑谷お前飛べるのかよ!!!?」

「凄いわ、凄いわ緑谷ちゃん!!」

「離したり、しないでよぉ!!!」

 

両腕を伸ばしながら空を滑るように飛行をし始める出久、これもウルトラマンとしての力の一つ。そのまま一気に逃げようとするのだが―――

 

『出久君背後から電撃が来るぞ!!!』

「負ける、もんかぁぁぁぁっっ!!!」

 

背後からエレキングから発せられた電撃が無数の閃光となって空を舞う出久を撃ち落とさんと放たれていく。マグナが的確に迫ってくる電撃の方向や数などを教えてくれるお陰で事前回避を行う事が出来ている、背負っている梅雨としがみ付く峰田の影響でスピードが出せないがそれでも必死に二人に電撃が当たらないように回避し続けていく。

 

「み、緑谷すげぇぜ!!このまま陸地まで一気に行っちまおうぜ!!!」

「そう、簡単にはいかないみたいよ峰田ちゃん!!?」

「何で水を差すような事を言うんだよ!?」

 

折角出久が頑張ってくれてるのに何を言ってんだと言葉を返すが、梅雨は心配と不安に満ちた顔で出久を見る。同じように出久を見るとそこにあったのは異常なまでの汗と荒い息、そして青くなっている顔でまるで苦痛に悶えるような声を出している出久の姿があった。僅かな間に異常なまでの疲弊をしていた。

 

「み、緑谷!?」

「緑谷ちゃん、空を飛ぶって貴方にとって途轍もなく辛い事なんじゃないの!?」

「ググググッッッ……うぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ……!!!!」

 

言葉を返す余裕すらないのか最早呻き声しか出せなくなっている出久。ウルトラマンにとって飛行能力は当たり前のようなものだが出久にとってはまだまだその感覚は掴めなく全く出来ないに等しかった。出来るのは光線を出すように体内エネルギーを放出する事で疑似的な飛行をする事のみであり、今の出久にとって飛行とは自分のエネルギーを大幅に浪費しながら飛ぶ事でしかない。

 

「(まだだ、あと少し、あと少しぃっ!!!)」

 

あと一歩のところで水難ゾーンを脱出できそうな所までやってきた。だが其処に―――水中から伸びてきたエレキングの尻尾が目の前に出現し自分達を絡めとらんと迫ってくる。

 

「そんな此処まで来て!?」

「くっそぉぉぉお緑谷がこんなに頑張ってくれたのにぃィィぃ!!!」

「まだだ、僕はまだ―――!!!」

 

迷わず直進、避ける事もしないまま出久は突き進んでいく。そして腕を矢を引き絞るかのように引きながら無我夢中でワン・フォー・オールを発動させて殴り付けた。咄嗟の事だったので力は自分の限界程度だっただろうがそれでもまさか此処までの反抗をされるとは思わなかったのかエレキングが驚いたのか尾を水の中へと引っ込めてしまった。そのまま出久は陸地へと墜落するように着地する。振り落とされながらもなんとか陸地に付いた事を喜ぶ二人。

 

「や、やったわ緑谷ちゃん!!なんとか陸地についたわよ!!!」

「あ、後はおいらたちが運ぶ、だから後は任せろって緑谷何やってんだよ!?」

 

だが二人の視界にあったのは既に満身創痍である身体を必死に持ち上げ、腕を地面に突き刺すように支えにして強引に立ち上がろうとする出久の姿だった。

 

「何やってんだお前もう!?」

「まだ、だ……あいつから少しでも時間を稼がないと……逃げられない……!!」

「で、でもあなたはもう動けるような身体じゃ……」

「だから、だよ……」

 

苦しい筈なのに、疲労しきっている身体の筈なのに出久は満面の笑みを二人へと向けた。

 

「悪いけど身体を支えて貰っても良いかな……最高の一撃を放つから……この後、僕は多分動けなくなるからさ……その時は運んでくれないかな……お願いだよ梅雨ちゃん、峰田君……」

 

そこにあったのは純粋な願いだった。それも自分達の為の願い、此処まで他人の為に尽くせるという姿にヒーローを目指している二人は言葉を失った。まるでオールマイトのようじゃないか……そして二人は顔を見合わせると頷くと確りと出久の身体を支えた。梅雨ちゃんは舌、峰田はもぎもぎを上手く使いながらサポートしてくれている。それに喜びながら出久はマグナに願いでた。

 

「(重ね重ね、申し訳ないで、すけど……二人の事、お願いしても良い、ですか……?)」

『―――全く君って男は……ギリギリまで私に頼る気がないとは……良いだろう好きにしたまえ。そして存分にやりたまえ!!!』

「有難う御座います……行くぞぉ!!!!」

 

迫ってくるエレキング、甲高い咆哮に負けない様な雄々しく猛々しい咆哮を上げると出久はワン・フォー・オールを発動させる。しかもただの発動ではない、先程訓練した許容限界ではなくオールマイトの力でそれを放つのだ。マグナが以前言っていた言葉―――

 

『50m級の怪獣の体勢を崩れさせながらそれなりのダメージを与えられただろうね』

 

それで十分過ぎる、二人を助けるには時間を稼げるだけで十分なんだと思いながらイメージする、偉大な光であるオールマイトとマグナを。その二人が自分の背後にいながら自分と同じ動きをする姿を。徐々に集って行く光は六等星から強くなり、途轍もなく眩い光を放つ太陽のようになる。そしてそれが極限へと集った時―――出久は目を開きながら叫びをあげた。

 

「イズティウム!!光線っっっ!!!」

 

両腕から放たれる膨大な光、絶対的な輝きと力を伴った出久の全力全開最大最高の光線が放たれた。二人によって固定されているはずなのに反動で後ろに下がってしまう程の出力のそれはエレキングへと真っ直ぐと向かって行く。エレキングは放たれてくる光のそれのやばさに気付いたのか、咄嗟に三日月状の放電光線を放つが咄嗟過ぎた為か、エネルギーが足りずに相殺しきれずにイズティウム光線は放電を一気に押し上げていきエレキングへと直撃した。

 

『キィィィィィィィィィィィィッッッ!!!!!???』

「デェェェェヤアアアアァァァァァッッッッ!!!!」

 

渾身の叫び、瞬間的に出力がさらに高まり光線は更に巨大となりながらエレキングへと炸裂する。それを受けてエレキングは大きく体勢を崩しながら一気に倒れこんで水中へと没していく。巨大な水柱が立つ中で出久は―――ゆっくり前かがみになって倒れこんでしまいそうになるがそれを咄嗟に梅雨と峰田が受け止める。

 

「すげぇっすげぇよお前ぇ!!カッコ良すぎるだろがぁよぉお!!!」

「本当に、本当に凄いわ緑谷ちゃん!!!後は任せてねっ!!峰田ちゃん早く!!」

「お、おう!!」

 

二人は出久を担ぎあげると大急ぎでその場を離れようと動き出していく、出久が作り出したこのチャンスは絶対に無駄にしないと思いながら足を進めていく中―――

 

「おい、なんだよ今のはよぉ……?何だよ今のチートみてぇなビームはよぉ?」

 

出久の全てを踏み躙るかのように現れた全身に手を付けた男と脳が剥き出しになっている大柄のヴィランだった。




出久達はどうなるのか、次回をお楽しみに。

前回のサブタイトルはウルトラマンガイアの第37話『悪夢の第四楽章』が元ネタです。

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