光線の構えを解きながら思わず膝を折り腰を降ろしてしまう
「流石オールマイトの力と言うべきか……私の影響で肉体強度が上がっている筈の出久君の身体でもこれ程までに傷つくか……。その上でのイズティウム光線と私の光線は流石に無理をし過ぎたな……いや傲慢だな、儘ならんな」
もう少し自分の力があれば出久を楽させてあげられた、強引にでも自分が主導権を取るべきだったのではと思うがそれは出久の決断と意思を踏み躙る事になると頭を振るう。ウルトラマンは神ではない、救えない命もあれば、届かない思いもある。そんな言葉を思い出しながら自分を戒めつつもエレキングが居た水難ゾーンへと目を向けるとそこに何やら光っている物を確認した。それに対してウルトラ念力を発動させて引き寄せてみると―――そこにあったのは掌に収まるようなサイズのメダルでそこにはエレキングが刻まれていた。
「これは……エレキングのメダル……?確かゼット君がヒカリさんに協力して開発しているという新アイテムもメダル関係だった筈だが……」
差し詰め怪獣メダルとでも呼ぶべき物を見つめながらもある考えが浮かびながらも一先ずそれを仕舞いながら次の事を考える。
「確か死柄木弔だったか、偶然見つけられたと言っていたが……既にこの地球にはそれなりの数の宇宙人が足を踏み入れていると考えるべきなのだろうか。エレキングとなるとピット星人いやレイオニクスの可能性も捨てきれないが……だが何故それがメダルになる……また報告する事が増えたな」
最悪の場合は応援なども検討しなければならない事態になりかねない、自分の手に負える範囲ならばいいのだが……水難ゾーンにエレキングによって痺れて気絶しているヴィランなどを見つめながらもあれらも一応水揚げしておいた方が良いかなぁと思っていると背後に爆風の様なものを纏いながら何かが着地した。
「緑谷少年大丈夫か!!?」
「―――何事かと思ったら貴方でしたか」
「その喋り方は矢張りマグナさんでしたか!?」
やって来たのはオールマイトだった、如何やらUSJから脱出した飯田が雄英へと緊急事態の説明を行いオールマイトは先行する形でこのUSJへと救援へと駆けつけたらしい。結果的には主犯格は既に逃亡してしまっているが、残っているヴィランや生徒達の救助の事を考えるとこれ以上ない人物だと言えるだろう。そしてオールマイトは梅雨と峰田から真っ先に出久の話を聞いて此処へとやってきた。
「蛙吹少女と峰田少年から話を聞きましたが緑谷少年はとんでもなく巨大なヴィランを倒す程の力を発揮したと、まさかそれもマグナさんが」
「いやそれは出久君自身だよ。オリジナルの光線をワン・フォー・オールで強化する形で無理をしてね、それでも倒しきれなかったが大きなダメージを与えて撤退するのに十分な時間を稼いでいたよ。まあその直後に主犯格がやって来たから私がバトンタッチしたのだが」
「な、なんと!?」
「取り敢えず申し訳ないが後の事を任せていいですかね、もう出久君の身体は限界で動けそうにない。出来れば休ませてあげたい」
「分かりました。後はこの私にお任せください!!」
力強いサムズアップと笑顔に頼もしさを覚えながら、では健闘を……と言い残すとマスクが解放されると同時に身体がゆっくりと後ろへと倒れていく。そこにあったのは年相応の疲れ切った少年の顔があった、それを見てマグナも引っ込んだのだと悟ったオールマイトは、出久を皆の所まで連れて行って安全を確保して貰った後に自分はUSJを回って生徒達の救助と乗り込んできたヴィランの一掃を行うのであった。
出久の奮戦とマグナのとどめのお陰でヴィラン連合と名乗るグループの主犯格が雄英から撤退、そしてUSJの各地にて転移させられた生徒達を待ち受けていたヴィランは生徒達に倒された以外は全てオールマイトが対処する事で生徒への怪我人は出久だけという不幸中の幸いを迎える事になった。教師である相澤や13号も怪我こそしたが命の別状はないという事で皆胸を撫でおろすのであった。
「ぅぁっ……」
小さな小さな呻き声が自らの耳に木霊した。全身がだるい、か細い呼吸だけでも身体が軋むような痛みがする―――筈なのだがそれらは一切感じられなかった。先程まで感じていたそれらはなかったので飛び起きるようにするとそこは白い光に満たされているような空間だった。慌てていると背後に気配を感じて振り向いてみると、そこにはやぁっ挨拶をするマグナの姿があった。
「マグナさんあの此処は一体!?」
「まあ落ち着きなさい、此処は端的に言えば君と私の精神世界だ。君は未だに眠り続けている、まあ起きようと思えば起きれるがもう少し眠っていた方が良いだろうね。今リカバリーガールという保険医さんが個性で回復を促してくれている、まあ其方にも体力を使うらしいが其方は私のエネルギーで代用しつつも私の方でも回復を促進している。後15分もすれば起きれるさ」
「あっそっか、僕とマグナさんは一心同体でした」
「重要な事なのに忘れたのかい?」
僅かながらに呆れながらもまあいいかとその程度にしておきながら、気を失った後の事を話そうとした時に出久は真っ先に頭を下げた。
「マグナさん、梅雨ちゃんと峰田君を助けてくれてありがとうございました!!」
「君の辞書には疑うという文字は無いのかい」
「だってマグナさんが約束してくれたんですから必ず守ってくれると信じてます」
「―――やれやれこそばゆいね、まあ彼らに怪我一つないよ。その代償に君の身体を傷付けたようなものだけど」
「僕の身体なら幾らでも」
「自己犠牲もその位にしておこうか」
内心では自己犠牲を率先して行うような聖人の塊のような星出身が言うようなセリフではないかと自虐しつつも、地球人でありまだまだ未熟な出久には匙加減を覚えるようにとくぎを刺しておく。
「しっかしまあ君も無茶ばかりする子だね。エネルギーを大量に浪費する飛行に全力の光線、それが君の身体をどれだけ傷付けるか分かっているのかい?」
「それは……」
「ワン・フォー・オールの余剰エネルギーが光線となって発射されるとはいえ、あのオールマイトの全力を放射するんだから相当な負担がかかる。言っておくけど君、リカバリーガールさんが酷いと言っていたレベルだったよ」
骨は折れ、筋肉の断裂、内出血のオンパレードなどなど……それを聞いて出久はうわぁっ……と顔を歪めるがそれだけでそこに踏み入った事に関しては全く後悔を浮かべていない様子に流石のマグナも溜息しか出ない。本当に緑谷 出久という少年の精神構造はウルトラマンにかなり近しい物だ、そんな彼を上手く導かなければならない事に僅かな不安を覚えるのであった。
この後、出久は目を覚ますのだが……その際にクラスメイトだけではなく話を聞きつけた発目まで駆けつけてきたので少しばかりややこしいことなったりもした。
「という訳で緑谷さんが大怪我をしたというので私特製回復マシンの実験台になって貰うべくやって来たってもう治ってるじゃないですか何ですか来た意味ないじゃないですかまあ御無事というのは喜ばしい事ですが今度怪我したらちゃんと試させてくださいね」
「いやいやいや普通に嫌です」
「拒否を拒否しますので悪しからず」
「ちょっとアンタ医者の前で何を口走ってるんだい」
「それならまず医者にかかるような大怪我をした緑谷さんに言って下さい」
「正論だね」
「ええええっっ!!!?」
『エレキングメダル……グルテン博士に協力して貰って調べてみる必要があるな。そして……私も備えなければならないかもしれないな、来るかもしれない戦いに』
前回のサブタイトルは前回のサブタイトルはウルトラマンティガの第1話『光を継ぐもの』が元ネタです。