「第一種目はいわゆる予選、毎年ここで多くの者が
マグナに頭を抱えさせるヒーロー・ミッドナイトによって振られた鞭の先、ゲートがスタジアムの奥の青空とコースを映し出す。これから自分達が走る事となる先へと続くロード、すぐさま誰もが自分に有利な場所へと陣取ろうと動き出していく。矢張り皆スタート地点ギリギリの場所へと進んでいくので満員電車状態と化していく。スタートしたとしても本当に走れるのかと思うほどである。確かに先にスタートを切れれば有利なのだろうが、その立場で初動を活かしきれるならばの話になってくる。
『さて出久君私の手助けはいるかね?』
「(いえ大丈夫です)」
『フフフッでは期待させて貰おうかな』
そんなやり取りをしている間にゲーム上部に設置されているマシンレースで使用されるかのようなシグナルが光を灯していく、今か今かと全員がそれを見つめる中遂にそれは一斉に緑色の光を灯す―――
「スタァァアアアトォォオオッッッ!!!」
遂にスタートが切られた。一気に全員がゲートから走りだそうとして土石流のごとくスタートへと殺到していく選手たち。皆が他人より少しでも早く前へ前へと焦りを持っているからこそ起きている。
「ワン・フォー・オール・フルカウル―――!!」
そして殆どの生徒達が殺到しているゲートへと出久も走り出していった。だが人混みに接触する前に跳躍するとトンネルのようになっているゲートの壁へと向かうと壁キックを繰り返してゲートの突破を試みると―――ゲートから凄まじい冷気が沸き上がってきた。視界の端で捉えた光景はゲートに殺到している多くの生徒達が氷によって足が取られている姿だった。
「轟くんか!!でも僕だって負けない!」
「退けデクッ!!!」
壁を蹴った跳躍と同時に自分の隣に躍り出るかのように飛び出したのは両手からの爆発で空を飛ぶ爆豪だった、爆破を推進力にして飛ぶのは空中での姿勢制御などのバランスがとても難しいのにあっさりやってのけている。流石の天才肌と思いつつも出久は轟が行った妨害用の地面の氷を砕くように思いっきり着地しながらも足の力を強めて氷を砕くようにしてどんどん前へ前へと進んでいく。
「君だって負けるもんか!!」
「ハッだったら付いてきてみやがれ!!」
「だったら抜いてみせるまでだぁ!!」
地面を滑るように先行していく轟を追いかけていく出久と爆豪、地上を激走する出久と爆破により宙を駆けていく爆豪は両者ともに並びながら進んでいくと轟が正面で止まっていた。これはチャンスと思ったのだがそんな意思を砕くかのように前方から巨大な影が徐々に伸びてきた。
「これって入学時の仮想ヴィラン……しかも0ポイントの奴が大量に!!」
『さあさあ遂に来た来たやっと来たぜ!!!手始めの第一関門、名付けて『ロボインフェルノ』!!!此処を超えないと次にはいけねぇぜぇえエエエイエエイ!!!』
入試の時に投入されていた仮想敵。中には巨大な0ポイントも存在している。避けるべき障害、それが倒すべき障害でもある。何とも素敵な障害物競走の第一関門。流石に入試ほどのサイズの物は少数だがそれでもかなりの数のロボが邪魔として立ちはだかって来る、流石は雄英、金の掛け方が違う。出久は止まってしまった爆豪と轟と共に先へと進んでいく。
「エレキングに比べたら―――迫力、不足だぁ!!!」
『あれと比べちゃいかんよ』
跳躍した出久へと狙いを定めた一機のロボが腕を差し向けてくる、がそれを身体を捩りながら回避しながらもその腕を蹴って更に回転、宛ら新体操選手の演技。そんなアクロバティックなムーンサルトスピンの後、一直線に強襲するような一撃をロボへと浴びせ掛けて見せた。
「SWALLOW SMASH!!」
それはロボットの共通の弱点と言っても過言でもない関節部を狙う事も無く分厚い装甲で守られている部分を堂々とぶち破って見せた、それはマグナが見せてくれたウルトラ兄弟の
「アハハハハハハッ!!!さあさあさあ真打登場ですよ私の活躍を見ててくださいよどでかい会社の方々ぁ!!」
と甲高い笑い声と共に後ろから何やらとんでもない音がした、それには出久だけではなく爆豪や轟までもが振り向いてしまった。何とそこにはパンチを繰り出したはずのロボが押し戻されて仰向けに倒れこむ姿があった。
「おいおい……」
「確かデクにやべぇ事言ってた変な女……」
「やっぱり発目さんだぁぁぁぁっっ!!!??」
その言葉に反応するように声を張り上げたのは案の定というか…決めポーズを取ってしまっている発目、彼女も彼女で今日という体育祭を楽しみにしていた。その為に出久を実験台、もとい協力して貰って様々な発明品を作り上げてきたのである。今彼女が纏っている多目的強化骨格、見た目こそ服に隠れる程度の物でありながらも各部に内蔵されている
「ありゃ今のでパワーセル2個丸々消費しちゃいましたか、でもご心配なく!!何せパワーセルは即座交換可能ですから!」
と両腕からカプセルの様なものを排出すると代わりの物をそこへ装填する、そしてその間に倒れこんだロボは体勢を立て直しながら改めて殴り掛かってくるのだがそれに対して発目は腕の操作パネルのスイッチを押した。すると背負っていたバックパックから何やら砲塔が飛び出した。
「フッフッフッ喰らってみなさいこの発目 明が作り上げた―――発目式光子砲!!!」
「発目さんなんつぅ物作っちゃってるのぉぉぉぉっっ!!!??」
出久の叫びもむなしく、飛び出した二門の砲塔からは光の弾丸が低い音を立てながら連射されていく。それはロボの装甲を削り取るようにしていきながらも次々と装甲を破壊していくと遂にはロボヴィランを沈黙させてしまった。その光景に思わずトップを独走していた3人は足を止めてしまう程だった。
「なんつう威力……」
「……おいデク、お前あいつに改造とかされてねぇよな」
「物騒な事言わないでよカッちゃん!?というか発目さんならやりかねないから割と本気で洒落にならないから怖いんだけど!!」
「……緑谷、相談乗るか?」
「なんか轟君にまで同情的な目で見られてる!?」
思わぬところで同情された出久は泣きたくなってきた、そしてギンッ!!と言わんばかりに顔を上げてきた発目に爆豪と轟は出久の背中を叩いて先に行ってしまう、まるであいつの相手はお前に任せるぞっと言わんばかりの行動に出久は大慌てで自分も走り出していく。
「ちょっと二人とも今の何!?そんな事するなら手伝ってよ色々と!!!」
「断ァる!!」
「俺もだっ……!!」
「緑谷さん緑谷さん貴方のお陰でこんなにも素敵なベイビーが出来上がりましたよでも聞いてくださいよこの光子砲ってば私考案のパワーセルを使うんですけどまだまだ改良の余地があるので是非とも光線撃てる緑谷さんの力を借りてもっともっと改良したいんですよその為に実験したいんですよですから後日また協力、いえ実験台になって下さいいや流石緑谷さんその目ああ分かってるって感じですね流石私の大親友もう解ってらっしゃるんですね!!」
「だから言い直さなくていいってばぁ!!というか参加する事また勝手に決定されてるぅ!?」
「有難う御座います流石私の親友ですね!!」
「了承もしてないぃぃぃっっ!!!」
『……体育祭って可笑しなテンションでするものだったかな……いやロボが体育祭に出る時点で可笑しい気がするけど……』
色んな意味で波乱続きとなっている雄英体育祭、だがこれはまだまだ嵐の始まりに過ぎないのである。
発目式光子砲。ファントン光子砲を発目が地球のテクノロジーで再現してみた物。ファントン光子砲と比べてまだまだ威力、精度、エネルギー効率も悪く改良の余地は多く存在するがグルテンからは地球のテクノロジーのみで此処まで出来るならば十分過ぎるとの事。エネルギー源はパワーセルを使用。
前回のサブタイトルはウルトラマンガイアの第28話『熱波襲来』が元ネタです。