「テメェは俺には勝てねぇ」
余りにも圧倒的な試合運びだった。出久の試合に触発されたかのように力を見せ付けたのが瀬呂を一撃で倒した轟だけではなかった。爆豪も同じく、やる気十分であった。何故ならば曲がりなりにも出久に救われているのもあるが、出久と戦う為には決勝まで勝ち上がらなければならないという制約もあるので初戦で負けるつもりは全くなかったのもあった。
麗日の個性、無重力を活かすかのような機動戦。自身を軽くする事で機動力を上げつつも瞬間的にそれを解除してインパクトの際に与える衝撃を増させたりする工夫を凝らす麗日に爆豪は真っ向からそれらを粉砕していった。加えて仮に触れられて重力を無効化されたとしても自身は爆破を利用した空中移動が可能なので簡単には負けないという自信もある。そしてその精神的な強さはそのまま彼の実力にも直結していた。
「まだまだ、まだっ―――」
「丸顔、テメェはつぇぇ。それは保証してやる―――だが俺とは格が違う、出直してこい」
麗日の最後の秘策、爆破によって作られた瓦礫に身を隠すかのように、盾にするようにしながら爆豪に接近する傍らでそれらに触れて空中に留めておきながら時が来たらそれを一斉に落として攻撃するという流星群染みた攻撃も真正面から最大火力の爆破で切り抜けて見せる。自身の全力を超える強さを見せる爆豪を前にまだまだ前に進もうとする麗日に、首筋に手刀を入れて意識を奪うと爆豪はそのまま去って行く―――勝利という
初戦を無事に突破して次の試合に備えていた出久は、心操から何やらかなり熱い言葉と感謝を贈られたのだがマグナから事情を聴かなければまともな返答が出来ていなかっただろう。だが同時にマグナが居なければあっさりと負けていた事も確かな事だろう、その感謝も忘れないようにしながらも廊下を歩いていた。
「(マグナさんって何か好きな物ってあるんですか?試合だとお世話になりましたし……というか今まで全然気にしませんでしたけどウルトラマンってご飯とかどうしてるんですか?今までは僕と一体化してるから一緒にご飯食べてるって認識だったんですが)」
『いや私達に食事を取るという習慣はないんだよ、光エネルギーを吸収する事が食事とも言えるかな。因みに出久君との食事は別に味覚なんかは共有してないよ?』
「(そ、そうなんですか!?でもそれはそれで凄いようななんか、美味しいご飯食べれないのは寂しいような……)」
『まあ私が人間態とも言うべき姿を取れば食事を取れるようにはなれるんだけどねぇ……出来る事は出来るけどやめておくよ』
ウルトラマンも食事はしようと思えば出来る、過去にもウルトラ兄弟たちが地球を守る際などに取っていた人間態と言うべき姿であれば人間と変わらない状態になる。ならば出久はそれになればご馳走できると思ったのだが……マグナは遠慮してしまった。理由はいくつかあるのだが……久しぶりの食事に理性が抑えられるのかという不安もある。
『過去にもウルトラ兄弟が地球での食事に夢中になってしまったという事があってね……そのせいでゾフィー隊長に失礼な事にも……』
「(え、ええっ……)」
『後メビウスが任務を終えて光の国に帰還してからカレーが食べたいと一時期凄い事になったり……』
「(ふ、普段からの生活が違うとそんな風になっちゃうんですね……)」
『うむっ私も是非とも堪能はしてみたいのだが……流石に気が引けてね』
加えて言うなれば、ウルトラ兄弟の中には地球を酷く恋しく思う者が酷く多くそれが精神的な疾患として現れる事があった。それがある意味顕著だったのがメビウスだったとも言える。彼は地球で素晴らしい仲間に恵まれ楽しい日常を送りながらも、様々な苦難を乗り越え、仲間との証を身体に刻み新たな力までも手に入れ、最後には仲間と共にエンペラ星人を打倒した。そんな彼が抱く地球への思いは誰よりも大きく重かった―――そして大切にしている証明でもあった。
『まあ私の事はいいさ、そうだね……偶にはのんびりと日向ぼっこでもして貰えるかな、それが食事代わりになるから』
「(分かりました)」
と出久からの質問を終わらせるマグナ、彼としても地球の食事は味わいたいという気持ちがある。だがそれを望む地球人としての自分は既に希薄になっている、いざ食べた時、自分はどうなるのだろうか。望んでいたものとは違うと失望するのだろうか、これが食事だと喜ぶのだろうか、それとも……何もハッキリしないが兎も角マグナは自分に地球へのホームシックにも疾患を作らない為と言い聞かせる。
『まあ本音は銀十字軍に連行されたくはないんだけどね……』
光の国は地球に対して友好的、だが……一部ではウルトラ兄弟たちが死んでしまったりするケースが余りにも多い為に地獄の星と揶揄する者もいる。故に彼らは地球に行った事があるウルトラマンには必ず銀十字軍で診療を受けるようにと勧められる、酷い時には拘束されて連行される。彼らなりの善意であるので無下には出来ないのが難しい所。
「おおっいたいた」
「えっ貴方は……!?」
そんな時、ある人物に出くわした。炎を纏った威圧的なオーラを纏う男、オールマイトに次ぐNo.2、デビューしてから20歳の時点でNo.2に上り詰め、事件解決数史上最多の記録を持つ現役屈指のフレイムヒーロー・エンデヴァー。焦凍の父親であるエンデヴァーが自分を待ち受けるかのようにそこにいた。
「初めましてだな、君の活躍は見せて貰った。実に素晴らしい個性だ、単純なパワーもさる事ながら他にも様々な事が出来ると聞いている。そんな素晴らしい個性に巡り合えた事に君は感謝せねばならないな」
何処か威圧感を纏いながらのエンデヴァー、№2と呼ばれるヒーローに対する出久は普段のそれとは違っており何処か警戒しているにも等しいそれだった。マグナからして見ても目の前の男には嫌な予感を覚えていた。そしてエンデヴァーは高らかに言うのであった。
「焦凍にはオールマイトを超える義務がある、あいつは反抗期なのか半分の氷しか使おうとせん。だからあいつを炎を使わなければならないところまで追い込み現実を教えてやってくれ、君も本当の全力で―――君の個性にはまだまだ真の力がある筈だ、くれぐれもみっともない試合をしないでくれたまえ。言いたい事はそれだけだ、直前に失礼したな。」
それだけを言うとエンデヴァーは去ろうとするのだが、出久は察した。轟が、焦凍が見ている相手はこのエンデヴァーだと。だが目指す意味も度合いも異なる、この男を完全に打倒する事が目的なのだと察した。それは……怒りや恨みと言ったそれに近く、憎悪と形容すべき物なのだろう。そしてそれを見てマグナは出久に謝りながら言葉を作る。
「そちらも好きな事を言ったんだ、此方も一つだけ言わせて貰っても」
「―――良いだろう、なんだ?」
背中を見せたまま聞く耳を持ったエンデヴァーにマグナは言った、自分の中にある感想を。
「貴方は私が知っているある男に似ている、そして仮に貴方がこのまま道を変えないのであれば―――貴方は息子によって討たれる」
そう言い残して
「それはそれで悪くないかもしれんな……奴がオールマイトを越えられるならばそれも一興だ」
何も理解しないまま、変わらず自分の道を歩く。