エンデヴァーとの邂逅という思いがけない出来事によって心が揺さぶられてしまっていた出久だが、そんな気持ちは直ぐにすっ飛んで忘れてしまっていた。何故ならば自分はストッパーとしての役目を行わなければ冗談抜きでやばい事になりかねないから、という理由がある。それは―――
『さあこれから始まる試合も注目だぜぇぇぇ!!』
「だ、大丈夫かなぁ……」
これから行われる試合こそ、出久にとってはある意味一番心配の種なのであった。何故ならば―――その対戦カードはクラスの委員長である飯田と自称出久の大親友である発目の試合なのだから。普通ならばクラスメイトである飯田を応援するのが当然の筋なのだがそれ以上に心配なのが発目がまたとんでもない発明品を取り出して飯田を蹂躙するのではないかとこの対戦カードが目に入った瞬間に心から不安になっており、ミッドナイトに素直に相談したのだが……
「う、う~ん……確かに不安も分からなくもないんだけど流石にカメラとか全力で回ってる場でそんなことするかしら……」
「既にカッちゃんと轟君に向かって光子砲をぶっ放してるんですよ!?」
「うんそうだったわね私が悪かったわ、それじゃあ悪いけど試合の時は出場口で待機しててもらえる?」
「分かりました!!」
という事があって今、出久は出場口で待機しながら不安を胸いっぱいに抱き抱えながら見守っている。だが仮にも飯田も大人気ヒーローでもあるインゲニウムの弟でありその実力も相当に高い筈、きっと発目が相手だろうときっと戦えるはずだろうと思う中で如何しようも拭いきれない思いがある事も事実であった。
「発目さん、俺は正々堂々と全力で君にぶつかるつもりだ。それこそが君に対する最大の敬意であると思っている、故に君も全力で来てくれていい!!」
「ほほう!」
「(飯田君それ駄目だよそんな事言ったらマジで発目さん加減しなくなるよというか今まで十分発目さんのあれっぷり解ってる筈だよねぇ!?)」
『あ~あ……これはあれかな、マグナヒーリングパルスの照射スタンバイしてた方が良いかな……』
思わずやっちまったぁ!!と言わんばかりの反応をする二人、目を輝かせながらテンション爆上がりな発目にクソがつく程の真面目の飯田。これ程までに相性の悪い二人はいなかったという事だろう。これはもうミッドナイトの言葉通りにいざという時は自分が飛び出して止めるしかないような気がしてならなくなってきた。そして出久にとっては地獄の鐘に等しい開始の合図が鳴ってしまった。
「行くぞぉっ!!」
「では―――速度が得意な貴方ですからねぇ、先程調整した精度を試させて貰いましょう!!」
一気に加速して駆け出して行く飯田。十二分な広さのフィールドならば自身の最大の長所であるスピードを十二分に活かせる、機動戦で戦ってやると言わんばかりの初動に対して発目は発目式光子砲を起動。付けているゴーグルと連動したロックオン機能で飯田を捉えながらも光子砲を発射していく。低い重低音を響かせながら放たれていく光の弾丸。
「なんのぉぉぉお!!!」
それらに当たらないように必死に身体を捩りつつも体勢を限界まで低くしてまるで地面と平行に近い角度まで身体を傾けながら激走する飯田。
「速く、低い対象はぁ撃ちづらいだろぉ!!」
発目の発明品の威力も重々承知済みなので飯田も飯田なりに対策を考えていた。射撃系が苦手とする物の鉄板、高速移動する小さな目標への射撃は得意ではないという点。そこから攻める事にして飯田は大きくカーブを描き狙いを絞らせないようにしつつも距離を詰めていくのであった。
「フフフッ中々やるじゃないですかそれなら如何でしょうかぁレッツゴーウルトラアーム!!」
『……後で改名を要請しよっ……』
「マグナさん!?」
彼女の知らぬところで大ダメージが入っているのだが、迫ってくる飯田に対して起動したウルトラアームは伸縮しながらも小さくなった飯田を狙うが更に加速しながらそれを振り切ろうとする。だが4本もある腕は的確に迫りながらも進路先へと腕を伸ばし捕縛しようとしてくる、だがそれらを跳躍しつつも身体をねじりながら回避し、そのままアームを越えて発目へと接近した。
「はぁっ!!!」
「おっとっ!!」
と咄嗟に発目は腕で防御を固める、纏っていたスーツのお陰もあってか十分な防御が出来ていたがアームを簡単にすり抜けてしまった事に驚いている。だが間髪入れずに蹴り込んでくるそれを2本で防御しつつも残りの2本で後方へと飛び退きながら牽制と言わんばかりの光子砲をぶっ放す。それで距離を取った飯田を見つつアームの体勢を整えながら発目は素直に謝罪した。
「いやはや本当に驚きましたよ素直にウルトラアームを越えて来ちゃうなんて素直にびっくりですよ緑谷さんの身体能力データを参照したんですがこれは良いデータが取れましたそして私も本当の意味で本気を出さなかった事を謝罪してガチの物を出させて頂きますよ」
「それは光栄だ、そして俺は一切気にしていない!!」
「では遠慮なく!!」
そう言いながら発目はあるものを懐から取り出した、それに連動して腕部から何かが飛び出す。それは何かの読み取りを行う装置のように見え、取り出したのは何かのカードだった。そこには何やら機械的な巨大なモンスターのシルエットのような物がありそれを装置へとセットした。
【CYBER-ELEKING ロードします】
『おいちょっと待って今なんて言ったぁ!?グルテン博士貴方まさか……!?』
刹那、ウルトラアーム全てが飛び出すように射出されると発目の右腕へと装着されていく。接続されるとアームは装甲を動かしながらも変形していきまるで巨大な砲塔のような物を形取りながらも発目の上半身を飲み込むようにしながらその姿を現しながらアナウンスが完了のアナウンスを告げた。
【CYBER-ELEKING-ARMOR.ACTIVE!!】
『やっぱりそれだった!?博士何やってるですかぁ!?貴方恩人に対して甘すぎません!?』
「えっちょマグナさん如何したんですか!?」
そこにあったのはウルトラアームが集結、連結する事で作り上げられた砲塔を持つ鎧を纏った発目。当然マグナはそれを知っている、というかこの場合それを齎す原因となってしまったのが自分である事になってしまう。あれは紛れもない怪獣を解析して作り上げられるサイバー怪獣の鎧、モンスアーマー。流石にデジタル粒子の再現は難しかったのだろう、だが逆にウルトラアームを変形させる事でモンスアーマーを再現してしまった発目にはもう本気で頭が痛くなってきた。しかもサイバーエレキングアーマーを考えると解析を頼んだエレキングメダルのデータが使われたに違いない……。
「さあさあさあ皆さんご唱和ください私の名前を!!これこそ私の本気の超本気サイバーモンスアーマー!!これこそ真の技術革新と成り得る代物、そしてその力をまず飯田さんに体験していただきましょうさあさあさあ!!!」
「―――相手にとって不足無し!!」
『いや君が不足になるんだよこの場合は!!?』
この後、発目はサイバーエレキングアーマーの力を存分に発揮する。腕に装着されたアームからは指向性を持った電撃波を放つだけではなく自由自在な方向に転換可能な電撃鞭を放つ事が可能になっており、飯田はそれから全力で逃げる事ぐらいしか出来なかったのであった。流石にマグナも止めるべきと言ったので出久が止めようとした時、大きな音を立てながらモンスアーマーが機能を停止しながら各部パーツが地面へと落下していったのである。
「ありゃ~如何やらまだまだ不完全だったから無理が来ちゃったみたいですねぇ私の着てるスーツにも反動が来ちゃったみたいで完全にオーバーロードしちゃってますね。でもまあ十分過ぎる位のデータが取れて大満足なので私は此処でギブアップしますねそれではそういう事で飯田さん貴方の健闘を心の片隅でナノレベルで祈ってますよ~」
「えっ……俺はこれで胸を張って勝ったと喜んでいいのかぁぁぁ!!?」
と困惑しながらも絶叫する飯田はミッドナイトの勝利判定に如何したらいいんだと叫ぶ。だがそれに対してマグナは言うのであった。
『胸を張っていいんだよ飯田君。君はあの発目さん相手に勝ったんだからな』
「おおっそこにいるのは緑谷さんじゃないですか如何ですか見ててくれましたか私のベイビーたちの活躍いやぁ本当にいいデータがたくさん取れて大満足ですよ本当に緑谷さん今すぐにでも実験を開始しましょうと言いたい所ですが緑谷さんにも残りの試合ありますもんねしょうがないですからまた今度という事にしましょうか後マグナさんに有難うとお伝えくださいねあのアーマーの完成にはマグナさんが博士に預けた物を解析したデータを使って出来てますので」
「いや先ず承諾得ようよ!!?」
『もう何なのこの子……』
―――やっちゃったぜ☆ byグルテン
―――やっちまいました☆ by発目
『もう何なの子の二人……個性なんかよりこっち報告した方が良いような気がしてきた……』