緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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死闘!出久VS焦凍

『勘弁して欲しいよもう……元文明監視員としてはその辺りも厳しくしないといけないが博士にはメダルの解析でかなりの事をやって貰っているしこれからの出久君のことを考慮すると発目さんの協力と技術発展は必要不可欠、エレキングの一件を考えると対怪獣用アイテムの開発という意味では今回のアーマーは重要な事になり得る、だから出来れば大喜びしたいけどああもう……』

「だ、大丈夫ですかマグナさん……?」

 

発目の試合後、マグナは速攻でグルテンとの通信を繋げつつ今回の一件に対する注意を行った。本来なら宇宙生物関連技術の悪用として検挙されかねない事にもなりそうだったのだがそこは大まけで厳重注意と技術公開などに対する制限を課すという事で解放してあげた、と言ってもグルテンは兎も角として発目は本当に反省してくれているのか分からない。酷く明るくて悪びれていないごめんなさいっ!!という言葉が未だに脳裏をループしており本気で頭痛を覚えている。

 

『本当に分かってくれてるといいんだけどなぁ……ああもうこの事も私が報告しないといけないんだよなぁ……嫌だなぁ……出久君私の代わりにレポート書いてくれない……?』

「いや無理ですって!?」

『うん分かってるよ意地悪言ってゴメンね……』

「や、やっぱり発目さんがあそこまでやっちゃうって不味いんですかね……?」

『そりゃ不味いさ……国際的な機関に技術を提供して完成させたと言うならまだいいけど今回は個人だからねぇ……しかもそれを大々的に使ってしまってるから……まあ発目さんは最高傑作と言いつつもまだまだ未完成な上に私の許可なしで公表しないと誓ってくれたから良いけど……いやまずエレキングメダルのデータを私に一言も無くに流用した事が大問題なんだけど』

 

頭痛を覚えつつも何とか前向きに物事を考えつつも折角生まれた新しい技術の応用やどのように舵取りをすべきなのかを真剣に考えていたマグナだが、もう出久の試合が始まろうとしているので思考をリセットして出久と共に次の試合に挑む。何故ならば次は重要な試合になるだろうから。

 

『待たせたな諸君!!!二回戦第一試合は目玉カードの一つ、一回戦の圧勝で観客どころか対戦相手あと主審まで文字通り凍り付かせたIce Boy ヒーロー科、轟 焦凍ォォォっ!!!その対戦相手はこいつも注目株だぁ!見た目は地味だが開始の演説で中々に熱い事を言ってくれたナイスガイ、だがなんか意外と苦労してるっぽい!?同じくヒーロー科、緑谷 出久ぅぅぅ!!!』

 

大歓声が上がるスタジアムの中心地に立つ出久と焦凍はそれらを一切気にする事も無いような顔をしながらも向き合い続けている。出久もエンデヴァーの話を聞いてからやや顔つきが変わっていたが、いざ戦いの場に立つと一気に凛々しくなっている。精神的にも安定している、というか発目の一件があったせいかリセットは起きているというべきだろうか、兎も角戦いの場に立ったからには余計な事を考えないという事が出来ているらしい。これはオールマイトが知れば喜ぶだろうなとマグナは思いながら目の前の少年を見つめる。

 

『―――超える義務か、それにあれは幼稚な反抗期などではない。いや成程な、個性の事で想定はしていたが矢張り起きていたという事か……儘ならんな』

 

エンデヴァーの言いたかった事を全て理解したマグナは吐き捨てるかのような舌打ちをしてしまった、親の夢を無理矢理継承させるような形で焦凍は育ってきたのだろう。その過程で焦凍は自分の個性を嫌うようになっている、彼は氷と炎を操れる。エンデヴァーを見る限り炎は父親、氷は母親からの物だろう。その二人の個性が合わせる事で双方を併せ持った焦凍がいる、出久に頼んで身体を借りて個性と社会の関係をネットで調べた時に見つけたワード……個性婚、恐らくそうなのだろうと確信が胸を貫いている。

 

『出久君、彼は強敵な事は確実だよ。君は如何する?』

「―――全力で行くだけ、最初っから全開……!!」

「上等じゃねぇか緑谷。あの女の件じゃ世話になったが容赦しねぇぞ」

「ああうん……発目さんが本当にすいませんでした……」

「いやお前が謝る事じゃねえし一番の被害者お前だろ」

 

と戦う前に僅かに曇る出久の表情と本気で心配するような焦凍、そんな雰囲気にミッドナイトは二人に体調が悪いのかと語り掛けると直ぐに大丈夫と帰ってきて顔つきが凛々しくなるのを確認した。そして遂に開始の合図を繰り出した。

 

「ッ!!」

 

直後、焦凍の右足から怒涛の氷結が巻き起こる。自らの背後にも同時に氷を生み出しながらも前方の出久へと向けて地面から氷棘が寒波を纏いながら伸びてくる、それに対して出久は全身に力を巡らせながら左手を横にしつつまるでそれを照準器にするかのように構えながら軽く腕を振るう。すると―――腕から青白い光弾が飛び出して焦凍の放った氷結を瞬時に砕きながら周囲に風圧をまき散らした。

 

『み、緑谷今何をしたぁ!?うっ腕振ったらなんか光が出たぞぉ!?』

『緑谷 出久、個性は全身の身体能力を強化しながら体内にあるエネルギーを放出出来る、俗っぽく言うならあいつはビームが撃てる。A組の全員は知っているがな』

『マジかよ!?ビーム撃てるとかあいつヒーローかよ!?』

『プロヒーローが何言ってんだ馬鹿』

 

実況のマイクと解説の相澤の言葉に会場全体が震えてしまった、ヒーロー全体で見ても遠距離攻撃を可能にする個性は少なくないがそれでもビームが撃てるなんて個性は極極少数。ある意味の憧れに近いそれをやってのけた出久に向けられる視線は凄まじい物になっていく―――が出久はそれらを気にする事はなかった。初めて成功した光弾に興奮を覚えているだけだった。

 

「(やったっ……出来た、マグナさんが撃った光線の感覚が何となく身体に残ってたからそれに合わせてやってみたら出来たっ!!)」

『おやおやまさか私の技の感覚があったなんてね、まあ君の助けになったら良しとするかな』

「後はこれを発展させるだけ……!!」

 

確かな手ごたえを感じつつも再度向かってくる氷へと今度は片手のみで光弾を放つ、氷結は何とか粉砕出来たが助けがなかったからかかなり下の方に落ちてしまった。矢張りまだまだ練習不足という奴だろう、だがそれも良い結果に結びつけるのもヒーロー!!

 

「チッ……何処に!?」

 

出久の放った光弾が地面に炸裂した事で巻き起こった土煙が視界を塞ぐので舌打ちをするがその隙間から出久が既に先程の場所にいない事を見て声を出す。周囲を見回すが姿はなく何処に行ったのかと視界を動かす中で自分に影が掛かる、太陽に雲がかかるのではなく自分だけ影が出来た。

 

「上っ!?」

「SWALLOW SMASH!!」

 

そこには太陽を背負うかのようにしている出久が居る、顔を上げた瞬間に視界を光で塞がった瞬間を見逃さずに出久は飛び込んでくる。それに対して反応が遅れながらも氷を放って反撃を試みるが―――ぐんぐん加速していく出久の一撃は軽々と氷を砕きながら焦凍の目の前まで到達すると光を纏った強烈な拳が焦凍の脇腹を捉えた。

 

「ガァッ……!!?」

「ATOMIC SMASH!!」

 

スワロースマッシュと同じく、タロウ教官リスペクトのスマッシュが焦凍へと炸裂する。重々しい一撃が決まったのにも拘らず焦凍は背後に作っていた氷のお陰で吹き飛ばされずに済んだ。そして激痛が身体を貫く中で特大の氷を持って反撃に出てきた。

 

「スペシウム光線っシェアッ!!!」

 

脚に力を込めて後方へと跳躍しながら迫り来た強大な氷壁へと光線を放つ、光線は氷へと激突すると氷を融かしながら一気に焦凍へと到達してしまうが咄嗟の回避で何とか逃れる、が……出久はまだまだ余裕という表情を見せつつも構えを取った。戦いはまだまだ始まったばかりだ。


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