出久と焦凍の戦いが続き続けていく、一度接近に成功こそしたがそこから焦凍は更に警戒を強めたのか中々接近できなくなっていた。更にフィールド全体を侵食するかのよう氷が無数に伸びてきている、だがそれらに向けて練習を兼ねているかのように漸く出来た光弾技を連発して氷を壊していく。
「シェアッディアッ!!」
「―――くそっまだまだだ!!」
出久の攻撃で砕け散っていく氷、光に照らされて輝く奥でギラついた瞳を向け続ける焦凍は更なる氷を生み出していくのだが出久は氷の勢いが徐々に落ちている事に気付いた。規模も氷の大きさも小さくなっていっている、焦凍の戦闘スタイルは圧倒的な個性の出力に物を言わせたブッパ戦法、それは長期戦には酷く相性が悪いという物だろうか……と思ったが出久は戦いながらも良く焦凍を観察したからか見る事が出来た、彼の身体が震えている。
「(轟君の身体が震えてる……そういう事か!)」
『個性も身体機能の一つ、氷を生み出し続ければ身体は冷えていくだろう』
徐々に凍て付き始めている焦凍の肉体、彼は唯呼吸をするだけで吐息が白くなるまでに身体が冷え込んでいる。そこまで行ってしまったらまともな運動をする事は出来ないし筋肉の動きも悪くなって肉体のパフォーマンスは最高の半分以下にまで落ち込むだろう。一流のアスリートなどが入念なウォームアップをするのもそこにある、最高の力を発揮する為に準備をする。だが彼の場合は個性を使えば使う程にそれは落ち込んでいく―――だがそれを一気に解決する方法だってある。
「(でも片側の炎を使えば……!!)」
『解決するだろうね、だが彼は恐らくそれを使う事はないだろう。彼の抱く炎に対する感情は深い』
「―――ッ!!」
その時、出久は瞬間的にワン・フォー・オールの出力上げて空気を殴り付けた。凍て付いたステージに伝わっていく爆弾のような風圧、辺りの氷を全て吹き飛ばしながらも焦凍は軽く吹き飛ばさそうになる、が直後に目の前に出久が飛び蹴りをしてくるのが見えた。
「轟君、君がどれだけお父さんを憎んでいるのか知らないだけど―――一度、此処に立ったのなら全力で掛かって来い!!!」
「ッてめぇくそ親父になんか言われたのかぁ!!!」
「関係、無いって言った筈だぁ!!」
飛び蹴りと思わせながら首元へと組み付くとそのまま足の力だけで投げ飛ばす、地面に転がりながらも焦凍の視界には身体を踏み潰さんと今度こそ蹴り込んでくる出久が居た。それを咄嗟に身体の片側を押し出すかのように氷を出す事で一気に転がって回避する。
「僕も君も挑戦者なんだよ、僕にとっては此処にいる皆全員が超えるべき人なんだ!!それなのに君はっ何時まで片側の氷に固執するんだ!!?」
「黙れっ何も知らねぇお前が……何の不自由もない個性を持ってる奴が……!!」
焦凍にとっては個性こそが最大のコンプレックス、母の氷だけならどれだけ良かったのかと思っただろうか。父の炎もある故に自分は父の夢を強制された、そのせいで母は……そんな原因になった自分の個性が恨めしい、母を傷付けた父が許せない……だから父の目的を否定したい。何も知らない奴が自分に踏み込んでくるなと言いたげな焦凍に出久は言葉を続ける。
「ああそうだよ何も知らないよっそれはみんな一緒だ!!一緒だからこそ皆全力を出すんだ!!それに僕は中学1年までずっと無個性だって言われてきた、馬鹿にだってされてきたんだ!!」
「っ!?」
その時の言葉が一瞬静寂を運んできた。あそこまで強大で凄まじい力を発揮出来る個性を持つ彼が無個性だったという言葉が思考力を奪った。
「でも、僕は個性が遂に使えるようになった。それからずっと努力してきたんだ、僕に夢と力をくれたヒーローみたいになりたいから僕は此処にいるんだ!!あの人みたいな光になる為に、ヒーローになる為に頑張ってるんだ!!君が―――僕達に出来る事が君に出来ない訳ないだろう!!!」
ワン・フォー・オール・フルカウル。全身から光が溢れながらも更にそれが高まっていく、出久の身体に刻まれているウルトラマンの因子がそれに反応しているのか大きな光のエネルギーを生み出しながら溢れている。これが自分の全力だ、お前の全力を見せてみろよと言わんばかりのそれに焦凍は苛立ちながらも立ち上がりながらもそれを見る。何て暖かい光なんだろうか、自分の身体の傷まで癒すかのように暖かさを感じさせるそれらに思わず自分の左を見る。
―――いいのよ。お前は……なりたい自分に、なっていいのよ。
「母さん……」
―――血に囚われることなんてない。なりたい自分ヒーローに、なっていいんだよ。
瞬間、光の奔流に対抗するかのような熱いものがこみあげてくる、身体の内側からあらゆるものを燃やし尽くす熱が生まれてくる。忌避していた熱が今、噴火する。正に火山の噴火と見間違えるほどの炎が焦凍から巻き起こっていく、最早爆風と遜色ない熱風を巻き起こしながら焦凍は熱い瞳を燃やしながら出久と相対しながらその噴火の中心に立ちながら片側で絶対零度の氷山を生み出し続けていた。
「好き勝手な、事ばっかり言いやがって……!!!俺だって、俺だってヒーローになりてぇよ……なりたいヒーローに、光みてぇにカッコいいヒーローに……!!!!」
彼も憧れるヒーローは同じだった、平和の象徴オールマイト。彼に憧れてヒーローになりたいと思っていた、そして出久と同じオールマイトのような光になりたいと望んでいる一人でもあった。氷と炎を生み出し続けている凄まじい光景の源流となっている焦凍に出久は漸く笑みを浮かべながら更に全身に力を込めた。
「緑谷、わりぃが炎は加減出来ねぇ……どうなっても知らねぇぞ……!!これで終わりにしてやる―――!!」
「望むところだよ!!」
「焦凍ォオオオ!!!」
そして、それを喜ぶ者がいる、エンデヴァー。反抗期故に頑なに氷だけに固執していた自慢の息子が炎を使うようになった。その事に歓喜が止まらない。本質を理解せぬまま、感情のままに言葉を発した。
「やっと受け入れたか、そうだいいぞ!!これからだ、俺の血を持って俺を超えて行き……俺の野望をお前が果たせ!!」
だがその言葉は全く届いていなかった、それを唯一聞いていたのはマグナだけだった。それを聞いて彼はどんな思いを抱いたのだろうか、それは分からないが―――それらを置き去りにするかのように戦いが再開された。
氷河期を思わせるのような氷の大波乱が一気に起きていく、ステージを飲み込んでいくように莫大な氷が出久を飲み込まんと迫ってくる。だがそれらをスペシウム光線で迎撃するがその奥では焦凍が特大の火球を放たんとしていた。その光景に思わずギョッとしたのは他でもないマグナであった。
『ゼットンの火球みたいな威圧感だ……ええいしょうがない出久君、君も最強の一撃で迎え撃ちたまえ!!』
「言わずもがな!!!」
身体の光が収束するイメージをしながらも腕へとエネルギーを収束させていく、そしてその輝きが強くなった時、それを放った。
「イズティウム光線っ!!」
腕から放出されていく圧倒的な光線、それを初めてみたものは驚愕し目を丸くし腰を浮かしてしまう。だがそれ以上に地面を抉るような勢いで放たれるそれに驚愕した、それへと向けて放たれる焦凍の一切加減をしない全力の火炎球。ダンプカーすら飲み込んでしまいそうな大きさのそれが光線へと激突する、その瞬間に途轍もない光がスタジアム全体を包み込んでいく。火球が光線のエネルギーを受けてまるで太陽の様な輝きを放ったのだ、だがそれでも二人は力を緩めない。
「ッ―――ぁぁぁあぁ!!!!」
「デェェヤアアアアァァッッ!!!!」
そして一際光線が巨大となった時、火球は大爆発を起こし周囲へすさまじい爆風を巻き起こしながら天へと光が登って行く。何も見えなくなるような真っ白い闇の中、最後まで立ち続けていたのは―――
「すげぇな緑谷……お前」
「まだ、まだだよ僕なんて……」
勝者、緑谷 出久。