緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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イズティウム、職場体験。

「成程なぁ、俊典の奴も中々に頑張ってたって事か。お前さんもそれに応えようと努力して今があるって事か……」

「はい、オールマイトには感謝だけじゃなくて僕に頑張る目標みたいなものをくれたんです」

「なんだよ小僧、思った以上に師弟関係になってるじゃねぇか」

 

話を聞き終えるとグラントリノは満足気に鯛焼きを頬張りながらお茶を啜った。実際にはマグナが行っていた指導などもオールマイトへと流し込みつつもちょっと下手になっている感じにして指導下手な印象を持たれているオールマイトが行っていたとして違和感がないようにしたカバーストーリーはグラントリノとしても納得がいくものだったらしい。胸を撫で下ろしつつも同じくお茶を啜る。

 

「小僧、ワン・フォー・オールはどの辺りまで扱える?」

「15%位です、無理をすれば25%位までが上限です」

「上等上等。中3で受け継いで今がそれなら上等すぎるぐれぇだ」

 

フルカウルの最高出力、そして無理を言わせれば今の出久はそこまで至れている。改めて思うと僅か1年程度で此処まで仕上げられたと感心する程だろう、それもオールマイトの指導だけではなく元々ヒーローになりたいと身体を鍛えていた出久の努力があったからこそだろうとグラントリノは密かに出久への好感を強めていた。

 

「それと小僧、お前光線とか撃てるだろ。体育祭の中継見て驚いたぜ」

「はい、僕の個性は体内にあるエネルギーの放射とかが出来るしそれを使って身体を強化出来たりもするので」

「ある意味ワン・フォー・オールとの親和性が高かったって訳か……本当に面白い奴を見つけやがったな俊典」

 

嬉しそうな笑みを益々強めていくグラントリノ、それを見て出久は弟子が良くやっていると師匠も褒められるような物だと聞いていた事が本当なんだと思い直すのであった。

 

「グラントリノさんみたいな戦闘方法を学びたいと思ってるんです、僕は短時間ですけど飛行が出来ます。あと室内での戦闘はまだまだ経験不足で……」

「よしよし向上心が大きくて結構だ、それじゃあ早速パトロールに繰り出すとしようや。コスチューム着るの忘れんなよ?」

「はいっ!!」

 

久しく接する少年がお茶を飲み干すと早速コスチュームを着こもうとする姿を見つつも口角を持ち上げた、こいつはどんどん成長して大きくなっていく事間違いなしだと確信的な物が満ちてくる。

 

「着られました!!」

「おおっ思った以上にメカメカしいな、まあいいさよし行くか」

「はい!!」

 

コスチュームであるウルトラマンスーツを着込み終わる出久、それを確認するとグラントリノと共に外へと繰り出して早速パトロールを開始する。出久が赴いた地域は過疎化が進んでおり人通りにいる人の数は少ない、だが逆を言えばそんな場所で活動しているヒーローの数は多くないのでそこを狙って犯行に及ぶヴィランも多数存在している。それらへの牽制としてヒーローのパトロールというのは頼もしい物なのである。

 

「っつう訳だ、一応俺も職場体験らしい経験をさせて尤もらしい事を言っておかんとな」

「成程……やっぱりこの辺りでもヴィランの出現頻度は多いんですか?」

「流石に渋谷とか東京其処らに比べたら少ねぇけどな、それなりって感じだ。まあピンキリだ」

 

街中を行きながら適当な話をしていくグラントリノと出久、そんな二人は街中で酷く目立っている。グラントリノは最近活動を再開していたのでそれなりに町の人からすれば知名度はあるだろうが、そんな老人の隣を歩くメカメカしいコスチュームに身を包んだ出久は如何にも目立つ。そして出久は出久で体育祭で準優勝しているので様々なメディアに露出しているので直ぐに気付かれた。

 

「ねぇあれって雄英の緑谷君じゃない!?」

「ほっほんとだ!!ええっでもどうしてこんな所に!?」

「っていうかコスチュームすげぇなあれ!?」

 

「小僧やっぱりお前結構人気あるなぁ」

「い、いやぁそんな……ちょっと恥ずかしいですね」

「何言ってんだヒーローなんて目立ってなんぼのお仕事だ、慣れとけ慣れとけ」

 

それらに対して手を振るなどの対応をしつつもやっぱりこのコスチュームは目立つのかなぁと思う出久であった。自分で選んだとはいえ流石に見られてどうなるのかという事についてはあまり考えていなかった、これは少し何か考えた方が良いかもしれない。

 

『そう言えば発目さんがマント型の防御アイテムがあるから試して欲しいと言っていなかったかい、ウルトラ兄弟もマントは羽織っていたしマントは悪くないと思うよ』

「(マ、マントですか!?良いかも……でも発目さんの奴は何か不安だ……)」

『まあ気持ちは分かるよ』

 

それでもマントはアリだなぁと頭の中でマントを羽織っている姿を妄想する、グラントリノもそうだがヒーローと言えば風になびくマントというイメージも根強い。この場合のマントは全身を覆うようなタイプかもしれないがそれもそれでカッコいいなぁと思い知らされる。

 

「(でもそれだと戦うのに邪魔ないですか?)」

『ウルトラ兄弟のマントも所謂礼装だからね、戦う時には脱ぐさ。例えば使わない時にはブレスレットになるとかでもいいと思うよ』

「(―――た、例えば戦う時に走り込みながら脱ぎ捨てながらもマントは光となってブレスレットになるとか……!?)」

『「(何それカッコいい)」』

 

と何やら少年同士の心をぶつけ合ってマントの有無やどんな風にするのが一番いいのかと脳内で話し合っている出久とマグナ、マグナが簡易的な物を作ったりしようかなぁと言った方面に発展しそうな時に街中で大きな爆発音が響いてきた。それを聞いて二人は直ぐに切り替えて戦闘態勢を取った。

 

「ハッハァッ!!今日が全国に名を轟かせる大悪党、ウィス様の初陣だぁ!!」

 

そこでは見るからにパワー型だと言わんばかりの筋骨隆々たるヴィランがそこにいた。体格だけで言ったらオールマイトを凌駕する程に巨大なヴィランが車を易々とひっくり返しながら叫び回っている。それを見てグラントリノは丁度良いじゃねぇかと少々笑ってから出久を見た。

 

「さあ早速職場体験の本番と洒落込もうじゃねぇか、行くぜ小僧!!」

「はい!!ワン・フォー・オール・フルカウル!!」

 

飛び出していくグラントリノ、それに続くように疾駆する出久。欲望のまま、個性に対する過剰な自信のままに暴れ狂っているヴィラン。それに真正面から突っ込んで行く出久。

 

「何だ小僧、丁度良い俺のデビューを飾る華に成れぇ!!」

 

真正面から突っ込んでくる出久、それに対して全力で拳を放つヴィラン。だが出久は落ち着き払いながら迫りくる拳を当たる寸前で回転しながら回避、アスファルトを容易に砕く拳だが逆にそれが災いしたのか腕が深々と地面へと突き刺さってしまった。

 

「や、やべぇっ刺さって抜けねぇ!?」

「上出来だぜ小僧!!」

 

動きが止まった隙を突くようにグラントリノが一気に加速して首へと蹴り込む、如何に巨体であろうとも隙だらけ且つ人体の急所へと一撃を加えられたら流石に一溜りもない。小柄だがそこから想像出来ないスピードとパワーを兼ね備えた一撃は容易にヴィランの意識を刈り取ってしまいヴィランは大きく崩れ落ちていった。

 

「小僧やるじゃねぇか、だがお前さんならこいつを逆に投げ飛ばすぐれぇの事は出来たんじゃねえのか?」

「えっとその……僕はまだ免許ないですから危害を加えたらまずい事になると思って……」

「あぁん?……ああそうかお前さんにこれを渡すのを忘れとった!!」

 

解せないと言った表情をしたグラントリノは少し慌てたように懐からあるものを取り出してそれを出久へと手渡した。それは何かカードのような物でそこには許可:グラントリノと刻まれていた。

 

「そいつは言うなれば仮免の仮免みてぇなもんだ、そいつがあれば個性を使ってヴィランを殴って問題ねぇぞ」

「ほ、本当ですか!?」

「お前さんはこれから個性の扱いやらを叩きこんでやるんだからな、それがなきゃ話にならんだろう?まあ問題が起きたら俺が責任を取る事になるからそこだけ気を付けてくれや」

「はっはい分かりました!!」

 

その後、ヴィランを警察へと引き渡した後パトロールを再開するのだがそこで出久は個性を用いてヴィランを確保していきながらグラントリノの戦いを確りと観察していった。そしてあっという間に初日が終了したが、その日の地域ニュースで自分の事が取り上げられ、思わずびっくりしてひっくり返るとグラントリノに大笑いされるのであった。


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