「グラントリノこっちのゴミ拾い終わりました!」
「おう、んじゃ休憩入れっか」
「はい」
ヒーロー活動というのは単純なヴィラン退治というだけではない、人々が平和且つ気持ちよく過ごせるような活動も含まれておりそこには地道な事も含まれている。それは地域清掃などの美化活動も含まれている、オールマイトが言っていた本来ヒーロー活動は奉仕活動というのが身に染みる。唯グラントリノは腰を曲げたりするのがくるため、余り出来ていなかったが出久ことイズティウムには素直に助かっているらしい。
『君の大師匠なだけはあるね、立派な心構えだ。それに此処数日はかなり充実してるね』
マグナの言葉に内心で頷きながらも出久は手ごたえを感じられている事に嬉しさを感じていた。グラントリノとの手合わせを含めながらもパトロール中のヴィラン退治に救助活動など今までにない程に本格的且つ実戦に限りなく近い中で身体を動かせる事は相当にいい刺激になっているらしく、イズティウムはその最中にも成長を見せておりグラントリノに笑みを浮かべさせ、次はどんな事をやってやろうかと思わせ続けている。
「イズティウム今日も頑張ってね~!!」
「ゴミ掃除お疲れ様~!!」
「この前は有難うな!!」
「い、いえ此方こそ!」
たった数日だが彼にもファンが出来つつあった。グラントリノの指導の一環でパトロール中のゴミ拾いなどの行いが好印象を抱かせ、そしてヴィラン退治の普段の謙虚で穏やかな面から一転した勇ましさがギャップを生んでいるのか多くの人から慕われている。そして彼の活躍は地域ニュースからあっという間に全国ニュース、ネットでも記事が出来上がるようになっていった。
「まあ当然と言えば当然よ。そもそもお前さんは雄英体育祭で準優勝してんだぞ、そんな奴が職場体験で早速活躍してりゃ話題性としてもいいからな。それを
聞屋やマスコミ連中が見逃がす訳がありゃせん訳よ」
「で、でもまさかこんなにもなるのは予想外過ぎます……」
「思った以上に小心者だな小僧、体育祭での勇姿はどこ行った?」
スマホでもクラスメイト達から活躍を祝福したメッセージなどが届いており、それを見て思わず硬直そして緊張してしまっている。今までがあまり人に褒められるという事に慣れずに来た為の反動とも言えるだろう。これから慣れていかなければいかない重要な課題が見えてきたなと悪い笑みを浮かべているグラントリノに言われてしまい、少しだけ肩を落とすのであった。
「さてと、そろそろ次のステップでも踏むとするか」
「次ですか……?」
「おうよ」
現状イズティウムの活動は午前と午後の定期パトロール、ヴィラン退治の応援に事務仕事に関する勉強にグラントリノとの手合わせ。それらとなっているが同じ戦法を取るグラントリノだけでは妙な癖がつくので別のタイプの相手を求めて遠出をする事に決めた。
「渋谷辺りにでも繰り出すか」
「渋谷ですか!?あんなハイカラな街にコスチュームで……!?」
「何、ヒーロー同伴でないと着れん衣装なんだから最高の舞台で披露できるのを喜びんさい」
「はっはい!!」
これはやっぱりマントが益々欲しくなってきた出久、活動中などでスイッチが入ると全く気にならなくなるのだがニュースなどで自分の姿を見ると如何にも気になるというか少々気恥ずかしくなる。
『そんな出久君へのプレゼントを用意してみたよ』
「(えっ?)」
マグナの声と共に左手首辺りが輝きだすとそこには銀色に輝きながらカラータイマーのような宝石が埋め込まれたようなブレスレットが出現した。
「(マ、マグナさんこれって!!?)」
『簡素且つ急造品だが用意してみたよ、出久君も頑張ってるし偶にはお金以外のご褒美を渡した方が良いからね』
早速ブレスレットに触れてみると瞬時にそれは変化して出久を包み込むようなマントへと変化した、胸部装甲と連結するような作りになっているらしく羽織ろうとする意識もする事もなく身体を覆い尽くす。表地は鮮やかだが落ち着いている赤、裏地はシルバーで見た感じはサテンのような風合いをしておりウルトラ兄弟の羽織っているブラザーズマントが参考となっている。
「(あ、有難う御座います!!)」
『何、私の相棒にこの位の事をしても罰は当たらんさ。と言っても本職の品ではないから防御力はないからそこは勘弁して欲しい。あくまで礼装や身を覆う為のものだと思ってくれると有難い』
「(いやでもこれ十分過ぎますよ!!というかこれ凄い肌触りも良いし全然重さを感じませんよ!?)」
一応防具としての役目をさせる事も出来なくもないが、流石にそこまでの防御力はないのでいざという時にはあまり役に立たないかもしれないがそれでも喜んで貰えているので今のうちに喜んでおくことにしておこう。加えてかなり気に入ったのか出久はそれを羽織ったままグラントリノの元へと向かって行くのであった。
「おおっ洒落たマント持ってるじゃねえか、恥ずかしいだなんだと言いながらもヒーローコスチューム着て歩けることに興奮してるのか」
「えっとそんな所です!!」
「結構結構、似合ってるぜそのマント。ヒーローにマントはお約束みてぇもんだからな、俺のとは違うが中々良いじゃねえか」
グラントリノにマントを褒められた事が嬉しいのか、かなり大きな笑みをする。だがそれは単純にマントが似合っているというだけではなく作ってくれたマグナに対しても良い評価が出た事に対する喜びでもあった。出発するまでの間にマントを羽織ってポージングをしてみたり、マントをブレスレットに戻してみたりして確認などをし続ける相棒に心なしか恥ずかしくなってきたマグナであった。
―――だがその途中で出久は知る事になった。
『お客様、座席にお掴まり下さい。緊急停車しま-』
新幹線にて東京へと向かっている途中の事だった。車内アナウンスとほぼ同時の急ブレーキ。車内は騒めく中で唐突にそれは破られてしまった、そしてプロヒーローが壁を突き破って車内に飛び込んできた。全身血塗れの重傷の状態でありながらもそれに対して更なる追撃を加えんとする異形の存在、それはマグナから聞かされ、記憶を共有する形で目の当たりにしたUSJにて乗り込んできたヴィラン連合が連れていた巨漢のヴィラン、脳無と酷く似ている存在だった。
「小僧付いてこい奴を遠ざける!!」
「はいっ!!」
迷う事もなく列車からそれを遠ざける為に飛び出した二人は脳無の頭部と腹部へと同時に蹴り込んでいき、共に列車から飛び出していく。地面へと脳無をめり込ませるようにしながら着地するが、脳無は即座に身体を引き起こして襲いかかってくる。
「グラントリノ僕が!!」
「任せる!!」
「シェアッ!!」
向かってきた脳無へとスペシウム光線が発射される、脳無はそれを諸に受けると大きく吹き飛ばされ空中へと舞い上がった。そしてそこを隙を与えんと言わんばかりの超スピードからの浴びせ蹴りをグラントリノが食らわせると脳無は動かなくなってしまった。今の連撃でダメージの限界を超えて動けなくなったのだろう。
「ふぅっ……ナイスだイズティウム、噂の光線も中々の威力だったな」
「有難う御座います、でもこれ……USJでヴィランが連れてきたのと酷く似てます。確か脳無って名前だった気が……」
「ああ、話には聞いとる。だが随分と小さいな、まさか量産型って奴か」
「「ッ!!」」
余り考えたくもない言葉を言ってしまった直後だった、二人に対して銀色の閃光が迫ってきた。寸んでの所で回避する、後ろに引きつつも自分達を襲ってきた犯人へと目を向けると―――思わずマグナが大きな反応をしてしまった。
『まさか、次はこいつか!?』
そこにいたのは酷く人型に近いスリム且つスタイリッシュな体系をしている、が明らかに異常な両腕をしているヴィランだった。両腕はまるで日本刀のような鋭さを感じさせる巨大な刃になっていた。その刃の一撃は道路をまるで果物のようにあっさりと切り裂き深々と斬り痕を残している。それは奇襲に失敗したと判断したのか身を翻して一気に撤退していった。
「追うぞ、絶対に逃がすな!!」
「はい!!」
『出久君無理はするな、いざとなったら迷うことなく私に代わるんだ!!』
「(もしかして、あれも怪獣なんですか!?)」
『いやあれはれっきとした宇宙人だ、あれは―――奇怪宇宙人 ツルク星人!!』
―――宇宙には友好的な宇宙人だけが存在する訳ではない事を、その身でもって。