緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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ヒーロー殺し、ツルク星人。

「くそったれ!!どこに行きやがった!!?」

「何処に、行ったんだ!?」

 

身を翻し撤退してしまったツルク星人、それを追いかけるグラントリノとイズティウムだが相手は直ぐに姿を消してしまった。それを必死に捜索するが脳無の出現とそれらが暴れ回っている事による人混みによって捜索は上手くいかない、それもその筈と言わざるを得ない。ツルク星人は宇宙に闇に紛れてはターゲットを発見すると徐々に獲物を追い詰め、鋭い刃で相手を仕留める宇宙の通り魔と言うべき凶悪宇宙人。

 

『―――いざとなれば私が問答無用で出るしかないだろう』

 

その判断は出久の実力を考慮しているだけではなく、この世界のヒーローという役職の性質も含まれている。ヒーローは相手を殺す事は容認されておらずあくまで確保などが求められる、だがツルク星人にそんな物は通用しない。確保出来たとしても今の地球のテクノロジーではあれを確保し続けるのは無理だし服役されたとしても体力の回復の後に周囲を破壊して脱出されるのが目に見えている。

 

「目的も見えない奴を追うのは難しい、だが奴は確実にやばい、放置出来んぞ!!」

「でも、脳無が要るこの状況で探し出せるんんんでしょうかぁSMASH!!!」

「んなもん俺が知りたいわぁ!!」

 

先程仕留めた筈だが回復したのか、凄まじい迫ってくる脳無へと同時に蹴りを浴びせながら退けながらも会話をし続ける。何の手掛りも無い所か目的すら分からない、何かを割り出さないと追いようもない。

 

「(マグナさん何か解りませんか!?)」

『詳しい事は分からんが、奴が表通りに出る事は殆ど無い。いるとしたらまず路地裏だ、そこから獲物を探している筈だ』

「(路地裏、それなら逃げた方向とスピード、後脳無の対処のために集まってるヒーローを合算すれば何とか絞り込めるかも!!)」

 

思考を止めず、何とかツルク星人の行方を割り出そうとする出久。必死に考える、戦いながら考える、必死に考えながら拳を振るい脳無を吹き飛ばす。直後に携帯が鳴り響いていた。そこには―――飯田からの救援要請が自分の携帯に入っていた、事前に飯田が登録していたと思われる短いメッセージと位置情報がそこにあった。しかもその位置は此処から近い上にツルク星人が逃げたと思われる方角とも一致する。

 

「(これって!!)グラントリノ、僕友達の救援に行きます!!」

「何だとお前こんな時に!?」

「さっきの奴が逃げたと思う方角とも一致してるんです!!」

「―――ッ分かった直ぐに行け!!責任は取ってやるから暴れてこい、俺も直ぐに行く!」

「はい!!シュエァ!!」

 

脳無の対処などをしているグラントリノは素早く判断を下す、此処は自分を抑えつつも先に行かせた方が良いと思う。既にイズティウムの実力ならば倒せなくても時間を稼ぐ事ならば十二分出来る筈、なによりあのままあれを放置すれば尋常ではない被害が出ると即座に理解したのだろう。それを聞いて全力で地面を蹴りながら飛行を開始する。

 

「飯田君、きっと相当急いでたんだ。だから一斉送信で自分の居場所を……!!」

『彼らしくはないが今回は正解だろう、奴が相手ならば並のヒーローでは返り討ちにあうだけだ!!』

「はいッ急ぎます!!」

 

普段の倍以上の速度で空を疾駆する、空から見れば余計にハッキリ映る今の保須市が如何に地獄なのか。至る所から火の手が上がり悲鳴が木霊するように響いている、脳無の数はそこまでではない筈だがそれでも一体一体の実力はプロヒーローを簡単に凌駕する程なのだろう。それらが複数体いるだけで尋常ではない被害が出てしまう、自分もツルク星人を何とかしてグラントリノと合流した方が良い。

 

「っ此処だ!!」

 

飯田が示した位置情報、その地点へと到達すると眼下にて激しい音が聞こえてくる。それは金属と金属のぶつかり合い、鍔迫り合いのような響きがしている。だが飯田はそのような武器は持っていない筈、ならば飯田と他に誰かがいるのか―――と一気に降下するとそこにある物が飛び込んできた。

 

「痴れ者が……俺を騙り、ただ私欲の為に殺戮を行う悪が……!俺が最も憎む悪がぁ!!」

「―――ッ!!」

 

そこにあったのは包帯状のマスクを身に着け、赤のマフラーとバンダナを纏いながらも刃毀れした日本刀を凄まじい速度で振りツルク星人と激突している男がいた。その男の背後に飯田がいた、だが―――

 

「飯田君!!」

「っみ、緑谷君か!?」

 

思わず顔を上げながら驚いた飯田、彼は腕を強く抑えながら痛みに耐えていた。それだけではなく足にも傷を負っているのか出血をしている。スーツが致命傷を防いでくれたようだがそれでも傷はそれなりに深く出血も多い、そしてもう一人プロヒーローのネイティブが重傷を負っていた。だがそれ以上に―――ツルク星人と戦っている男はまるで飯田を守っているかのように剣を振るい続けていた。味方なのか、と援護するように光弾を発射するとツルク星人は瞬時に後方へと飛んで回避した。

 

「っ―――お前は……」

 

背後に舞い降りながら構えを取った出久を見て男はまるで何か知っているかのような顔をした、だが直に鋭い瞳を作るとツルク星人へと向き直った。

 

「飯田君無事!?ゴメン来るの遅くなった!!」

「いや俺は大丈夫だが、何故君が此処に!?」

「君の救援要請に応えに来たんだよ!!やっぱりあれ飯田君の珍しいミスだったんだね!!」

「まさか、君にまで送ってしまっていたとはすまない、危険な場へ……!!」

「今はいいよ動ける!?」

「何とか……だがネイティブさんを担いでは無理だ……!!」

 

確かに飯田は腕と足を怪我している、これでは担ぐ所か引きずるのも無理だろう。寧ろツルク星人相手に此処までの怪我で済んだのは幸運、ネイティブとやらもまだ生きているし助けられる。

 

「助け、られたんだ……本当の、ヒーロー殺しに……!!」

「ヒーロー殺しって……あのヒーロー連続襲撃犯!?」

 

目の前に立っている男の正体も思わず驚愕した、各地でプロヒーローを襲撃してきた凶悪犯。通称 ヒーロー殺し。これまでに17人を殺害・23人を再起不能に追い込んでおりインゲニウムを襲ったのもヒーロー殺しではないかと言われている。だがある時を境に現場には【KILL HERO】と刻まれた金属板を残すようになったというが……

 

「奴は俺を騙り、殺しを繰り返した」

「じゃあインゲニウムを、飯田君のお兄さんを襲ったのは……」

「そうだ、あのヴィランだ……!!」

『奴らしい手口だ……!!』

 

奇怪宇宙人 ツルク星人。嘗てウルトラマンレオが活躍した地球に出現し、その時にも多くの人々を手に掛けた。そしてその時にはレオを象った宇宙金属製のレリーフを現場に捨てて立ち去っており、レオを殺人犯に仕立て上げようとしていた。今回はヒーロー殺しへと転嫁する事でカモフラージュを行っていたのだろう。

 

「飯田ッそれだけじゃねえなどういう状況だこりゃ……!?」

「轟君!?」

「一先ず―――伏せろ!!」

 

直後、その場に焦凍が到着した。出久がこの場に来たように彼も偶然この保須市に来ていたのだろう、そして飯田の援護の為に足を運んでくれたのだろう。そして援護する為に素早く氷結を繰り出して飯田とネイティブを自分側に滑らせるように上手く調節しながら高台を作る傍ら、出久とステインの頭の上を走り炎を飛ばした。炎は真っ直ぐへとツルク星人へと向かって行くが―――回避しようとしたその動きは突如として停止し、まともに炎を浴びた。

 

「―――ッッッ!!?ッッッッッ!!!!!!」

 

炎に包まれ悶え苦しんだツルク星人はまるで強引に身体を縛った鎖を引き千切るかのようにしながら跳躍して逃亡していく、それを見たステインは舌打ちをしながらも飯田を一瞥した。

 

「……お前は生きろ、そしてインゲニウムにも伝えろ。貴様はもっと堂々としていろとな」

「―――何を」

「さらばだ」

 

そう言い残して、ステインは壁面を何度も蹴ってツルク星人を追跡するように消えていった。嵐のように去っていたそれらに思わず言葉を失っていると飯田に出久が駆け寄っていく。

 

「飯田君本当に大丈夫!?」

「あ、ああっ……だが済まない……俺がもっと確りしていれば二人を危険な場所に呼ばずに済んだのに……!!」

「ヒーローになるんだ、危険に首突っ込むのは当然だろ。肩貸すぞ、緑谷悪いけどこっちの人頼めるか」

「あっうん!!」

 

出久も焦凍も飯田の珍しい失敗に何も思ってはいない、寧ろ友達を助けられてよかったと心からホッとしていた。取り敢えず路地裏から出ようと歩く中、出久へとマグナが言う。

 

『取り敢えず彼を安全な場所へと送った後に追跡を再開しよう、ツルク星人は既にステインとやらにかなり追い詰められていたらしい。最後の炎にも唐突に動きが死んだがあれは如何したのだろうか……』

「(分かりません、でも相当なダメージは負ったって事ですよね)」

『恐らくな、だが油断は禁物だ。奴はまだまだ動けるはずだ』

 

そう言って路地裏から出た直後に三人は言葉を思わず失ってしまった。いきなり視界の中にあった巨大なビルが刃物で切られたかのように二つに裂けるようにしながら倒壊していった―――その先に巨大な影があった事に。

 

「なっ……んだありゃ……!?」

「か、怪物……!?」

「USJの、あいつよりももっと、大きい!?」

 

巨大な蜥蜴のような頭部を持ちながら全身は薄暗い緑色の体表で覆われているそれは先程のツルク星人と同じような巨大な刃を両腕に携えていた。それは振られる度に空気を切り裂きながらビルを容易く切り裂く程の切れ味を誇っていた。醜悪且つ邪悪、そして凶悪な本性を全身から溢れ出させながら咆哮を上げたその姿は正に奇怪。

 

『ツルク星人、巨大化したのか……!!』

「あれが、さっきの奴……!?」

 

To Be Continued……




USJ登場エレキング:約30m。  巨大化ツルク星人:52m。

このでかさのツルク星人にワン・フォー・オール100%のイズティウム光線打ち込んでも、ウルトラ戦士の牽制の光弾を受けた程度しか効果ないです。

あれはエレキングが小さかったからよく利いただけです。

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