「保須じゃあ悪かったな小僧、お前一人を行かせる事になっちまった。戸惑っちまってな」
「い、いえあの状況ならしょうがないですって!!」
「まあ混沌としとったからなぁ……」
チラリと目をズラしてTVを見ればそこには保須で起きた大事件、そしてそこに突如として現れた謎の巨人に関するニュースが引っ切り無しに報道され続けている。№2ヒーロー・エンデヴァーの一撃すら物ともしない超巨大ヴィラン、それを倒す為だけに現れた巨人。圧倒的な力でヴィランを倒すと空の彼方へと消え去って行った正体不明の存在。現在のヒーロー資格制度の観点から見ると正体も個性も不明である上にあそこまでの力を持っている物を野放しにする事は危険でしかない、それ所かツルク星人とのマッチポンプすら疑う声すら上がっていた―――がそれに真っ向から反論したのが現場にて巨人を見たヒーローや民衆。
『マッチポンプとかふざけた事言うんじゃないわよ!!あの巨人が居なかったら今どうなっていたか分からないの!?私は命を救われたしエンデヴァーさんの炎すら受け付けないあいつを如何やって倒したって言うのよ!!?ヒーローの資格が何ヴィジランテが何よ!!?私達がするべきなのは感謝でしょうが!!それを最初から疑ってかかって恥ずかしくないの、素直に有難うすら言えないの!!?』
『俺も同意見だ、恥ずかしい話だがMt.レディに隙を作り後を任せろと偉そうな事を言った癖に俺は何も出来なかった……フンッそんな俺ですら理解出来た事が貴様らには出来んのか。愚かだな、あれは言うなればオールマイトの同類のような存在だ』
その中心となっていたのが実際に助けられたMt.レディ、ツルク星人に自分の力が通じず無力さを痛感したエンデヴァーだった。あのプライドが高いエンデヴァーが素直に自らの力の無さを認めながら巨人の善性をオールマイトに近いと断言する、それが世間を驚かせながらも保須にて現れた事から通称保須の巨人と呼称された巨人を好意的に受け入れていく要因にもなったという。その一方であのようなヴィランに対する備えが必要なのでは、という話が持ち上がっており様々な意味で世論は盛り上がりを見せていた。
「グラントリノはその、あの巨人についてはどう思います?」
「何とも言えんというのが素直な感想だな、謎が多すぎる―――があいつはきっと俺達の側の存在ってこたぁ確かだぜ」
グラントリノは空からその戦いを見つめながら巨人が周囲に配慮しながらも後ろにいたMt.レディを守り続けている事を理解していた、そして礼を言われた際に嬉しそうに頷いた事も。それらと自分の勘を総合するとあれは絶対に自分達の味方だと確信を持ちながら何処か不敵な笑みを浮かべた。それに対してその正体とも言うべき出久は思わずほっと胸を撫で下ろしてしまった。
『私は意外な展開だね、非難されたり今度は攻撃するべきだとか言われる事も覚悟していたんだけどね』
「(ウルトラマンでもそういう事ってあるんですか!?だってマグナさんは保須を守ったのに……)」
『君からすれば私はよく知った存在だし私の人格も知っているだろうが、他の人たちからすれば私の本当の姿が余りにも巨大だし謎だらけ。そんな存在に歩み寄る事は本当に勇気がいるし大変な事なんだよ、寧ろそれに対して警戒する事は正しい事だ。メビウスのデビュー戦なんかバカヤロー呼ばわりされたらしいからね、まああれは彼が未熟だったせいだけど』
「(ウ、ウルトラマンにバカヤローですか……メビウスさんに原因があるとはいえよく言えましたね……言った人……)」
『ある意味で伝説だよね』
ウルトラマンとて最初から全てに受け入れられるわけではない、様々な考えをする人からすれば強い力を持った存在はそれだけで恐怖や警戒すべき対象と成り得る。何時までも味方で居てくれるわけではないと考える人もいる、だがそう思うのは正しいし逆に自分の星の力を高めて今度は自分達だけで対処出来るようにもなる事は良い事だとマグナは語る一方でその思いが真逆に向かう事がある事を知っている。
『大切なのはバランスですよ、何事も陰と陽、表と裏が必要なんですよ。光があるからこそ闇もある。闇があればこそ……また光もある、私の好きな言葉だ』
「光があるからこそ闇がある……その逆も……」
「何だ小僧、中々分かったような事言うじゃねぇか」
「えっあっその!?」
如何やら思わず口に出てしまっていたらしい、咄嗟に以前オールマイトより前に自分を見てくれて人が呟いていた言葉として誤魔化すのであった。
「まあいい、あの一件で色々と時間やらを取られちまった。残りは保須周辺で活動をするぞ、それはそれで復興の手伝いにもなるしな」
「分かりました!」
グラントリノの後へと続いていく出久、その中で出久への応援をしながらもマグナは静かに拳を握る。保須での一件で初めて行った本格的な一体化による巨大化、いやマグナからすれば元の姿に戻っての戦闘は彼が思っていた以上だった。悪い意味ではないのだがそれでもこれはある意味考えさせられる内容でもあったらしく思考を巡らせている。
『今まで意識もしていなかった、だがそうと考えるべきなのだろうなこれは……』
ツルク星人との戦闘、その刃を警戒してエネルギーを纏う事で身体を強化していたがその時に気付いた。自分の力が増している事に漸く気付けた、以前出久の身体を使って戦った時には感じられなかった大きな力のうねりが存在している事に。
『私と出久君は一心同体、つまり共にあり同じ存在……』
そのうねりの正体は継承され、次へと託され続けてきた平和への純粋な願いの結晶、紡がれてきた希望の光。その光はまるで―――ウルトラマンの力に極めて酷似している、元々そうであったのではなく授かった者達がそう願い続け、そうあれかしと走り続けてきた末にそうなった。その力の中に自分の力を感じ、それを自分も行使出来るようになっている事にマグナは気付き理解する。
『成程……これは思っていた以上に凄い事だ。何者にも負けず、決して折れない力……強く崇高な物だ』
―――、―――。
振り向けばそこには光が形作った人影があった、それは明確な意志を持ち投げかけられた言葉に返答を返した。それは微笑んでいた、そして同時に酷く喜び自分を歓迎していた。そんな存在に会ってみたかったと。そしてそれは告げた、そしてそれは既に考えていた事を貫いた。そして彼自身も笑みを浮かべた。
『これも何かの因果、という奴かもしれないな……』
「(マグナさん戦闘に入ります!)」
とそこで思考は中断される、出久はグラントリノと共にヴィランと遭遇して戦闘に入ったらしい。グラントリノが望んでいたかのような彼自身とは全く別のタイプの高速移動タイプの個性を用いるヴィラン、それをフルカウルで対応する出久を見つめながら僅かに言葉を漏らす。
『おおっさてどうやって君は捉えるかな?というか凄いな、分身してるし……なんかスラン星人みたい』
「くっどれが本物なんだ!?」
『逆に考えるんだ、本物を探すんじゃなくて幻を全て消せばいいさっと』
「あっ成程!!」
この後、出久は徐々に速度を上げていきヴィランの速度に追いつきながらも速度を利用して生み出される幻影を全て消し去っていき本物をあぶりだすとそこへスワロースマッシュを浴びせ掛けて見事確保するのであった。
『マックスを思い出させるヴィランだったね、それにしても本当にやるなんて……ワン・フォー・オールの出力上限上がってるんじゃないかい?』
「(僕も少しは成長できてるって事ですね!!)」