授業が終わり放課後となった時だった、出久はオールマイトからの呼び出しを受けて談話室へとやって来た。何やら話しておきたい事がある上にかなり重要な事になると言っていた、なのでどんな話になるのかと思いながら扉を開けるとそこにはいつものとは違う雰囲気を纏っているオールマイトは既に腰を降ろして自分達を待ち侘び、静かに掛けたまえと促してきた。普段のそれと違う故に出久は戸惑いを覚えながらも前に腰掛けるとマグナがその隣に出現する。
「今回此処に呼んだのは他でもない、今まではなそうとしてきたのだがなかなか言い出せなかった事があったんだ。だが今日こそはそれを話そうと思う」
「それって一体……」
『恐らくだがワン・フォー・オールについて、だろうね』
「っ……!!」
その言葉に解り易い程にオールマイトは驚きながらマグナへと視線を向けたのだった、矢張りそうでしたかと言いながらもう少し腹芸を覚えた方がいいですね軽く茶化す。それに僅かに苦笑いを浮かべながら申し訳ないと謝りながらも何やら気持ちが楽になったのか、回りやすくなった舌を動かしながら本題へと入っていく。
「ワン・フォー・オール、その成り立ちに関わる事さ。マグナさんも薄々察しているかもしれませんがワン・フォー・オールはある個性から派生して誕生した物です……その名はオール・フォー・ワン、他者から個性を奪い我が物とし更に他者へと与える事すら出来る個性」
「皆は一人の為に……あっワン・フォー・オールって……」
『One for all, all for one. ラテン語の成句、Unus pro omnibus, omnes pro uno の英訳、チームワークの精神を表す言葉ですね。初めてその個性の名前を聞いた時、思いました。そしてワン・フォー・オールの性質を考えるならば、それもおのずと名が体を表す』
それは超常黎明期、社会がまだ変化に対応しきれていない頃の話。突然生まれ出た個性という存在によって従来の人間という規格が崩れ去ってしまった、生まれたのは新たな差別と恐怖、それだけの事で法は意味を失い、文明が歩みを止めた。『超常が起きなければ、今頃人類は恒星間旅行を楽しんでいただろう』と指摘する学者もいる。そんな戦慄と恐怖が同居していた時代の中で―――いち早く人々を纏め上げた人物がいた……それこそが個性、オール・フォー・ワンの
「彼は人々から個性を奪いながらも圧倒的な力によってその勢力を拡げていった。計画的に人を動かし、思うままに悪行を積んでいった彼は、瞬く間に悪の支配者として、日本に君臨した」
『今のような時代ではなく、まだ個性に対する理解も十分でなかった時代であればそうでしょう。個性によって人生が狂った、個性によって人生が狂わされた、そんな人々の心の隙間に入り込み個性を奪ったり与えたりすれば自らの配下として手中に収める事になる』
突如個性が発現した、個性によって暴力を振るわれた。それによって生まれる怨恨を解決する手段として個性を奪い無個性へ、与える事で対抗出来る個性を。人間の心を良く理解した上手いやり方だとマグナは思う傍らで自分が居た宇宙での出来事と思わず重ねてしまう。
「そんな、事が……でも、これがワン・フォー・オールの誕生とどんな関係が……」
『与える個性でもある、恐らくそこだろう……脳無と呼ばれたあのヴィランもきっとそんな風に誕生したのだろう』
「恐らく。そして彼には体も小さく病弱ですが正義感の強い無個性の弟が居たそうです、兄の所業に心を痛めながら抗い続ける男だった」
だがそんな弟へ兄はある行いを行った。曲がりなりにも弟に対する愛情があったのか、それとも自らの弟への情けか、弱い存在では示しがつかないのかは謎だが力をストックするという個性を強引に与えたという―――だが弟は無個性などではなかった、個性を与えるだけという個性だけが、それだけでは意味のない個性が宿っていた。そしてそこに力をストックする個性が混ざり合い、一つへとなった。それが―――ワン・フォー・オールの
「全く以て皮肉な話です、正義は悪より生まれ出ずる……それが私達の正義とは」
「で、でも何で今その話を……まさかそのオール・フォー・ワンって悪人は今も生きているって事なんですか……!?」
「……ああ、恐らくだがほぼ確実に」
ワン・フォー・オールはその弟から次の世代へと受け継がれ続けてきた、今は敵わずとも何時か必ずその時は来ると信じながら。少しずつ、力を培い必ず平和を齎して見せると……平和という願いを、永久の思い、高潔にして崇高な精神が形を成した個性、それこそがワン・フォー・オール。そして八代目であるオールマイトが遂にオール・フォー・ワンを討ち滅ぼした……筈だったのだが、生き延びヴィラン連合のブレーンとして動き出している。
『成程……つまりこれから私達はそのオール・フォー・ワンとやらも相手にしなければならないという訳ですね』
「はい、私はこの事を緑谷少年に伝えなければいけないのですが……」
「僕は―――僕は戦います!!たとえ相手がどんな相手だって構いません!!だって、僕はマグナさんみたいなヒーローになりたいんだから!!」
『大丈夫ですよ』
そんな風に力強い言葉を漏らす出久とマグナをオールマイトは思わず顔を上げて見つめてしまった、そこには立ち上がりながらも窓の外へと視線を向けている光の戦士、自分を真っ直ぐと見つめてくる出久がいた。その瞳に一切の迷いなどはなく力強さと純粋な平和への願いがあった、その瞳の中にある物こそが自分が次代の継承者として選んだ理由なんだと改めて思い知らされる、そして深い感謝と共に頭を下げる中、マグナが話の流れを握った。
『私としては出久君が立派なヒーローになるまで共にあるつもりです、それに―――私としてもまだ戦う理由があります』
「例の怪獣について、ですか……?」
『ええ。そのオール・フォー・ワンに協力しているのかそれとも……別の存在が居るのか』
メダルの事も考えると間違いなく
『それに私だって恐らくですがワン・フォー・オールを継承しているとも言えるかもしれませんからね、だって出久君と私は一心同体ですから』
「そうですよオールマイト、マグナさんだって一緒に戦ってくれます!だから―――一緒に戦いましょうよ、平和を守るために!!」
「―――平和を守る、そうだね。私は何を弱気な事を思っているんだろうか……」
何かを振り切るように、不安が断ち切れたかのようにオールマイトは立ち上がりながら大きな声で笑いだした。そしてヒーロー活動をする際の姿、所謂マッスルフォームへと変身しながら改めてお願いした。
「マグナさん、ご迷惑をおかけするかもしれませんがこれからも宜しくお願いします!!」
『当然ですっというか嫌だと言ってもこれからもヒーリングパルスは受け続けて貰いますから覚悟してくださいね。あんな怪我をしているのに関わるなと言われて止める程、光の国の人間は聞き分けが良くないですので』
「HAHAHAこれは参った!!」
「アハハハッマグナさんってば」
暗かった空気は打ち払われ、明るさと元気を取り戻した一同は遅くなる前に別れる事になった。オールマイトは諦めようとしていた未来へと改めて可能性と希望を見出し、共に歩む覚悟をしながら。出久はこれから訪れるかもしれない苦難と絶望にも負けない事と戦う事を誓う、そしてマグナは彼らを守りながらもこの星の平和の為に戦う事を―――。
『如何でしたか』
―――有難う、感謝の言葉しか出ないよ。存外元気そうで安心した。
『望むのであれば力を貸します』
―――いや、それは遠慮するよ申し訳ないし……顔が見れて良かったよ、俊典。
姿を消していく光を見送りながらマグナは拳を握り込んだ。
『大丈夫ですよ、ウルトラマンというのはそういう存在ですからね』
先日は投稿出来ずすいません、ちょっとこの先で出す怪獣を選定していたら寝落ちしまして。
いやぁ改めてウルトラシリーズの怪獣って多いですよねぇ!!どれもこれも出してたくてしょうがねぇけど同時にヒーロー側の対処も考えると大変ですわ。でも楽しい、そこが良い!
ちなみに私が一番出したい怪獣は宇宙戦闘獣 コッヴ、あれが一番好きな怪獣なんですよ私……あっそうかカプセル怪獣っという手もあるのか……。
それとアンケートは締め切らせて頂きます、ご投票ありがとうございました!結果、ウルトラシリーズの客演的な感じで他のウルトラ戦士に出て頂く事になります。どのウルトラマンが出るかはまだ未定ですが、お楽しみに!!
他のウルトラ戦士を登場させるべきか
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させるべき
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必要ない