緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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憧れとの邂逅

「スペシウゥゥムゥゥゥッ光線ッッッッ!!!!」

 

気迫の籠った裂帛の叫びが海岸に響き渡っていく中でクロスされた両腕、そして―――初めて聞いたそれよりも遥かに弱い音だが確かな音を立てながら出久の腕から放たれた光は明確な力となり光線となって標的に定めていたドラム缶へと向かって行った。酷く弱弱しいものだったのでまだ表面を温める程度の物でしかなかった、その程度で破壊どころか損傷すら与えてない―――だが

 

「マ、マグナさん今のは……!!!」

『ああ、紛れもないスペシウム光線だね。遂にやったね、おめでとう&ようこそ、此処からが君の本当のスタートとも言えるかもしれないね』

「いやっっっっっったぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

遂に漸く発射する事が出来た光線技のオリジン、スペシウム光線。元々個性がなく感覚的に体内にあるエネルギーを体外へと放射するという感覚を理解出来ない出久にとってそれを放出するという事は酷く難解な物であった。溜めるという感覚は手や腕に力を込めるという感覚をイメージして修得したが、放出は中々上手くいかなかった。だが苦節2年、出久が中学3年となってから漸く光線の発射に成功した。

 

「はぁぁぁっっっっ……凄い、この達成感って凄いですよマグナさん!!苦難の壁にぶつかってはやり方変えたりの連続が遂に報われたって分かった時のこの高揚感と開放感って此処まで凄まじい物なんですね!!」

『フフフッそうだね、それこそが修練や練習の醍醐味と言う物さ。いざこうして成長を実感すると中々癖になる物だよ、私も今日まで指導した甲斐があったと言う物さ、これからは光線の修練にももっと時間を割いていかないとね』

 

そんな風に爽やかな笑いを浮かべているマグナは改めて出久のスペシウム光線の成功を祝った。

 

『では出久君、スペシウム光線を出せるようになったご褒美に今日はお休みにして好きなヒーローグッズや雑誌を買いに行こう。お金はこの位で良いかな?』

 

そう言うと出久の手の中に5万円ほどが出現する。それに慣れているはずだがそれでも高額な金額に戸惑い、驚いてしまう。

 

「十分過ぎますよっというか相変わらず多くないですか!?マグナさんも2年位地球にいるんですから金銭感覚覚えましょうよ!?」

『なら余った分でお母様に対して日頃のお世話になっているお礼でもしたらいいさ、あれほど君を応援してくれているお母様に対する感謝は必要だろう』

「そ、そんな事言われたら使わない訳には行かないじゃないですかぁ……」

『ハッハッハッ気前よく使ってくれて構わないよ。これは君のお金でもあるんだからね』

 

マグナは笑い飛ばしているが実際に彼の財力はまだまだある、何故かと言われればこの地球に来る前に任務で出向いた星などで見つけた石などをブレスレットにして持って来ているのである。これらを活動資金とする為に出久に換金を依頼した際には腰を抜かされたほどだったのだが……

 

『宇宙で最も価値があるのはエネルギーを帯びた鉱石類だ。ダイヤモンドやルビー、サファイアなど言った唯の綺麗な石程度ならば星によっては砂浜の砂位にはゴロゴロしている星は結構あるのさ。私からしたらこんな石は綺麗であるだけで価値はないね、寧ろ集めてたら白い目で見られかねない。実際親友に心配されたよ』

 

と言われてしまい、これが星によって違う価値観の違いなのかと……と思い知った出久であった。その宝石類を売却する際にも色々一悶着あったのだが……その辺りはマグナがウルトラ的な手法で何とかしてしまったので凄まじい資金を得たも同然となった出久は頭を抱えつつも取り敢えず母へのプレゼントを考えるのであった。

 

「そ、それじゃあ遠慮なく使わせて頂きますよ?」

『ああ気前よくな。何だったらこの後レストランにでも行って一番高いメニューでも総なめにするかい?』

「それはそれで恥ずかしいです」

 

出久とマグナが出会って既に2年という時が経過していた。出久は3年生となり受験を迎える事になるのだが、普段から勉強を欠かさない彼は模試では十二分に雄英に合格出来るという結果であった。それは爆豪も同じであるが、あの日の一件以来、爆豪は余り絡まなくなったどころか暴言すら言わなくなり逆に自分に負けないようにしているような感じになっていた。今まで感じた事も無い変化に出久は驚きつつも彼自身もマグナ指導の下で力を磨いていた。

 

彼も彼で定期的なレポートを欠かさずに報告しているのだが引き続き地球に滞在しながら調査を依頼されている。当然、出久と同化している事は報告しており許可も出ている。と言うのも地球人とウルトラマンの寿命は余りにも違い過ぎるので時間的にもあまり問題にならないし過去にも多くの戦士たちが一心同体となるケースが多いので慣れているのである。

 

「まさかオールマイトのプレミアポスターがあるだなんて……!!あぁっ今日はなんて凄い日なんだ!!」

『ご満悦な事は喜ばしい事だと思うけど、4万円もするポスターを即断即決で良く買えたね。気持ちは理解出来るけど』

「フンフンフ~ン♪」

『まあ嬉しそうだし満足そうだし良いか、今日ぐらいは』

 

マグナ自身が前世ではウルトラシリーズどころか特撮マニアな所があるので出久の趣味にも理解が深く、行動や言動にも共感出来る為か二人の相性も酷く良い。その為かこの2年で二人は相棒同士という認識が強まっており酷く仲良しになっていた。兎も角嬉しそうな相棒にマグナも笑みを作りながら帰宅の路へと就きながらも母へのプレゼントを考えている時の事―――

 

「Mサイズの隠れ蓑ォ……!!」

『―――っ出久君済まないが身体を借りるぞ!!』

「えっうわぁっ!!?」

 

ほぼ強制的に身体の主導権を奪い去ると前へと飛び退きながら先程まで居た場所へと振り向く。駅の高架下のマンホールから何かが飛び出してきた、それは緑色の流動体の塊―――いやその中に瞳がありギョロリ此方を見つめ続けている。あれは紛れもないヴィラン。

 

「おっと、逃がしちゃったかぁ……」

「やれやれっ最高と最悪は紙一重か、吉日と厄日と言うべきかな」

『あっ有難う御座いますマグナさん!!僕すっかり浮かれちゃって気付けませんでした!!?』

「何気にする事はないさ、君の気持ちは良く分かる。まあここは任せておきたまえ」

「何をごちゃごちゃ言ってるのかな……?電波系の不思議君かな?」

 

とギョロギョロと瞳を動かしながら此方を見てくるヴィラン、それを見てヘドロ怪獣(ザザーン)を想起しながらも出久(マグナ)は構えを取りながら両腕にエネルギーを纏わせる、それは雷鳴のような激しい音を立てながらヴィランをまるで逆に威圧し返すかのような事になっておりそれを見てヴィランは尻込みしてしまった。

 

「ちっまさか電撃系の個性なんて……相性最悪だ、此処は撤退を―――」

 

今にも逃げ出そうとした時だった、力強い声と共にそれはヴィランから自分達を守るかのように立ち塞がりながら危機を吹き飛ばすような笑い声と共に現れた。

 

「もう大丈夫さっ少年!!私が来たッ―――!!」

 

唸る剛腕、轟く暴風。唯が人間の一撃が超絶的な風圧を巻き起こすとそれはヴィランの流動する身体を粉砕してしまった、流動するそれを力で粉砕するなんてどれ程の力なのだろう、地球人としては異常の一言。ほんの一瞬の出来事だった、正しく電光石火の絶技。ヴィランはあっという間にペットボトルへとつめられてしまった。直後―――主導権を奪われている筈の出久がマグナからそれを強引に奪取しながら叫んだ。

 

『えっちょ』

「オ、オ、オォォォォォオオルマイトォォォオオオオ!!!!?」

「HAHAHAHA!元気がいいね、怪我無くて何より!!」

『……ちょっと戦いたかったかも……』


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