試験会場は以前の戦闘訓練でも使用された運動場β。野外でのヴィラン出現とほぼ同条件且つ出久と爆豪は互いの機動力を100%活かせる場だと思いつつもやれることを純粋にぶつける事のみに気を遣っていた。そして互いのやれることを把握し切ると一旦別れて自分達の番が来るまで精神統一を図ってから互いに試験場へと乗り込んでいった。既にほかの生徒の試験は終わっているが敢えて耳に入れずに自分達の事だけに気を遣っていた、言い方こそ悪いが気を配っている余裕がないのである。何せ相手はあのオールマイトなのだから……。
「だから後で胸張って会えるように、頑張るわ」
「オイラだって今回ばかりはマジで行くぜ、後でドヤ顔して会うからまってやがれ緑谷!」
そんな声援を送られながらもいよいよ、ラストとして配置されていた出久&爆豪とオールマイトの試験が始まろうとしていた。既にほかの試験は全て終了している、後で聞くそれらを楽しみにしつつも出久は身体を伸ばしながらもコスチュームの調子を確認しながら発目が調整しておいた各種機能も確認する。爆豪は発汗作用を高めるスープの入った水筒を一気にがぶ飲みしてその場に投げ捨て準備万端。
『緑谷 爆豪ペア、試験開始』
アナウンスが開始の合図を告げると両者はタイミングを合わせる事もなく全く同時に駆け出して行く、超格上相手のこの状況ならば戦う事は愚策。ならば逃げきることを前提するのが上策―――が瞬間、ビル丸ごと含めた街の一角が一瞬で瓦礫に、しかも巨大な石礫と化しながら二人へと襲う。
「イズティウム・バスタァ!!」
「オラァッ!!!」
それでも焦る事もなく互いの距離を詰めながら攻撃をした。出久は腕にエネルギーを集めながらそれをスマッシュで飛ばす事で光弾をレールガンのような勢いで複数発射し迎撃、爆豪は迫りくる物にのみ狙いを定めて爆破で防御する。石礫はミサイルのような爆発をしながら消し炭へとなっていくが爆煙の奥から異常なまでの威圧感と敵意を纏った存在が迫ってくるの感じた。
「「ッ―――!!!」」
全身の血液が一気に凍結するような寒気が走って行く、咄嗟に防御をしてしまう程の圧倒的な物。爆煙の奥から姿を現すオールマイト。本来それは平和の象徴として人々に笑顔と安心を与える筈の存在がこの場では自分達に絶望と戦慄を与えるとして―――立ちはだかってくる……あれを相手にするヴィランというのはこれ程までに怖いのかと実感してしまった。
「私はヴィランだ。ヒーロー、真心込めてかかって来なさいよ……少年たち!!」
さて、如何するかな……とオールマイトは内心で様子を窺っていた。両者の関係はそこまで知らないがあまりいい関係ではなかった事は知っていた、それは戦闘訓練でも透けて見えていた、既に軟化して和解していると言っても良いだろうがそれが自分相手にどんな戦略を取ってくるのだろうか酷く楽しみだった。互いに背中を預け合うように並び立ちながら構えをする姿は酷く絵になっている、殺意に似た闘争心に溢れた爆豪とフェイスカバーを展開しながら瞳が光った出久。これからどうするのだろうか―――
「アンタと―――」「真正面から―――」
「「戦う訳ない!!!」」
「そう、来たかっ―――!!」
刹那、両者の姿が消し飛んだ。同時に爆炎が一体を吹き飛ばしながら視界を焼きながら発せられた高周波の音が聴覚を襲いかかってきた。言うなればスモークとスタン、双方のグレネードの利点を同時に兼ね備えた一手にて視界と聴覚という人間の情報収集感覚の活動が鈍る―――だがほんの一瞬でしかなかった。コンマレベルの時間しか動きを止めず、即座に行動し距離を取ろうとする両者へと攻撃を叩きこんだ。
「私でなければ暫く動けないだろう、だが悪いけど気配で全部丸わかりさ!!」
「だろうな、アンタなら……!!」「知ってたさ……!!」
確かに攻撃した位置、そこに二人はいた筈だがギリギリで受け流して掠る程度に留めていた。そしてオールマイトの一撃の風圧を逆に利用して飛び退き、万全な体制を張った。爆豪の身体は十分に温まり発汗が盛んになっている爆破の調子も快調、そして出久の方も備える時間が出来た。その身体は先程よりも巨大となり、大きさだけならオールマイトにもタメが張れる。
「高出力近接戦仕様アタッチメント:GAIA接続完了。全パワーセル直結、システムオールグリーン……!!ガイアさん―――大地の力、お借りします!!」
「HAHAHA私対策かな、だがそれがどこまで―――」
「通じるかは此処で試す!!」
地面を蹴る、走り出す際には当たり前の動作なのにオールマイトの動作は爆風を伴ったロケットスタートとなり大気圏突破を図るような勢いで迫りながら拳を振り抜いてきた。それだけの動作で相手には絶望を与え、恐怖で身体を縛る。それが齎してきた人々の希望と平和、それへの敬意を込めて―――出久はガイアの力を使う。
「ワン・フォー・オール・フルカウル―――20%……!!」
それが出久の現在の限界、全身に漲る力と光を纏いながらパワーセルが同調するように音を立てながら出力を上げていく。そして右腕へとエネルギーが集められ赤く輝きながらオールマイトへと向けられる。
「GAIA SMAAAAAASH!!!」
金属のアーマーでありながら生き物のように膨張していくそれ、そのままの勢いで振り抜かれた一撃はオールマイトの一撃と激突する。周囲に凄まじい爆風と衝撃波をまき散らしながらも出久はそこに立ち続けながらオールマイトを食い止めた、その光景にそれらを見ていた生徒と教師陣は驚愕した。本気ではないだろうがあのオールマイトの一撃を相殺して見せたのだから。
「やるじゃないか、私の一撃を相殺するなんて……だがそれで終わりかな」
「まだ、まだ!!」
「決まってるだろうがオールマイトぉ!!!」
出久の身体の傍から伸びた爆豪の腕、出久の後ろで衝撃から身を守りながらもこの瞬間を待っていた。0距離からオールマイトが動きを止めたこの瞬間を。この距離で防御も回避の隙も無い状態で可能な限りの一撃をぶつける、それだけの為に無茶をした。そして迷う事もなく爆豪は腕の手榴弾のような籠手のピンを抜きつつも即座に出久の身体に腕を回すと右腕の籠手から大爆発の奔流がオールマイトを飲み込んでいった。
「ちったぁ利いたかぁ!!」
「グゥゥゥゥゥッッッッッ……!!!なんて、反動なんだぁ……!!」
「文句言うじゃねぇクソがぁ!!」
そして爆煙を突き破るように飛び出していく出久と爆豪、出久の身体へと回した腕は爆発を推進力にして一気に距離を稼いで
「―――うんうん開幕ブッパは大成功、それを兼ねつつ距離を取った上で爆発は私が出した所に兼ねるとは素晴らしいねぇ……そして次は!?」
「「ッ!!?」」
息を吐く暇もない、そこには迫って来ていたオールマイトの姿があった。先程よりかは時間を稼げているがそれでも雀の涙でしかないなんて、という思いが過るよりも先に二人は空中で体勢を整えながら本腰を入れる事にした。
「決まってんだろうが……!!」「もう後の事なんて考えない!!」
「「全力で倒しに行く!!」」
「HAHAHAHA!!!結構結構、来なさいヒーロー共!!」
将来有望な二人に対してオールマイトは感激を覚えつつも二人の為に極上の壁となり、成長を促す為の経験となってやろうと勢いを増しながら二人へとぶつかっていく。そして二人はそれに感謝しつつも本気で倒すつもりで挑んでいく―――だがオールマイトは失念していた。
「DETROIT SMASH!!!」
「クソが威力が上がってやがる!!こっからが本気って訳か!!」
「負けるもんかぁ!!」
先程の一撃と爆発のせいで腕の超圧縮重りが破損して腕から外れている上に耳にあった