緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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黄昏の風来坊

「ウゥゥリヤァ!!」

「ディヤァァッ!!」

 

舞い降りた光の巨人、大地より現れた光の巨人、それらが戦う巨大な大怪獣の光景はその地球の人々からすれば形容する事も出来ないような凄まじい物だった。今まで自分達が過ごして来た中にあったヒーローのそれすらも超常ではなく日常の一ページでしかなかったのかと言わんばかりの戦い、神話の中で行われる神々と怪物の戦いのそれと等しいそれら。保須の巨人と似通っている巨人は並び立ちながら巨大な敵へと向かって行く。

 

「デュオッ!!」

「ショラァ!!」

 

同時に蹴り込みつつも新たに現れた巨人、ウルトラマンオーブが切り込むかの如くゼッパンドンの懐に飛び込みながら連続で打撃を加えていく。超至近距離にいながらも即座に撃炎弾の兆候を察知すると赤い光を纏いながらも顎へと強烈なアッパーカットを放たれる。砕かんばかりのパワーで放たれたそれはチャージされ放たれようとする火球を押し潰しながら相手の巨体を浮き上がらせてしまう。

 

「ディヤァァァァッッ!!!」

 

そこへ高々と跳躍したマグナが灼熱の光を纏いながらの必殺キック、マグナスマッシュを叩きこんだ。頭部にそれを受け激しいスパークと大爆発で怯みながら倒れこむとパンドンの口のような器官が砕け散りながらも溶けておりそこへオーブが透かさず重々しい一撃を叩きこんだ。

 

「ゼェェェェッッッ……ドォォン!!!?」

 

『フンッあいつに比べて迫力も実力も不足してるな!!その程度でマグナさんを倒そうだなんて、2万年早いぜ!!』

 

『2万年後でも、負ける気はないけどねっ!!行くぞ、さっきのお返し!!』

『はい!!』

 

「デュッァァァァッッッ……シェオァ!!ォォォオォォオオオ!!!!」

 

全身に青、白、緑、赤。様々な色が混合した閃光が走って行く、無数の光は収束してマグナの身体を包み込むとその力を更に高めていく。ワン・フォー・オール・フルカウル、それを出久とマグナがともに行使した瞬間だった。立ち上がろうとするゼッパンドンの尾へと掴み掛ると一気に持ち上げると4万5千tにも及ぶそれを一気に持ち上げながら振りまわす、腕の力だけで完全にゼッパンドンを圧倒しながら振りまわしている。そしてそれを渾身の力を込めて空へと投げ飛ばす。

 

『今だ決めるんだ!!』

『はいっ!!』

 

素早く意図を察しオーブはエネルギーを高めながら腕を掲げる、彼の肉体には今二人のウルトラマンの力が宿っている。超古代の戦士、ウルトラマンティガ。怪獣退治の専門家、ウルトラマン。その二人の力をお借りし、自らと一つとして昇華させたオーブは高らかに掲げられた腕と真横に伸ばされた腕へと力を集めながらゼッパンドンへと目を向けながら叫んだ。ウルトラマンオーブ・スペシウムゼペリオンの必殺光線の名を―――!!

 

『スペリオン光線!!!!』

 

合わせられた両腕、周囲に展開された光の輪の中心から照射されていく眩いばかりの光線。それは真っ直ぐと空へと投げられたゼッパンドンへと向かって行く、本来ならば光線すら容易に防ぎきる防御力を誇るシールドを展開可能であるが、頭部へのダメージと損傷によってシールドは既に張る事が出来なくなっており光線は直撃し、光はゼッパンドンの肉体全体へと波及していき凄まじい爆発を引き起こした。

 

―――シュアッ!!

―――デュオッ!!

 

二人の巨人は共に空へと飛び立って行く、突如現れた彼らは人々に戦慄と恐怖を与える存在を打ち砕くとあっという間に去っていってしまった。自らの誇示などには目もくれず唯々平和を脅かす存在を討ち取る事が出来ると直ぐに去っていく彼らに人々は感謝し、声援を送った。

 

 

 

 

「うんうん、そっちも大丈夫でよかったよ……うんこっちも何とか、うん大丈夫」

 

自分の無事を友人達に報告し皆を安心させつつ、突然の行いで別れてしまった事を謝罪すると逆にヒーローらしい行動だと称賛されつつも心配させないように!!と釘を刺される、そんな友への謝罪も終わると頬に冷たい感触が襲ってきた。思わず声を出しながら後退るとそこには黒いジャケットと黒の中折れハットを纏っている若い青年が此方へと良く冷えてたラムネを差し出していた。

 

「お疲れさん、友達への報告はもういいのか?」

「あっはい、何とか納得してくれたみたいです。それ所か逆に僕の事を凄く心配しててくれたみたいで」

「いい友達じゃないか、大切にしろよ。友達は一生の財産だからな」

 

笑いながらラムネの栓を開けながらそれを口にする、そんな姿に夕暮れの光は酷く映えており酷くカッコいい様子を醸し出している。そんな姿を見ながらもラムネを開けようとするがなかなかうまくいかない、それを見かねたのかガイが貸してみろ、とラムネを開けて差し出してくれた。初めて会うがこういう人も男が理想にする男性像の一つなんだろうなと思いながらラムネを飲む。

 

「改めて自己紹介だな。俺はクレナイ・ガイ、宇宙を旅する風来坊さ。そしてウルトラマンオーブだ」

「みっ緑谷 出久です!!えっとその、宜しくお願いします!!」

「宜しくな」

 

力強い握手、硬いが柔らかい感触の手。戦士としての強さを持ちながらも誰かを労わり、助け合う精神を持っているのだなと思わず出久は思う。此処は自分達が訓練で使っていた海浜公園、ゼッパンドンを倒した後に此処へとやってきたが丁度周囲には誰もいないので出久の隣にマグナがホログラムで出現する。

 

『久しぶりだねガイ君、旅は順調かい?』

「そりゃもう、この地球も中々に旅のし甲斐がありそうで楽しみですね。マグナさんも一緒にいかがですか?」

『お誘いは嬉しいけど遠慮させて貰うよ、でも何時か一緒に旅をするのも悪くないかもね。その時にまで取っておいてもらえるかな』

「その時は俺の行きつけの銭湯に行って、その後に一緒にラムネを飲み交わしましょう」

 

何処か残念そうにしつつも何時かの楽しみにして置こうという言葉に何処か大人の余裕で応えるガイとマグナに出久は素直な憧れを抱いた。自分もこんな風にカッコいい大人になれたらいいなぁと思いつつもガイが自分を見つめてきた。

 

「彼がマグナさんの相棒っという事でいいんですか」

『ああ、地球に来て直ぐに出会ってね。その心はウルトラ族にも匹敵する程に真っ直ぐで純粋、崇高な物だと思ってるよ』

「それは高評価ですね、これからが楽しみだ」

「そ、そんな僕なんてまだまだですよ……」

「そりゃそうだ」

 

と思わず照れてしまった自分に対して肯定の言葉が飛んできて少し驚くが直ぐにそれは変わった。

 

「お前さんはまだまだ未来がある、未来は未知で溢れてる。それらに触れて経験して皆デカくなっていくんだ、誰だって最初から凄い奴なんていないさ。だからお前さんも努力を欠かさすなよってマグナさんの相棒には言う必要も無いか」

「い、いえ僕これからもっと頑張ります!!マグナさんの相棒としても、僕自身としても!!」

 

そんな風に意気込む彼に満足気に頷くガイ、矢張りカリスマ性があるのかガイに憧れるような瞳をしている出久の気持ちは非常に良く分かる。マグナ自身、転生前にガイに憧れてファッションを真似てみたりしたから良く分かる。

 

『それにしてもガイ君、君よくこの地球に来れたね。ゼロ君の力を借りたのかい?』

「いえヒカリさんが新しく開発したっていう次元刀っていうアイテムを使って此処まで、なんでも時空を切り裂く事で別次元の宇宙に通じるトンネルを一時的に形成するらしいです。俺はそのテストも兼ねて此処へ」

『ホントあの人は何でも作り上げるね……ゴーデス細胞への抗体の時も思ったけどあの人に作れない物ってあるのかな』

「それは俺も思いますね」

 

その辺りの認識はガイも似ているのか僅かに苦笑している、彼自身の力もウルトラメダルになっているのでその辺りで何か思ったりしたのかもしれない。そんな話をしつつもマグナは真面目な声で問いかける。それに対してガイも真面目な声で応える。

 

『今回のゼッパンドンの出現、君としての意見は如何かな』

「間違いなく本物のマガオロチの力ですね、しかもそれをウルトラメダル、いや怪獣メダルと言うべき物にしている。相手がどんな奴か分かりませんが……相当にやばい奴だと思います」

『……矢張りか』

 

それを聞いて二人は揃って黄昏へと瞳を向けた、美しい光景を目に焼き付けるかのように姿に出久は同じように目を向けた。そして同時に想う、これがヒーローとしての役目なのだと。人々がまた同じ日常へと戻れるように、同じ平穏を過ごせるようにする為に戦いながらも自分達もまた守り抜いた平和を享受し戦い続けていく。そんな思いを抱きながらもまだまだ努力しなければならないと心に誓うのであった。


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