緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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光に手を伸ばせ!!

№1ヒーローである平和の象徴、オールマイトがそこにいたのである。単純な実力だけではなく人気、カリスマ性も群を抜いている現代ヒーロー社会の頂点を極めたと言っても過言ではない大英雄の登場にヒーローオタクであり自分がヒーローを志す切っ掛けとなったヒーローの登場に出久のテンションは振り切れてしまっている。それはマグナから主導権を奪ってしまう程に。

 

「ぼ、ぼぼぼぼっぼ僕、貴方に憧れてヒーローになりたいって思って……!」

「HAHAHAそれは光栄だね!!」

『彼が現地球人最強と言うべき存在、オールマイト……確かに並外れた身体能力、単純な能力ならばいいレベルまで行くだろうな』

 

と目の前に現れたオールマイトに対してマグナは思考を巡らせながら観察を行った。彼の次元には様々な宇宙人が存在している。戦闘に長けている者、知略に長けている者、知能に長けた者と様々だが仮に人間でのサイズでの戦闘を想定したとしてもオールマイトはそれの大半に勝つ事は可能ではあるだろうと思える。流石に特殊能力などを使える相手はきついかもしれないがそれもかなりいい勝負する事は間違いないだろう。

 

「おっといけない、済まないがこいつを警察に届けないといけないんでね。悪いがこれで!!」

「あっあえのえっと……い、いえ何でもありません、これからも頑張ってください!!」

「HAHAHAご声援ありがとう!!トゥアッ!!!」

 

と飛び上がってその場から去っていくオールマイト、出久はそれを呼び止めそうにするのを必死に飲み込みながらその場に転がっていたオールマイトのサインが書かれたサイン色紙を見つけた。流石サービス精神も旺盛なトップヒーロー、此方の欲しい物を察して置いて行ってくれただろう。それに感謝しながら拾い上げようとするが……出久はそれより前にしなければいけない事があると思い声を出した。

 

「……ごめんなさいマグナさん、僕今……無個性でもヒーローになれますかって聞きそうになりました……」

『君からしたら致し方ない質問のように思えるから気にならないが、何故謝るんだい?』

「だって、それを聞くって……失礼だと思いまして……」

『やれやれ君は真面目だね』

 

出久が思った事、それは自分に力を与えてくれただけではなく道を照らしてくれた相棒に対する無礼だった。それを問う事は彼との出会いを否定し自分の行いをなかった事にするような事と思ったのだろう、だがマグナからすれば当然の疑問だろうし問いたくなる気持ちも分かるので逆に謝られても困る。

 

『一応聞くが君はオールマイトからなれない、諦めろと言われたらどうするつもりだったのかな?』

「―――そうですか、有難う御座いましたで終わらせたと思います。だって今の僕は無個性じゃないですから」

『そうだその意気だよ出久君。君には私の力がある、漸く光線も打てるようになったしね』

 

気付けば出久の表情はまた笑顔になっていた。もうそこにいるのは昔のオドオドしていた臆病な無個性の少年などではない、偉大な光の巨人と一つになりながら力を授かった一人の少年なのだから。

 

『兎に角今日は幸運続きだね、これで君のコレクションが増えたと言う物だ』

「本当ですね!!!うわぁっこれお母さんが聞いたら驚くぞぉ!!」

『自慢したい気持ちは分かるが貰った経緯は暈かさなければね、お母様が聞いたらきっとひっくり返りかねない事だからね』

「あっそっか……ヴィランに襲われかけた事とかは言わないようにしなきゃ……そうだ、母さん前にアクセサリー欲しがってたような……見に行きましょう!」

『私にそう言うセンスは期待しないでもらえると有難いな、これでも光の国だとモテなかったからね』

「えっ~冗談でしょう、マグナさんは絶対にモテますって」

 

そんな相棒同士の会話をしながらもサインを鞄に入れながらよく向かう商店街へと訪れる。此処ならお土産は大半揃うし何だったらお惣菜を買って帰るだけでも喜ばれるだろうという思いからだったのだが……奇妙な程に騒がしかった。近くまで行くと如何やらヴィランが暴れているらしくヒーローが対応しているらしいが苦戦しているらしい。

 

「あっすいません」

「あっいや此方こそ済まない……」

 

と電柱の近くで胸を抑えている金髪のまるで骸骨のような風貌の男にぶつかった事に謝罪しながら現場へと目を向けると―――出久は全身に電流が走ったような気分だった。何故ならば―――

 

「かっちゃん!!!!」

 

ヴィランに抵抗するようにしながらも取り込まれようとしているのは幼馴染の爆豪だったから。

 

現場に付いた時、そこは苛烈と混乱の極みと言っていい現場だった。巻き起こる爆発が窓ガラスを粉々にし、アスファルトの道路に穴をあけ、建物そのものを破壊していく。その中心に出久へと襲い掛かったヘドロのヴィランがいた。オールマイトに確保されていた筈なのに警察に引き渡した後に逃げ出したのかは分からないがそれが暴れ続けていた。いや正確に言うのであればそのヴィランに囚われながらも必死にもがき続け、脱出を試みる為に爆破をし続けている爆豪が。

 

「がァッ、クソ、クッソがぁぁぁ………ッ!!」

 

既にそれなりの数のプロヒーローが駆けつけている。ルーキーながらも輝かしい活躍をしている女性ヒーローMt.レディ、新進気鋭のシンリンカムイだけではなくデステゴロにバックドラフトもいた。だが……流動するヴィランの身体は捉える事は出来ない、加えて勢いを増して行くヘドロの触手に爆豪の爆破によって救出するどころか全く近づけずにいた。

 

「駄目だっ、誰か有利な個性のヒーローが来るまで待つしかねえ!!」

「何、すぐに誰か来るさ!!あの子には悪いが、それまで耐えてもらおう!!」

 

自分達では何もできない故に応援を待つ、正しい判断かもしれないが……完全に自分達は何もせずに爆豪を見つめているだけのヒーロー達を押し退けるかのようにしながら、叫び声を上げながら出久は走り出した。

 

「うわああああああああああ!!!!!」

「おいバカ、何をしてるんだ死ぬつもりか!!?」

 

走り出していく出久の耳にヒーローの静止の声なんて聞こえてこない、見えているのは爆豪の個性である爆破を利用して此方へと爆破を向けてくるヴィランの攻撃。それらを全て視界に収めながら身体を翻し、回転などを駆使しながらすり抜けていく。

 

『無茶をするな君は!?』

「マグナさんお願いしますかっちゃんを助けたいんです!!!力を貸してください、お願いします!!!」

 

説教なら後で幾らでも聞く、小言ならいくらでも言われてやる、だから今は、この瞬間は力を貸して欲しいと出久は心から願った。目の前で苦しんでいる大切な友たちを助けたいんだと。目の前で苦しんでいるのにも何もせずに手をこまねている事なんて絶対に嫌だと叫び続けている、魂が叫んでいる、本当のヒーローになりたいと。その叫びを聞いたマグナはそれを汲み取るような苦笑するような、嬉しそうな声を出す―――

 

『ならば私の名を叫べ、私も共に君とヒーローになろうじゃないか。偉大な(ヒーロー)となろう!!』

 

その時不思議な光を出久の右手に宿った。そこにはクリスタルが嵌め込まれた指輪が宿った。無意識だったのだろうか、出久はそれを目の前に広がって自分を飲み込まんとする爆炎に走りながらそれを掲げながら大声で叫んだ。

 

マグナァァァァァァァァァッッッ!!!!!

 

その瞬間だった、出久の全身を指輪から溢れ出していく光を包み込んでいきながら更に加速しながら爆炎へと突っ込んで行っていった。ヴィランが声を上げて喜びの声を上げた瞬間、身体から力が抜けてしまった。何故ならば―――彼が力の源とせんとしていた存在、爆豪がいないからだ。

 

「な、何っ!?一体どこへっ……!?」

「デ、デク……なのかお前……?」

 

それは背後にいた、背後からした爆豪の声に気付いたのかヘドロヴィランは振り向いた。そこにいたのは―――眩いばかりの光を纏っていた銀色の人間だった。地球上のどんなに上等な銀よりも美しく輝き、その身体を走る炎のような猛々しく力強い赤いライン、胸には胸部を守るようなプロテクターの中心に青い光を宿すランプがあった。それが何を示すのか分からないが―――確かなのは爆豪はヴィランから助け出されたという事実だけだった。強い光を纏っている故か周囲にはハッキリと認識されていないだろうが、それでもヴィランはそれを警戒した。

 

「テメェ何をしやがる……!!」

「シェアッ!!!」

 

有無を言わせんと言わんばかりに即座に両腕が組まれた、そしてそこから青白い光線が発射されヘドロヴィランの身体へと突き刺さりそれは絶大な効果を齎した。

 

「グギャアアアアアアア!!!!??」

 

阿鼻叫喚と言わんばかりの絶叫が周囲に木霊する、全身にエネルギーが伝導していき全身が爆発しようとしているかのような感覚を覚えながらも許容限界を迎えたのかヴィランは倒れこむ。それを見るとマグナはゆっくりと振り返りながら爆豪へと手を差し伸べた。大丈夫?と言わんばかりの優しい手の差し伸べ方に爆豪は普段の行動からは想像できない程に素直にそれを取って立ち上がってしまった。

 

「無事でよかった……」

「ッ!?」

 

―――デュォッ!!

 

その時、爆豪にだけ聞こえたような声を掛けると光はそのまま空へと飛び立って行ってしまった。余りにも突然すぎる事に周囲は疎かプロヒーローですら唖然としている中―――唯一一人だけ、その光を目で追い続けながら走り出した骸骨のような男。その瞳には不思議と希望と活力で満ちあふれていた。




マグナの変身アイテム初登場。指輪型になりました。

ガイアのエスプレンダーの青い部分の中心部にカラータイマーが埋め込まれた指輪みたいなイメージ。

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