「兎も角此方でも発目少女を抑えられるような人材を探すとしよう、というかいざとなったらデイヴに技術部の顧問とかをお願いしてストッパーになって貰おうかな……」
「真剣にそれが良いかもしれませんね。体育祭の彼女を見る限り、良識などもある様ですがそれ以上に好奇心や欲求が上回りやすい精神性のようです。それらを考えると更に上の技術者などに監督して貰うのが良案と言えるでしょう、その点を考慮するならばデヴィット・シールド氏は適任と言えましょう」
「寧ろI・アイランドと提携する事を主軸にする事が良いのではないだろうか」
「成程、良い意見です」
一通りの話が終了して出久は談話室を出る事になったのだがその間も話し続けているオールマイトとナイトアイ。そこにあるのは以前は当たり前のような光景だった事だろうヒーローとサイドキックの姿、真剣そのものの表情だがそれ以上にナイトアイが嬉しそうにしている事に出久は頬を緩めながら後にするのだった。直後―――
「おおっそこにいますは愛しの大親友様の緑谷さんではあぁりませんかぁいやぁ奇遇ですね本当に奇遇ですねアッハッハッハッ此処でお会いしたのも何かの縁新しく設計したアタッチメントのご意見を聞かせて欲しいのですよ大丈夫ですよ今回は実験ではなくご意見を聞きたいだけですのでOKですよねNOなんて言いませんよね信じてますけど大丈夫ですよねはい有難う御座いますお礼に謝礼として一揉みで如何でしょうか!?」
「ああいや普通に付き合いますけどだから勝手に僕の意見を固定するのやめてくださいませんかってというか最後の謝礼ってなんなの僕に何を揉ませる気なのいや今までからして嫌な予感しかしないから別にお礼はいらないから!!」
『何かと最近過激になってるよね、隙あらば君に楔を打ち込もうとしてないか。それだけ君が実験台として魅力的という事かな』
「止めてください泣きたくなります」
そんな事を言いながらも腕を掴まれて引き摺られていく出久と嬉々としてサポート科の工房へと連行していく発目。そんな光景は最早雄英では日常的な何かへと変わっておりヒーロー科からすればまた発目か、となりサポート科からすれば頻繁に彼女の口から「緑谷さんにテストして頂きましたので!!」という発言が飛び出すのでまた緑谷が犠牲になってる、という事になっている。
「緑谷、お前さんも苦労するねぇ……だがすまん、俺だけじゃあこれを抑えきれんから素直に助かるのよ……これからちょっと此処空けるけど留守番頼んでいいかい」
「ああはい、分かりましたパワーローダー先生……」
「出来るだけ早く帰ってくるから……」
とサポート科の先生でもあるパワーローダーからもベクトル違いの信頼をされてしまう始末。もう彼女に関する事はこいつに丸投げすりゃええわという事になりかけている。彼女を抑えられる人材はそれだけ貴重だが出久だけに丸投げする訳にも行かないのでオールマイトとナイトアイの相談事は出久にとっても重要事項。
「見てくださいこの新アタッチメント!!これはGAIAと同じく別世界のウルトラマンをベースにしていてその名もAGUL!!GAIAに比べて機動性を重視しておりましてメインウェポンは手首装着型の蛇腹剣とエネルギーセイバーにして従来の物とは違って武器をメインに据えてみたんですよこういった別側面からのアプローチも開発には必須なんですよ!!」
『アグルさんのもあったのか、いや腰マントというのもイカすね!!!』
「良いですよね腰マントチョーイイですよね!!」
「サイコーですよね緑谷さんにマグナさんやっぱりデザイン面も凝ってみたんですけどやっぱりマントは良いですよねこういうのもサイコーですよね!!」
と思った以上に出久とマグナからも好評だったので発目は早速このAGULの制作を決めながらもどんな風に作っていこうかと悩んでいく。GAIAに比べて極端に出力を高めない分、エネルギーセイバーに回しつつも機動力の確保に成功したAGUL。それならばいっその事、ウルトラマンみたいな光線を出せるようにしたらいいのでは!?と思い付いたらしく早速発目式光子砲のデータを引っ張り出しながらどんなふうに組み込んでいくのか、出力は如何するのかと言った事を考えながら設計を始めていく。
「あっそうだ緑谷さん。オールマイトとの戦いで壊れちゃったというGAIAの修復はもう終わりましたので何時でも使えるようにしておきましたから!!」
「えっ早!!?」
「オールマイトのデータ何て貴重な物があんだけどんどこどんどこ取れたんですから私もテンション爆上がりで作業が普段の5倍速でしたね!!」
そう言いながらも改めて設計を行っている彼女を見ながら出久はなんだかんだ言いながらも自分は本当に助けられているんだなと自覚する。
「やっぱり凄いなぁ……発目さん」
『なんだかんだで彼女の存在は私達を助けてくれているね、彼女の作ったコスチュームがあったからオールマイトとあそこまでやれたのは事実だろうからね。きっとプロになっても彼女には世話になると思うよ、いや彼女の技術はきっとこれからの地球を支えていく基盤になっていくのかもしれないね』
「基盤、ですか」
『そうだよ。オールマイトでも出来ない下地になって行くんだ』
オールマイトの存在は偉大な象徴、だが発目は全く異なる。圧倒的な個人の力による象徴ではなく、誰もがその恩恵に預かれる基盤となっていくのが発目の力。何れ彼女の技術は世界中で使われて平和の為に更に進化し続けるのだろう、それこそマグナの世界のように宇宙に旅立つ為の―――光の道を作り出すかもしれない、そう思うと自分が実験台にされているのも未来のためになっているのかもと少しだけ前向きに捉えられる。
『技術の進歩は人類の進歩さ。その進歩の数だけ大変な事もあるけどそれだけ人の命を救える証でもある、病気に対する治療法や予防。それも進歩によるものなんだからね、それだけ人の命を救える』
「あの、マグナさん……こんな事聞くのもあれなんですけどマグナさんでも―――ウルトラマンでも助けられない事ってあるんですか……?」
その言葉で一瞬の静寂が工房を包んだ、木霊するのは叩かれ続けるキーボードの音と発目の声のみ。答えなんて分かりきってるかもしれない、タブーかもしれない、だけどそれでも聞きたかった。そんな質問にマグナは答えた。
『あるよ、いっぱいね』
そんな言葉に優しくマグナは答えてくれた。絶対的な存在、人類では到底到達できない領域に存在する神秘の巨人たちでも出来ない事はある。
『宇宙には素晴らしい事だけはない、理不尽で不条理な事で満ちている。私もそれは幾度も経験して来た、歯痒くて情けなくて辛い事だっていっぱいあった。救おうとしてこの手から零れ落ちて目の前で散った命を見た事だってあるんだ』
「マグナ、さんが……」
出久にとってその言葉はどれだけ重かっただろうか、彼にとってマグナは単なる相棒ではなく目標でもあり成りたいヒーローそのものでもある。そんなヒーローも様々な経験をする、膨大とも言える経験の中でも推し量る事も出来ない程に辛い事が沢山あった事を。中には……マグナが心から守りたいと望んだ者もいた、それを目の前で失った。後悔し自分を責め続けた事もあった。だが―――彼は戦い続けている。
『ウルトラマンは神ではない。 救えない命もあれば、届かない思いもある。だからこそ戦うんだ。もう二度とそんな思いをしない為にも、誰かにさせない為にも私達は戦い続けるんだ。救える命があるなら全力で、思いを届けられるならば必ず―――それだけなんだよ出久君。自分に出来る事を全力でやる、それも私達の使命だ』
その言葉を出久は重く受け止めた、そして決めた。この先自分はどんな事があろうと諦めないし全力で戦い続ける事を―――。
「発目さん僕に出来る事ってないかな実験でも何でも今ならやるよ!!!」
「おおっ何時になく熱意に溢れるお言葉ですねそれでは光線のデータを取らせてください!!!」
「喜んで!!」