緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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紅の激励

「おおっ~随分と早かったじゃん、予想よりもずっと早い」

 

そんな風に呟きながら笑っているピクシーボブの視線の先には森の木々の間から、姿を現してくる1組の生徒達の姿があった。ピクシーボブの個性によって土を操作されて土石流の如く、崖の下へと落とされてしまったA組。そしてそこへ宣告された施設まで自力で来いというのはなんとなく察する事が出来ていたのだが森が物騒極まりない名前なのは完全に予想外であった。魔獣の森、物騒な事この上ない。それもその筈、その森にはピクシーボブの個性によって生み出された土魔獣の巣窟だったのだから……。

 

そんな魔獣の森、3時間以内に突破出来なければ昼飯抜きと言われて皆は全力で森の突破を試みたのだが……無尽蔵に現れてくる魔獣魔獣魔獣の嵐。約3時間とマンダレイが語っていた道のりを更に時間掛けて到達したのだが突破した頃には5時近くになっており疲労困憊でフラフラとなっている物ばかりだった。タフネスな爆豪ですら爆破の使い過ぎで腕を庇うようにしながら歩き、焦凍も疲労を隠しきれていない。

 

「何が、3時間ですか……」

「ごめんねあれは私ならって意味♪」

「実力差の自慢の為かよ……」

 

と倒れこむように座り込んでしまう面々。もう動けないと言わんばかりの顔をするA組、そんな彼らを予測していたかのような氷が鳴る音に顔を上げるとそこには大量のラムネが入ったクーラーボックスを皆の前にドンッ!!と置きながら労いの言葉を掛けてくれるガイの姿があった。

 

「皆疲れただろ、さあまずは飲んどけ飲んどけ」

『有難う御座いますぅ~!!!』

 

地獄に仏だと言わんばかりにクーラーボックスに殺到してしまう皆、そしてラムネを一気に喉の奥へと流し込んでいく。良く冷えたラムネが疲れて切った身体に刺激を以て活力を与えながら火照っている身体を心地良い感触と共に冷やしていく。此処までラムネが美味しいと感じた日はない事だろう、もうその場の全員がラムネ大好きになる勢いだった。

 

「プッハァ~!!ラムネってこんなにうめぇもんだったんだぁ!!」

「もう最高!!」

「クレナイさん有難う御座いますぅ~!!」

「気にするな」

 

そう言いながらも自分の分もちゃっかり一緒に冷やしていたのか一本取って飲んでいるガイ。早くもA組の皆からの信頼を勝ち得ているのに出久は素直に尊敬しつつプッシーキャッツの他にいる少年に目が留まったか、彼は鼻を鳴らしながら顔を背けてしまった。

 

「俺行く」

「おう。後でメシの手伝い頼むぞ」

「……」

 

その言葉に頷きながらも去っていく少年、何処か自分達に冷たくするような仕草だが何やらガイには心を開いているように見えており如何なっているのかと思っていたがガイが手を叩いてその場を進行した。

 

「ラムネだけじゃ足りないだろ、飯は用意してあるからたんと食えよ。そしてその後は風呂だ、さあ動け動け美味い飯が待ってるぞ」

 

そんな言葉に導かれるように迅速に動いていくA組の皆にマンダレイやピクシーボブだけではなく相澤も何処か感心するような瞳を向けている。関りなんて殆どないに等しかったはずなのに既にA組の皆の動かし方を理解し、誘導も優れている。オールマイトが依頼したというが一体どんな人物なのかという疑問が沸き上がるのだがそれ以上にピクシーボブは別の意味で瞳を輝かせるのであった。

 

 

「ハァァァッッッ……気持ち良いッッッ~……」

「いやぁ染み渡るなぁ……」

「本当……」

 

食事の後の入浴時間。ラムネで程よく胃袋が刺激されていた全員は本当によく食べた、ガイも食事の準備は手伝いはしたのだが物の見事に完食された。それに満足しつつも男子を連れて温泉へと繰り出した。魔獣の森を超えた為に疲れ切った身体を包みこむかのような温かさに思わず溺れそうになりながらも浸かって身体を癒すのであった。

 

「偶には温泉も悪くないもんだぁっ~……」

「本当ですねぇ~……ブッ!!?」

 

と温泉を満喫しているガイの隣で同じように身体を沈めて温泉を楽しんでいる出久。心地良い満腹感と全身を包み込む暖かな感触は身体の疲れを融かしていくかのよう―――がそこに飛び込んでくる上鳴、瀬呂の水飛沫を諸にガイと共に被る。

 

「湯船に飛び込むなぁ!!そしてちゃんと掛け湯してから入れ、マナー違反も良い所だぞ!!?」

「「すっすいませんガイさん!!?」」

「全く次から気を付けろ、まあ気持ちは分からなくもないけどなぁ~……」

 

と怒っていたのも一瞬だけ、すぐさまリラックスした状態へと戻って行くガイを見て同じように湯船に身体を預けて堪能する―――中一人だけ、それらを楽しまずにいる峰田が男湯と女湯を隔てている壁を見上げながら何か悟ったのように言い始める。

 

「まァまァまァ……でもさ、飯とかはねぶっちゃけどうでもいいんすよ。求めれてんのってのはそこじゃないんスよ。そのへん分かってるんですよオイラぁ……」

「何言ってんだあいつ」

「峰田君何言ってるの……?」

 

そんな峰田の言葉の真意はすぐさま明らかになった、壁の向こう側から女子の黄色い声が漏れてきた。

 

「気持ち良いよねぇ温泉とか超サイコー!!」

「本当に気持ち良いわぁ……身体が、癒されていくぅ……」

「気持ち良いですわねぇ……はぁっ疲れが取れていくようです……」

「あぁぁっ極楽極楽……」

「マジで最高……ああっいいっ……」

 

と聞こえてくる女性人の黄色い声、それらに思わず耳を立ててしまう一部男子と壁に耳を当てて懸命に聞いている峰田。それを見ているともう何をしようと思っているのか明白である。ガイも呆れつつやんわりとそれを止めようとするのだが、彼以上に立ち上がるのは……クラス委員長の飯田であった。

 

「峰田君止めたまえ!!君のしている事は己も女性陣も貶めるはずべき行為だ!!」

「壁とは越える為にある!!!"Plus Ultra"!!!」

 

色欲という名の覚悟に身を染めてそのまま壁へと自らの頭のボールをくっ付けて、それを掴んで次々と壁を登っていくのであった。そのまま壁を駆け上がって行く峰田、その手が間も無く壁の上へと届こうとした瞬間―――

 

「あと一歩ォォォッッふがぁ!!?」

 

峰田の頭を風呂桶が直撃した。突然の攻撃にバランスを崩した峰田はそのまま真っ逆さまに落下するのだが飯田がそれを受け止める、突然の事だったがそれを行ったは当然ガイ。これもマナー違反ではあるがそれ以上にやばい事をしようとした事を防ぐ為だったので今回ばかりは勘弁して貰おう。そんな一幕もありながらも入浴後には皆直ぐに疲れもあってか爆睡していくのであった。そして皆が寝静まった頃の事……

 

「マグナさん、出久に対する指導ですけど俺が決める形でいいんですか。此処は数年一緒にいる貴方の方が適切な訓練を出せると思いますけど……」

『いや君流で構わないよ。今回は出久君の強化が重要だ、その為には私では優しすぎる』

「優しいけど厳しい師匠っていうのは良いと思いますけどね俺は」

 

二人のウルトラマンの密談は行われていた。内容は当然翌日から始める予定の出久への訓練の内容、本来は雄英側に任せるつもりだったがゼッパンドンの事を考えるとそうも言っていれられない。早急に強くならなければならない、その為にウルトラマンとしての力に順応し個性との同調を更に進めなければならない。それがこの後も出るかもしれない脅威への備えにもなる。

 

「分かりました、ですが俺はゼロさんとセブンさんの教えを受けてますからそれなりに荒っぽくなるかもしれませんよ」

『大丈夫さ出久君なら。それに私もヒーリングパルスで支援するから』

「優しいのに厳しいですね」

 

肩を竦めるガイに笑う事しか出来ないマグナだがそこには出久への信頼がある、ガイも二人の間には強い絆がある事を感じる。自分が出会ったウルトラマンと人間の間の絆、それらにも負けない程に強く硬い絆がある……それに報いる為にも自分は自分で全力を尽くす事を決めるのであった。




「そう言えば光の国でマグナさんのお見合いの話を伺いしましたよ、今回の任務でまた伸びちゃったらしいですね」
『相手の方怒ってないといいんだけどねぇ……ちょっと不安でね』
「ユリアン王女のお姉さんでしたよね、80さんがフォローしてくださってるらしいですよ。でもあまり気にしてないとも聞きましたよ」
『それでも帰ったらお礼言わないとなぁ……』

とお見合いの方の事を聞きたいという方がいらっしゃったので部分開示。

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