合宿二日目。先日と変わらぬ辛い特訓が続き続けているのだが、森の奥で一際巨大な衝撃と爆発音がプッシーキャッツの私有地全体へと響き渡るのであった。その衝撃に思わず動きを止めて其方へと目を向けてしまう程。
「な、なんだ今の!?」
「確かあっちって緑谷ちゃんとガイさんが特訓してる方角な筈だけど……」
基本的にガイは出久を見ている、それは公認であり寧ろその為に集中して貰えるのは相澤やプッシーキャッツとしても助かる事なのである。実力も個性もある上にその伸び幅もあるのならばそれを鍛える為には集中しなければならない、だがそれは他の生徒達に関われない事になりかねないのでそれを一手に引き受けて貰えるガイの存在は相当に大きい。そんなガイが見ている出久は今日もテクターギアを付けた上での組手らしいので離れた場所で戦い続けている筈……既に4時間ほど経過しているだろうか、そんな所に再び大爆発のような衝撃と爆音が響き渡る。
「ラグドール、大丈夫なのよねあの二人……」
「流石にこうも連続して爆音が響くと我も不安になるぞ」
「あのナイスガイさんが下手な事しないって信頼してるけどこれはね……」
とプッシーキャッツもラグドールへと視線を向ける、彼女の個性はサーチ。目で見た相手の居場所、弱点などの情報を100人まで知ることが出来る―――故にあの二人がウルトラマンである事を承知している数少ない一人。と言っても意図して知ろうしたわけでもないので二人は一切気にしておらず、口外しない事も約束している。口止め料としてサインは貰ったりはした。
「あ~……うん、大丈夫みたいよ。ガイさんが本気の一歩手前であの子とガチバトルしてるみたいだから」
「だからこんな事になるの……?」
「なるみたい、いやぁガイさんの個性も凄いみたいだからねぇ~あの子に負けない位」
その言葉だけでその場の全員を納得させつつもガイに対する見方を変える。初日の異常な身体能力だけで凄いとは思っていたが個性も出久に負けない程ならば確かにオールマイトに呼ばれるだけはあるという説得が濃厚になった。その瞬間―――
『ッッッッ―――!!!!??』
自分達の近くを何かが空を切ったと同時に周囲に風圧の爆弾を叩きつけた。直後に岩壁に何かが叩きつけられたような衝撃音がしてそちらをみると岩肌に巨大なクレーターが出来ていた。
「な、なんだぁ!!?」
「漫画やアニメでしか見た事がねぇよ壁に出来たクレーターって!?」
「梅雨ちゃん大丈夫ぅ!!?」
「な、何とか大丈夫よぉ!!」
クレーターが出来たのは梅雨が特訓中だった崖の近くだった、丁度登り切った所でこれから降りようとしていた所だったので正直危なかったが怪我もない。そんな彼女がゆっくりと崖を降りながらどうしてこんな事になったのかを確認してみる事にした、クレーターの中心には窪みがあり、それが超高速で激突した事が原因だと思われる。そしてその中心に居たのは……
「うううっっっ……」
「緑谷ちゃん!?だ、大丈夫!?」
そこにいたのはまるで十字架に張りつけにされたか如く両腕を広げた状態で壁に埋まっている出久の姿だった。という事は激突したのは出久という事になる、ギアのお陰で怪我はしていないらしいがそれでもかなりのダメージが蓄積しているように見える。
「梅雨、ちゃん……あれ、何で……?」
「それは私の台詞よ!?とにかく肩貸すわね!?」
「大丈夫、まだ動けるから……!!」
強引に拘束を破るように腕を動かして岩壁から脱出するが身体に力が入らないのかフラフラしている彼に肩を貸すが、50キロもあるギアの影響でそれも一苦労だがそんな事を顔に一切出さずに瀬呂が伸ばしてくれていたテープを使って何とか降りる事に成功すると出久は大きな音を立てながら座り込んでしまった。
「キッツゥゥゥゥ……」
「大丈夫緑谷ちゃん、少し休んだ方が良いわ。これも外した方が良いわよ」
「ああいやこれ僕じゃ外れないんだ……装着者は絶対に外せないし外す為にはガイさんにお願いしないと……」
「えっとそれならこうしたら楽になるとちがう!?」
そこへやって来たのは麗日だった、彼女がギアに触れると一気にギアの重みが消え失せた。個性でギアを無重力にする事で出久への負担を軽くした、それで一気に表情が軟化していく出久にこれを付けて動く事がどれだけ辛いのかが分かる。
「いやもうガイさん強すぎ……」
「というかお前らどんな訓練してんだよ、こっちまで届く衝撃波と爆音とか普通じゃねえぞ!?」
と声を掛けられた直後に森の奥からガイが姿を現す、彼はクレーターを見てあちゃぁっ……やりすぎたと言わんばかりの顔にながら頭を掻きながら謝罪する。
「いやぁ悪い悪い、怪我とかなかったか?」
「こっちは全く……でもガイさんどんな訓練を緑谷ちゃんと……?」
「昨日と同じ組手だ、まあ今回は俺もちょっと本気になってるけどな」
「という訳で出久、今回の組手は俺もちょっと本気を出させて貰うからな」
「は、はい……!!」
出久との訓練の際、ガイは変身せずにオーブの力を一部引き出す。言うなれば生身の状態でウルトラマンの状態の力を発揮出来る技を使う、そのお陰で生身のままでヒーロー顔負けの戦闘を行う事だってできる。使わなくてもガイ自身の身体能力なら問題はないのだが、今回は経験を積む事と出久の成長が目的。そして今回、スペシウムゼペリオン、バーンマイト、ハリケーンスラッシュとオーブの基本とも言える3形態と戦ってきた出久が挑むものとは―――
「言っておくが出久、お前も本気で来いよ。出ないと―――怪我じゃ済まなくなるからな」
「えっ!?」
『さてさて見せて貰うよ。黒き王の祝福を受けた力を』
その言葉を皮切りにガイは笑顔から鋭い顔つきになりながらその手にグリップの付いた結晶のような美しいリングを掲げた、それはガイが変身の際に使用するアイテムであるオーブリング。自分達で言う所のマグナリングに当たる物、そしてそれらと同時にカードをその手に持った。
「ゾフィーさん!!ベリアルさん!!光と闇の力、お借りします!!」
『フュージョンアップ!!』
カードをリングへとリードする、瞬間にカードは粒子化しながらも輝きと共に光の影となってウルトラマンの姿を映し出す。その姿にマグナは懐かしさすら覚えてしまう、この地球に派遣する命令をくれたゾフィー。そして……光の国から生まれた悪のウルトラマン、ベリアル。それらは輝きながらガイへと重なっていくとガイは声を上げ、瞳に色が赤みを帯びた黄色へと変化し同時に凄まじい威圧感が周囲に充満していき森の動物たちが逃げ出していく。
「何て威圧感……!?」
『これが噂に聞く姿の一端か……』
「さあ準備は出来たぜ、存分に相手してやるから覚悟しな出久!!」
僅かに口調も荒々しくなっているガイに僅かに驚くが出久は迷う事もなく向かって行く。先日もずっとガイと戦って来ている、もう恐れる必要も無いと言いたげだったがそれは大きな間違いでありその姿の強さに驚かせられ続けるばかりだった。
「イズティウムゥゥッ光線!!!!」
「この程度かもっと気張れぇぇっ!!!」
「えっちょっ効果なし!!?」
出久必殺の光線も最初こそガードしていたが、徐々に慣れていったのかそれとも全く効かない事に気付いたのかガードもせずにそのまま歩いてくる姿には驚き上に恐怖を覚えた。そしてその姿の圧倒的なパワーに出久は押され続けていた、片腕で簡単に木を引っこ抜くとそれをまるで武器のように構えて殴り付けてきたりする。スマッシュも全く効果がなく、平然とされた上でジャイアントスイングをされて出久はぶっ飛ばされてしまい、皆の所で岩肌に埋まる事になった。
「いやぁ悪い悪い、あれは制御が難しくてな。如何する出久、流石に加減した方が良いよな」
「いえ、続けてください……僕はもっと強くなりたいんです!!」
「良く言った!!よし行くぞ!!」
「はいっ!!でも、少し休ませてください……」
「しょうがないな……まあここじゃあ迷惑になるだろうから向こうでな」
と運ばれていく出久を皆は心配そうな瞳で見つめるのであった。
「あそこじゃマグナさんもヒーリングパルス撃てないだろうからな」
「ご、ご迷惑おかけします……」
『そろそろ本気の出久君と戦って欲しいし明日からはギアを外すのも検討しようか、後ガイ君ももっと他の姿を使ってくれていいからね』
「分かりました」
イージーフュージョンアップ:オーブではなく
形態によって瞳の色が変化したりする。