緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

77 / 232
ニューファイト・イズティウム

「シェアッ!!」

「シュワァ!!」

 

午後、遂にテクターギアから解放された出久。抑制され続けてきた個性、ウルトラマンの力、身体能力全てが解放された事により感覚が研ぎ澄まされ今まで以上に鋭敏且つ細やかなコントロールを会得しながらガイとの組手へと望み続けていた。

 

「SWALLOW SMAAAAAAAAASH!!!」

「ヴォォォオオ!!」

 

今までよりも更にアクロバティックになりながらもその速度が段違いに速く、回転数も多くなったことで威力が格段にパワーアップしたスワロースマッシュとサンダーブレスターのガイの一撃が激突する。空間を揺るがし周囲の木々の間に衝撃波を走らせていく、その中で僅かにガイが後ろに後退るが直ぐに腰を入れ直すと一気に押し込まれていき出久は大きく吹き飛ばされてしまう。

 

「まだまだぁっ!!」

 

吹き飛ばされながらも重力を感じさせない様な流動的な動きで着地しながら立ち上がりながら受けた衝撃を全て受け流す、そして一気に迫りながら腕を振り上げながら飛び掛かってくる一撃。それを回転を起こながら受け流して地面へと向けさせる事で自らに迫るダメージを0にしながら勢いのままガイの背中へと蹴りを叩きこむ事に成功する。

 

「グゥッ、少しは成長したかぁ!?」

 

首筋付近に炸裂したというのに一切揺らぐことがない、圧倒的な力は唯のパワーではなく肉体そのものを支えている。そしてそれを受け止めながらも大地に亀裂を生んだ拳を一気に引き抜きながら自らも回転しながら裏拳を叩きこもうとする。しかし出久は先程と同じように回りながら受け流す。

 

サンダーブレスターの力を身に宿しているガイと戦い続けて分かった事、それは自らを遥かに上回るパワーファイター相手に真正面から向かって行く事は大きな危険も伴うという事。対応出来るならば正面から捻じ伏せるという選択も取れるが出来ない場合にそれに付き合い続けるのは破滅を招くのみ、それに対応する術として柔らかな体術をすればいいのではないかと嘗てマグナに聞かされたウルトラマンコスモスを参考にしながらそれを実践した。

 

「(よしっやっぱり正解だ!!このパワー差は覆せない、だったら相手の力を利用すればいいんだ!!利用し、増幅させて、攻撃する。これは研究する価値がある、これにフルカウルを組み合わせて行けば―――!!)」

「コスモスさんの柔拳か、だがまだまだ甘いぃ!!」

「なっ!?」

 

裏拳を受け流せたと思った出久へと再度の裏拳が迫ってくる、それを慌てて受け流すが再び、また同じような攻撃が飛来し続けてくる。そのままガイは竜巻を巻き起こす程の超高速回転のままの連続ラリアットを出久へと向けて放ち続けて行く。それが必殺技の一つであるスピンドルZアタック、突然のそれに何とか受け流しを行おうとするのだが一撃一撃が回転の勢いで威力が倍増している上に尋常ではない速度での連続攻撃となっているので受け流す事が非常に困難になっている。

 

「ぐっうぅぅぅうわぁぁぁあぁ!!?」

「ヴワァァァァァ!!!!」

 

懸命に回転しながら受け流しを試みるが編み出したばかりで練習も経験も不足している為に回転の勢いに負けてしまうスピンドルZアタックを諸に喰らってしまい再び吹き飛ばされてしまう。無数の木々を薙ぎ倒しながら地面を抉る勢いで倒れこんだ出久にイージー・フュージョンアップを解除したガイが傍に座り込みながら見つめてきた。

 

「おい出久大丈夫か?加減はしてたが……それでもきついか?」

「な、なんとか咄嗟にガードが間に合ったので……まあそれも一瞬で壊されちゃいましたけど……」

『いやいやいやあの一瞬でよくもあんな防御を思いついたね、普通に感心したよ』

 

出久は直撃を受ける直前にフルカウルを解除しながら受ける身体の部分にワン・フォー・オールを集中させる事で防御を行った。それで致命傷を逃れつつ大ダメージを受ける事はなかったがそれでも一瞬でその防御も突き破られてしまった、改めてガイの凄まじさを実感させられる。だが今回はガイも出久を褒める気満々であった。

 

「だが出久、お前の今のは伸ばす価値が大いにあるぞ。お前が参考にしたコスモスさんは月の優しき光のごとき、慈しみの青い巨人って言われてる。怪獣を静めたり救う為に極力相手の身体を傷付けないようにするために拳を握らず、平手のまま相手の攻撃を受け流して戦っている。ヒーローを目指すお前としては目指すべきスタイルの一つだと思うぞ」

「そっそうなんですか、やっぱりウルトラマンにも色んな方がいるんですね……僕怪獣って悪いイメージばっかりでした」

『怪獣も人間と同じだよ出久君。何らかの原因で凶暴化したり、苦しむ者もいる。それを救い怪獣と共存を目指し続けた偉大な方だ』

 

唯戦うのではなく相手をも救う為に立ち上がる、そんなウルトラマンもいた事に出久は驚きながらもその考えに共感した。そしてある意味でこの個性社会においてウルトラマンを自分の力として使う道として適切な戦い方の一つを見出す事が出来た事が嬉しかった。そしてこの戦い方を研究してみる甲斐があると強く思う。

 

「あのガイさん、ガイさんのフォームの中でも柔らかな感じの姿ってありませんか!?是非参考にしたいんです!!」

「俺のだとそうだな……コスモスさんとエックスさんの力を借りたフルムーンザナディウムがそれに当たるか。それじゃあ次からはそれに焦点を当ててみるか」

「お願いします!!」

『うんうん青春だねぇ』

 

 

―――さてそろそろ、始めるかぁ……ヴィラン連合としての仕事もキッチリしないと……開闢の名のままに、そしてテストも大詰めだ……見せて貰おうか、悪魔の名前に恥じないかどうかを……。

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。