緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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イズティウム、胸に刻む。

いよいよ三日目へと入り合宿もさらに激しさを増して行く。出久も新しい戦法、所謂コスモススタイルを見出しその為の訓練を重ね続けている。前日までの激しさから一転、静かな物へと変貌。いきなり衝撃波やら風圧が襲ってこなくなったことに他の生徒達は驚きながらもラグドールが訓練内容が変わった事を聞かれると胸を撫で下ろすのであった。流石にあんな激しい訓練をしているとなればいやでも気になって来てしまう。それは特にA組が顕著で出久が身体を壊しかねない訓練をしない事だけで大分落ち着いた。

 

「まだだ、まだ動きの中に荒さがある。心を無にして眠れる領域に触れろ、そうやってマグナさんの戦友も前へと進んだんだ!!」

「心の中の領域……潜在的な所って事かな」

『傍から聞いてると本当に訳分からないアドバイスだよねこれ』

「マグナさん!?」

 

言わんとする事は分かるような分からないような……これをアドバイスとして戦友ことリブットはパワードとグレートとの特訓中に受けたらしい。その言葉を受ける事でリブットは大きな成長を遂げ、マックスをゴーデス細胞から救いだしマガオロチ討伐に大きく貢献した。それだけリブットの潜在的な力が凄まじかったという事だろう、まだまだ若いのに本当に凄いとしか言いようがない。

 

「やぁっ!!」

「うおおおおぉっっっ!!!?」

 

夕食時を迎えようとするときにガイの腕が唸りを上げながら一気に捩じられた。バーンマイトとの実戦的な組手をつけている際の事。ガイの攻撃を捌き続け可能であれば柔を伴った反撃を行えという指示を受けながら唯々捌き続けていた出久はガイのストビュームナックルの一撃を見事にいなしつつも腕を全身を使いながら回した。捩じられた腕を伝うように一気に迫ってくるそれを咄嗟に地面を蹴りながらの側転染みた回転をする事で無理矢理受け流すがそれでも殺しきれないのか僅かに飛ばされながら着地するガイは出久に不敵な笑みを浮かべながら見つめた。

 

「やるじゃないか、俺の一撃を上手くいなしながらドラゴンスクリューの要領で捩じり飛ばそうとしたな」

「でもまさか今のをいなされるなんて……思いませんでした」

『いやいや今のは中々に素晴らしかったよ出久君』

 

出久としては全く通用しなかったと思える攻撃だったが、マグナはそれを強く評価した。

 

『ガイ君のバーンマイトはスピードを兼ね備えた猛烈なパワーファイターだ、そんな一撃を完全に無力化しつつもカウンターでガイ君を投げ飛ばす事が出来たというのは大きな成果だよ。それに君はそこに個性を混ぜて投げ技のスマッシュの原型を作り出したんだよ』

「えっ!?僕、使ってたんですか!?いや確かにフルカウルはやってましたけど……」

「それじゃあ無意識って事になるな、好機に相手の力に自分の出せる力を上乗せしてぶつけるって事は技術が居る事だし凄い事だぞ?」

 

出久としては信じられないと言わんばかりの顔をしている、ガイの力を利用したカウンターという意識はしたがフルカウルを強めたつもりは一切無かった。それを聞いてガイは腕を組みながら持論を述べる。

 

「もしかしたら出久は元からコスモススタイルに向いてたのかもしれないな」

『其れはあるかもしれないね。気質が元々穏やかで相手を思いやる心が強い人ほど武道に向かないが、護身術には向いている事があるらしいから出久君もそれに近いのかもしれないね』

 

出久はそれを言われて今まで自分がどんな戦い方に向いているのかという事に余り目を向けてこなかった事に気付いた、オールマイトから個性を引き継いだことやマグナに見て貰っていた故か意識していたのは常にこの二人だった。圧倒的な力で相手を屠る、痛烈な一撃を与えるなどなどそれらに目を向け続けてきたが自分に合っている戦法はあまり考えなかった。

 

「お前だけのスタイル、それがコスモススタイルなのかもしれないな。良いんじゃないか、今まではオールマイトとマグナさんの背中を見続けてきたお前が自分と向き合えたって事じゃないか。自分と向き合うっていうのは当たり前のように見えて難しい事だ」

「向き合う……もしかして眠れる領域にタップするってこういう事なんですか?」

『そうとも言えるかもね。ではリブットに合わせてこんな言葉を教えてあげよう』

 

崇高な精神と品格を備えよ

 

自身の言動に責任を取れ

 

創造力と強さを持て

 

同胞を尊敬し、友愛と平和を守れ

 

正義を守り、試練に立ち向かえ

 

一つ一つ、万感の思いがこめられながら告げられた言葉に出久だけではなくガイも背を正しながらそれに向き合った。そこにあるのはヒーローとしてだけではなく、ウルトラマンとして持つべき全てが込められると言っても過言ではなかった。それを聞くと自然に身体に緊張が走り、喉が鳴った。そして自然に思った―――自分もそれに相応しい存在に成りたいと。

 

『出久君、君はまだまだ若い。君には無限の可能性が広がっている、だから焦る事なんてない。一歩一歩確かめながら歩いて行っても良いんだ、私も一緒に行くからね』

「マグナさん……はい、僕今まで以上に頑張ります!!ガイさんお願いします!!」

「よしっ良く言った!!それじゃあ続きを―――っともう夕飯時だな、取り敢えず明日からまた頑張るとしよう」

「はい!!」

 

先を歩きながらも腹減ったなぁと呟くガイと共に皆の元へと戻って行く出久、先程の5つの言葉を胸に刻み何度も何度も確かめながら。そんな出久をマグナは微笑ましく見守りながら純粋にこの先が楽しみになって来た―――が、彼らに悪魔の牙が遂に迫ろうとした。

 

 

―――マグナ、ここいらで消えて貰おう。お前はこの星には無用な存在だ……私の実験場にお前という存在は不要だ。


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