緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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地球のヒーローと光の国のヒーロー

既に夕暮れとなりつつある空へと飛び立った出久、暫く飛行をした後に身体を光へと変換するようにしながら一気に降下するようにして姿を眩ませながら一気に着地する。人気の無い路地裏、だが人の気配も無ければ人の目も全くない。周囲に誰もいない事を確認すると思わず胸を撫でおろす出久にマグナは語り掛けた。

 

『大丈夫さ出久君、私が確認しているから』

「それでも気は使いますって……それでも取り敢えず誰にも見られてないみたいで安心ですよ……」

『しかし出久君―――矢張り君は本当にヒーロー気質だね』

 

笑いかけてくるマグナに対して照れるように笑って誤魔化すがそれでも嬉しさが溢れてしょうがない、それはマグナと一体化して爆豪を救い出せた事から来る興奮故か、それとも今まで経験する事無かった翼などによる羽ばたきによる飛行ではない飛行によるものなのかは分からないが兎に角出久は興奮しっぱなしだった。

 

「でもマグナさんが力を貸してくれたおかげですよ!僕じゃ絶対に出来ない事ですし……」

『何を言うんだ、君があの時何の迷いも無く飛び出したからこそ私は君に力を貸したんだよ。君の行動が無ければ今も無いんだ、君の否定癖は直さないといけないね』

「アハハハハッ……」

 

頭を撫でるように笑う中、指に嵌っている指輪が目についた。美しい宝石の中心部にはある意味ウルトラマンがウルトラマン足らしめる存在であるカラータイマーという物によく似ているものが付いている。この指輪の力で自分とマグナは融合してウルトラマンマグナとしてあの場に立ったのだと改めて認識させられてしまう。

 

『それはマグナリング、私の力を開放させる為のアイテムだ。私と君の意志が一つになった時に変身出来るようになる、っと言っても今回のあれはかなり不完全な状態だったがね』

「あ、あれでですか!?」

『君も分かっただろうが私達の身体に靄のような光があっただろう?あれは融合が不完全だった故に起きた現象なのだ』

「あれで……」

 

一瞬で爆豪を救いだし、たった一撃でヴィランを屠る程の光線を出した上にあっという間にも遠い所まで飛んでくることまで出来るのにまだまだ不完全だと語るマグナに出久は途轍もない力の起点になっているのだと喉を鳴らしつつも恐らく自分が足を引っ張っている事を強く自覚しこれからもっともっと力の使い方を覚えて行かなければいけない事を理解した。

 

『いやしかし商店街での買い物どころではなくなってしまったね、あれほどの騒ぎになってしまったのだから』

「お母さんへのプレゼントはまたの機会にしましょうか……残念ですけど」

『そうする事に―――出久君何かが凄い速度で向かって来るぞ!!』

「ええっ!!?」

 

和やかな雰囲気をぶち壊すマグナの警戒に出久は驚きつつも瞳を鋭く作りながら腰を落としながら構えを取っていた、もしかしたらヴィランの仲間がいて自分達を追ってきたのかもしれないと思ったからだ、マグナリングに触れながらも腕にエネルギーを溜めて何時でも牽制の一撃を放てるようにしているとそこへ自分達を追ってきた―――

 

「HAHAHAHA!!!少年がぁっいたぁ!!!」

「オッオールマイトォ!!!?」

『まさかの再会だ……というか、まさか彼は私達を追ってきたというのか、えっ如何やって……』

 

オールマイトがにこやか笑みを湛えながら指を向けてきた、まさかの登場に出久もマグナも酷く驚いてしまう。

 

「えっ何でオールマイトが!!?」

「HAHAHAッ!!!何、個性の無断使用の注意という名目で君に話したい事があってね」

「えっ!?」

「私の不手際のせいで起きてしまった事件を解決して貰って誠にありがとう……!!」

 

何とオールマイトは迷う事も無く頭を下げたのである。あの№1ヒーローが一般人である緑谷 出久に対して深々と頭を下げている、それに思わず呆気にとられるのだが出久は直ぐに頭を上げて欲しいと懇願するかのような半ば泣いた声でお願いする。それを受けてオールマイトは頭を上げつつも理由を述べた。如何やら自分達と別れた後に不手際が起ってしまってうっかりヴィランを詰めたペットボトルを落としてしまったらしい、それを捜索中に自分たちがそのヴィランを倒したという事になるらしい。

 

「そして……恐らく君には話すべき、なのだろうな。何故平和の象徴と呼ばれる私があんな情けないミスをしてしまったのか、君には見る資格と私には言わなければいけない責任がある」

「責任……?」

 

直後の事だった。目の前で突然、あの筋骨隆々のオールマイトが枯れ木のようなやせ細って骸骨のような男へと変貌してしまった。その姿は商店街に着いた時に軽くぶつかってしまった人であった。

 

「―――オール、マイト……?」

「……これが私が隠し続けた真実であり、私が常に笑顔を浮かべ続けている理由―――№1ヒーローの真実だ」

 

オールマイトは5年前、とあるヴィランとの戦いで重傷を負った。呼吸器半壊、胃袋全摘出、度重なる手術と後遺症によって憔悴してしまい今ではヒーローとして活躍できる時間はわずか3時間程度でしかない。今回のヘドロヴィランもその活動時間との戦いであり、出久と出会った段階でもう活動時間なんて残っていなかった。そしてそこでオールマイトはうっかりヴィランを詰めたボトルを落としてしまった……だがオールマイトを責める事なんて出来る訳もない、寧ろ―――

 

「軽蔑したかい、平和の象徴と評される私のこんな姿を」

「そんな事、ある訳ないですよ……!!だって、そんな身体になっても僕たちのために戦い続けてくれてる人に感謝こそすれど軽蔑なんて以ての外ですよ……!!益々ファンになっちゃいました……!!」

「フッ優しいんだな少年は」

「み、緑谷です!緑谷 出久!!」

「ほうっでは緑谷少年と呼ばせて貰おう」

 

例え骸骨のような姿であろうと、どんなに身体が傷つき倒れたとしても彼は何の迷いも無く戦い続けようとするだろう。それがヒーローなんだと、皆が安心して暮らせるような世の中にする為に自分は戦うんだとオールマイトは―――覚悟を決めているんだと二人は感じた。気高くも偉大な英雄としての魂がそこにある、マグナはそんな輝きを持った地球人がいた事に驚きを隠せなかった。まるでウルトラマンのようじゃないか。

 

「……あのオールマイト、貴方の大切な秘密を僕に話してくれたように僕からも言いたい事があるんです」

「何かな、お詫びという訳ではないが話なら幾らでも聞こう」

 

それを聞くと出久は瞳を閉じながら胸に手を当てて小声で良いですよね、と誰かに問いかけるかのように声を発する。それに思わず首を傾げてしまうオールマイトだが、直後に彼の纏う雰囲気が一変した事に驚いてしまった。先程までファンとしての高揚感や不安など様々な感情が渦巻く中央部にいた少年が一気に冷静沈着な大人のようになったのだ。

 

「Mr.オールマイト、貴方に対する敬意に応える為にこれから私達の秘密を語る。そして驚くかもしれないが受け止めて欲しい」

「緑谷少年……ではないな、別の人格……という訳でもなさそうだ、君がもしかしてあの姿の正体かい?」

「流石の慧眼だ、では改めて自己紹介をさせていただこう。私の名前はウルトラマンマグナ、M78星雲・光の国からこの地球の調査を目的としてやって来た異星人と言う奴だ」

「ええええええええっっっっ!!!?えっなに未知との遭遇なのこれ!?M78星雲・光の国って何!?地球の調査!?ウルトラマン!?寧ろ君達の方がとんでもない秘密で私の方が聞きたい事満載なんだけどぉ!!?」

『オ、オールマイトが見た事も無いような狼狽え方してる!?』

「まあ普通に考えたら驚くの当然だろう、寧ろ正常な反応かも」


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