緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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再度の決意、光の意志。

林間合宿における最悪の事態。爆豪の誘拐。マグナと出久はアークギャラクトロン、そしてガイは洸汰を助ける為に別働隊の一人にして洸汰の両親を殺したヴィランであるマスキュラーとの戦闘が発生した故に気を回す事が出来なかった。だがそれを責める事なんて決して出来ない、アークギャラクトロンにしろマスキュラーにしても並のプロヒーローが束になっても倒す事なんて出来はしない相手と戦っていたのだから……。

 

「いっ出久何処に行くの?」

「ごめん、ちょっと……」

「そ、そう……気を付けてね」

 

合宿は中止、生徒達は即座に家へと帰された。その際にこの件に付いて聞きたがるであろうマスコミらには全く応えない事を条件にだが……誰も喋る気にもならないしそもそもマスコミはこの状況であるが故に雄英には同情的だった。それはプッシーキャッツらの証言などもあるが現場に存在するマグナとアークギャラクトロンとの戦いの後が余りにも激しかったからである、その状況を一切考慮せずに雄英を非難するマスコミは極少数。

 

フラフラとした足取りで家を出た出久、彼は今虚無的な無力感に苛まれていた。あの場で最も力があったのは自分なのに何も出来なかった、無様にも手玉に取られて敗北してしまった。そして爆豪を攫われてしまった……その事実が唯々胸を貫いてくるのである。

 

『現在雄英はプロヒーロー、警察と協力し全力で誘拐された爆豪 勝己君の救出作戦を立案中との事です』

 

散歩すれば何処からともなく聞こえてくるニュースの内容に胸が抉られるような思いになる。如何して自分は……と思いながらも唯々幽霊のような足取りで進み続けて行く、そして辿り着いたのは静寂だけが支配する海浜公園だった。既に日も暮れて間もなく夜の帳はおりそうとしている時間だが、構う事もなく砂浜に降りるとそのままそこで膝を丸めながら顔を伏せた。

 

「僕がもっと強かったら……カッちゃんを守れたかもしれないのに……もっとワン・フォー・オールを扱えたら、あいつをもっと早く……」

 

口から溢れるのは後悔の言葉ばかり、それ以外が出ないのである。唯々溢れてしまう言葉が今の出久の心情を現れているかのようだった……己の実力の無さ、不甲斐なさばかりを呪い続ける……そんな時、頬に冷たい感触が触れた。顔を横に向ければそこには冷えたラムネを持ったガイが立っていた。

 

「ガイ、さん……」

「悪いこっちも色々面倒事が多くてな」

「……いえ」

 

ガイも隣に腰掛けながらラムネを飲み始める、出久もそれに倣うようにラムネを口にするが甘い筈のそれが酷く苦く感じられてしまった。これが今の自分の心の味という奴なのだろうか……ガイは何も聞かずに隣に居続けた、出久も何も言わなかった……だが耐えきれずに口を開いた。

 

「ガイさん、も誰かを救えなかった事ってあります、か……」

「……ある」

 

ガイは語ってくれた。別の地球へとやって来た時にとある少女と仲良くなった、とても親切で仲も良かった。だが其処に復活した魔王獣が出現しオーブはそれと戦った、しかしその最中に少女が近辺に来てしまった。少女はガイがオーブだと知らずにガイを探しに来ていた、そこへ魔王獣の火球の爆風が襲いかかり……

 

「俺は怒りに駆られた、怒りのままに力を振るって魔王獣を倒す事が出来たが周囲を巻き込んだ大爆発をおこしちまった……そのせいで少女は消息不明、俺はその時に感じた無力感と罪悪感に苛まれちまって100年以上もトラウマになって本当の姿に成れなくなっちまった。情けない話だ、先輩方の力をお借りする事でしか戦えなくなっちまった」

「そんな、事が……」

「今はそれを振り切っちゃいるが、流石に辛い出来事だった」

 

ウルトラマンでも救えない命はある、それを今出久は強く実感し理解している。そして今自分は如何したらいいのか分からなくなっている、グシャグシャになった心を纏め上げる事が全く出来ずにいる。そんな隣にもう一人、マグナが現れながら肩に手を置いた。

 

「―――出久君、君はこのままでいいのか」

「えっ……?」

 

そこにあるのはホログラムではなく、確りとした実態として立っているマグナの姿があった。所謂人間態というべきそれは酷く凛々しく、一人前のプロヒーローとなった姿の出久と言える姿だった。そんなもう一人の自分が問いかけてくる。

 

「君の心はなんと言っている、このまま黙って見ているだけで良いのか」

「そんな、の……」

「魂が叫んでいるんだろう、今度は自分が確りと助け出したいと」

「っ―――!!」

 

そんなのそうに決まっているじゃないかっ言葉を強くして言いたかった、だが言っていいのか分からなかった。自分がもう一度、戦っていいのかと。不甲斐ないせいでマグナの足を引っ張って、怒りに任せて戦って……その結果として幼馴染を助けられなかった。だがそれを払拭し、今度こそ友達の手を握り込む事が出来るのであればそうしたいと。

 

「ならやってやろうじゃないか、私達3人で。ヒーロー達も動くだろうがそんな事知った事じゃない、そもそも私とガイ君はこの地球の関係者じゃないからね」

「そうですね、そんな俺達が地球のルールに固執して動くのもあれですし。何か言われたら少なくとも俺は元の宇宙に戻ってヒカリさんに報告に行きます、それにヒーロー達じゃマグナさんと因縁のある奴の対応は難しいでしょうからね」

「マグナさん……ガイさん……」

 

二人は黙って立ち上がると手を差し伸べてくれた、それを出久は握り込むと力強さと共に自分を立ち上がらせてくれた。不思議とその時に心も決まっているような感じがして、覚悟が沸き上がってきた。

 

「今回は確かに私達の負けかもしれない、だが負けたらリベンジマッチをするまでだ。完膚なきまであいつに自分が負けたんだと思い知らせてやる、もう二度とアサリナのような事を繰り返させはしないさ」

「この手が伸ばし助けられるのであれば全力で助けるだけ、出久お前も気合入れろ」

「―――はい!!」

 

―――一度は負けた、だが二度目はない。決意を固めながらウルトラマンは戦いを決意する、目的は爆豪の救出。彼らのルールは唯一つ。

 

『私達にこの地球のヒーローのようなルールはない、だが一つだけ決めておこう』

「どんなルールを?」

『シンプルで簡単な物にしておこう、大丈夫守れるよ。ルールは唯一つ―――戦い抜いてまた逢おう』




―――そう、もうあんな悲劇を起こさせない……アサリナ、君に誓ったからね。

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