「ご馳走様でした!!」
「だ、大丈夫なの出久。凄いご飯モリモリ食べてたけど……」
翌日の事、雄英からの具体的な指示などはなく待機が続いている中で自宅で満足いくまで食事をした出久は手を合わせていた。昨日とは全く違う姿に母、引子は驚きを隠しきれずにいた。何せ昨日散歩から帰ってきて直ぐにベッドに入り、昼近くまで寝ていた出久。息子が落ち込んでいると解釈して特製のカツ丼を用意していたのだがそれを大盛で4杯もお代わりしたのだから。
「うんもう全部吹っ切れた!!確かにカッちゃんのこととか色々心配だけど、僕が心配してたらカッちゃんは絶対にこういうと思う。お前が俺を心配するんじゃねぇ!!って」
「確かに勝己君なら言いそうね」
「でしょ?だから僕は僕らしくしながらいる事にする」
と何かしら前向きになったら息子に対してこれなら心配はいらないかなっと引子は胸を撫で下ろす。ヒーローを目指すのならば息子が危険な事に首を突っ込むのは当然だが、それを一生懸命に乗り越えようとするのを応援するも親の務め。オールマイトに憧れているのならば猶更……確かに心配もあるが息子を心配して自分は家で帰って来た時にご飯を作ってあげたり苦労をねぎらってあげたりしようと改めて決意する。
「それじゃあお母さん、僕友達と約束あるからちょっと行ってくるね」
「いいの出久、出かけちゃって……学校からは極力自宅待機って言われてるけど」
「言われてるけどじっとなんかしてられないから出てくる!もしかしたら泊りになるかもしれないけど大丈夫だから!!」
気分転換を兼ねて遠出をするらしい、少し心配だが雄英に合格してから息子は頼もしく、たくましくなる一方だ。そんな息子を母は信頼して送り出すのがいいのだろうと思って笑顔で送り出す事にした。そんな母の思いを受けながら出久は出発して海浜公園でガイと合流するのであった。
「すいません遅れました」
「いやいいさ、俺も色んな所で飯を食ってきたからな」
『では改めて話をしよう―――爆豪君救出計画だ』
昼前に集まった面々、ガイと合流し、周囲に人がいない事を確認すると人間態としてマグナも姿を現して砂浜をボード代わりにしながらの作戦会議が行われる事となった。
「まず第一目標は爆豪君の救出、と言ってもいいのだがこれはヒーロー側に任せても良いだろう。私達はそれが迅速に行われるように別の手段を行使した方が良いかもしれない」
「っというと?」
「俺が聞いた話だと爆豪が攫われるときに脳無って奴も来てたらしい、ラグドールの個性でそいつの位置も判明してる」
脳無。ヴィラン連合が使役いや傀儡として扱う改造人間に近い存在、それらは個体にもよるが一般ヒーローよりも強いという認識を持つべきだというのはヒーローそしてマグナの共通の認識。物によっては複数の個性すら操るそれらを如何するのかが爆豪救出のキーになると踏んでいる。相手の戦力を削ぎ落とす役目をする事で円滑な行動を起こせるようにする。
「では私達は其方へ行こう、場所は?」
「ラグドールから既に貰ってます、変化があったら随時教えて貰えるように言ってあります」
「ラグドールさんの個性って本当に凄いですね、マグナさん達の事も丸わかりでしたし」
全く以てその通り。仮に防衛組織が出来上がった時には是非とも彼女の力を借りたい、自分達の正体を個性で見破ったのだから基地へ侵入して破壊をもくろむ宇宙人への抑止力にも成り得る。今後とも彼女とは仲良くしておきたいとマグナも思うし宇宙警備隊としてもそんな能力があったら喉から手が出る程に欲しいと思える。
「ヒーロー達は爆豪君救出と仮称:脳無格納庫への攻撃の二つに分かれるらしい。本隊となるのは当然ヴィラン連合の喉元へと迫る救出チーム」
「マグナさんそっちに例の奴がいる可能性は?」
「何とも言い難いがその場合は速攻で其方に行く必要があるだろう……だが私の勘は脳無側だと言っている」
「その理由は?」
ヴィラン連合の本体と言うべき存在は死柄木弔を筆頭するメンバーだがオールマイト共に因縁深いオール・フォー・ワンは背後に隠れる影。加えてオール・フォー・ワンは個性などを操る事が出来る為に脳無格納庫にいるか近しい場所で調整などを行っている筈、ならば奴にとっても有益なのはヴィラン連合の黒幕の傍に居る事。そしてオール・フォー・ワンにとってそちらの方が利益も大きいだろう、互いにとって大きな利を遠ざけたりするとは考えにくい。
「私がそう考えると踏んで裏をかく、というのも否定出来ないがその辺りを加味しても恐らく共に居るだろう。ならば危険性が高いのは脳無格納庫側だ」
「成程……流石ゾフィーさんも信頼する勇士司令部のエリート中のエリートですね」
「それはネオスを指すような言葉だよガイ君。私はまだまだだよ」
と謙遜するようだがマグナは本気でそう言っているのでガイにしては珍しく溜息と共に肩を落としながら出久へと目をやる。
「マグナさんは自分を必要以上に下に見るって出久も思わないか?」
「思います。なんというか謙虚というか……自分に求めるハードルが高いって感じがします」
「だろ?目標がウルトラ兄弟の方々だからしょうがないとは思うけどマグナさんも光の国だと普通にちやほやされる側なんですよ」
「いやそれはない」
「Uキラーザウルスを倒した戦士の一人が何を言ってるんですか」
ウルトラ兄弟ですら苦戦させるアンチウルトラマンというべき究極超獣、それを撃破した一人であるマグナには他の皆と同じくスターマーク勲章の授与が真剣に検討される程だった。が、全員が身に余るなどの理由で辞退している。それ程の人物は光の国でも超有名人、皆の憧れになるのは当たり前。
「だって大体あれはマックスのお陰だし。マクシウムソードとかマックスギャラクシーで一番貢献してたし」
「ま、まあなんか不毛な議論になりそうなのでこの辺りにしましょうよガイさん。こうなったらマグナさん絶対に譲りませんから」
「そうしとくか」
出久も出久で大分マグナに対する扱いを学習してきたのか、話をその辺りでぶった切る。
「さてと、そろそろオールマイトにも連絡入れておこうか。前以て別動隊名義で他のメンバーがフォローに入るって事は組み込んでくれたらしいけど……」
「というか結構これってヒーロー側にしたら俺達の事が謎なのによく受け入れてくれましたね」
「オールマイトに根津校長、サー・ナイトアイが保証してくれたおかげだね。感謝しておこう」
「そ、錚々たるメンバーですね……」
確かにそんなメンバーからの保証があれば安心して任せられると判断する事だろう。連絡するとオールマイトから声が聞こえてくる。
『も、もしもし!?緑谷少年かい!?マグナさんやガイさんはどのように動くのかもう少し具体的にお願いしても良いかな!?』
「あれそんなにふんわりしてましたっけ、結構気合入れて提出したんですけど」
『えっマグナさん!?』
出久からの携帯だったので出久だと思っていたオールマイトから驚きの声が漏れてきた、今回はマグナも人間態の形で参戦する事を考えているらしくその前段階として準備運動を兼ねていると伝えつつ話をする。
『成程……分かりました上手く伝えておきます―――ナイトアイが』
「それなら安心ですね、信頼してない訳じゃないですけどオールマイトは強気で押されると負けて喋っちゃいそうですし」
『うぐっ……彼にも同じことを弱点として指摘、されました……』
「ああやっぱり」
そんなやり取りがありつつもオールマイトからある事が告げられた―――ナイトアイの予知による調査を試みたが失敗に終わったとの事。それはウルトラマンが関与する為か、それとも同じく地球外からの脅威が中核に関わっている為か……謎だが具体的な未来を見る事が出来ず、巨大な影と光のような物が見えただけだったらしい。ヒーロー側はそれを黒幕とオールマイトと見ているらしい、実際は黒幕と繋がるマグナの因縁の相手が操る何かとマグナとオーブの事だろう。
『今回も貴方方に助けを求める事になってすみません……』
「オールマイト、一つ言っておきましょう」
『何でしょうか』
「
『―――ッ……はい!!!』
その力強い言葉はきっとマッスルフォームでの言葉だったのだろう。そしてそれを最後に通話は切られた、一同は顔を見合わせながら立ち上がった。
「さあ、行こうか―――光があるからこそ闇もある、闇があればこそまた光もある。それを示しに行こう」
「やりましょうマグナさん、ガイさん」
「ああ、やってやりましょう……俺達はウルトラマンだから!!」