緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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進軍―――前の一幕

目的地へと向かう道すがら、出久とガイはとある人物と面会し準備を整えていた。その人物は……何時もと同じように瞳を輝かせながら装備を広げて待っていてくれていた。

 

「うん完璧な仕上がりだ……」

「全く緑谷さんってば急に連絡してくるんですから大変でしたよこういった場合はせめて三日は頂きたいですねまあその分テンションも高かったので気合入れて間に合わせましたからね全て私の自信作ですよ好きな物を持っていてくれていいですよさあ喝采を浴びる程の大喝采を一心不乱の大喝采を!!」

「話には聞いてたが本当に面白いお嬢ちゃんだな」

『それで済んだら私には頭痛は起きてないんだけどねぇ……』

「いやはや明ちゃんが本当にすいません……」

 

そこに居るのは発目であった、近くにはグルテンも当然のごとくいる。今回の作戦の為に装備類の作成をマグナ経由で出久が依頼していた、突然且つ無茶な注文だったのだがあっという間に完成させて見せた辺り未来の天才メカニックを自称するのは伊達ではないという事だろう。まあどちらかと言ったらブレイクスルーを起こしまくるという意味での天災である事が否定できない。

 

「しかしマグナさん本当に大丈夫なんですか、相手はあのベリアルのメダルをも所有している敵です。アークギャラクトロンの事を踏まえると……この先に待っているのは激戦という言葉では利きません」

『でしょうね、だからこそ私達が出向かなければいけないんですよ。奴の相手は私達でなければ務まる事はないでしょうからね』

「まあ、そうかもしれませんが……」

 

グルテンはマグナたちを行かせる事は賛成とも反対とも言い難い立場で言葉を作れずにいた。この地球のレベルで到底太刀打ちできない事は目に見えているのだから対処出来るマグナらで向かうしかない。だがその彼らですら100%勝てるという保証もないし敗北とてあり得る可能性も存在している、協力者としてだけではなく友人としてそんな場へ送り出していいのかとグルテンは思案し続けている。

 

「どれも最高な品質だな……まさか地球でこんなレベルの物をお目に抱えるなんて驚きだ。お嬢ちゃんアンタ大成するぜ」

「いやはやぁ照れますねぇウルトラマンの方にそう言って頂けるとぉ~♪そんな私を支えてくれているのは数々の協力っ―――いえ実験体になってくださった緑谷さんの功績でもあるんですねぇ!」

「成程こういうタイプだったか」

 

ガイは一瞬で発目の思考回路と性格などをすべて把握しながらもこう言った人間は絶対に裏切る事がないのである意味で仲間として100点を与える事が出来ると思った。しかしながらどんな実験をしたのだろうかとも思った。そんなことを考えながら自分用の装備を圧縮させて懐にしまうのであった。ガイもガイでまさか自分用の物まであるとは思っていなかったのかやや嬉しそうである。

 

「ああでも気を付けてくださいね。大急ぎ且つ貴方のデータがないので基本的な部分は緑谷さんのデータを使いながら様々な点を考慮しつつリミッターを外してますので酷くピーキー、まあウルトラ戦士の方なら大丈夫だとは思いますが付いてこれないと思ったら即座にパージして廃棄してください」

「了解した」

 

発目としても出来る事ならば完璧な品を使って欲しいのだがガイのデータはない、合宿ではコスチュームなども無しなのでそれらからデータを吸い出す事も出来ないので完全な予測と計算でやるしかなくそれらを撤廃した仕様にした。が、それ故に寿命は極端に短いと断言される品となったがそれでも十分過ぎるとガイは満足気。そして出久へは―――

 

「緑谷さんには此方を用意しましたよ調整し直したウルトラマンスーツに新アタッチメントAGULです!!今回は対応力が重要だと思い機動性重視の此方にしたんですけどこのAGULもアップデートしたんですよ聞いてください実はこの前凄い素材を見つけて博士と一緒に研究したんですよそしたらグンバツに硬度が高い上に軽量なんですよそれを今回搭載して機動力重視ながらも防御力の点も確りとクリアするという快挙を達成いたしました!!」

『おおっそれは素晴らしい。アグルさんも体表がボディバリアーという物で身体を覆っているらしいからそれにも合ってるね』

「私に今宇宙と時の流れが来てます」

「否定出来ないから明ちゃんの場合凄いんだよなぁ……」

 

大きく快活に笑っている発目はそう褒めないでくださいとグルテンに言うのだが実際は全く褒めていない、寧ろマグナ的にはもう注意したい気持ちでいっぱいとか自分の発明の危険性とか分かってるのかと問い詰めたい。いや実際問い詰めたがのらりくらりと躱されたり「ハハハッその程度必要経費です!!それにいざという時は緑谷さんも巻き込むので!!」と返されてもう諦めモード。まあいっその事巻き込んでくれた方が自分の目が届くか……という方向に入り始めている。

 

「これなら―――」

「待ってください」

 

カッちゃんを助ける為に全力を尽くせると言葉を止めるように発目が出久の手を掴みながらその目を覗き込むように立ち塞がった。今までにないような行動に出久とマグナは驚き、ガイは素直に頭に?を浮かべ、グルテンも如何したのかと目を白黒させる。

 

「緑谷さん、装備を渡すに当たって条件があります」

「じょっ条件って実験に協力とか……?」

「茶化さないでください」

 

何時にない程に言葉に圧を掛けてくる姿に出久も真面目になりながら向き合う。僅かに顔を伏せ唇を震わせながら彼女は言った。

 

「絶対に無事に帰ってきてください、それが絶対条件です」

「は、発目さん……」

 

その言葉にガイは確かに絶対条件だな、と深い事も考えなかったのだがそれ以外の面々は顎が外れんばかりの思いでそれを聞いた。あの発目がこんな事を言うのか!?と思う一方でマグナとグルテンはほほぅこれはもしや―――と思いながら出久の反応を待つ、そして真面目な言葉に相応しい表情と気持ちを作りながら「約束するよ、絶対に帰ってくるから」――――

 

「でないと次のベイビーが次のステップ踏めないんですよマジで緑谷さんってば私のベイビーにとっての生命線なんですから」

 

言葉を吹き飛ばした上で踏み倒すような何時もの発目のご登場にマグナとグルテンは全力でずっこけ、ガイもコケそうになり肝心の出久は……

 

「そっちの心配ぃぃぃい!!?一瞬でもなんか僕の事を心配してくれて感動してたのに色々と台無しだぁぁ!!!」

「いや心配はしてますよ。だってそうじゃないと私のベイビーが成長しないので」

「色々とかみ合ってなぁぁぁあああああいぃぃぃぃ!!」

 

 

『あ~あ、おじさんってばラブコメの波動を感じてたのに無駄になっちゃったよ』

「僕もですよ。あの明ちゃんが遂に!?って結構ドギマギワクワクしてたのに……まああの子がそう簡単に変わるとは思ったりしませんが」

「発目嬢ちゃんって思ってた以上にあれですね……なんか出久が不憫に覚えてきた」

『あの程度じゃまだまだ不憫の域には入らないよ。雄英だとあれ以上の事にほぼ毎日巻き込まれてるからね』

「あれ、そう考えると出久と一緒だから強制的にやらされるマグナさんが一番不憫なのでは?」

『……あっ確かに言われてみたらそうじゃん』

 

だがこれが一番なのかもしれない、下手に恐縮されるよりも普段通りなまま出発する方がリラックスできるという物だ。まあそれを意図して発目が行ったのかと言われたら絶対にそれはなく本人は自分の欲望に素直に従っているだけなのだろう……。

 

『それじゃあ行こうか改めて、途中でご飯食べてね。何処で食べようか』

「シンプルにカツ丼で如何です?勝負に行くんですしゲン担ぎって事で」

『いいねぇデク君の好物だもんね。私が奢ってあげるから好きなだけ食べていいよ』

「ご馳走になります!!」

「僕のお財布は経由しちゃいますけどね」

『細けぇ事は良いんだよって奴だよ』


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