神野区の一角にあるカツ丼チェーン店。店内には今視線が集まっていた。
「カツ丼大盛お代わりお願いします!」
「こっちも頼むわ」
「はっはい畏まりました!!」
カウンターでは既に丼が幾つも重ねられて塔のようになっている。傍に店員が数人待機して続けて対応出来るようにしながら必要になれば器を片付けながら大急ぎで洗って乾燥機に掛けながらも調理済みの物を運んでいく、そして運ばれるとカウンターに座っている二人の男によって軽々と平らげられて行く。もう何杯食べたのだろうか、それが一体何時まで続くのかと興味本位で見つめている者やスマホでネット配信してみる者まで居る。
「あのすいません、写真いいですか?」
「んっ写真?構いはしないが何が楽しいんだ?」
「記念です!」
「ああ、まあいいか」
と一旦手を止めて撮影に付き合うなどをしながらも食べ続ける事約1時間、最後のカツと米を一息に口腔へと収めるとよくよく噛み締めて味わいながら飲み込んでどんぶりを置いて手を合わせた。それに周囲からはおおっ~という声と共に拍手で満たされた。二人が食したカツ丼は全て大盛、合計して50杯も食べた計算になりチェーン店が全国始まって以来初となる数となった。
「喰った喰った……もうこれ以上何も入らねぇな」
「ぶふぅっ……ちょっと食べ過ぎましたかね」
「その位が丁度さ後腐れなくて。もっと喰っといたほうが良かったなんて未練起きねぇだろ?」
「ハハッ確かに」
丼に隠れながらも残ったお茶を飲みながらも二人は席を立つ事にした。周囲から良い喰いっぷりだった、カッコよかったぞ、ファットガムにも負けない喰いっぷりだったなどなどの声を受けながら会計を済ませる。税込みで4万円を突破した客は初めてだと店員も若干営業スマイルが引き攣っていた。
「あ、あのご迷惑でなければお写真いいんでしょうか。お客様さえ宜しければお写真を掲載させて頂きたいのですが」
「嗚呼っその位ならいいぜ、何なら俺たちの写真を使って大食いチャレンジやってくれても良いぜ」
「その時見計らって来る気ですか?」
「そんなつもりはないけどな」
と応えつつも感謝を示しながらも現れた女性店長と一緒に勝利と平和のVサインを浮かべて写真を撮って二人は店から出て行った。そしてその時に撮られた写真はその店舗で大切に飾られる事になった。そしてそこに映っているのはこれから戦いへと挑むガイと出久であった。
「ラグドールから貰った座標……よし此処だな」
夕暮れの終わりも迫り始めている頃合、出久とガイは目的地である脳無格納庫へと到達した。夕暮れのか細い光が益々頼りなく始めてきた、廃工場が立ち並ぶ区画の一角に存在する脳無格納庫。いざ前にすると自然と心が引き締まる、それだけ意識が出来ているという事だろう、揺れ始めてくる心を静める為に呼吸を整えながら出久は懐のカプセルを取り出した。
「オールマイトからの情報では此方に来るメンバーも手練れ揃い、脳無が完全に動き出す前に制圧出来るだけの戦力を割いているらしい。だから俺達が対処すべきはそれ以外、ベリアルさんのメダルを持っている奴が標的」
『異論はなしだね、地球の平穏は可能な限り地球の手で勝ち取るべきでもある。私達はそれ以外を摘み取ろう』
そう言うのもヒーロー側に配慮しつつもウルトラマンとしての考えもあるのだろう、地球の平和は地球人の手で勝ち取るべき。そこに別の力が働いているのならば自分達はそれらを排除するだけ、やや冷たいようにも感じられるかもしれないがそれが当然だと出久は考えながらも覚悟を決める。
「行きましょう」
「ああ、行こう」
そして足を踏み入れる。敵の敷地、完全なる敵陣、だが躊躇も無く迷いも焦りも恐怖もない。あるのは唯一つだけ―――使命を果たすという意志のみがそこにある。外壁に到達すると出久が壁に触れながらマグナが力を使い、光の扉を作り壁抜けを行って内部へと侵入する。そして中にあったのは―――無数のケーブルやチューブが接続されている水槽のような物の中で静かに眠り続けている脳無たちの姿。
「―――っ!!」
「脳無格納庫、その仮称は正しかったらしいな……」
『全くだ。中々如何して気味が悪いな……無数の兵器群と言えばロマンがあるだろうが、実際は人間を元にした生物兵器……』
これだけの数の脳無、一体どれだけの人命が犠牲になったのか……素体となった人達、個性を奪われる過程で精神が崩壊してしまい実質的な死を迎えてしまった人を考えると夥しい人々がこの脳無の犠牲となった事だろう……それらに思いを馳せながら前へと進もうとした時だった、奥の暗闇から此方へと向かってくる足音が聞こえてきた。
「誰か来るぞ」
「ヴィラン連合……!?」
―――その質問にはYESでありNOでもあると返答させて貰おうかな。単なる外部協力者的な立ち位置でね。
そう言いながら闇の中から姿を現したのは白衣を身に纏った神経質そうな顔をしながら眼鏡をかけた男だった。男はニタニタと気持ちの悪い笑みを浮かべながらも仰々しく此方を小馬鹿にするようにしながらも胡散臭い礼儀正しさをとって礼をする。
「やぁっこうして会うのは初めてだね、私の名前はアウローラだ。お察しの通り地球外生命体という奴さ、ああそれはそこの彼と君の中にいる巨人と同じなんだけどね」
『貴様と一緒くたにされるのは不快極まる事なんだけどな』
「同感です」
「酷いねぇ異星人なのは一緒じゃないかい―――ウルトラマンとて突然他の星に介入するじゃないか、何が違うのかな?」
明らかに分かったうえで言っている、煽っている。出久は苛立ちを覚えつつもマグナに落ち着くように言われる。
『悪意を持って星々を滅ぼす存在と一緒にされるとは心外だ―――Uキラーザウルスも貴様の差し金だったのだろ』
「何だ知ってたのかよ残念だなぁ折角教えてあげようとしたのに……萎えるじゃないか」
『ヤプールを復活させる手助けをし、その見返りとして光の国の壊滅を目論んだ。あの時そう聞いた』
「んだよ喋りやがったのかよあのクソ異次元人。美学の何たるかが全く分かっていないな」
突然口調が荒れ始めた、頭を掻きむしりながら自分のやりたかった事を邪魔された事への怒りをあらわにする。同時に溢れ出すヤプールへの怒りや恨み言、様々な手配と準備をして態々Uキラーザウルスの強化の為に人工太陽のことまで教えてやったのに失敗した上にそこまで話すなんて愚かにもほどがあるだろうがと口走りながら突然だらりと両腕を上げながら、その身体から人間の皮が―――剥がれて行く。古い表皮が剥がれて行くように……
「ふざけた真似しやがって……まあいい、今度は俺が殺そう。その前に此処でお前を殺すとするよマグナ……あの時のようにまた助けられるのかなお前は……勝てると良いなぁ……この俺に」
現れたそれはまるで身体の外に骨があるような姿をしつつも内側にメタリックな輝きをした身体をしていた。頭部から鋭利な角が二本突き出してまるで悪魔、全身を覆う骨格も酷く硬質且つ冷ややかな印象を与える姿に思わず出久とガイは身構えた。そして何処からともなく出現させた大鎌で地面を鳴らしながら此方を睨みつけた。
「さてマグナお前は俺に勝てるのか、あの時よりも強くなった俺に」
『勝つさ。その為に来た―――覚悟しろ、今度こそ貴様を倒し尽くせてみせる。アウローラ!!』
「アハハハハハッ面白い、さあ来いよ俺を殺し尽くして見せろぉ!!レイブラッドの継承者であるこの俺を……殺してみせろぉ!!」
遂にエントリー、今まで怪獣を使って襲ってきた存在。その名もアウローラ。