緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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導け、必殺技。

「フゥゥゥゥッッッッ……」

 

静かに精神を統一する、荒れ狂う嵐のような猛々しさも良いが今は別のものを追い求める。静かな夜、月の光が美しい景色を満たす凪の夜、そんな心を作りながら出久は嘗てマグナに投げ掛けられ、心に刻んだ心の頭の中で何度も何度もリピートさせながら言葉にする事でさらにはっきりとしたイメージを作り続けて行く。

 

「崇高な精神と品格を備えよ。自身の言動に責任を取れ。創造力と強さを持て。同胞を尊敬し、友愛と平和を守れ。正義を守り、試練に立ち向かえ……ハァッ!!!」

 

閉じていた世界を開けながら、震脚を行いながらも迫ってくるエクトプラズムの猛烈な蹴りを見据える。呼吸を乱すな、気持ちを正せ、思考を一定に、それら三つを軸にするようにしながら首元へと向かって行く一撃を防御するのではなく、攻撃の勢いを何一つ削ぐ事も無く受け流した。それにエクトプラズムは素直に驚きながらも焦った。今までの経験でも受け流されるという事はあったが此処までの物ではない、自分の想った勢いのままの攻撃が全く別の方向へと向かって行く。頭が白くなりそうになるのを強引に正しながらセメントの壁を蹴る。

 

「ゼァッ!!」

「シェァッ!!!」

 

加速した蹴りは又もや完璧に受け流される、しかも今度はそこに出久の力が加えられて猛烈な勢いで壁へと叩きつけられそうになる。が、プロヒーローとして活躍した経験から対処し再び襲いかかる―――が今度は受け流すのではなく完璧に勢いを殺すように回転しながら受け止めるとそのまま速度を上げながら回転していく。更に加速しながら閃光を纏いながら竜巻のような勢いのままエクトプラズムを投げ飛ばした。

 

「ULTRA HURRICANE SMASH!!!」

「グォォォ!!!」

 

爆風染みた竜巻に拘束されたエクトプラズム。爆風によって身動きが完全に封じられている上に周囲の状況把握も出来ぬままに天井へと凄まじい音を立てながら叩きつけられる。ダメージの許容上限を一気に超えたのか分身が四散するのを教師陣も驚いたように見つめた。

 

「まさか初日から必殺技を成立させるとはな……」

「しかも凄まじい威力ですね、緑谷君は光線が目立ってましたが肉体面も凄い事を再認識させられた気分です」

 

セメントスの言葉に相澤も同意する。光線という唯一無二の持ち味、それがどうしようもなく目立ってしまっているがそれはあくまで切り札にしか過ぎない、出久の優れている点は身体能力も含まれている。加えて今までの戦闘スタイルとは真逆とも言える柔拳、防御主体とも言える戦闘スタイルは突然すぎる変更でもある筈なのに既にもう形になっている。

 

「これは凄い台風の目になるんじゃないですかね、緑谷君」

「……いやそれ以上だな」

 

 

「―――フゥッ」

 

ミッチリと行われている新必殺技開発、既に日も傾き始めている。額から滴ろうとしている汗を拭いながら手応えを感じられた事に僅かな満足を浮かべた。ガイとの特訓で見出す事が出来た新スタイルであるコスモススタイルに大分思考も慣れ始めているのか動作から動作へと繋げる隙間、動きとのタイムラグもかなり小さくなってきている。これは成果と思っていいのだろうと拳を握り込む。

 

『調子良さそうだね出久君』

「(はい、大分慣れてきました。でも意外だったのがパワータイプじゃない相手にもこのスタイルって結構有効なんですね)」

『元々がサンダーブレスター対策で生まれたからそう思うのだろうね、だが自分の攻撃を受け流されるというのは相当に厄介な事だよ。パワーとスピードにメタを張りやすいんだ、まあ逆に言えば同じようなスタイルの相手の場合は互いに攻めきれないという事態になりやすいが君にはパワーがあるだろう?』

「(成程……)」

 

技術に対抗出来る代表例が技術、という言葉に納得が行く。だが自分には力はある、ある意味テクニカルスタイルを取る相手にとって一番やりずらいのが今の出久なのかもしれない。そう思いながらTDLを出て校舎へと向かおうとすると麗日に飯田そして蛙吹に呼び止められた。

 

「お疲れ様緑谷君。早速必殺技を開発するなんて凄いじゃないか!!」

「いやまだまだ練りが甘いんだ、受け止めるまでは良いけど最後は力任せだったから」

「ほぇ~……凄いねデク君」

「所で緑谷ちゃんはこれからどうするの?」

「僕はこれからサポート科の開発工房に行くところ」

 

そこで思わず三人の顔が凍り付いた。サポート科、という事は……。

 

「も、もしかしてまた……?」

「ああいや、今回の事でコスモススタイルのデータが取れたからその修正をお願いしようと思って」

「そう、なのね……また発目ちゃんに呼ばれてるのかと思ったわ……」

「済まない緑谷君、俺達で何とか彼女に言ってあげられたら良いんだが……」

「その気持ちだけで十分だよ、それに発目さんは言っても聞かないし―――まあ僕の場合スーツ作ったの発目さんだけどね……」

『言葉が、見つからない……!!!』

 

詰まる所、出久の調整に当たってはどうあがいても彼女と関わる事が必須であるという事である。何とかした上げたいとは思うのだが、出久はまるで悟りを開いたかのような明るい笑みで大丈夫と言いながら行き慣れてるから案内すると先導を始めるのであった。そして到着した工房―――

 

「此処がサポート科の開発工房―――」

 

 

BOMB!!!!!

 

 

『……ええええええええええっっっっっ!!!??』

 

の扉を開けようとした瞬間扉が爆発と共に吹き飛び、爆風が出久を飲み込んでいくという光景は三人の目の前で起こった。思わず一瞬反応出来ず、沈黙を作ってしまったほどに唐突だった。工房の奥から咳き込む声と共に呆れたような怒ったような声が聞こえてくる。

 

「ったくお前って奴は……思いついたもの何でもかんでも組むんじゃないって言ってるでしょうが……」

「フフフフフッ失敗は成功の母ですよパワーローダー先生私にとって失敗とは無意味ではなく更なる成功を呼び込む神風であるわけですよそれは今までの緑谷さんでの実験が実証しておりますそれは今まで提出した私のベイビーが証明しているんですよそして今回のこれも価値があるものなんですあの有名な発明王トーマス・エジソンは作ったものが計画通りに機能しないからといってそれが無駄とは―――」

「今はそういう話じゃないんだよぉ、一度で良いから俺の話と言う事を聞きなさいって言ってるんだ発目ぇ!!ったくやっぱり緑谷君に来て貰わないとダメかこいつは……」

「もう来てますパワーローダー先生……いつものですねお引き受けします」

 

煙が晴れて行くそこには咳き込んでいるパワーローダー、そして―――発目の下敷きになっている出久がもう慣れましたと言わんばかりの顔で手を上げて名乗り上げていた。

 

「OH……いたのか緑谷君」

「はい来てました……」

「おおっ誰かを下敷きにしてしまったかと思えばこれはビックリ大親友の緑谷さんじゃあぁぁりませんかこれは失敬失敬いやぁ常日頃から割かしセクハラブチかましてる私ですけど不意の事故で貴方を押し倒してしまうなんてイケない事をしちゃいましたねついでにパワーローダー先生にも見られてしまってますからこれは私が責任を取った方がよろしいですかね!?」

「いや、明確な事故だから取らんでいい取らんでいい……」

 

そこにある光景に思わず麗日と梅雨は凍り付いたのだが瞬時に解凍される。何故ならば淀みの無い言葉と表情があったからである、もう諦めている顔となれてますからと言わんばかりのそれに何かを言う気が失せた。発目に付き合い続けている出久にとってこの程度の事はもう慣れっこというか日常茶飯事だったりする。今回はラッキースケベ的に発目が出久を押し倒すようになりながら胸を押し付けている構図だが、出久はああっいつものかという事に思考が支配されているのでそれに意識が行っていない、それ程に別の意味で発目と出久の付き合いは長い。漸く退いて貰えたので立ち上がると―――廊下から二つの人影が此方へと小走りになって向かってきた。

 

「凄い音と爆炎が聞こえてきたんですけど大丈夫なんですか!?他の先生方はいつもの事だと気にしないでと仰ってましたが!?」

「心配しないでください、これがお昼時にお話ししたこの大馬鹿娘のやらかしですから」

「これが日常的に……いやパワーローダー先生、貴方はとても苦労されているのですね……」

「いや本当に苦労しとるのはそこの生徒ですよ……」

 

と指を指された先に顔を向けた時、その二人は酷く驚いたようになりながらその生徒とやらを見た。そしてその生徒である出久は此方を見る二人へと顔を向けると同じように驚愕する。

 

「えっメリッサさんにデヴィットさん!!?」

「出久君貴方だったの!?普段から発目さんという方のブレーキになっているというのは!?」

「まさか君だったとは……いやある意味納得が行くが……」

「それはそれで不名誉です……」

 

何とそこに居たのはオールマイトと親交があり、彼のヒーローコスチュームを手掛けたデヴィット・シールド博士とその娘さんのメリッサ・シールドであった。




という訳で劇場版からシールド親子がエントリーです。未だに劇場版のプロットが出来ておりませんが……ラスボスが如何しても決まらなくて……。

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