「フゥゥゥゥッッッッ……」
デヴィッドとメリッサとの再会に喜びながらも出久は自らのスタイルの質を上げる為の努力をし続けていた。確立こそ出来ているがそれが優れているのかと言われたら正直眉を顰めてしまう程度のクォリティでしかないと言わざるを得ない。目指すべき理想形は正しくスタイルの元になったウルトラマンコスモスのそれ。
「フル、カウル!!!」
個性を発動、ウルトラ・フォー・オールが起動して全身の身体機能が一気に上昇していく中で視界の端に円の形になっているゲージが生まれてそれを満たすように光が溢れて行く。
「30%……!!」
林間合宿での一件もあり上限も増えた事も影響し、一気に出来る事の幅は増えた。前以てセメントスにお願いした山岳部を再現したコースへと疾駆する。他の皆の訓練している場所の周囲を駆け巡るようなコースを駆け抜けながらも更に全周囲に気配を向け続けて行く。半分を過ぎた頃に山肌の一部が隆起し、意志を持つように鋭利な棘を形成しながら向かってくる。
「ッ―――!!!」
迫りくる棘。大きさ、形、重さ、全てが異なるようにお願いしていたがその通りになっている。最初難色を示していたがだからこそやりがいがあるというと説得した結果がこれだ。思っていた以上の物に感謝しつつもスピードを一切緩めないまま棘の壁のように迫ってくるそれらへと飛び込んでいく。
「セエイ、ヤァァァッ!!」
加速を付けた猛スピード、であるのにも拘らず棘の全てが全く別の方向へと誘導され尽くしていく。誘導式のミサイルとも言えるセメントの棘の嵐がECMによって妨害されあらぬ方向へと飛ぶように。真上に、真横に、真下に落とされていく。セメントスも驚きを隠しきれなかった。
「まさか、こんな事を可能にするとは……」
今出久が受け流しているそれらは彼のコントロール下にある。彼によって操作されているそれらが別の方向へと誘導される、分かっていても受け流され全く別の方向へと力を流されてしまう。操っているセメントを砕かれるというのは日常的な事だったが、一切ダメージを与える事も無く流されるなんて経験はプロヒーローとしても初めての経験。
「イヤァァッ!!!」
「参ったね、全く……少し自信無くしちゃうよ」
そう言いながらも生徒の成長ぶりに嬉しそうな笑みを浮かべている自分がいる、これも先生の醍醐味かと思いながらコースを突破した出久へ素直な称賛を向けた。
「HEY緑谷少年、凄いじゃないか。凄い成長振りだ!!」
「あっオールマイト!!」
コースを抜けた先ではオールマイトが軽く拍手をしながら待ってくれていた。オールマイトもオールマイトで出久のスタイルの変わりように本当に驚きを隠せずにいた。
「以前とは全くスタイルが違うじゃないか、テクニカルスタイルへと転向したのかい?」
「林間合宿でガイさんとの訓練で色々学ぶことが多くて、それで対抗する為も踏まえて実践してみた戦法が僕に合ってるんじゃないかって言われて研究中なんです。コスモススタイルって言うんですけど相手を倒す事じゃなくて無力化する事を目指したスタイルなんです」
「成程……」
オールマイトも林間合宿でのことはまだ詳しく聞けていない、特にガイがどんな訓練を出久に施してくれた事については聞く事が出来ていない。だが今までは自分を模していた、またはベースにしていたスタイルから一気に様変わりしている。単純な殴り合いをするのではなく無力化する事を目指したスタイルだと聞き、確かにそれこそヒーローとして適した物かもと思う。
「実は少し話があるんだ、この後はB組が此処を使うらしいからいいかな」
「分かりました」
オールマイトに連れられてTDLから出ていくと少ししてそこへB組が向かって行くのが見えつつもその後に続いて行く。その先は当然自分達は何時も秘密の会話に使用している談話室、マグナも登場すると話を切り出す。
「実はですね。緑谷少年には仮免試験を免除するべきなのでは、という話が持ち上がっております」
「えっ……ええええっっっ!!!??」
折角今仮免試験に向けて頑張っているのに免除!?どういう事なの!!?と軽いパニック状態になっている出久に代わってマグナが話を聞く事にした。
「単純な話でして、緑谷少年は既にプロヒーローに匹敵する実力と判断力などがあります。故に試験をせずに資格を与えた方が良いのでは?というのがあります。これは私だけではなくナイトアイやグラントリノ、そして根津校長も同意見だそうです」
「フム……」
「と、ぶっちゃけますと緑谷少年が試験に出ると必要以上に試験で不合格者を出してしまうのでは……という不安もありまして」
そう言われるとある意味納得する。仮免試験での合格ラインを50だとした場合、出久の場合は既に200を超える力を持っているとも言える。加えて仮免試験の第一次は戦闘関連、逆に他の参加者への巨大な壁となりすぎてしまう。
「マグナさんの宿敵のアウローラ、あの存在の発覚そして新しいヒーロー組織の立ち上げに因んで多くのヒーローを望んでいる訳です。言い方は悪いですが組織へと入るヒーローの後釜と成り得る存在を多く確保しておきたいのです」
怪獣に対するヒーロー組織。名前こそ決まっていないが発足するのであらば参加すると名乗りを上げているヒーローは数多い、神野区で起こったマグナとオーブの戦いぶりは多くの衝撃を与えている。故に急速に構築が始まっている組織、あれだけの脅威には多くの力が必要になると思われる。そして発足後に起きるのはヒーロー飽和社会とも言われていた現代であり得ないとされるヒーローの不足環境。それを回避する為に今のうちに有望な若者を確保したい思惑がある。
「確かにそう言われると……ですがそれでは出久君だけが合格してしまうのはズルいのでは?」
「ですので第二次試験から、という事になると思います。そちらは救助をメインにするという話でしたので」
確かにそれならば出久にも多くの事が出来るだろう、寧ろ其方こそがヒーローの本分とも言える。マグナは出久の方を見ると確かにそれなら……と言わんばかりの表情を浮かべている。確りとした事情もある訳だしやや不満げではあるがそれならしょうがないかと肩を落とす。
「分かりました、そう言う事なら……しょうがないですね……」
「済まない緑谷少年、分かってくれて感謝するよ。根津校長に推薦状を出すように連絡しておきます」
この話は出久だけが特別、という訳ではないらしい。他のヒーロー校でも取られているらしい。推薦を受ける条件として校長だけではなく複数のプロヒーローの認定を受ける必要があるが出久の場合は既にクリアされている。
「しかし緑谷少年、君のコスモススタイルだったかな、あれは確かに凄いと思う。だが同時に相手を倒す為の力を磨く事を忘れてはいけないよ」
「やっぱり、そうですよね」
「世の中にはどうあっても和解不能という存在もありうるものさ、それを無力化するなら力で抑えつけるしかない」
オール・フォー・ワンと戦い続けてきたオールマイトだからこそ重みのある言葉だった、確かにコスモススタイルでは難しい面があるのも確か。だからこそ他の力を磨く事を忘れてはいけない……それを再認識されたような気分だった。そんな自分を励ますようにマグナが背中を叩く。
「大丈夫さ出久君ならやれるよ、それに君が参考にしたコスモスもそんな姿があるからね」
「えっそうなんですか!?お話を聞く限り凄い温厚そうで優しい方ってイメージなんですけど!?」
「だからこそ、彼は一度相手を倒すと決めた時には勇猛果敢に戦うよ。太陽の燃ゆる炎のごとき、戦いの赤き巨人と呼ばれる程にね」
「私も興味ありますね、是非ともお聞きしたいです」
「では御話ししましょうか」
話は一度区切りがついたからか、ウルトラマンへの話へと変わっていく。その時にはオールマイトも出久のように少年のように瞳を輝かせながら話を聞いていた。
「凄い、戦い方だけじゃなくて姿まで変わるなんて!!」
「コロナモード……確かに凄い太陽の炎のような戦い方。優しい方程内に秘める想いは熱いという事ですね」
「戦闘スタイルもルナモードからガラリと変わるから一部じゃブッコロナとか言われたりもするけどね」
「「ブッコロナ!?」」
色々考えましたが仮免の一次はすっ飛ばす事にしました。
そして組織発足に関連させてヒーローも不足傾向になるのではと考えて、そこら辺も絡めてみました。まあその代わりに何かを仕込むつもりです。例えば二次試験に凄いの入れるとか。