緑谷出久はウルトラマンと出会う。   作:魔女っ子アルト姫

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イズティウム・コスモス・ルナスタイル。

仮免試験が差し迫る中、出久はコスモススタイルの質の向上に精を出し続けていた。ゆっくりとした動きで演舞のようにしながらも時折そこへセメントスがランダムに棘を差し向ける。全方向への集中を行いながらもどんな体勢、状況で受け流しが出来るようにするための訓練。不規則に加速する出久の動き、動きから次の一手を読むことは難しい上にその動き自体がカウンターの前動作のような物。

 

「行くぞ緑谷、準備はいいよな」

「うん、お願い」

 

更にそこに参加するのは炎と氷の同時使用を目指す焦凍、手始めに氷結を行い大地から無数の氷の刃が出久を貫かんと迫っていく。一切の加減なしのそれらに相澤すら目を見開いたほどだった。だが出久はそれに慌てる事も無く演舞を継続したまま―――氷刃を受け流す。

 

「ッ―――此処まで、やるかよ……!?」

 

素直な称賛と驚きが同居する、目の前では氷の大地が意思を持って意図的に一人を害さんと迫る。それを三日月を現すような身のこなしから行った受け流しが大地を二つに裂いた。V字に氷刃の別れた中心に立ちながら構えを取った出久、あれだけの大質量の氷すら受け流す事を可能としたそれに口角を持ち上げながら今度は炎を放つ。零度の大地が獄炎に包まれて燃え上がる、同時に炎を突き破るように出現する氷棘。

 

「ウルトラ・フォー・オール―――コスモス・ルナスタイル……CRESCENT MOON SMASH」

 

落ち着き払ったクールさを保ちながら迫りくる氷と炎に対して身体全体を回転させながらウルトラ・フォー・オールのエネルギーを放出、両腕にそれらを纏わせながら一気に振り抜く。力を纏った腕の残光は空に輝く三日月、その背後では受け流された炎と氷がセメントの壁へと激突して爆発を起こしている。

 

「―――マジか」

 

思わずそんな言葉を呟きながら目の前で起こった事に素直に目を丸くしてしまった。今できる氷と炎の融合という選択肢でもバランスを考えて最強の一撃ではなかったが最高の一撃であった筈。それをいとも簡単に受け流された、驚きもあるがそれ以上に技の美しさと凄さに見惚れた。

 

「……よし、出来た」

 

本格的な防御主体のオリジナルの必殺技、エネルギーを纏う事で物理的な攻撃でなくても受け流しを可能とするスマッシュの完成に出久は静かな興奮を浮かべて笑みを浮かべる。これが本当の意味での自分のスタートだ、オールマイトを模倣し続けるのではなく自分の戦い方を見据えて生み出された必殺技。

 

「すげぇな緑谷、お前そんな事も出来るのか」

「轟くんの今のだって凄いよ、タイミングが少しでもミスったらまともに喰らってたよ今。炎の中から氷が飛び出すって凄いゾッとしたよ僕」

「まだあんま強い炎を出せねぇからな、そこを逆手に取ってみた。悪くはねぇと思ってるが如何だ」

「凄い良いと思うよ。相手に精神的な揺さぶりをかけられるし」

「そうか、随分変わったな。今までとは全く違う」

「ちょっとね、オールマイトに言われて今までのも統合したものに変えたんだ。今のはコスモス・ルナスタイルで今までのはコスモス・コロナスタイルって感じ」

 

先日聞いた詳細のコスモスの話、厳密に言えばこうなるだろうと出久もスタイルの名前を修正がてら新しくした。今までのスタイルは一切無駄にしない、それはそれとしてコロナスタイルとして確立させる事にした。そうすれば自分は二面性のスタイルを持つ事が出来るし対応出来る幅も圧倒的に増える。

 

「それならオールマイトにも通用するんじゃねえか」

「いや如何だろう、ある程度喰らい付く事は出来るかもしれないけど難しいと思うよ」

「ある程度できるだけでも十分じゃねえか?」

「そ、そうかな」

 

そう思いながらも手応えに嬉しく思っている。出来る事ならこれをガイにも見て貰いたかったという欲があるが、それはまた何時か逢えた時の楽しみという事にしておく事にしよう。

 

『しかし随分と上達してきたね、個性の方の許容上限も40%が見えてきている。うんうんっこれは菜奈さんも鼻が高いだろうね』

「(そ、そうですかね……なんだかちょっと照れますよ)」

『君は本当に謙虚というかなんというかだねぇ……もうちょっと自己顕示欲という物を露わにしても良いんだよ、君は体育祭でも活躍して仮免の一次を免除される程の逸材なんだから』

 

相棒の謙虚さにマグナも肩を竦める、だがそんな所が彼の魅力なのかもしれない。

 

『まあそれは置いとこうか。所で好い加減にこれ、使ってみる気ないかい?』

 

そう言うと出久の手の中にある物が出現する。それは人類の叡智を遥かに超越する光の国で生み出されたアイテム、ウルトラゼットライザー。アウローラから奪還し今はマグナが管理しているのだが、折角のアイテムを使わないのも持腐れになってしまう。なので折角なので出久の武器として使用じゃないかという事になった。

 

「(ええっでもいいんですか!!?これ、光の国の物じゃないですか!!?)」

『いいのいいの、アウローラの奴が盗んだか作った物なんだから正しい所有者が扱うって事で。別に使っちゃいけないなんて規則はないしね』

「(ちょっと光の国のエリートウルトラマンがそんな事言っちゃっていいんですか!!?)」

『規則を守っていくのと縛られ続けるのは意味が違うからねぇ……』

「(そ、そういう物ですか……?まあマグナさんが良いって言うなら良いですけど……)」

 

そう言いながらも初めてゼットライザーを手にする出久はやや緊張気味だった。これが光の国で生み出された技術の結晶なのかと不思議と重みも感じられるからだろうか。見た印象としては手持ちの小型両刃剣と言った感じだろうか、青いクリスタルような部分を刃として相手を切り裂く事が可能となっているらしい。試しにセメントの壁へと振るってみるが―――

 

「え"っ」

 

まるで研いだばかりの包丁で果物を切るかのように容易くセメントを切り裂いてしまう程の凄まじい切れ味だった。鉄をも易々と両断できるのではないだろうかと思わせるようなそれに言葉を失う。

 

『と言っても肝心要のウルトラメダルがないからポテンシャルを全く引き出せていない訳だけどね』

「(い、いや十分過ぎませんこれ……ルナスタイルとも噛み合ってないような……)」

『いやだからこそだよ、ジード君という若いウルトラマンがいるんだけど彼も武器を使って光線技を受け流すなんて事もしてたよ』

 

そう言った活用法もあるのかと思いながらも、エレキングのメダルは使用出来るので電撃を付与させる事ぐらいは可能らしい。

 

「緑谷、なんだそれ。またあいつに押し付けられたとかか」

「えっと……そ、そんな所、かな……?」

「……相談、乗るか?」

「だ、大丈夫大丈夫だから!!」

 

 

「―――ハッ今緑谷さんが私の事を考えてくれたような気がしますよいやぁこれが以心伝心という奴ですかねっというか絶対緑谷さん私に何か隠してますよね博士絶対に面白くて楽しい事を隠してますってというか博士好い加減私にも超獣の分析やらせてくださいよ超やりたいんですお願いします」

「こればかりは駄目だって……これを許しちゃったらマグナさんに説教されるじゃすまないって……」


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