合宿訓練を経ていよいよ仮免習得試験へと挑む1-Aの面々。林間合宿と雄英での合宿訓練は全てこの日の為に蓄えてきた経験と力、それら全てを持って挑むのが仮免習得試験。だが1年の時点で仮免の習得に動き出すのは全国でも少数派、自分達よりも長い期間訓練を重ねてきた者達と鎬を削る事になる―――が出久の場合は一次が免除されてしまっているので少々感じにくくなっている。だがそんな事は何の意味もない、とマグナは語る。
『一度試験場に立てば全員が対等に扱われる、それが試験だよ。以前にも言ったが試験の場で全てを出し切る意味はない、寧ろ常に出せる全力を発揮すべきなのさ』
そんな事を聞きながら、胸に抱きながら試験会場の国立多古場競技場へとやって来た。矢張り試験会場を前にすると緊張が生まれてしまうのかクラス内からも不安の声が出てしまっている……が、そこを相澤が取れるかどうかではなく取って来いと後押しする。
「合格し仮免を取得すれば晴れてひよっ子からセミプロのひよっ子になる出来るという訳だ、気合入れておけ」
「うぉしみんな頑張ろうぜ!!」
「んじゃいっちょ何時もの行きますか!!」
『Plus……』
「ULTRA!!!」
皆が心を一つにしつつ雄英のお決まり文句の言葉で元気よく行こうとした所をぶった斬りながら全部美味しい所を全て持って行くかのような雄々しい声が木霊した。全員がそれに驚いて何事!?と騒ぐ中でそんな彼を諌めるかのように同じ帽子を被った男が声を掛けると男は大声を出しながら勝手に円陣に混ざってしまった事を謝罪する、大きく腰を落としながら勢い良く頭を地面に叩きつけながらいい音をしながらも頭からは血が流れている。
「勝手に他所様の円陣に加わるのは余り良くないよ、イナサ」
「ああっしまったっ!!失礼、どうも大変、失礼、致しましたぁぁぁぁ!!!一度言ってみたかったンッス!!プルスウルトラ!!!自分雄英高校大好きっス!!!雄英の皆さんと競えるなんて光栄の極みっス、よろしくお願いします!!!」
と自分の言いたい事を全て話しきったと言わんばかりにそのまま去っていく。嵐のようなテンションで全てを押し通るような相手の登場に思わず全員が呆気に取られるのだが、少ししたと後に相澤がその男の名前を口にした事で全員が再起動する。
「夜嵐 イナサ……奴は強いぞ」
「今のって士傑高校……」
「東の雄英、西の士傑か……」
爆豪の言葉に相澤も頷いた、士傑高校。東の雄英、西の士傑と呼ばれるヒーロー科高校の中でも雄英と肩を並べる最難関と呼ばれる学校。そして先程の超熱血漢、夜嵐 イナサは雄英高校の推薦入試にてトップの成績を叩きだしたのにも拘らず入学を辞退しているという事を相澤が語った。詰まる所推薦入学者である轟や八百万と同じだけ優秀であるという事になるのである。
「なんていうか、飯田君に切島君を足したみたいな人やね……」
「それを二乗すれば丁度ああなりそうだよね確かに」
「むっそう見えるのか俺は!?」
「なんか複雑だぞ俺!?」
そんな事を話しながら早速会場入りをしようとするのだが―――
「緑谷、分かってると思うがお前はあっちだ」
「分かりました。それじゃあみんなごめん僕あっちからだから」
「えっ別れるのか緑谷」
「今に分かる、さっさと行け緑谷」
「分かりました。それじゃあ後でね」
手を振りながら一足先に会場へと足を踏み入れる、多くの人達でごった返しているがそこで一人の人影が手招きをしているのを確認してそちらへと向かって行く。そこにいたのはナイトアイだった。
「ようこそヒーロー仮免許試験会場へ、と言っておこうか」
「お久しぶりですナイトアイ」
「矢張り推薦を受けたのは君だったか、マグナさんの事を考慮すれば当然の帰結だろうがな」
自分を推薦しつつも他の生徒が来ることも一応考えていたらしいが、出久が推薦されるのは当然だろうと思いながらも歩き始める。その後に続いていく。
「予め言っておくが君が試験の免除となったのは合格者数を確保する為の方針だ、本来ならば確りと受けるべきだと私も思うが近々正式に立ち上げられる組織に多くヒーローが参加する」
「オールマイトからお聞きしました、その補填の為だと」
「その通り。まあ君の場合はグラントリノやオールマイトのお墨付きがある、戦闘力の確認など野暮だろうがな」
そんな話をしながらも通された部屋、そこには多くの資料などが置かれており何故此処に通されたのだろうかと思わず出久は首を傾げるのだが僅かに見えた表紙に書かれていた文章を見て察する事が出来た。これはマグナに向けての物だと、直ぐにマグナが人間態となって出久の隣に座り込むと資料を手に取った。
「対超大型ヴィラン対応特殊作戦実行ヒーロー組織についてですか……もう大分纏まっているようですね」
「あくまで人員だけです、問題は組織の拠点やメカニック関連です」
この地球の人々が参考しているのはマグナが提供したデータの中にあった
「それらを補う為にヒーローの強化装備を、デヴィット・シールド博士と発目 明に依頼するつもりです」
「ああっやっぱり……」
「まあ妥当というか正解だろうなぁ……」
発目が関わるのならば自動的にグルテンも関わるだろうし、ファントン星人としての技術が地球に関わる事になる。それらが地球を守るための一助となる事は確実、なのだが彼女の普段のそれらを身を以て体験している二人としては色んな意味で不安が尽きない。主にプロヒーローにあった装備を作る為と称して今まで自分達にやって来たような実験を行う事は確実。
「それについてですが……その、マグナさんにも是非組織に関わっていただきたく……」
「そうなると必然的に出久君も関わる事になりますがどうなるのですか、此処で仮免を取れる事を仮定してセミプロがプロに混ざる事になりますが」
「その点は将来有望なヒーロー株に対する教育の一環、ヒーローインターンのような制度の前段階としてねじ込みます」
「まあ僕がいなかったら絶対に発目さん暴走しますもんね……グルテン博士は発目さんに甘いし……」
そんな大規模組織の設備や力を借りられると分かればきっと彼女の暴走は今まで以上のものになるかもしれない、それらをプロヒーロー達で抑えきれるだろうか。ナイトアイすらも眼鏡を上げる事でお茶を濁すような事をしてしまう、それだけ発目の暴走はやばいという事である、そして同時にそれを抑える事が出来る出久の価値は大きいという事である。
「つまり今回仮免に落ちても問題はないという事だねやったね出久君」
「縁起でもない事言わないでくださいよマグナさん!?」
「何、余計な緊張せずに平常心で臨めると思えばいいのさ」
「発目さんの実験に比べたら怪獣との戦闘以外なら平常心で行ける自信は既にありますよ僕」
軽く目が死んでいる出久にナイトアイはこの時、彼女の実験はどれだけ壮絶なのだろうかと気になると同時に同情を浮かべるのであった。
「しかしグルテン博士も関わるとなるとXIGじゃなくてXIOだね。体育祭の事も考えるとMt.レディだったかな、彼女がモンスアーマー辺りを装備するんじゃないかと思うと今から頭が痛くなってくる……元文明監視員として何処までツッコミをいれるべきなんだろうなぁ全く……」
「御気持ち、お察しします。そしてこんな事を言うのも何なのですが、是非マグナさんの宇宙の事やウルトラマンの事、防衛組織のお話を聞かせて頂けたらと思います」
「やっぱりナイトアイも気になるんですね、目が輝いてます」
「これ程までにユーモラスでロマン溢れる事に興味を抱かん男などいないさ」
「ではどれから話しますかね……」
それらの話は一次試験が終わるまで続き、その話をナイトアイは了承を得た上でボイスレコーダーに記録しつつメモを取りながら熱心に聞いていた。そんな姿に出会ったばかりの出久を想起して微笑みを浮かべてしまった。