今回はエリアが木組みと石畳の街に来るまでから来たときまでをお楽しみください。
「本当にここでいいのかな?」
「・・・はい」
エリアは高校の制服・・・ではなく、中学の制服で教室の椅子に座っている。
目の前には中学の頃の担任
そう、これは木組みの家と石畳の街に来る前の話
「どうしてか聞いてもいいかな?」
「・・・この高校は全寮制で、ここからかなり離れた地にあります。それに高校からの就職率が高いです。」
「それが理由?」
「はい」
「・・・貴方の家の事情は知っています。けど支えてくれる存在がいない場所に行くのはおすすめしません。貴方の親族も「もういないんです。」!」
「もう、いないんです、俺を支えてくれる人は。だから早く一人で生きていけるようにならないと、いけないので」
その目は前を向いてるようで、どこも見ていない虚ろな目だった。
「っ!、だったらここはどうかしら?」
担任は一枚の資料を見せる。
「?ここは・・・?」
・・・そこから少し時は流れて
ガタンガタン・・・ガタンガタン・・・
列車が進む、窓の外の風景は既に知らない景色
エリアはそんな景色を眺めながら、担任の話を思い出していた。
『この高校も遠くの地方にある、けどこの学校の特色で下宿生とその下宿先を用意されています。』
『なにが、違うんですか?』
『・・・元々の進路となにが違うのかは、まだ分かりません。』
『?』
『正解は貴方が見つけるのです。』
・・・正直なに行ってるのか分からなかった。
けど、あの時の先生の真っ直ぐな瞳になにかを感じた。だから、
「受験してここまで来ちゃったのか「ねぇ!」!!」
少し昔に浸っていると声をかけられた。
「隣に座ってもいいかな?」
「・・・他に席空いてると思いますが」
「えっと、その荷物見てもしかしたら私と同じかなって」
オレンジ髪に花のようなピン止めをした少女の手には大きな荷物があった。そしてエリアの足元にも同じく大きな荷物がある。
「だったら尚更なぜ?」
「同じ街に行くから友達になろうと思って!」
「???」
「???」
噛み合ってない二人、そして気づかぬうちに隣に座られていた。
・・・
「私は香風さんってところに行くんだ」
「俺は宇治松さんというところらしいです。」
「あちゃー、違うところか~。もしかしたら一緒かなって思ったんだけどなー」
「そうですか」
更に更に気がつけば世間話をしていた。
「下宿先の町には、昔行ったことがあってね。すごく素敵な場所だよね。」
「そうなんですか?」
「調べたりしてないの?」
「行く高校のことなら調べましたよ。」
「そうじゃなくて、住む場所とかって気にならなかった?」
「・・・考えもしませんでした。」
「そっかー、でもその方がワクワクするよね。私もそうした方がよかったかな。」
「そうなんでしょうか?」
「きっとそうだよ!どんな人と会うのか、どんなことがあるのか、考えただけでもワクワクしてこない?」
ニコニコ笑顔で話す少女、これからの生活を楽しみにしていることが伝わってくる。
「ワクワクか・・・俺は不安です。」
「不安?」
「なにも考えず来たから、なにも分からないから・・・不安でいっぱいです。」
「んーそれもそうだね」
「俺は目的もないから、これからどう進めばいいのかも分からないから」
隣に座る少女は不思議だった。思わず、本心を話してしまっていた。
「どう進めばいいか、かぁ・・・うーん、私はパン屋さんか弁護士かお姉ちゃんになりたいんだ。」
「??お姉ちゃん?」
「そう、お姉ちゃん。こうやってねお姉ちゃんに任せなさーい!ってやるんだよ!」
腕を組むポーズをとる少女、だが頼もしさは感じない。
「それでどれになりたいんですか?」
「うーん、まだ分かんない。けど、今はそれでいいかなって」
「不安はないんですか?」
「分からないけど大丈夫だよ。どんなことだって諦めなければきっと大丈夫!」
「!!」
少女の言葉にある言葉を思い出した。
『いい?いつだって上を見て凛と立つのよ。そしたらきっと・・・』
・・・暫く下を向いていたかもしれない、そう思っていると・・・
「あっ、そうだ私の名前は『キキーッ!』あ!着いたみたい。ほら一緒に降りよう!」
列車が止まる、目的の駅に到着したのだ。
荷物を持ち、急いで下車する二人、駅から出ると広がるのは木組みの家と石畳の町
「うーん!やっぱり素敵な町!これから楽しいことが待ってそう!」
「そう・・・かもしれませんね」
一人だと不安だったかもしれない、けど今は・・・少しだけ彩りが明るく見える。
「私の下宿先はこっちだから、ここでお別れかな?」
「はい、ありがとうございます。」
「?なにかお礼言われることしたかな?」
「フフッ、とにかくお礼が言いたかったんです。」
「あ!笑った!」
「え?」
「あ、戻っちゃった・・・」
「??なにか分かりませんが、さようならですね。」
「うん、さよなら・・・じゃなくてまたね!」
「また・・・?」
「うん!同じ日に同じ町に来たんだよ?この出会いはきっと運命だよ!」
エリアの手をギュッと握って、少女は熱弁する。
「(なんか運命感じられてる!?っていうか手!)」
「だからきっとこれっきりじゃないよ!また会おうね!それじゃあ!」
「あっ・・・」
少女が手を離し、進んでいく。その背中になにも言えず、見送ってしまう。
「・・・」
少し暖かい手、誰かと手を繋いだのはいつ以来だろう
「そうだよね、手って本当は暖かいんだよね。」
手を握ってから、前を向く。
「大丈夫、きっと楽しいことが待ってる。うん、その方がいいよね・・・母さん、父さん」
・・・
地図を片手に進み、着いた場所は・・・
「甘兎庵?」
和風な建物、中の様子を見ると喫茶店のようだ。
「とにかく入ってみるか・・・すみませ「きゃっ!あんこ!?」ふがっ!!」
ドアを開け、中に入ろうとした瞬間、顔面に黒い塊が飛んできた。
当然避けられず、後ろに向かって倒れ、頭を打つエリア
薄れる意識の中最後に目に写ったのは、着物の少女だった。
喫茶店こそこそ話
エリアの中学の担任は実は初担任で不安で一杯だったそうです。
けどエリアをこのままにしてはいけないと思い進路を進めたそうですよ。
さらに、もうひとつ
虚ろな目は少女と話すまで続いていて、笑ったのは久々でした。
もっと正確に言えばある日を境にその目をしていました。
そのためエリア自身は笑ったことに気づいていません。