モカが帰ってから数日、春休みということもあり平和に過ごしておりました・・・
「アイロンがけOK、靴磨きカンペキ!これで明後日からの新学期も気持ちよく迎えられそう!」
シャロが制服のアイロンがけと靴磨きを終え、明後日からの新学期に備えていた時のこと
「お化けが出そうな家でも心は錦なんだから!」
新学期を心地よく迎えられることを喜ぶシャロ、ふと窓を見ると
ぬっ!
黒い髪のお化けがこちらをみたいた
「ピェァァァ!!?」
・・・
「驚かさないでよ!」
お化けの正体は千夜でしたが、いつもより元気がなく、顔にも生気がありません・・・
「ドアを叩いても返事がなかったから・・・それよりシャロちゃん、私・・・ココアちゃんとケンカしちゃった・・・」
ポロっと千夜の瞳から涙が溢れる・・・それよりも・・・
「おおお、落ち着きなさい!?えぇっ!?ココアとケンカ!?あんた達の絆はダイヤより固いんじゃなかったの!?」
親友でもあるココアと千夜のケンカにシャロは大慌て、とにかく話を聞くために部屋に招きました。
・・・
話を聞けば、新学期のクラス替えが不安な千夜がココアにそれとなく相談したが、ココアは軽くスルー、そこから少し頬を膨らませて怒っているアピールをしていたそうな・・・
「そんなアピールじゃ分かりにくいわ!はぁ・・・こういう相談は波長の合うエリアとしてなさいよ・・・」
「!?な、なんでエリア君が出てくるのかしら!?」
慌てる千夜、その様子に勘づいたシャロ
「・・・エリアとなにかあったでしょ。」
「!!」
「モカさんのパーティーの時のことは聞いたわよ。」
エリアが千夜にだけ明かした母親のこと、その話を聞いて泣いてしまった千夜、全員で千夜を泣かしたとエリアがめちゃくちゃ攻められていた。
その後エリアと千夜からなんの話かを聞いて納得はしたが・・・
「最近エリアのこと少し避けてるでしょ。
隠すフリ上手くなったのね、今回はエリア気づいてないわよ。」
「そんなつもりは「あるでしょ」・・・シャロちゃんに隠し事はできないわね」
「私はまだエリアの口からなにも聞いてないからなにも言えないけど、今千夜が悩んでいるのはその話が原因なのかしら?」
「それはエリア君自身もう気持ちの決着がついたみたいだから、わたしが言えることはないと思うの・・・あのね、エリア君がココアちゃんみたいになりたいって言ってたの覚えてる?」
「覚えてるわよ。珍しく熱弁してたものね。」
「あれから考えてたの、エリア君が成長するのは、ココアちゃんの力があるからじゃないかなって・・・」
彼がいつか自分達に気持ちを伝えようと思ったことも、彼が目標であり、憧れをもつのも、全部ココアなのだ。
「エリア君は自分が変わったのに私の影響が大きいって言ってくれてたけど・・・本当はココアちゃんの方がもっと大きいんじゃないかって、エリア君に私は必要ないんじゃないかなって・・・」
「はぁ・・・今度はあんたがそんな考えになる番なの?
エリアの言葉に嘘はないわよ、誰がどう見てとエリアが変わるのに一番傍で応援して、助けていたのはあんたよ。」
「けど、それはたまたまエリア君がウチに来たからってだけで・・・けどココアちゃんと一緒だったら、エリア君はもっと早く」
「たらればを話すつもりなら、やめてくれるかしら?
そんなこと言ったってどうしようもないでしょ。」
「そうだけど・・・」
「お正月の時は納得はした。けど今のままじゃやっぱりダメより
今度ははっきりしましょう。
千夜、あんたはエリアとどうなりたいの?
エリアの昔のことは今は忘れてちゃんと答えて。」
「!!」
「友達のままでもいいならそれでいいわ。
ちゃんと目を見てはっきり言って。」
「わ、私は・・・」
もちろん友達・・・と言おうしたが、言えない。
「そうやって本心を隠したまま付き合うから今みたいに悩むことになるんでしょう?どうなりたいかをしっかり考えて。」
対するシャロはもう逃がさないと言わんばかりに、千夜のことを見つめている。
「・・・」
その視線に思わず千夜は黙ってしまった。
黙ってうつむく千夜を見て、これ以上は不毛と判断したシャロは・・・
「あの時どんな結末でも受け止めるって言ってたじゃない。
だからエリアのことを見守って支える決めたんでしょう?
その支える千夜がぶれちゃったら、エリアも倒れちゃうわ。」
「・・・そうね」
「エリアのことが全部なんとかなった時に、一番近くにいたいんでしょう?それならちゃんとエリアと向き合いなさい。
今回のココアとのことでもそうだけど、気持ちをちゃんと伝えないと伝わるものも伝わらないのよ。」
「私の気持ち・・・」
「言わなくても分かるなんてありえないんだから、ココアにはちゃんと気持ちを伝えればいい、エリアに関しては、気持ちを伝えられなくとも千夜自身の気持ちを抑える必要なんてないのよ。思い切りぶつかっていきなさい。あんたには選ばれる努力が足りないのよ。
でも、元はと言えばエリアがはっきりしないから悪いのよ、この間だって・・・」
「しゃ、シャロちゃん?」
「なによ?っていうかなんで二人して私に問題ばっかり相談してくるのよ!・・・頼りにされるのは悪くないけど・・・それでもあんた達のあれこれに振り回される身にもなりなさい!」
その後も続くシャロの愚痴、間に挟まれてだいぶ溜まっていたらしい
・・・
「っていうことがありまして」
後日フルール・ド・ラパンにて、訪れていたリゼとチノに昨日のことを話していた。
「ココアと千夜のそれはケンカなのか?」
「困ったものです。けど、ココアさんは天然でしでかすんです。」
「けど、千夜とエリアに関しては難しい問題だな。
エリアの気持ちが読めないんだよ。いっそ尋問でもしてみるか?」
「それはありだと思います。流石先輩」
「シャロさんがストレスで壊れてます・・・」
「千夜もココアもエリアも無自覚に振り回すのよ。こっちの気持ちも知らずに・・・」
「あの三人はマイペースお騒がせトリオですね。」
「なら私たちは振り回され隊だな。」
「「(カッコ悪い)」」
・・・そして三人は新学期のための文房具を購入するため文房具店へ
「すてきなお店ね」
「ですよね」
チノがマヤ、メグと共に見つけた穴場の文房具店、流行の文房具が数多く取り揃えられている・・・そこに
「こっち?・・・いやこっちかな?」
「!、エリア!」
「?あぁリゼさん、シャロ、チノちゃん。こんにちは」
真剣な表情で文房具を選ぶエリアがいた。
「エリアも文房具新調しに来たのか?」
「それもあるんですけど、ちょっと・・・」
「なによ、今度はエリアが悩んでるの?」
「な、なんかシャロ怒ってない?」
「今の私達は振り回され隊なんです。少しそういったことには敏感になっています。」
「ち、チノちゃん?珍しいねこういうノリに乗るの」
「とにかく、なんかあるなら話せよ。もう今更どんなことでもどんとこいだからな。」
「は、はぁ・・・そんな大したことじゃないですよ?
最近千夜の元気がないから、なにか元気付けられるようなものはないかってマヤちゃんとメグちゃんに相談したら、丁度新学期だし文房具でもあげたらどうかって言われて、ここに来たんです。」
「なるほど、あの二人の紹介だったんですね。それでさっきまで探してたんですか?」
「うん、ここ面白い文房具も揃ってるね。・・・ってシャロ?今度はなんで驚いた表情なの?」
「いや・・・千夜の不調に気づいてたのね」
「そりゃ気づくよ。一応聞いてみてもなにも言わないから、どうしようもないなって思ってたら、昨日はもっと元気なくなってるし・・・」
「・・・ごめん、それは私のせいかも」
「そうなの?」
「けど、あんまり狼狽えてないんだな。前に聞いた話じゃ千夜がなにか悩んでたらかなり慌ててたって聞いたけど」
「あの時は初めてのことで慌ててましたね。けど、なんていうか、千夜ならちゃんと乗り越えられるんじゃないかなって思ってて」
余裕そうな表情、それは千夜への信頼が生むものなのだ。
以前なら見せなかったその表情や言葉は、1年前ではまず考えられなかったものだ。
「本当、成長したわよね・・・」
「え?本当?身長伸びてる?」
「そういう成長じゃないわよ、ほら千夜にプレゼント送るんでしょう?さっさと探すわよ。」
「!、ありがとうシャロ」
「いいわよ別に
(本当は分かりあってて信じあってるくせに・・・)バカみたい」
「え?これそんなバカかな?カッコいいと思うけど・・・」
そういうエリアの手には、勇気の竜を模した消しゴムが・・・
「はぁ・・・その通り、それはおバカよ」
・・・
シャロの協力を得て、文房具を選べたエリアは早速甘兎庵に帰っていった。
途中別れたエリアと別のメンバーは秘密の抜け道を通って帰っていた。
その途中昨日より生気がなくなった千夜と会った。
どうやらココアから果たし状が届いたとかで・・・
そして、いよいよココアと千夜が向かい合う、シャロ達は木陰から見守ることに
「えぇー!?クラス替えあるの!?」
「今知った!?」
クラス替えを知らなかったココア、では千夜からそれとない相談は聞こえていなかったのだろうか?
「千夜ちゃん、良い先輩(お姉ちゃん)になれるか不安だったのかと」
「とんだ勘違いです。」
「そっちも心配した方がいいかしら!?」
「しなくていい」
それぞれに振り回され隊が的確に対処、途中ティッピーによるコーヒー占いやロシアンまんじゅう占いを経て、二人は別のクラスになったとしてもそれはそれで楽しみではないか?となり、
「みんな心配してくれてありがとう!」
「もう大丈夫よ!」
「もう勝手にしてくれ」
「付き合いきれません」
リゼとチノが呆れる中で、シャロは
「あ、あの千夜。昨日はごめん、言い過ぎたわ」
昨日のことを謝っていた。
「いいのよ、シャロちゃん。だってシャロちゃんの言う通りココアちゃんとちゃんと話し合ったら上手くいったもの。」
「けど、エリアとのことは他人が口出すことじゃ「他人なんて言わないで、寂しいわ」!、千夜・・・」
「昨日あの後よく考えてみたの。
エリア君のことは分からないこともあるから、友だちになれるまでエリア君の気持ちを考えて接してきたわ。」
友だちになるまでは一足跳びで一気に距離を詰めることができた。
彼の気持ちを察して、無理させないように、近づき過ぎないように
少しずつ少しずつ
「けどね、今はそれが怖いの。あの時みたいに傷つけることが起きてしまったらどうしようって怖いの」
けどそれ以上は、彼だけでなく自分も未知だったから怖かった。
だってこれ以上に進むためには彼の気持ちに踏み込まないわけにはいかないから。
あの時踏み込みすぎた時の、彼の悲痛な顔を知っているから
「だから気づかないフリしてたの、気づかなかったら友だちのままで一緒にいられるんじゃないかなって思っちゃったの」
正月の夜にシャロに言ったことは自分を言い聞かせるものだった。
彼を思っていたのは本当だ、自分と彼が今以上の関係になったら、そうなるのではないかと考えていた。
けどそれ以上に口にしてしまったら自分も元に戻れないかもしれないという恐怖もあった。
「けど、エリア君は違ったの。傷つきながらも進んで進化していってる。だから私にあの話をしてくれたんだと思う。」
傷つけるかもしれない、元に戻れないかもしれない、そんな恐怖に囚われる自分とは反対に彼は前に進み続ける、常に成長し、進化していく。
そしてその中でできた、信頼、それがあったからこそ彼は自分に傷の一部を教えてくれた。約束を守ってくれた。
「こんな風に迷うのは、私だからなんじゃないかって、ココアちゃんならもっと・・・って思っちゃったの。」
彼の憧れであるココアなら、迷うことなく彼の進化を喜んでいただろう。
でも自分は彼の進化に驚いて、迷って勝手に傷ついて、彼がそんなこと望むわけがないのに。
「けど、違うの。ココアちゃんなら、じゃなくてエリア君が信じてくれる私になりたい!それでちゃんとエリア君と向き合いたい!」
今の正直な気持ちをぶつけるのはきっとまだ早計だ。
けど、それでも、
「もう逃げたくない、ちゃんと向き合って私はエリア君に・・・!」
・・・
その日の夜、甘兎庵、千夜の自室
「はぁ・・・」ズゥゥゥン
今日の夕方、シャロ達に自分の気持ちを熱弁した。
よくよく考えたら・・・
「私とっても恥ずかしいこと言ったんじゃないかしら・・・」
数日前、モカに自分の気持ちを語ってたエリアもこんな気持ちだったのだろうか・・・かなり恥ずかしい、けどシャロは
『気づくのが遅いのよ!!』
そう言って、自分のことを抱き締めてくれた。
勇気を出した自分を褒めてくれるかのように。
『エリアのことなんてもう知らない!とっとと全部話すくらいにドロドロに甘やかしてやりなさい!大丈夫、エリアは甘いもの好きだから!』
『それとこれとは違うんじゃないかしら・・・』
『違わない!とにかくこれからはガンガンいきなさいっ!』
『い!イエッサー!』
・・・こんなこともあった。
「けど、向き合うのってなにすればいいのかしら「千夜ー少しいいー?」!、エリア君!?」
「?エリアだけど・・・」
「ご、ごめんなさい。いいわよ」
「んじゃ失礼します。」
部屋のドアを開け、エリアが入ってきた。
「それで、なにかしら?」
「えっと・・・ほら!明日から新学期でしょ?だからその・・・これを受け取ってくれると・・・嬉しいんだけど・・・」
そういって差し出したのは、黒い兎が描かれた様々な色のボールペンセット
「ほら、あんこに似てるでしょ?」
「!本当ね!かわいいわ!ありがとうエリア君・・・!」
「?どうしたの千夜?」
エリアを見て固まる千夜
自分より高い・・・本人は低い方だと気にしているが、身長
明るい茶色の髪、以前より輝いて見える瞳
あれ?エリアってこんなに・・・
「あ、あの、えっと・・・」
「?本当にどうしたの?」
慌てだす千夜にエリアも慌てだす。
「ご、ごめんなさい!」
「え!?ペン気に入らなかった!?」
「いえ!これはありがとう!でももう寝ようと思うの!おやすみなさい!」
「えっなに突然「いいから!おやすみなさい!」えっちょっ・・・」
バタンっ・・・エリアの背を押して部屋から追い出す。
「え、えぇぇぇ・・・」
エリアのなんともいえない声が家に響きながら・・・夜は更けていく。
喫茶店こそこそ話
エリアが送ったペンを千夜は早速使っていて、始業式後、忘れた春休みの宿題をやっている時も使っていて、一同からなにも言われず、微笑ましく見守られていたそうですよ?