地の文だったり、誰かに呼ばれたりするときは「エリア」と表記しますが、フルネームで名乗る際には「和田上凛彩(わだえりあ)」と漢字表記になります!
「ん、んん・・・」
目が覚めて視界に広がったのは、レトロモダンな店内、テーブル席に寝かされていたようだ。
店内を見回すと店の真ん中のテーブルの上に黒い兎がいた。
そして兎はこちらを見ている。
「・・・」
「・・・」
兎と目が合い、そして・・・
ビュンッ!ガッ!
「!!?」
兎がエリアの顔に飛び込んできた。またも後ろに倒れる。
「んぐぐ・・・」
体を起こしたが、兎は離れず眼前をモフモフで覆われている。
同時刻、他の喫茶店では列車で会った少女も兎をモフモフしていたりするが、どちらかというとエリアがモフモフされている。
「あらあら、あんこったらご執心みたいね。」
「!、そこに誰かいるんですか?」
「あ、ごめんなさい。ほらあんこー栗羊羹よー」
バシュッ!
エリアの顔からモフモフが退いた。
「ふぅ・・・ん?」
目を擦り、前を見ると羊羹をかじる黒い兎と、その兎を抱く着物を着た少女がいた。
「よかったわ、無事に目を覚ましてくれて。うちのあんこが本当にごめんなさい・・・それからいらっしゃいませ、甘兎庵にようこそ。ご注文は?」
「(ご注文?・・・!!)今日からお世話になる和田上凛彩と申します。」
慌てて挨拶をする。そう、ここにはお客で来たのではない、下宿するために来たのだ。
「わだ、えりあ?・・・あら?」
「ど、どうかしましたか?」
「もしかして・・・男の子なのかしら?」
「は、はい」
「ごめんなさい!名前を見てからずっと女の子だと思っていたわ!!」
「え、えぇ・・・」
「それにおばあちゃんったら今日から来るなんて聞いてないわ!ちょっと待ってて!」
急いで奥へと引っ込む着物の少女、唖然とするエリア
すると、ガチャンッガチャン!
「え?・・・!??」
「改めて甘兎庵にようこそ!私は宇治松千夜、将来甘兎庵の社長になる予定だから末永くよろしくお願いするわー」
何故か甲冑を着て再び現れた少女・・・宇治松千夜
「・・・」
再び唖然とするエリア
「あ、あら?緊張ほぐそうと思って用意してたんだけど・・・」
顔が真っ赤になっている千夜、気遣いのつもりだったらしい
二人の間に気まずい空気が流れる・・・その時
「いつまで遊んでるんだい?」
「「!!」」
奥からおばあさんが出てきた。
「あ、おばあちゃん!下宿する人が今日から来るって聞いてないわ!」
「そりゃ言ってないからね。それよりアンタ」
出てきたおばあさんは千夜の祖母のようだ、おばあさんの視線がエリアに移る。
「は、はい!」
「アタシがここの店主さ。なにか言うことはないかい」
「え・・・あ!は、はじめまして!和田上凛彩と申します!今日からお世話になります!」
「ふん、挨拶くらいはできるようだね。それで・・・」
厳しそうな人だ、エリアがそう感じていると・・・
「頭は大丈夫かい?こぶになってたりしたら今すぐ冷やしな。」
矢継ぎ早に出るのは心配の声、優しい人だ
「えぇー・・・」
「大丈夫なら説明させてもらうよ、さっき千夜が言った通りここは甘兎庵、喫茶店さ。アンタにはこれから下宿の代わりに手伝いをしてもらう。ここまでは聞いてるかい?」
「は、はい!」
「ちなみに和菓子作ったことは?」
「ないです。」
「そうかい、なら初めは接客から始めな。徐々に裏方の仕事も覚えてもらうからね。」
「お願いします!」
そういって急いで立ち上がる。
「えっと、それで制服とかってありますか?それと着替える場所ってどこですか?」
「なんだい、まさか今から働くつもりかい?」
「え?そういう流れじゃ「馬鹿言ってんじゃないよ!」!」
「頭を打ったら安静にする、当たり前のことだよ。千夜、部屋に案内してやりな」
「はーい、こっちよー」
荷物をサッと持たれて、奥に案内される。
「あっ、待って。」
・・・
「はい、ここの部屋よ。お手洗いはあっちで、居間はあっちだからご飯の時は居間にきてね。」
「本当にいいんですか?今日からお手伝いする予定だったのに」
「いいのよ、元はと言えばあんこを止めらなかった私のせいなのだし」
「でも」
「それにおばあちゃんがあぁ言ったら絶対に聞かないわよ?」
「そうなんですか」
「そのとおり。それじゃあまた後でね」
荷物を部屋に置くと、千夜は店に戻っていった。
「(いいのかな・・・けど)なんだろう、すごく・・・暖かい」
少しだけ一緒にいただけなのに、すごく優しくしてもらった、そのことがなぜか嬉しく感じていた。
そして優しさを感じたのは・・・すごく久しぶりだった
・・・翌日
「おはようございます。」
店の制服に着替え、お店に出る。
「ふん、よく似合ってるじゃないか」
「用意してたのが女の子のだったけど、男性用のがぴったりでよかったわー」
そしておばあさんと千夜から店の説明をしてもらう。
「昨日も言ったけどアンタは暫く接客してもらうよ。挨拶、案内、お茶を出す、注文をとる、伝える、運ぶ、それの繰り返しさ」
「私もサポートに入るわ」
「お願いします」
「もっと腹から声出して挨拶しな!」
「お願いします!!」
「よし、ならお客来るまではメニューに目を通しときな」
「はい!」
「これがメニュー表よ、それでこれが初心者用の指南書で「お団子、あんみつ、抹茶パフェですか?」!」
メニューに目を通し、上から読んでいく。
「分かるの!?」
「えっとなんとなく」
ちなみに上から煌めく三宝珠、花の都、黄金の鯱スペシャルと書かれている。
「嬉しいわ!友達からは分からないって何時も言われてたから。」
「いや、分かりづらいですよ。」
「!!」ガーン
「けど、すごく楽しいお店ですね。ここって」
「ふふっ、ありがとう。私たち気が合うかもしれないわね、それに同い年の子と働くのが楽しみだったの。これからよろしくね!」
「はい!」
・・・それからその日一日忙しく働いた。
「ふぅ・・・」
お客さんのいない、カウンターに座り、一息ついた。
「お疲れ様、これおばあちゃんからよ」
お盆に乗せられたお茶と羊羹を渡された。
「ありがとうございます。んぐ・・・ん!?」
お茶を飲み顔をしかめる。
「あら?抹茶もしかして初めて?」
「は、はい・・・苦い」
「苦いの苦手?」
「はい・・・」
「だったらちょっと待ってて」
湯飲みを持って厨房に戻り、再び渡された湯飲みには
「これは?」
「抹茶オレね、飲みやすくなってると思うわ。あ、あとまだ苦かったらこの砂糖を入れてみて」
暖かい抹茶オレと共に角砂糖を数個手渡した。
「んぐっ・・・本当だ、飲みやすい」
「でしょう?羊羹も食べて?」
「あむっ・・・!美味しい」
「よかったわ、それは私が作ったの。」
「そうなんですか、すごい・・・そういえば宇治松さんってここの社長になるんでしたっけ?」
「そうよ、世界征服するつもり♪・・・なんてね」
「せ、世界征服?よく分からないけど、すごいですね。もう目標もあって、本当にすごいなぁ」
自分とは違う・・・思わずそう感じてしまった。
「和田君?」
「っ!、ごめんなさい。羊羹本当に美味しくって」
「甘いものは好きなのね」
「はい、けど・・・久しぶりに食べたかも、甘いもの」
「(ダイエットかしら?)気にすることないと思うわよ?」
「?何がですか?」
「それより、羊羹気に入ってくれたなら嬉しいわ。そういえば羊羹が好きなのってあんこと同じね」
「あんこってあの兎ですか?っていうかなぜ兎が・・・」
視線の先には昨日エリアに突撃してきた兎
「うちの看板兎なのよ。」
「看板兎・・・っうわ!」
羊羹を食べ終わったエリアの膝上に乗っかるあんこ
「?今日は膝?」
「あんこがこんなになつくなんて・・・シャロちゃんと同じ体質なのかしら」
「撫でていいのかな?・・・フワフワだ」
「よく見たらそっくりね、和田君とあんこ」
「好物がですか?」
「目元が」
「見た目が!?」
あんこの顔をよく見る、黒い瞳がこちらを見ている。
「似てるのかなぁ・・・」
「そっくりね、ってあら?お砂糖が失くなって・・・あら?」
「え?」
カップをスプーンでくるくると回すエリア、なんかザリザリという擬音も伝えてくる。
「そ、それに全部いれたの?」
「?はい、もうちょっと甘くしたくて。んぐっ・・・うん美味しい」
「・・・」
使っても二個ほどだろうと思ったが念のためと手渡した角砂糖は五個、それを全部使っている
「もうちょっと甘くてもいいかなぁ・・・」
千夜が驚異のエリアの甘党っぷりに引きつつ、初めての出勤が終わった。
こそこそ喫茶店話
エリア君は動物に好かれるタイプでよく寄ってくるそうです、そして好きな動物は猫らしいです。
うさぎメインのお話なんだけどなぁ・・・