果たして千夜の提案とは!?
文化祭が終わって、二日
「あー、終わった・・・」
ようやく熱が下がり、学校にもいけるようになったエリアだが、
「店主さんの説教が的確に心に刺さることしか言わないからきっつい」
先程まで店主からお説教されていた。内容はもちろん熱を出すまで働き続けたことについてである。
まず始めに、店主はエリアを本気で止めなかったことに対して謝った。しかしそれはエリアの意思を尊重してくれたからこそ、その結果の自滅なのでとにかく辛かった。
鞭ばかりでなく、飴と鞭が交互にくるお説教はとにかく心にきた。
最後の方は泣いた。
・・・そんなエリアに
「お疲れ様エリア君」
「あっ、千夜・・・なんか久しぶり」
文化祭の翌日に、いつものメンバーはお見舞いに来てくれたが、そこに千夜はいなかった。皆に聞くとなにやら準備することがあるからとのこと、そして帰り際に・・・
・・・「明日!楽しみにしててね!皆でおもてなしだよ!」
と、ココアが言っていたが・・・なんのことやら、と思っていたら
「もう大丈夫でしょう?ならこれ渡すわね」
渡されたのは・・・
「招待状?・・・でも日付違うけ「後一時間したらラビットハウスに来てね!」えぇ!?」
そう言って去っていく千夜、残されたエリアはただ首をかしげて、一時間待つしかなかった。
・・・一時間後、ラビットハウス前
「あ、エリアさん、ここで招待状を確認しますのでご提示をお願いします。」
「あ、青山さん?どうしたんですか?」
店の前には見慣れない衣装の青山がいた。
「この衣装ですか?実はココアさんの出店のお手伝いをした際にいただいたんです。」
「いや、衣装もですけどこれは一体?」
「今日のラビットハウスは喫茶店でもバーでもありません、たった一人のためのお祭り会場です。千夜さんからもらった招待状はお持ちですね?」
「はい、これですよね?」
「はい!確かに確認しました。それではお楽しみください。」
青山に中には通される、それと同時に
パーン!!
クラッカーの音が鳴る、そして
「エリア!/君!、完治おめでとう!!」
皆の声が響いた。
「え?え?なにこれ」
高校生組とチマメ隊が青山と同じ格好をしている。
「いらっしゃいませエリア君!今日はエリア君のためのビアーホールだよ!さ!こっちこっち!」
ココアに背を押されて、椅子に座らされる。
テーブルの上にはたくさんの料理がある。
ぽかん、としていると、リゼから飲み物が入ったジョッキが渡された。
「皆で作ったんだ。今日はお祝いだから甘いものからでもいいぞ。野菜も無理に食えなんていわないさ。」
「でも病み上がりなんだから無理はしないのよ?胃に優しい料理もあるからちゃんと食べなさい。」
シャロからの気遣いの言葉、そして
「ほら見てエリア!このパンケーキまた作ったんだ!」
「チマメ隊とココアちゃんも一緒に作ったんです!」
「前より大きいの作ったんです!」
「シロップはもちろんアイスや生クリームのトッピングも可能!なんでもかけてオッケーだからね!」
チマメ隊とココアから料理の説明・・・じゃなくて
「いや、だからこれは一体なんのお祝いなの?」
「エリア君の完治祝いとご褒美よ。よく頑張りましたのね」
千夜から、さぁ、ジョッキを持って立ってと急かされる。
言われるがままジョッキを持って立つ、皆も同じくジョッキを持って立っている。
「それじゃあ今回の企画の発案者の千夜ちゃんから乾杯の挨拶をお願い!」
「分かったわ、細かい挨拶は抜きにして一言だけ。皆!今日はカロリーなんて言葉は忘れて!思い切りエリア君を甘やかしましょう!」
「え!?なんで!?」
「おー!!!」
千夜の音頭にみんなが答えた。
「それでは、かんぱーい!」
「かんぱーい!!」
全員の乾杯の声と同時に、カチンッ!とジョッキがぶつかる音がした。
・・・
「はぁ・・・なんでこうなった。」
各々騒いでいる様子を見て、楽しそうだと頬を緩ませつつも、突然始まったパーティーに対してはまだ困惑しているエリア
「だからエリア君の完治祝いと頑張ったご褒美だって言ったでしょ?はい!飲み物!」
「あ、ありがとうココア」
ココアに飲み物を注いでもらう。
「なにをそんなに納得してないの?」
「だって、俺はただ勝手に無茶して勝手に倒れて皆に心配かけたのに・・・」
暗い顔をし出したエリアに・・・
「お姉ちゃんチョップ!」
コツッ
「!、ココア?」
「もう!それは誰のための無茶だったの?」
「もちろん千夜の為だよ。あ、でももちろんココアのことも考えてたよ?」
「!、ありがとうねエリア君。けどだからこそのこのパーティーなんだよ?」
「だから・・・こそ?」
「千夜ちゃんと私が文化祭の実行委員になって、バイトも暫くお休みしなきゃいけないってなった時にお店のことを頑張ってくれたエリア君へのご褒美なの!」
「!、でもそれならリゼさんとチノちゃんも」
「あの二人には文化祭当日にちゃんとお礼したよ。だから今はエリア君の番だよ」
「なんでそこまで・・・俺は結局倒れて、周りに心配かけたのに「心配するのは当たり前、でしょ!」!!」
「だからこそお互いを想い合って感謝を伝えるってエリア君は知ってるはずだよ?千夜ちゃんの真似だけどね」
それはあの日・・・千夜からもらった言葉
「そう・・・かも」
「そうだよ!さぁ座ってちゃもったいないよ!立って立って!」
ココアに手をひかれ、パーティーの中心に連れていかれる・・・前に
「あ、それから、このパーティーは千夜ちゃんが考えたんだよ?クラスで使った衣装とか店内の飾りつけとかクラスの皆にも手伝ってもらったりもしたけど準備したのは全部千夜ちゃんなんだよ!」
「!、千夜が・・・」
「だからね?千夜ちゃんには内緒なんだけど、このパーティーは千夜ちゃんのパーティーでもあるんだよ!文化祭のこともこのパーティーのこともすごく頑張ってくれたから、千夜ちゃんにも頑張ったご褒美と私たちからのありがとうも込めてるんだ!」
「!!」
「だからもし、エリア君がまだ少しこのパーティーに引け目を感じてるなら千夜ちゃんの為に楽しんで!エリア君の笑顔が千夜ちゃんへの一番の贈り物になるんだよ?」
「俺の笑顔が?」
「うん!」
正直、まだ整理しきれていない所はあるが・・・分かった。
「そう思えば少し気が楽になる。ありがとうココア」
「えへへ、どういたしまして!」
今度こそ二人はパーティーに戻った。
・・・それからパーティーは暫く続いたが、お開きの時間には
「すぅ・・・」
「ありゃ、千夜ちゃん寝ちゃってるね」
「昨日遅くまで準備してたみたいだしな、寝かせてやろう。」
「あ、エリアあんたはもう帰りなさい。帰ってしっかり休むこと!」
「でも片付けあるでしょ?俺も手伝うよ。」
「それは私たちでやるので、エリアさんは帰ってください!」
「そうだーそうだー帰れ、帰れー!」
「帰っちゃえー!それから寝ちゃえー!」
チマメ隊からの口撃に少し心が折れそうになったが、皆からの気遣いは分かるので、
「んじゃお言葉に甘えて「それから、千夜のことも連れて帰って」え?「ジョギングで何回かしてたし、背負って帰れるだろ」えぇ!?」
・・・で
「はぁ、なんか前より重いぞ?」
千夜を背負って、帰路を進む。
まぁ起きてる人を背負うのと寝てる人を背負うのは体重のかかり方が違うので当然である・・・だが
「重いなんてひどいわエリア君」
「千夜起きて、ちょっ待って、ぐるじっ」
千夜からしてみれば失礼である。容赦なく首を絞められた。
「ごめんなさい、私寝てたのね。降りるわ」
「いいよ、疲れてるんでしょ?だったらここままでいい」
「でも「こうしたいんだ、だからお願い」・・・分かったわお願い」
「!、だからって密着しないで!?」
いつかの幸せな感触が再び背中に広がった。
「ねぇエリア君、今日は楽しかった?」
「うん、楽しかったよ。ありがとう」
「エリア君が楽しんでくれてよかったわ。」
「俺も千夜が楽しんでくれてよかった。」
「あら?私?なんでかしら?」
「それはナイショ。ココアに聞くといいよ。」
「?」
「とにかく、本当にありがとう。楽しかった・・・それからあの時のことはやっぱりごめん。心配かけた」
「!もういいの、エリア君があのパーティーを楽しんでくれたのなら、それでいいわ。」
「うん、だからもう謝るのはやめるよ。」
いつかの温泉プールの時と同じように、後悔が残る位なら一度の謝罪と許しで終わりにした。
「それがいいわ。今日のパーティーにはクラスの皆も協力してくれたのよ?影の立役者にお礼がしたいって、皆手伝ってくれたの。」
「そうなんだってね、ココアから聞いた。」
「・・・さっきからココアちゃんばっかりね、パーティーの時だってあまり話してくれなかったし」
「ごめん、なんか気まずくて」
「それは私も同じだったから、攻められないわね。」
「けど、本当にあのパーティーは楽しかった。ずっと忘れないよ」
「そう、なら・・・嬉しいわ・・・あのねエリア君」
「なに?」
「来年は一緒に文化・・・祭に・・・」
最後まで聞けなかった、途中から寝息に変わった。
けど、なにが言いたいかは分かった。
「来年は熱出さないように、気を付けるよ。その時には千夜の学校の友達にお礼言わないと、それに千夜と一緒にまわりたいな。」
来年のことを話すと鬼が笑う・・・と言うが、今から先のことを考えると楽しみすぎて笑顔が止まらなかったエリア
千夜もまた、夢の中で楽しそうにエリアと文化祭で遊んでいた。
果たして二人はその時、どんな関係になっているのか・・・それはまだ秘密の話・・・
喫茶店こそこそ話
これは千夜と自分のパーティーと楽しんでいたエリアでしたが、ココアだって頑張ってたじゃないか!と気付いて、皆と一緒にココアに乾杯をしたそうですよ。