喪失の中にある彼は母の元へと近づこうとしていた
そんな彼を止める存在とは・・・
どれだけ叫んだだろう
どれだけ泣いたのだろう
分からない、それくらいに泣いた
母になにも伝えられなかった後悔
母の希望を叶えてあげることができなかった後悔
二つの後悔がエリアを蝕む。
そうした時に気づいた。
母の光を追いかけたらいいじゃないか
母が手を引いてくれて進んだ道を見る。光はこっちに進んだ。
もうこれが夢だとか現実なのかどうかなどどうでもいい
ここで追わないともうこんな奇跡二度と起こらないことは分かる
立ち上がり、一歩一歩と進んでいく。
「(話したいことがたくさんあるんだ)」
まずは友達のこと
時々すれ違ったりしてるけど、仲良くしてる
それから仕事のこと
初めてのことだらけだけど、上手くやれてる。たまに失敗するけれど、それでも助けてくれる人たちがいる
学校のこと、最近好きなこと、とにかくなんでもいいから話したい。
「(きっとこの道を戻れば、また母さんに)」
会えるんだ、それだけを希望に進んでいく。
・・・一方その頃、千夜たちは
「もう!どこ行ってたんですか!?」
「皆ごめんね!けど、おかげで手品教えてもらえたんだよ!」
エリアと待ち合わせ場所に向かっていたココアが、皆と合流した。
皆からは、心配をかけたことを怒られていたが、教えてもらった手品を披露するココア
「ねぇ、ココアちゃんエリア君は?一緒にいなかったの?」
「え!?エリア君いないの!?さっきまで一緒にいたのに・・・はぐれちゃったのかな」
「おいおい、エリアのやつまさか迷子になってるのか」
「けど、もう街の地図は頭に入ってるはずです。エリアに限ってそんなこと・・・」
「携帯はやっぱり繋がらないですね・・・そうだココアさん、エリアさんと一緒にいた場所まで案内してください。」
「いやー、それが私もどこにいたのか覚えてないんだ。けどティッピーに似た兎を連れた人に手品を教えてもらってたら皆の声が聞こえたの、それでそっちにいったら会えたんだ」
「だったら今度はエリアの名前、呼んでみるか?」
「そうですね、ほら千夜、アンタも・・・千夜?」
シャロの呼び掛けに千夜は答えない。
「?千夜ちゃん?どうしたの?」
「!、ごめんね、なんだな変な胸騒ぎがするの。早くエリア君を探さないと!」
なんだか、このままでは二度とエリアに会えない気がしたのだ。
・・・
橋の上を進む
しかし、どこまでいっても石造りの橋が続いていくだけ・・・
「はぁ、はぁ・・・」
遂に息が切れてきた・・・どれだけ歩いたのかも分からない
それでも歩みは止めなかった、その時
ガシッ
「!」
「どこに行くつもりだ?」
エリアの肩を後ろから掴む人がいた。
さっきまで、誰ともすれ違っていなかったのに。
「離してください、俺は行かなきゃ行けないんです。」
「このまま進んだってなにもない、戻るんだ」
声からして男性、だけどそちらに目もくれず前に進もうとする。
「なにもないわけない、俺の母さんがこっちにいるんだ。だからいかないと」
「・・・君は今、本当にお母さんのためにこの道を進んでいるのかい?」
「!、当たり前です。きっと寂しがってるからいかないと」
「私から見れば君は自分の後悔を拭うために、追いかけているようにみえるよ。」
男性からの言葉が流石に頭に来た、そして後ろを振り向く。
「貴方になにが分か「分かるよ」!?」
振り向いて、肩を掴む男性の顔を見る。
自分はこの顔をよく知っている。
「!!と「ストップ、名前を言ったら帰らなきゃいけなくなる。少しだけお話ししよう。」っ!」
「さっきの続きだ、私は君のことをずっと近くで見ていた。怪しい意味じゃないよ。でも文字通り、近くで見ていたんだ。
こうして君と話せるのも、近くにいるからだろうね。
でも、母さんは違った。母さんは本当は遠くにいる、だから声が届かなかったんだろうね。」
「!!」
「・・・でもこれは今夜だけの奇跡だ。そして・・・お別れだ」
「!、なんでっ!」
突如切り出された別れの言葉
その言葉にもう一つ、自分が大切な人と別れた日のことを思い出す。
「さっきの母さんを見て思ったんだ。君のことが心配だからといえど、いつまでも一人にさせてはいけない。君なら分かるだろう?」
分かる、けど・・・
「・・・なんで俺を置いていくの?」
「っ!」
「連れていってよ 一人は寂しいよ・・・」
その言葉は・・・父と別れた時の日の言葉だった。
・・・あの大雨の日
迎えに来てくれた伯父に病院まで急いで連れてきてもらった。
だけど、たどり着いた病院では、もう父は息をしていなかった。
ベッドに横たわる父を見て、息を飲んだ時に思った。
なんで、息をして、自分は生きているんだ?
なんで、父と母はいなくなったのに自分はいるんだ?
なんで二人は・・・
「俺を置いていくの?」
・・・
「二人に置いていかれて、辛かったんだ。苦しかったんだ。
俺も同じところに連れていってほしかった。」
何度も何度も考えていた、どうしたら二人のところに行けるのか
「一度だけ本当に行こうとした、けど行けなかった。ずっと見てたなら知ってるでしょ?」
気づけば病院にいて、伯父に叱られた。
「二人に会えるかもしれなかったのに、伯父さんは二人がそんなこと思ってるはずないだろって言ってた。それから分からなくなった。」
自分は会いたいのに、二人は会いたくないの?
「だったら俺はなんなの?どこにいけばいいの?」
「っ!、帰る場所は分かってるだろう?言ってたじゃないか君は友達のいる場所に帰ってきたいと思えるんだって」
友達は確かにそう言ってくれた。自分もそう思っていた。
そう思えたからここで生きていきたい、皆と一緒にいたいと願うことができた。
「そうかもしれない、けど俺はいつだって気づいた時に大事なものを失くして、置いていかれる。きっと皆もいつか俺を置いていく」
以前自分の夢や将来に不安を覚えていたのはこの不安もあった
だから、置いていかれないように頑張った・・・けど
「今いる場所も大切だよ・・・でも二人がいるなら俺はそこがいい」
友達は大切だ、友達と一緒にいたいと願ったあのときの気持ちは確かに本当だった
だけど・・・それでも
「俺にとって一番の幸せは二人といることなんだ、だから俺も連れていってよ」
あの時の願いを簡単に捨てるわけではない・・・でも家族がいるなら、自分はそこに行きたかった
「・・・そうか」
男性はひどく悲しそうな顔をしている。
「俺が一緒なのは嫌なの?」
「そんなことないさ、ずっと一緒にいたいさ」
「だったら、連れていってよ。」
「それはできない・・・兄さんが言ってたように、こんな形では会いたくない。」
「だったら俺はどうしたらいいの?こんな残酷な奇跡を知ってしまったら、俺はもう生きていけない。それならいっそ、このまま消えてしまいたいよ」
この人にだから言うことのできる言葉
友達にはなにがあっても言えない弱音
こんな残酷な奇跡があるのなら、自分はしがみつき、泣きつき、離すまいと必死になる。でもそれはできないから、それならいっそこのまま・・・そう考えていると
「・・・ずっと見てきていたのになぁ」
「??」
「・・・私がいなくなって、ずっと君が頑張っていたことは知っていた。それでも君が私たちに会おうとした時は本当に悲しかった。
兄さんが言っていた通り、私たちはそんなこと望んでないのにどうしてこんなことをするんだって思っていたんだ。
けど、私は君を残してきた者としての考えしか持てていなかった
残された君のことは考えられていなかったんだ」
いつだって見守ってきた、けどエリアがなにをどう感じ、考えて、思っているのかは分からなかった。
「そうか、そんな風に考えていたんだな。私は・・・君を置いていってしまっていたんだな。」
男性の瞳から涙が零れる。
「ごめん、ごめんなぁ・・・辛かったんだよな・・・けど、連れては行けないんだ。
私たちは例え残酷でも、置いていくことになったとしても・・・」
その涙を拭うと、真っ直ぐにエリアを見つめ、話す。
「『エリア』には生きていてほしいんだ。」
「!!」
男性・・・エリアの父が名前を呼んだ。
その瞬間、父が母と同じように光に包まれる。
「なんで、なんでなの・・・・父さん!!」
耐えきれず、エリアも叫ぶ。
「ごめんなエリア、こんなことになるなんて思ってなかった
ほんの一時、一瞬でいい、エリアと話せたらいいなんて思っていた
私はエリアに会うのが楽しみで、エリアがどう思うなんて考えていなかった。本当にごめんな」
光に包まれた父が近づいてくる、そのまま腕を広げて・・・ガシッ
「っ!!」
力強く、抱き締められた。しかしそれに答えることができない、だって返したら、消えていくのが分かってしまう。
「けど、母さんは違う。エリアにもう一度あの大好きな曲を聞かせたかったんだ。入院中にお前がまた聞きたいって言ってたあの曲をどうしても聞かせたかったんだ。」
病院だからできないのは分かっていた、それでもどうしても我慢できなくて、一つだけ溢した母へのワガママ
母はそれを叶えようとしてくれていたのだ。
「だったら・・・連れていってよ!!置いていかなないで!!ずっと一緒がいいんだ!!」
「・・・それはできない」
「っ!なんで!!」
いつものエリアでは考えられないほどに感情のままに叫ぶ。
だってこんなの残酷すぎる、今すぐ手が届くところにいるのに
「思い出すんだ、エリアに帰ってきてほしいと望んでくれる友達がいることを
いつまでも後ろを・・・父さんたちを見るな!!
前でなく、上を向いて進め!!上凛彩!!!」
父からの言葉が響く。
「っ!!」
もう・・・抱き締められる力が弱くなってきている。
この時間もまた終わってしまう。
「・・・父さん達に会うのはずっとずっと先でいいんだ、これからエリアがたくさんのことを経験して、成長して、幸せになってそれから会ってほしい。それが父さんと母さんの『願い』だ」
そう言いきると共に力強く抱き締めてくれていた腕が消えた。
また膝をつく、光がエリアを置いていく
もう・・・涙は出なかった。
ただこれを絶望というのなら今、その言葉が当てはまった。
喫茶店こそこそ話
エリアのお父さんには、どうしても叶えたい夢がありました。
だけどそれを叶えることはできませんでした。
そのことに落ち込み、諦めようとしている時にエリアのお母さんと出会い、エリアを授かり、幸せが心を癒してくれました。そして諦めかけてた夢をまた追いかけようとしました。
そんな時にお母さんが亡くなりました。
また心に穴が空きそうになりましたが、そんな彼を支えたのは他でもないエリアでした。
だから、エリアを守ると決めました。
だからこそ、いつまでもエリアのことを見守ろうとしていたんでしょうね・・・