・・・の前に少し箸休め、エリアが恩師にご挨拶
ホテルロイヤルキャッツに奇跡的に?お客さんが来た翌日の朝・・・いよいよ旅行の最終日
「おはよう・・・あれ?今日は俺が早かったのかな?」
「エリア君おはよー!そうだよ一番早起きさんえらいよー」
ヨスヨスとエリアの頭を撫でるココア
「なんか早起きしたり、遅かったり、生活リズムバラバラだな」
「けど遅いときにはなにかしらの理由があるし、仕方ないんじゃない?」
「そうかなー?」
「そうだよー!」
「それにしてもココアがここで手伝ってる姿も見慣れてきたね」
「見慣れたところで残念だけど明日でおしまいなんだよね・・・」
「そうだね・・・」
楽しかった旅行の最終日、どうしてもしんみりしてしまう。そんな気持ちをはねのけるためには
「けど私たちがここで培ってきたものはなくならないよ!私のパン作りのレベルは大幅に上がったもん!はい一口!」
この旅行で得たものを振り返ってみた。
ココアはエリアの口にロールパンを突っ込む。
「むぐっ・・・ゴクンッ、うまい!」
「やった!、こうやって成長したことを木組みの街でも生かしていこうね!」
「おー!!俺も成長したこと・・・なくない?」
「えぇ!?」
確かに伯父やら母やらのことで色々あった気はするが、どこが成長したのか?と言われたら答えは否である。
「ほら!ピアノとか!昨日の双子ちゃんも誉めてて好評だったよ!」
「でも弾けるの一曲だけだし」
「むむ、なら身長が伸びたよ!」
「この数日間の成果で伸びないでしょ、でももっと色々聞きたいなぁ・・・」
「むむむ、ならこれからのことだけど・・・千夜ちゃんとの「ココアちゃん?」千夜ちゃん!?」
ココアがなにか言おうとした所に千夜が来た、しかし服装は前のようなだらしない寝起きの姿ではなく、きちんと整えられている。
「おはよう千夜」
「おはようエリア君、それでなんのお話だったの?」
「旅行で成長したことの話だよ」
「あらそうなの?エリア君はもちろんみんなと家族になったことでしょ?」
「それはあるね、それでココアはなにを言おうとして「それ以上はだめよ?」ちぃっ」
「!、まさかエリア君私から作戦を聞き出そうとしてたんじゃ!!」
「バレたか」
イタズラっぽく笑う
「バレバレよ。さぁ、朝御飯にしましょう。最終日なんだから時間がもったいないわ!みんな起こさないと」
そんなエリアを軽く流して、千夜はまだ寝てるメンバーを起こしに向かった。
「なんだか千夜ちゃんいつも通りだねぇ」
「そうだね」
「もうちょっと緊張とかないのかな、エリア君もだけど」
「今ドキドキしてたんじゃ身が持たんよ。さて、それじゃあ俺朝ご飯の準備手伝おうかな。なにすればいい?」
「じゃあお皿並べてくれるかな?」
「了解」
そうしてつつがなく朝御飯がはじまった。
・・・お昼前
「それじゃあ今日はどこに行こうか?」
折角の最終日、皆で行動しようということになったので、早速行き先を皆で決めることにしました。
「あー、それじゃあ一個行きたいところあるんだけどいいかな?」
「エリア君からのリクエストは珍しいわね。」
「この旅行で単独行動禁止だったし、最後くらいエリアの行きたいところに付き合ってやるか」
「それで?どこに行きたいのよ?」
「中学校」
「「「「「「「中学校?」」」」」」」
・・・
「ついた、ここだよ。」
皆を引き連れて着いたそこはエリアが以前通っていた中学校である。
春休みだが部活中の生徒たちがグラウンドで走っている
「本当に中学校だ・・・でも入っていいの?」
「大丈夫だよマヤちゃん。実は昨日電話で許可はもらってるんだ。」
「昨日から準備してたの?全く・・・もし今日私たちが行きたくないっていったらどうするつもりだったのよ」
「?、皆ならそんなこと言わないでしょ?」
「!、それはそうだけど「これは一本とられたわねシャロちゃん」うるさい!」
純粋な瞳でまっすぐに返されてしまってはシャロはなにも言えなくなってしまった
「エリアが入るのはいいかもしれないけど、私たちもいいのか?」
「友だち連れていきたいんですけどいいですか?って聞いたらオッケーもらえたから大丈夫だと思います。」
守衛に実家に置いていた中学の頃の生徒手帳を見せ、中に連絡をとってもらい、校舎を進む。
「でもさ、中学に来てなにするのさ?」
「もしかして後輩に会いに来たとかですか?」
「確かに一人会いたい子はいるんだけどね、中学違うから会えないかな。今日の目的は先生に会いに来たんだ」
そういって着いたのは職員室
「失礼しまーす」
臆せず挨拶と共にドアを開いた。集まる教師の視線・・・だが?
「(なんだろう?エリア君のことを見て驚いてる?)」
こちらに集まる視線は驚きの目から集まっている。
「和田くん!!」
「あ、先生!」
エリアに声をかけた女性、彼女こそが・・・
「皆紹介するね、この人は俺の中3の頃の先生で恩師!」
エリアに木組みの街を薦めた人だ。
・・・
「和田君のことはずっと心配していました。」
「ありがとうございます」
個室に通されて、先生と二人で話す。
皆は水を差すのは悪いからと、学校を見て回っている。
「けど、友だちとまた訪れてくれて、安心しました」
「俺も皆とならいけそうな気がしたんです。それで今日は旅行でこっちに戻ってきたから、顔を出させてもらいました。」
「そうですか、でも女の子ばかりなのですね・・・そういった成長はあまりみたくなかったですが・・・」
「いや!?普通に男の友だちもいますからね!?」
こうして話していると中学の頃を思い出す。
・・・
「はじめまして、中学三年という大事な時期ですが、一年間よりよい生活をおくりましょう」
初対面の挨拶はたしかこんな感じ、きっちりしたスーツと変わらない表情、かなり固い先生という印象だった。
初めは真面目そうだな、とか、面白くなさそう・・・なんて失礼なことを言ってるクラスメイトもいた気がする。
しかしその頃のエリアは父が亡くなり、心に余裕がなかった頃だった。
父を亡くしてから周りの友だちはどこか自分を遠巻きにしている気がした。この間まで普通に話しかけてくれていたのに、どこか遠くかった。
けど、自分もそのことに気づく余裕すらなくて、気づけば孤立していた
「和田君」
「!、先生」
「こちらは学校を休んでいた時のプリントです。」
「・・・どうも」
このころ、情緒不安定で学校にあまりいけてなかった、その休んだ分のプリントと・・・
「それから、これは個人的なので内緒ですよ?」
「え?」
そういって手渡されたノート
「私の授業のノートと、各教科の先生からこっそり聞いた次のテストの重要な点を纏めたものです。これを使って勉強してください。」
「!!、いいんですか?」
「貴方ならきちんと使えると思いますので、それに言ったでしょう?個人的なので内緒ですと」
「・・・ありがとうございます」
開かれたノートは全て手書き、その文字は間違いなく先生のものだった。
それから少しして・・・自分が命を捨てかけた時があった。
その件について、学校では病気で入院したと公表された。病院にいるのでは間違いないので、嘘ではない。
いつか母がいたようなベットの上
手首に厳重に巻かれた包帯
エリアは父を亡くしてはじめての夏を耐えきれなかった
・・・そんな自分に訪れるのは定期的なカウンセラーと伯父と・・・
「というわけでこうなります・・・今日はこのへんにしましょうか」
週に一回必ず来る先生だった。
来たらなにも言わず、前にくれたノートを渡してくれて、ひたすら勉強を教えてくれる。
特になにか話すわけでなく、本当に勉強だけ。
よく知らないカウンセラーのよく分からない話やどう話せばいいか分からない伯父とは違う距離感に戸惑いは少しあった
「先生はなにも言わないんですね」
「なにかいってほしいのですか?」
「いえ、そういうわけでは・・・」
「なら、いいでしょう」
今思えば、生徒が命を捨てかけたなんて学校は大騒ぎで担任だったこの先生も大変だったのではないかと思う。
けど、その時間はエリアは落ち着いていた。
先生の以前と変わらぬ態度に表情、それがありがたかった。
下手な慰めや、共感の声より・・・ずっと
・・・
「それからあの時先生が今の高校を進めてくれて、俺は今生きています。」
伯父が来られなくて二人きりで受けたあの進路相談
あの時のことがあったから今自分は生きていると思う
あまり記憶のない受験勉強も先生は応援してくれていた
「それは和田君が答えを見つけたからですよ」
「・・・」
「正解は貴方が見つける、そう伝えたはずですよ。和田君は正解を見つけられたのです。
間違える時や傷ついた時もあったでしょう。
それでも、貴方は上を向き進むことができた。
私は貴方にそれを誇ってほしい。」
「先生・・・」
「それに素敵な友だちもできたようですし、貴方はもう大丈夫・・・ちゃんと助けてを言える人ができたんですね。」
病院にいるあの時、本当は助けてほしかった。
震える体を抱き締めて大丈夫だと言ってほしかった。
だけど、助けを求められなかった。
先生はそれをずっと待っててくれていたんだ
先生だったから、エリアが求めるまで動けなかった。
だから待っててくれていた。
だけど、自分には勇気がなかった・・・それでも
「・・・はい、俺が何も言わなくても・・・例え俺から遠ざけたってそれでも助けてくれる人がたくさんできました。
それだけじゃなくて、俺が助けたい人たちでもあるんです。」
それでも、今は違うとはっきり言える。
顔を上げて先生の瞳をまっすぐに見つめて話す。
「そんな皆に出会えたきっかけをくれたのは先生でした・・・だから」
ガタッ、椅子から立ち上がり、頭を下げる。
「先生、ありがとうございます。先生のお陰で俺は変われた、先生のくれたきっかけは俺の世界を彩ってくれた。」
そのきっかけをくれた先生に感謝したかった。
「顔をあげてください。」
「・・・!」スッ
顔をあげる、表情の変わったことのなかった先生が少し涙を流している。
「ごめんなさい、泣くなんてみっともないですね」
「っ!」
「私はこう、表情が固くて、よくなにを考えてるか分からない、と言われてしまいます。本当は寂しくてもなにも言えない・・・そんな大人です。
そんな私が貴方にできることはなんだろうと思うと、寄り添うことだけだと、思っていました。」
「俺はそれがすごくありがたかったです。」
「ありがとう和田君、でも本当はこれでいいのかずっと考えていました。
だけど、私は貴方とどう接すればいいか、分からなかった。」
「!」
「だから、貴方が助けて、と言ってくれるのを待っていました。結局最後までなにもできず、でも貴方を一人にさせるわけにいかず、高校や下宿先の方に全部押し付けて、逃げた」
「そんな!それは俺が言えなかったからで・・・」
「なにも言わなかったから分からなかったなんて、友だちや家族にはそれでいいかもしれせん。
けど私と貴方は教師と生徒・・・大人と子ども、その関係である以上私は貴方を守るべきだった。」
なにも言わずとも察するなんて、よっぽど仲良くないとできるわけない
仲が良くたってすれ違うことは普通にある。
今でこそ、そのことがよく分かる
だけど、大人と子どもはそうではいけないのだ
「守るべき存在を私は見捨てました。」
「っ!違います!!」
大人というのは時にひどくめんどくさいのかもしれない
だけど、この人にそんな顔してほしくない
後悔なんてしてほしくない
「店主さんから聞きました。
『あんたの担任がひどく心配してたからいつか顔だしてやりな』って。先生店主さんになにか伝えてくれたんですよね?」
「!!」
「きっと今いってる高校にも色々伝えてくださってるんですよね。
だから、俺は捨てられたなんて思ってないです!
俺は託されたんだって思ってます!」
先生の想いは店主や高校の先生・・・そして家族である友だちにも受け継がれている。
その想いは捨てているのを皆が拾ったんじゃない
先生が言葉を選び、伝えて、頭を下げて、皆に託してくれた。
「先生の託してくれた想いが受け継がれて俺を助けてくれた。だから今ここに生きてる。」
道はひとつではない、いろんな道がきっとあった
だけど、今の自分はこの道しか考えられない
その道を教えてくれた先生に伝えたい
「だから、先生は悪くないよ。先生は俺に手を伸ばしてくれてたんだ、俺はそれに気づけなかったけど・・・それでも!俺にずっと手を伸ばしてくれた人に俺は後悔してほしくない!」
涙を流しながら、目の前の少年だった彼を見る。
その瞳に悲しみを受け入れることができる大人、
悲しみに耐えきれず泣き助けを求める子ども、
どちらにもなれなかった少年はもういない
まだ大人とはいえないが、子どもではなく、あの頃より進化したエリアがいる。
あぁ、思っていいのかな
間違っていなかったって
「あぁ、よかった」
更に流れる涙
「えぇ!?なんでもっと泣くんですか!?」
「だって和田君が笑ってるから・・・」
少年の成長と進化はたくさんの人に支えられていた、
そして自分もほんの少しかもしれないがその手助けができていたのなら・・・
そう思うと、涙が止まらなかった。
・・・
「それじゃあ、先生・・・また」
「えぇ、またいつでも来てください。」
あの後空き教室で学校ごっこをしていた皆を拾い、門まで来た。
先生は門まで見送りに来てくれた。
少し別れが惜しいが・・・振り返らず進む。
たくさんの家族である友だちに囲まれたその背中はとても楽しそうに見えた
「(きっと私は貴方という生徒を一生忘れない)」
教え導く立場が、教えられ、救われた。
「(そして一生誇りに思います。)」
自分が抱えていた後悔から救い上げてくれた生徒、そんな優しい生徒をもてたことを誇りに思いたかった。
・・・
「んんー!なんかごめんね、結局俺一人の用事になっちゃった」
皆でならんで進みながら、上に大きく伸びをする。
「いいのよ、エリア君どうしても行きたかったんでしょ?」
「うん、どうしても行きたかった。お礼が言いたかったんだ」
「お礼?」
「うん、素敵な家族に出会わせてくれてありがとーってね」
「!、エリア君!」
もうなにも思うことはない、素敵な友人たちを恥ずかしがることなく家族と呼べる。
「さて、俺の用事は終わったからどうしよっか」
「最後だし、夜ご飯まで色々見て回りたいよね!」
「そうね、それからはどうする?」
「あ、あの私に提案が」
おずおずと手を上げたのはチノ
「チノちゃんが行きたいところ?どこどこ?」
普段あまり欲求を表に出さないチノの主張にエリアのテンションが上がる。
もちろんココアもテンションが上がり、皆もつられて盛り上がる、収集がつかなくなりそうなその時
「王の命令を発動します、今日は私に従ってください」
ビカーッ!とチノの指に輝く指輪
「ここでガレット・デ・ロアの指輪使うの!?」
「それでは私についてきてください!」
先導して進むチノ、それに皆ついていく。
「ふふっ、チノちゃん楽しそうね」
「そうだね・・・」
ついていきながら、千夜と話す・・・そして
「あのね」
「あのさ」
二人の声が重なった。
きっと考えてることは同じだ
「「今日ホテルに帰る前に少し時間くれる?」」
続く言葉ももちろん同じ
はたしてそれは決闘の合図なのかそれとも・・・
喫茶店こそこそ話
エリアの中学の頃の友だちは決してエリアが憎かったり嫌っていたりしたわけではありません。
むしろ友だちは皆、エリアのことを心配していました。
だけど、だからこそ、皆エリアとどう話せばいいのか分からず、卒業・・・エリアは木組みの街に行ってしまいました。
友だちはそのことを後悔しているそうですよ。