ふわふわと暖かくて、ゆらゆらしていて・・・少しずつ意識が浮き上がっていく・・・ここはどこだろう?
「いやー遊んだ遊んだ、ようやくエリアも身長届いたから同乗者ゲットで乗り放題☆」
「ほどほどにしろって言ったはずだ、エリアふらっふらっなんだけど」
「う、うーん」
父に背負われている帰り道、母に連れられ乗らされた絶叫マシーンにまだ目を回しているのだ
父の背から遠くに見える景色はキラキラしている。
「だいじょうぶだよおとうさん、ふわぁぁ・・・」
溢した欠伸、吐息が白い、そうだこれは冬の時のことだ
「あら、エリアおねむさん?」
「そりゃ母さんに付き合ったんだもんな」
「どういう意味!?それよりエリア!眠いのならお母さんが抱っこしてあげる!おいで?」
こちらを向いて、腕を広げてカモンっ!とエリアを呼ぶ母
「もう絶叫マシーンは勘弁でしょ?」
「うん・・・」
「私絶叫マシーンなの!?」
うとうとと、どんどん目蓋が重くなる。
「寝てもいいぞエリア。明日もお休みだし、お風呂も明日でいい、ゆっくりしような?」
「そうね、明日はお母さんとコンサートしましょう?どんなリクエストでも聞いちゃう!エリアはなにがいい?」
「えっとねぇ・・・じゃあねぇ・・・」
うさぎの歌がいいなぁ・・・そう言う前に目蓋が完全に閉じられて、意識が落ちる。
そして・・・
・・・
「・・・君!、エリア君!」
「!!?」
ハッと目を覚ます、目の前には千夜
「俺寝てた・・・の?」
「?そうよ?、それよりもう着いちゃうから行きましょう!」
「うん・・・」
今いる場所は電車の中
目を擦る、その感触がこれが現実だと告げてくる
あれは夢だったのだ
いつかの記憶、当たり前に思ってた幸せの記憶
「エリア君大丈夫?歩ける?」
「大丈夫」
チノに連れられ、ケーブルカーに乗った。
到着した場所はチノがこの旅行で出会った子に教えてもらったと言うおすすめスポット
夜景が一望できる・・・宝石箱のような場所
皆でその景色を見て、リゼが泣いて、ココアが猫を追いかけてどこかに行って、それを探して・・・
「それでこれどこにいくんだっけ?」
「まだチノが教えてくれないんだよー」
「お楽しみみたいですー」
「そっかぁ」
メグとマヤにも分からないらしく、とにかくチノについていく。
そう、宝石箱の景色から更に移動して、大きな橋に移動している。
さっきの電車はその橋に向かうために乗車したもの、そして見事に寝ていたらしい・・・
「エリア大丈夫なの?さっきからボーッとして」
「体調悪いのか?」
「・・・大丈夫、ちょっと寝起きなだけで」
シャロとリゼに心配させまいと、答えた。
「眠いならいつでも言ってね、私おんぶしてあげる!」
「千夜ちゃんには無理じゃないかな」
「潰されそうです」
「ひどいわ二人とも!?」
千夜が腕を構えて、任せて!と言わんばかりにこちらを見ているが、ココアとチノによって撃沈
確かにエリアが乗ったら潰してしまいそうだ
「ふふふっ、ありがとう千夜」
「えぇ、だけど私が疲れたらその時はよろしくね?」
「もちろん、お兄ちゃんに任せなさい!」
「!エリア君が本格的にお姉ちゃんの座を狙ってる!?譲らないよ!!」
「いや、お兄ちゃんって言ってるだろ。エリアがそんなこというなんて珍しいな・・・まだ早いけどな」
まだ兄を名乗るには未熟でいささか早いようだ、だが
「そんな!?俺はお兄ちゃんだぞ!?」
「存在しない記憶を捏造するな!!」
そんなコントをしながら進んでいく
・・・
そうして着いた場所は大きな橋・・・もともと百の橋と輝きの都と名前のとおり橋がたくさんある街ではあるが、その中でも一際大きく、歴史を感じさせる石橋だ。
「来たのはいいけど、人が多いわね」
「何があるの?」
たくさんの人が橋に集まっていた、まるでこれからなにかが起こるようで・・・その時
「どーん!」
チノが手を上げて叫んだ・・・だがなにも起きない
「どうしたのチノちゃん?」
「あれ?あれぇ?」
「今のチノちゃんかわいかったなぁ・・・どーん!って」
そう言って先程のチノを真似するかのように、ココア手を上げる・・・すると
ドオン!
「花火!?」
色とりどりの花火が打ち上がりました。
・・・実はこの花火は橋の建設記念の花火なのです
支配人よりこのことを聞いたチノは、皆にサプライズのつもりで連れてきてくれたそうです。
その花火に目を奪われる皆
花火を見ながらこの旅行のことを思い返します。
最高の思い出ができた。
夢が広がって、色んな人と出会った。
みんなと家族になれた。
パンの修行で筋肉がついた。
止まっていた時間が、ようやく動いた。
「橋が人と夢を出会わせたのね、素敵っ!」
「・・・そうだね、色んな出会いと夢との出会いがあったね」
たくさんの出会いがあったこの旅が・・・もう終わる
・・・
花火が終わり、皆でホテルに帰ることに
そこで王であるチノの命令で今日は皆で夜更かしをすることになり、その計画をたてていたが
「ごめん、皆先に帰ってて?」
エリアが手を合わせて皆に謝ります。
「!?まさかまた一人でどこかにいくつもりですか!?させません!」
「お、落ち着いてチノちゃん!、千夜と二人で話があるだけだから」
「!!それって」
千夜に視線を移す、それに頷いて・・・
「チノちゃん、それに皆もお願い、少しだけ二人にさせて?」
「・・・分かりました。先に帰って、夜更かし用のコーヒーを淹れておきます。」
「あんまり遅くなるなよ?」
「千夜ちゃんがんばってね!」
「エリアも・・・まぁ爆発しないようにね?」
「どっちが勝つかなー?」
「私千夜さんに賭ける!」
なにがあるのかなんて野暮なことは聞かず、ただ二人にエールを送ってくれた。
たくさんいた人もいなくなって、今は大きな橋の上で二人きり
「・・・」
「・・・」
エリアはただじっと千夜を見つめてから、口を開いた。
「青山さんからは女性から先に言わせるのはどうなんですか?って言われたんだけど・・・まず俺は千夜の気持ちが知りたい。」
先行を譲る・・・訳ではない、このことは青山と出掛けた後にずっと考えていたこと
先に言われるのは情けない・・・確かにそう思った、だから最初は自分が先に伝えないといけないと思っていたがそうではなかった
だってもうお互いの気持ちなんて分かりきってるんだから
「あのね、エリア君」
今から二人がするのは確認、自分の相手への想い・・・それを確認する。
それが二人の想いの伝え方
「初めて会った時はね、あんこが懐くなんて珍しいな、なんて思ってたの」
「うん、いきなり顔面だったよね」
初対面は驚きの出会いだった。今でも思い出すと笑ってしまいそうになる。
「そうだったわね、それから一緒に働いて・・・友達になりたいって思ったの」
なにも知らなかった頃、彼がくれる優しさ、それでいてこちらの優しさを受け入れられない不器用さ、それが気になったきっかけだ
「うん、そう言われた時驚いたけど、嬉しかったよ」
「それから友達になるために私エリア君とどんどん距離を縮めたわ・・・けど、一度私は間違えた」
「あの時のこと?」
思い出されたのはまだ両親のことが自身の傷だった時のこと、そして千夜がその傷に触れてしまった時のこと
「・・・うん、すごく後悔したわ。
けどエリア君が許してくれて、またひとつ仲良くなれた」
それ以来すぐに謝り、その謝罪を受け入れ許すようになった
後悔や悩みを持ち続けないために、二人で決めた約束
「でも、あれはどっちも悪くなかったでしょ?」
「それはエリア君が優しいからよ。
けど私はその時から臆病になった。それでどんどん前へ進化していくエリア君を見て、それから・・・エリア君の道標になるココアちゃんに嫉妬してた」
今ならハッキリと言える
あの時、エリアが立ち直るきっかけをくれたココアに、
そしてエリアが憧れていたココアに嫉妬していた。
「今思えば少し嫌な子になってたかもしれない・・・けど、そんな私をシャロちゃんは叱ってくれたの」
「叱られたの?」
「うん、うじうじしてるからそんな風になるんだって、そんなんで傷ついてどうするだって叱られたわ」
「怖そうだね」
「すごく怖かった・・・だけど、そのお陰で私はエリア君と向き合いたいって思ったの・・・それで」
一息おいて、覚悟を決めて・・・
「エリア君のことが好きになったの」
ちゃんと言葉で伝える。
「いつも上を向いて歩こうとする姿が好き
甘いものが好きな所も好き、それから猫好きな所も
皆に優しいのは少し妬ちゃうけど、優しい所も好き
たまに泣いても立ち上がる強さが好き・・・
エリア君のこと全部が好き」
嘘偽りない言葉を選んで伝える、そのどれもが堪らなく愛おしい。
どんなに前に進んだって、自分のことを大切だと言ってくれた、
どんなことになったって、自分のために頑張ってくれた
そして気づけば好きになっていた
「・・・これが私の気持ち」
一昨日の夜皆で考えた作戦はシンプルなものだった
とにかく、想っていることを伝えること
少し重たく感じるくらいでちょうどいいから、想いの言葉を伝えてしまえと皆に背中を押してもらって、エリアにきっと届くと信じた、
「次はエリア君の想いも聞かせて?」
「うん・・・あのね千夜、初めて会った時はさ、着物の可愛い女の子だなー、なんて考えてたんだ」
気絶して、目覚めて思ったこと
その後甲冑を来て自己紹介をしたときは固まったが・・・
「えぇ!?そ、そうなの?」
「うん、それで、それから一緒に過ごして色んな一面を知った」
和菓子と甘兎庵にかける情熱や理数系が苦手でココアとエリアに頼む姿、実は恥ずかしがり屋さんなところ
全部全部魅力的で
「色んな千夜を知っていくなかで、千夜の存在が少しずつ大きくなった。特に大きくなったのはあの雨の日だった」
大雨の中で千夜とシャロのために傘をもって迎えにいった時のこと
「あの時ね、俺と千夜たちはちがうんだーって勝手に思って怖くなって逃げた」
自分と彼女は釣り合ってないのだと思い、逃げてしまったあの日。
「けど、俺その時の千夜の言葉に救われたんだ」
・・・
「心配だから助けようとする。お互いにね」
「それからお互い感謝しあう、きっとそれが友だち」
・・・
「なんていうか、友だちと思っていいんだって許された気がしたんだ・・・」
そう思ったらすごく嬉しくかった。
きっとそれがきっかけなんだと今思う。
「それから夏になった。」
傷ついて自分勝手に千夜を拒絶した。
それでも千夜は自分を見捨てたりせず、周りと手をとって自分の傷を癒してくれた。
こんな自分を抱き締めてくれた・・・そして
「その時確信したんだ。俺は千夜が好きなんだって」
そう言ってポケットに手を入れて、あるものを取り出す。
取り出したのは小さな箱、それをそっと開く
その中には・・・
「今はこれが俺の精一杯なんだけど・・・受け取ってもらえませんか?」
「!!!」
月明かりに照らされたシルバーのリングが2つ
青山に相談に乗ってもらいながら、最終的に自分で決めたものだ
「その、重いかなって思ったんだけど、どうしても贈りたくて」
「・・・嬉しいわ、ねぇエリア君」
すっと左手を差し出す。
「填めてくれる?」
「!、うん」
サイズの小さい方を手に取り、薬指に填める。
指のサイズなんて知らなかっただろうに、ぴったりだ
「ぴったり・・・いつはかったの?」
「これを千夜に贈りたいと思って勢いで買ったんだ・・・その、指すぐに抜ける?仕事中は外すよね?」
ただ、彼女に似合うと思ったから、そしてそれを贈りたいと想ったから、直感で選んだサイズはぴったりだった。
「うん、すぐに抜けるわ・・・あのねエリア君」
「なに?」
「これはその・・・予約ってことでいいの?」
予約、その言葉が意味することは・・・
「そ、そのつもりです・・・」
『これから』を貴女と歩みたいというメッセージ
「エリアくんも着けて」
「うん」
こっちもバッチリ、自分の指は何度か試したから当たり前だ
「その、今は安物だけど、いつかは本物「それはやめて」えっ!?」
エリアの言葉を遮って千夜が告げるのは拒否の言葉
まさかの言葉に驚くが・・・
「いつかを本物にしちゃったら今のこれは偽物になっちゃうでしょう?私は今も『これから』も本物がいいのだけど?」
「!!」
欲しいのは今の本物の気持ち
そして、これからも変わらずにいてほしい
値段なんてどうでもいい、ほしいのはそれだけ
「うん、これも・・・『これから』も俺の千夜への気持ちは本物だよ。俺は千夜が好き、ずっと一緒にいたい」
今までは彼女からもらっていた言葉を告げる。
千夜はその言葉を聞いて微笑んで・・・
「・・・エリア君、少しだけ屈んで?」
「?「えいっ」!!」
二人の顔が重なった。
でもすぐに離れて、残るのは唇に残る感触だけ
フリーズして、すぐにその意味を理解する。
「え?え?えぇ!?」
「こんな素敵なプレゼント貰ったんだもの、お返しはこれしかないと思ったのだけど?」
澄ました声で答えるが顔は真っ赤の千夜
エリアも同じく真っ赤になりながら、口を抑えて戸惑う。
「いや、こういうのは流石に早いといいますか・・・」
「手繋ぎにハグ、添い寝に一緒にお風呂まで入ったのに?これ以上ってなるとこれしかないと思うわ」
「・・・で、でも」
「もう!さっきまでカッコよかったのに!」
「そんなこと言われても・・・」
思わぬカウンターに身動きすらできないエリア・・・らちが明かないと千夜が動く
「はい、エリア君。私目を瞑ってるわ」
そう宣言して本当に目を瞑る、これ以上は言うまでもなく・・・
「~~っ!もうなるようになれ!」
半場やけくそではあるが、先程千夜がしたようにエリアも顔を近づけ、もう一度重なる。
しかし先程と違うのはエリアの腕が千夜の背中に回り、強く抱き締め、千夜もそれに答えたこと。
いつかのハロウィーンのように世界が二人だけになったように感じながらも、二人は長く長く・・・重なり続けた
「これってどっちの勝ちなのかしら?」
「多分・・・俺の負け」
今更勝敗なんてどうでもいいが、千夜の渾身のカウンターが突き刺さったエリアは両手を上げて降伏した。
喫茶店こそこそ話
パーティー準備中のため・・・本日休業です