今日のお話は甘兎庵から始まります
「んん~!・・・あ、そろそろ上がりの時間か」
お休みの午前のシフトに入っていたエリアでしたが、今日はお昼時の時間で上がり、この後の予定はなく暇です
球技大会で怪我した右足には包帯を巻いています。
走ったりするのは少し痛みますが歩く程度ならなんの問題もないので普通に働きました
「千夜はシャロとお出かけにいったし、俺はどうしようかな」
控え室に戻り私服に着替えながらこの後の予定を考える
「とりあえず昼御飯はまかないでなにか作ろう。それからゲームしようそうしよう」
テストも演奏会も終わり、特に急ぎでやらなければいけないこともない、足も痛むので外を出歩くのはあんまりよくない
・・・つまり合法的に家に引きこもれる(今回のような理由がない限り千夜やココアに外に連れ出される)ので久しぶりにのんびりゲームができるとウキウキしながら着替えを終えたところで携帯にトークアプリの通知が入っていることに気がついた
「リゼさんからだ」
連絡をくれたのはリゼ
『頼みたいことがあるからうちの実家に来てくれないか?』
「うーん行ってあげたいけど今足怪我してるからいけないな~」
もう思考がゲームに向いているのでそんな言い訳をしながら今日は難しいと返事を送ろうとすると・・・
『そっちに迎え寄越すから』シュポッ
既読が付いたのを確認したのか追加のメッセージが来た
「あー・・・でも昼御飯食べないと」
『飯もご馳走するぞ?』シュポッ
「・・・ゲームしたいんだけど」
『千夜から聞いたお前の部屋の棚の3段目の隅にある本たちについて語る。2冊目放課後の教室で巨「あー!??分かった分かった!行きますから!!?」』
『ありがとう、待ってるぞ』シュポッ
「・・・もしかして俺監視されてる?」
・・・で
「突如に店の前に現れた黒塗りの車に拉致られ、やってきました」モグモグ
「誰に向かって話してるんだ?」
「壁の向こう側の皆に「おかわりどうぞ~」あ、ありがとうございます」
リゼの家でいつものお昼ごはんより豪華なご馳走を食べるエリア、メイドさんに追加のパンをもらいました
「それで、頼みたいことってなんですか?」
食べ終えて、本題にはいる
「実は教師になるに向けてピアノの練習を始めたんだが上手くいかなくて、それでエリアに教えてもらえたらと思ったんだ」
「なるほどでもそんなにできないとかありますか?」
「?どういうことだ?」
「とりあえず適当に弾いてたら曲になりません?」
「それはお前くらいだ」
そんなツッコミを頂いたところで早速練習に入る、ピアノのある部屋へ向かうエリアとリゼとメイドの三人
ボォォエェェェン♪
リゼによるおおよそ曲にもピアノの音とも聴こえない演奏が終わった
「い、一応私なり練習もしてみたんだけど・・・どうだ?」
「う、うーん・・・うぷっ、おえっ」
「はーい無理せず吐いちゃって~」サスサス
ビニール袋をゴミ箱に設置して嗚咽するエリアとその背中をさするメイドさん
「さすがに失礼すぎるだろ!?」
「ち、違うんです。俺変な音とかうるさ過ぎる音聞くと気分が悪くなるんです」
音に敏感なエリアの耳、音を明確に拾える反面で騒音に極端に弱いのだ
電話越しで大声を出された時や、以前ラビットハウスで当時の高校生組の演奏を聴いた時の音も実は気分が悪くなっていたのだが・・・
「その時くらいひどい」
「そんなにか!?」
「あー・・・確かになにかの呻き声に聞こえるもんね」
「今俺が呻き声あげそうですけど」
メイドさんの言う通りかなりひどい
「なんか間違ってません?ちょっと貸してください」
そう言って早速ピアノを演奏・・・♪~♪~♪~
「こ、これさっき私が弾いた曲か?」
「はい、童謡ですよね?リズムが一定で弾きやすいし短いから練習にぴったりですし」
「上手~聴いたことあるの?」
「今初めて聴きましたよ。後はなんとなくで再現しました~」
「いや、改めて聞くとなんでそんなことできるんだ」
「才能だねー」ナデナデ
「えへへ、ありがとうございます。えっと・・・メイドさん?」
そういえばしれっと練習にメイドさんが同行していた
「あれ?まだ名乗ってなかったっけ?私は狩手結良(かれでゆら)、ここでメイドやってるリゼの幼馴染み」
「じゃあ狩手さん?」
「ユラでいいよ」
「じゃあユラさんで!褒めてくれてありがとうございます」
ニコニコの笑顔でお礼を言うエリア
褒められたのが嬉しいのか周囲にお花が飛んでいる
「あはは、お花舞ってる。前からリゼから聞いてたけど素直だね。これは確かにいい後輩だ」ナデナデ
「ちょっ、ユラ!?」
「?俺とリゼさんの学校は違いますよ?」
「そういうことじゃないんだけどな~、でもそういうところが可愛いってリゼも「わー!やめてくれ!」むぐっ」
リゼに取り押さえられたユラ
「んーでも弾いて分かったんですけど・・・なんていうかリゼさんの演奏固いんですよね」
「固い?」
「はいガチガチです」
「どういうことだ?」
「だからえーと、音符や調子の取り方はあってるけどそればっかりになってる感じです」
「いやだから・・・あ、そうか」
さらに掘り下げようとしたところでリゼはあることを思い出す
「ん?どうしたんですか?」
「いや、お前の波長はココアとか千夜よりだからあんまり教えるのに向いてないんだなって思い出して」
「へ?」
「ぷはっ・・・つまりリゼはお前教えるの下手って言いたいんだよ」
「!!?」
驚愕のエリア
「なっ!?そんなはっきり言うつもりはない!」
「でも思ってたんでしょ?」
「それはそうだけど・・・ってあっ」
「でもチマメ隊の勉強見たりしたもん・・・分かりやすいって言ってくれてたもん・・・」イジケイジケ
気づくとエリアが部屋の隅っこで体育座りをして拗ねていた
「それは答えが明確に決まってるからじゃない?勉強の場合丁寧に説明しようって思ったら自分の捉え方よりも公式通りに教えるのが一番だもん
多分それができるのがエリア君とココアちゃん千夜ちゃんとの違い」
「ぐはっ」
「ユラ!とどめをさすな!!」
「でもどうするの?このままじゃ昼食分の働きしてもらえないんじゃない?」
「別に気にしな「えぇ!?お、おいくらですか?」いやだから「このくらいかな」おい「た、高い!?」「なら労働返しだね~メイド服のスペア持ってくるね」待て!?それ以上は千夜が怖いから!!」
危うくメイド服を着せられかけたところでなんとか止められた
個人的には少し見てみたいが・・・無理矢理やってエリアが泣きでもしたら千夜がこわいのだ
「あ、そうだ昔少しだけお母さんにピアノ教えてもらった方法を試させてもらってもいいてすか?」
「なんだそんな方法があるのか。なら頼んでいいか?」
「はいっ!じゃあ早速座ってください!」
「これでいいか?・・・っておいっ!!?」
リゼが椅子に座って鍵盤の上に手をおく、その手の上に自身の手を重ねたエリア
確かにこれならできるかもしれないが距離が近い、互いの息づかいが聞こえてくるほど近い
「お、俺も恥ずかしいですけど頑張りますから!一緒に弾きましょう!」
「背に腹は変えられないか・・・頼む!」
上からリゼの手を操作するように弾いていく
「(すごい、ちゃんと弾けてる・・・)」
近くで聴くユラも驚く程に弾けている
ユラも一応軽く弾くことはできるが、今のこの二人の演奏ほどではない
補助があるとはいえつい先ほどまで呻き声のような音だったリゼが、だ
「(ちゃんと曲とピアノの音がよく分かる。音が柔らかくなった・・・!エリア君が言ってたのってこのことかな?)」
♪~♪~♪~
曲がサビに入っていく
「リゼさん、楽譜通りに弾くことって確かに大切ですよ」
「あ、あぁ」
リゼの手に合わせて動くエリアの手、詰まることなく流れるように曲が進む
「けどね?リゼさんの場合はぴったりにしようって考えすぎなんですよ」
「そうなのか?」
後半はもうほとんどエリアの力はない、ほとんどリゼが弾いている
「そうです。だから合わせようって無理矢理にやるから変な音になるんです。力を込めすぎてたり、次の音に早く向かってしまってたりしてました」
「最初からそう言ってくれよ」
♪~♪~♪~
「あはは、確かにそうですね。ごめんなさい」
「けど、ありがとうな」
そして・・・ジャンッ♪、最後の音が終わり曲も終わる
パチパチパチ!
「ちゃんと曲になってたよ」
「!、ありがとうユラ「リゼさん」ん?」
「楽しかったでしょ?ちゃんと弾けて、聴けてもらえて」
「!・・・あぁ、すごく楽しかった」
「ですよね。俺もこの間気づいたばっかりですけどやっぱり楽しまないとできませんよ。特に音楽は」
「なるほどな、よく分かったよ。お前もこうやって練習してもらってたのか?」
「ほんの少しだけですけどね。本当に少ししかやらなかったから・・・もっと一緒にやっておけばよかったなぁ」
今色んな楽器を練習していると母はどう演奏していたのかと思い出す
「こう弾いてたみたいなことは覚えてないんですけど、楽しそうな母さんの顔と俺の大好きな音達・・・それだけははっきり覚えてるんです」
今は探り探りでそれに近づくための練習をしているが・・・いつかは自分だけの音を出したい
「それを皆に聴いてもらいたいんです。俺の好きな音達を聴かせたい・・・それが今の俺の夢です」
「!・・・そうか、ならその時まで側にいてやるよ」
昔約束した、夢を見つけて、先に行くために前に進む、その時まで側にいるという約束
その約束は今もまだしっかりと二人を繋げている
「後はやっぱり繰り返しですよ。さっきの感覚を忘れずにやってみてください」
「あぁ!早速やってみる!」
♪~♪~♪~
「お、いい調子じゃん」
「うんうん」
♪~オ゛ォォ♪~
「「ん?」」
ォォエェェェン♪~ジャガンッ♪
少しずつ元の呻き声に戻った
「!?、なんでだ!?」
「あっちゃー、さっきのは補助ありきの一時的なものだったのかも」
「な、なにぃ!?どうしようエリア?・・・エリア?」
「う、うーん」グルグル
最後のリゼの演奏がとどめとなったのか目を回して倒れているエリア
「エリアー!?」
「はーい、ベッドにお連れしまーす」
そうしてその日はリゼの家で一晩を過ごしました。
・・・翌日の甘兎庵の住宅スペースにて
「ってなことがあって帰って参りました」
無事に帰ってきたエリア、千夜に昨日の話をしました
「お帰りなさいエリア君、大体のことはリゼちゃんから聞いてるわ。お疲れ様」
「まぁ結局大して役にはたってないんだけどね・・・」
「そんなことないわ、リゼちゃんもあの感覚を忘れないように今アコーディオンをココアちゃんから借りて練習しているそうよ」
「そうなんだ、けどもうリゼさん曲は覚えてたから後は回数を重ねて柔らかくしていくだけだと思うよ」
「そうね・・・で」
「ん?」
「可愛い彼女がいるにも関わらず、エリア君好みの胸の大きい先輩の背に密着して手を触った感想は?」
「!!?」
「ピアノの練習だもの邪な気持ちなんて一切ないわよね?決して柔らかいとかいい匂いがするとか思ってないわよね?あら?なんで目をそらすのかしら?ほら目を見て言って?」
「ご、ごめんなさい」ブルブル
「なにに謝ってるのかしら?特に理由もなく謝るのはよくないし、なにを悪いと思っているのか赤裸々に語ってくれないと困るわー?」グリグリ
「ひぃ!?」
つま楊枝に刺さった栗羊羹でグリグリとエリアの頬を押す千夜
「・・・なーんてね、怒ってみたりしたけどエリア君がリゼちゃんのためを想ってやったってことは分かってるわ」スポッ
そう言うと怒気を沈めエリアの口に栗羊羹を突っ込んだ、そしてそれをそのまま食べる
「ムグムグ・・・ごくんっ、え?割りと本気に聞こえ「なにか?」ナンデモナイデス『♪~♪~』んん?」
また千夜から出た怒気に少し怯んでいたら携帯電話が鳴った
「電話?」
「うん、あれ?またリゼさんからだ・・・はいもしもし?」
またピアノ関連のことかな?と思いながら電話に出た
「ピアノの練習のことですか?それなら今からそっちに行きますよ・・・って違うんですか?」
そうしてリゼから電話の内容を聞いた・・・そして
「・・・え?」
「?エリア君?」
静かに驚き・・・表情も深刻なものへと変わった
「・・・分かりました、今すぐ行きます」
そうして電話を終えたが、表情は変わらぬまま項垂れている
「どうしたの?」
「今日リゼさんがナツメちゃんにアコーディオン教えてもらった時に昨日の話をしたみたいで・・・」
「・・・それで?」
「ナツメちゃんとエルちゃん、俺の母さんに会ったことがあるって言ってるみたいなんだ。母さんの名前もあってたって」
「!!」
「それで二人が俺に話したいことがあるから、ラビットハウスにきてほしいって・・・」
衝撃の出来事に千夜も驚く、果たしてナツメとエルがエリアに話したいこととは一体・・・?
喫茶店こそこそ話
確かにいい匂いはしたし、手も自分より細くて柔らかかったそうで「なんのことかしら?」ヒイィィッ!!
オホンッ、仕切り直して
ナツメとエルは昔音楽を習っていましたが、スパルタな先生のせいでナツメは止めてしまいした・・・だけどその先生に教えてもらう前に音楽は楽しいと教えてくれたお姉さんがいたそうですよ?