緑茶風少年   作:アユムーン

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今回は少し本編に絡んでいる番外編!

久々にあの悪魔が登場!
またあの悪魔がフユに怪しい囁きを?

それではどうぞ!


あっちがどうなったのかはまた別のお話

気がつくとそこは以前訪れた大きなお屋敷だった

 

「(ここに来たってことは・・・これは夢)」

 

そのお屋敷を見上げるフユの姿は以前のような黒猫の姿ではない・・・が、頭には猫耳が生えている

 

「(猫耳・・・けどなんできちゃったんだろう?)」

 

考えながら門をくぐり、中を進んでいく

 

しかし今回は以前のように本を読んで寝落ちしたわけではない・・・のにこの夢を見ているようだ

 

「(とりあえず入ってみよう、あのエリア兄に似た人に会えるかも)」

 

恐らく力になってくれるだろう悪魔のエリアに会うためにお屋敷の扉に手をかけようとしたその時

 

「「「「「「「いい加減にしろー!!!」」」」」」」

 

ドンッ!!

 

七つの怒声と共にドアが開き、人影が飛び出してきた

 

なんとかフユは避けることができたが飛び出した人影は派手に飛んで・・・

 

ゴロゴロゴロゴロ・・・バタンッ!!

 

お屋敷の門まで転がっていってそこで止まり、ドアは誰の力もなく閉じられた

 

倒れて動かないその人が流石に心配になったので駆け寄るフユ

 

「だ、大丈夫ですか?・・・って、あ」

 

「いってて・・・って、あら?」

 

「悪魔エリア兄だ」

「フユちゃんじゃない・・・ってなにその呼び方、別にどうでもいいけど」

 

身体中を痛がりながら起き上がった人物、それこそが探していた悪魔エリアだった

 

・・・

 

「ふーん、よく分からないけど気がついたらここに来たと?」

 

「うん・・・」

 

立ち話もなんだからと、暗い町並みを歩み進む悪魔エリアとフユ

 

「この間のせいでフユちゃんの精神が抜けやすくなっちゃったのかもね」

 

「え?」

 

「ここに生者は来られない、だから今のフユちゃんは精神分離状態・・・まぁ幽体離脱ってやつだからまぁシンダンジャナイノ~?」

 

「えぇ!?」

 

「なーんて冗談♪大方青山様がなんかしたんでしょ。気が済めば帰してくれるだろうからしばらく一緒に散歩してくれる?」

 

「お屋敷は?」

 

「分かるでしょ?俺追い出されちゃったの」

 

「なにか、あったの?」

 

「フユちゃんには関係ないよ」

 

「でも「いいから」・・・」

 

「それよりフユちゃん、ちゃんと向こうの俺にちゃんと言えたみたいだね」

 

「!、知ってるの?」

 

「まぁね、俺の囁きに乗って強欲に傲慢に・・・なかなか大胆だったとは思うけどねぇ~」

 

「うっ・・・」カァー

 

「けど、すごいな。フユちゃんは」

 

「え?」

 

「好きな人を決めて、言葉と行動でちゃんと想いを伝えたんだ・・・すごいよ」

 

そうしてえらいえらい、とフユの頭を撫でる

 

フユの知っているエリアと同じ優しい手だ

 

だけど、目が違う・・・なにかを悲しんでいて・・・そして・・・

 

「貴方、は?」

 

「え?」

 

「貴方は、伝えないの?」

 

この悪魔エリアはフユの知っているエリアとは違い、きちんと周りからの想いに気づいていることをフユは知っていた

 

・・・だからこそ今の関係を大切にしたいから、誰かを選ばないという道を選んだということも知っている

 

だけどフユのことを撫でるその目は悲しそうで・・・羨んでいるように見えた

 

「!」

 

「それとも、好きな人が、いないの?」

 

「お、俺のことはいい「ダメ」!なんでさ」

 

いつもとは違い少し強引気味に悪魔エリアに詰め寄るフユ

 

「俺が君の好きな人と似てるから?」

 

「それは違う」

 

「ならなんで」

 

「だって」

 

目の前にいる悪魔は自分が兄と慕う彼と確かに似ている・・・だけどそれは関係ない

 

だけどこの悪魔がいなかったら、自分の胸の痛みを理解しようとせず、自分の気持ちに蓋をして、告げることはなかったから

 

「貴方は私に強欲で傲慢になれと言ったのにその貴方が燻った顔をするなんて不公平だから」

 

「!・・・あー、そっか、そうだね」

 

「貴方が言ってくれたこと、感謝してる。だから、今度は私の、番」

 

「・・・けど、言わない方を選んだっていいと思わない?」

 

「え?「あの二人のこと気づいてないなんていわさないよ」!」

 

悪魔が仕返しにといわんばかりに突きつけてきたことは最近のエリアと千夜のこと

 

「あっちの俺と千夜様、フユちゃんの前では上手く取り繕ってるつもりみたいだけど、裏ではギスギスしてるの、フユちゃん気づいてるでしょ?」

 

「ッ!」

 

それはフユが感じていたこと

 

最近町中で偶然会った時や甘兎庵に訪れた時のエリアと千夜はいつも通りに見えた

 

・・・それが二人がいつも通りに『見せよう』としてくれているのだと気づくのに時間はかからなかった

 

それでもエリアも千夜も一言もフユのことを攻めなかった

 

チノやココア達も、二人が喧嘩の原因はフユの告白であることを知ってても誰も攻めなかった

 

それは自分の告げた想いを汲んでくれているから

 

フユの気持ちが仲違いの原因になったとしても、それを起こした気持ちを勇気ある行動だとして、大切にしてくれているからだ

 

「まぁ唆した俺が言えたことではないけどさ、あぁなったのはフユちゃんの告白が原因なのは言わなくても分かるだろ?」

 

「・・・うん」

 

「後悔、してるでしょ?だってフユちゃんが言わなければあんなことにはならなかったんだから」

 

「・・・」

 

自分が原因で今の関係は壊れそうになっている

 

だから、こうなってしまった後悔というのは確かに・・・「・・・ないよ」

 

「っ!?」

 

臆することなく、悪魔を見貫いて答える

 

「後悔は・・・してない、確かに死ぬほど恥ずかしかったけど」

 

今目の前にいる悪魔に踊らされたのは事実だ、だけど最後に想いを告げると決めたのはフユだ

 

「エリア兄に伝えた気持ちは間違いなく本心だよ。千夜姉に向けた宣戦布告も本気だよ」

 

強欲で傲慢に挑んだあの告白劇の言葉と行動の全ては本心で本気のもの

 

だから・・・

 

「私は・・・あの時告げた想いに後悔したくない。想いを告げなければよかったなんて思いたく・・・ない」

 

あの時の自分はなにも間違っていない、と信じている

 

そして

 

「皆が私の想いを大切にしてくれているから後悔なんてしたら失礼だ」

 

一番の被害者ともいえるあの二人すらそうしてくれているのだから、フユが後悔を背負うなんて許されないのだ

 

「!?、そ、それで今の関係が「壊れないよ」!?」

 

「私はまだ少ししか知らないけど・・・エリア兄の・・・エリア兄達の家族はそんなに柔じゃない・・・と思う」

 

詳しく聞いたことはないが、互いを家族と呼び合うほどに固く結ばれているエリア達家族の絆をフユは見てきたから

 

「エリア兄達が、離れることは、絶対にない。例え私が選ばれても、選ばれなくても・・・絶対に」

 

だから後悔はないと言える

 

「っ!・・・本当にすごいなぁ」

 

クタッと脱力して、肩を落とす悪魔エリア

 

「?」

 

「俺も自分の家族をそんな風に信じられたらよかったのかな」

 

「信じられない・・・の?」

 

「どうだろう、少なくとも俺は信じられてないのかも」

 

「どういうこと?」

 

「俺はエリアみたいに一人を愛して、他のみんなのことを家族だとは言えない」

 

「?」

 

「もしも俺が一人を選んだら、それは他の皆を捨てたってことになるから・・・だから俺は・・・」

 

「悪魔エリア兄・・・」

 

関係が壊れるというフユが恐れなかった後悔を悪魔のエリアは恐れている・・・そして今現実のエリアも同じように悩んでいるのかもしれない

 

「フユちゃんにあぁ言ったけど・・・俺はこれでいいと思ってたんだ。誰かを選ばないで、このままでいいって」

 

今のままでいたいから、周りの気持ちは知らないフリをして、騙して、誤魔化して・・・

 

「だけど、さっき怒られた。いい加減にしろって」

 

そんな態度に七人の悪魔がそれはもう大激怒でエリアに詰め寄ったのだ・・・そして今に至るのだ

 

「俺が悪いのかな。皆とずっと一緒で・・・これから先、俺も皆も一人にしたくないだけなのに」

 

まだ起きてもいない後悔を恐れている悪魔エリアに対してフユは思う

 

「(こんなとき、皆ならどうするだろう)」

 

恐がって周りの気持ちに向き合えなくて、一歩踏み出せないこの悪魔を立たせるために・・・フユは

 

「それを、伝えた、の?」

 

「え?」

 

「なんで誰かを選ばないのか・・・ううん、皆のことが大好きだから、誰も選びたくないって、言ったことある?」

 

優しく悪魔エリアの気持ちを代弁していく

 

皆と一緒にいたいから、誰も選ばない

 

それは言い換えれば、皆のことが好きだから選べないということ

 

皆ならまずは優しく相手の本心を引き出そうとするだろうと考えながら話す

 

「ううん、フユちゃんが初めて」

 

「なら、ちゃんと言わなきゃ」

 

「けど俺は皆のことが信じられなくて「だったら!」!」

 

「だったら『これから』信じればいい」

 

「!」

 

これはエリアを助けられなかった後悔に潰されそうになった時にそのエリアが教えてくれたこと

 

これまでがダメだったとしても・・・

 

「これまで信じられなかったのなら『これから』始めればいいと思う。

 

きっとそのことに、遅いも、早いも、ないから

 

誤魔化してはぐらかすよりも、ちゃんと貴方の気持ちを伝えないと 

 

あの貴方のことが好きな悪魔さん達もそれを望んでる」

 

「・・・これから、か」

 

「うん・・・だから今度は、貴方の番」

 

「俺の番か・・・フユちゃんやるね。悪魔を唆すなんて」

 

「そ、唆す!?」

 

「なんて悪女!、これは転生したら悪魔かサキュバスかもね」

 

「そ、そんなことないもん!」

 

「いーや、あるね・・・でもありがとう」

 

そう言ってふわっと笑みを浮かべる悪魔エリア、もう辛そうな顔ではない

 

あの日のフユと同じ、なにかを決めた顔

 

「!」

 

「ちょっと勇気出たよ。さて、それじゃあそろそろ・・・青山様ー!!」

 

大声をあげて青山を呼ぶ悪魔エリア

 

「はーい、お呼びですか?」

「わ!?」

 

その声に答えてどこからともなく現れた虚偽の悪魔である青山

 

「お呼びもなにも見てたんでしょ?」

 

「えぇ、最初からばっちりと見させていただいていましたよ。」

 

「ならもういいでしょ。フユちゃんを帰してあげてよ。あっちの世界でフユちゃんはエリアに答えを聞かなきゃいけないんだ」

 

「もちろん、それではフユさんこちらを」

 

またどこからともなく鏡を取り出した青山、その鏡に映るフユには猫耳がないいつもの姿で映っており、それを見るや否や意識が遠退いていく、これは夢から覚める合図だ

 

「さよならフユちゃん、もう会うことはないと思う」

 

「そ、そうなの?」

 

遠退く意識をなんとか繋ぎながら答える

 

「まぁ青山さんの気分次第だけど」

 

「私としてはこちらに仲間入りしてほしいところではありますが・・・」

 

「それはだーめ、フユちゃんにはあっちに大切な家族も友だちも好きな人もいるんだから。本来こっちにあんまりいるべきでもないしね」

 

「そういうことなら仕方ありませんね」

 

「ってことだから、俺ももう君達のことをのぞき見するのはやめるよ。他の人より今は自分のことなんとかしないといけないからね」

 

「うん、それが・・・いい・・・」

 

「もう限界っぽいね」

 

もう瞳が閉じる寸前のフユに悪魔エリアが近づき、そして

 

ギュッ

 

「!」

 

「本当にありがとうフユちゃん、もう君は大丈夫、強くなった君なら・・・どんな答えが待っていたって受け入れられる」

 

フユを抱き締めたまま悪魔エリアは言葉を続ける

 

「俺も皆のことを信じて、自分の気持ち伝えてみるよ」

 

「うん・・・貴方も、頑張って・・・」

 

「うん、だから・・・」

 

スッ、フユから離れて二人は見つめ合い・・・そして

 

「「さよなら」」

 

同じ言葉を口にしたところで、フユの意識は完全に途絶えた

 

・・・

 

チュンチュンチュン・・・小鳥のさえずるいつもの朝、今日は休日だ

 

昨夜の雨が嘘かのように晴れ渡った青空

 

自室のベットで目覚めたフユ・・・思い返すのは当然先ほどの夢のこと

 

「(悪魔エリア兄、笑ってた)」

 

チノやエリアがしてくれたように、フユが悪魔エリアを笑顔にできた

 

やったことは真似事だったかもしれないけど・・・

 

「(嬉しい)」

 

誰かをキラキラさせる憧れで愛しい彼のようにできたことが嬉しかった

 

ベットから降りて、身支度を済ませて下に降りる

 

下宿先の人達に挨拶をしてから机上にある新聞と共に挟まっていた封筒が目についた

 

裏向きで置かれている封筒、差出人は

 

「宇治松千夜・・・えっ?」

 

慌てて封筒を手に取り、表にひっくり返す・・・そこには

 

「は、果たし状?」

 

筆で見事に書かれた果たし状の文字に驚きながら中を開く

 

『本日正午、甘兎庵に来られよ

 

 余計な甘さは要らぬ

 

 覚悟を決めて、参れ

 

 甘兎庵未来の社長、宇治松千夜』

 

と書かれており・・・

 

「ち、千夜姉本気だ・・・」

 

『PS、もしも都合が悪かったらメールしてね?日を改めるわ』

 

「あ、優しい」

 

幸い今日の予定は特にないので行くことに問題はない

 

「覚悟・・・決めなきゃ」

 

そして、覚悟は既に完了している

 

例えどんな最後になったとしても・・・

 

「受け入れるよ、ちゃんと」

 

今はもう見ていないであろう悪魔にそう呟いてフユは朝御飯を食べるのだった




悪魔こそこそ話 

フユが帰った後

「はぁ・・・青山様近々皆が怒るの予期してフユちゃんのこと呼んだでしょ?」

「さぁ?どうでしょう?」

「まったく・・・「けど勇気が出たでしょう?」!・・・それはまぁね」

「貴方の想いは間違っていないと私は思います。だけどそれを貴方は皆にちゃんと伝えなかったのが間違いだった・・・違いますか?」

「正解、まさかそれをフユちゃんに教えられるとは思わなかったけど」

「見守っていたはずの存在に教えられてしまいましたね」

「まったくだよ・・・はぁぁ・・・これはもう俺も逃げてられませんね」

「えぇ、お屋敷で皆さんがお待ちですよ」

「へ?なんで?今皆怒ってるんじゃ「言ったでしょう?始めからばっちりと見させていただいていました、と私がこのようなことを一人楽しむとお思いですか?」ま、まさか・・・」

「そのとおり♪お屋敷の皆さんにはリモートでお届けしていました」

「っ!・・・この悪魔め」
「悪魔ですから~」

「はぁぁ・・・とりあえず帰りますか」

「そうですね、それからどうしますか?」

「どうもこうも、まずはただいまって言ってから話をするだけですよ・・・『これから』の話を、ね!」
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