緑茶風少年   作:アユムーン

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後半です!

今回はエリアが生まれてからのこととなります

そして、新しい家族との出会いも・・・

ご一読ください!この物語を!


特別編 君が生まれてからのこと

エリア生まれた日である3月10日

 

朝から始まった芹彩の陣痛に、清が慌てて病院に連れていきベッドに寝かされた

 

とはいえまだまだ始まったばかり

 

お腹に機械をつけて赤ちゃんの心音を聞いたり、体調に気遣ったお昼ごはんを食べたり、テレビを観たりしながら、赤ちゃんがやって来るのを待つ

 

その間の芹彩のケアは縁がやってあげており、清治は清正に連絡、清は必要なものを取りに行くために一度家に戻った

 

それぞれその日のお勤めは「孫/甥が産まれるので!」というわけで休んだ

 

そうしていると・・・

 

「芹彩!!」

「病院は静かに!!」

 

仕事を切り上げてきた清正がやってきたが、芹彩に叱られた

 

「え、なんか余裕そうなんだけど」

 

「痛みだしたからっていきなり産まれるわけないでしょうが」

 

息切れながらも怒られたことに唖然としている清正を今度は縁が叱る

 

「それに遅すぎだ、そのせいでさっき俺がお父さんと間違えられたんだぞ」

 

「兄さんずるい!!」

 

「そんなこと言ってる暇があるなら早く芹彩さんのお世話をする!」

 

「あの、縁さんも静かに・・・」

 

そんなやりとりをしながら、清正は芹彩が痛む間は寄り添い、汗を拭く、飲み物を飲ませるなどのケアに当たる

 

そうして時間が経って日が暮れ、それに合わせてどんどん痛みの感覚は短くなっていき、痛みも強くなり始めた

 

「ッ~!!ハァッ、ハァッ・・・~ッ!!」

 

後に芹彩は身体が割けるかと思ったと語る、その表現に相応しく苦痛の表情を浮かべる芹彩

 

「頑張れ、頑張れ芹彩」

 

ギュッ、芹彩の手を握る清正

 

「う、んっ!」

 

その手を握り返す芹彩

 

そうして看護師さんに連れられて芹彩は赤ちゃんを産む部屋・・・分娩室へ

 

・・・

 

「そうして芹彩さんは分娩室へ、そして清正は私たちと一緒に分娩室の前で待ってたんだ」

 

「?立ち会いとかって」

 

「当時はまだ立ち会い出産はメジャーじゃなくてね、それにそれは芹彩さんのお願いでもあったんだ」

 

「?」

 

「もう十分清正に頼ったから、最後は私の力で頑張りたいってね」

 

「!・・・母さんらしいや」

 

「そうだろう?けどアイツは不貞腐れてたなぁ」

 

・・・

 

扉の向こうから芹彩の悲鳴に近い声が聞こえる

 

その声がよく聞こえるベンチで和田家一同座って待っていた

 

ただし清正は落ち着かず、足を揺らしたり、何度も頭を掻いたり、手を組み直したりと落ち着かない

 

「落ち着けとは言わないが、慌てすぎだ」

 

「慌てるに決まってるでしょ。こんなことならやっぱり立ち会いにするべきだったかな」

 

清治から声をかけられるが当然落ち着かない清正、遂には立ち上がりソワソワグルグルと歩く

 

「今のあんたが近くにいたら芹彩さんが落ち着かないわよ」

 

「そういえば芹彩さんのご両親に連絡はしたのか?」

 

大変なときだと言うのに平常運転の和田家、その時清が気づく

 

「・・・したよ」

 

「どうだったんだ?」

 

「今日は忙しいってさ」

 

「!、なにそれ!?娘が今死ぬ思いしてるっていうのに!!」

 

「母さん落ち着いて「落ち着けるわけないでしょ!」っ!?」

 

清治の制止を聞かず、怒る縁

 

「あっちの親はなんなの!?一度も様子も見に来ないし連絡もない!こんなの「母さん」!父さん・・・」

 

「落ち着きなさい、母さんが怒る理由は分かる。それでも今はそんな時間じゃあないだろう」

 

「ッ!、ごめんなさい」

 

「・・・とはいえ、そろそろ話してもいいんじゃないか清正?」

 

「!」

 

「初めは私たちも面食らったが、もう芹彩さんは家族の一員だと思っている。そんな彼女がなにかに困っているのなら助けたい。そのためにも話してくれないか?」

 

「・・・僕も聞いただけだけど」

 

・・・現代、病院

 

「さっき芹彩さんと芹彩さんの両親は高校受験の件で絶縁状態だったと言っただろう?」

 

「はい」

 

「音楽から逃げるために音楽の名門高校ではなく田舎の高校に進学することを当然ご両親は許さなかった。そうしてケンカ別れのような形で別れた」

 

「母さん・・・」

 

母が束縛を嫌う性格なのはよく知っている

 

ましてやまだまだ子どもだった頃ならよりそれは顕著だったのだろう

 

「そういった家庭の事情に加え、自分の指示ではなくどこの馬の骨とも分からない男とまた音楽の道を進んだということも気に入らなかったのだろう」

 

芹彩が選んだのは厳しい家ではなく愛しい彼の隣だったのだ

 

「っ!・・・でも、家やギターは元々おじいちゃんの物だったって、それを譲り受けたって・・・」

 

それでも祖父から母へと受け継がれているものがある

 

「それはまた後の話なんだ、順を追って話そう。

 

そうして清正から芹彩さんの話を聞いたんだ。それでも変わらず芹彩さんと清正を支えていこうと決めたんだ。

 

共に過ごしていた時間で芹彩さんは私たちの家族になっていたからね」

 

「!・・・」

 

「そして・・・その時は訪れた」

 

そうして再び舞台はエリアが生まれた日の病院に移り、そして・・・

 

『ウエェェェェンッ!!!』

 

「「「「!!」」」」

 

分娩室から泣き声が響いた、それはつまり

 

「生まれたっ!生まれたよ兄さん!!」ガシッ

「分かってるから!いいから離せ!!」

 

新しい生命が誕生したということ、清治の肩をつかみ、揺さぶる清正

 

「やった!やったわよお父さん!」バシッバシッ

「分かった、分かったから、いてて」

 

思わず清の肩を叩きながれ大喜びする縁

 

どちらがどちらに似たのかがよく分かる光景を繰り広げていると、暫くしてからドアが開かれ、芹彩が運ばれてきた

 

その隣には生まれたばかりの赤ちゃんがいる。芹彩は疲弊しきっているが赤ちゃんをしっかりと抱き締めて、清正の方を向く

 

「清正、生まれた、よ。私達の、子ども」

 

「芹彩・・・ありがとうっ」

 

「ううん、私こそ、ありがとう」

 

たくさん話したいけれど、一旦病室にまで移動して少し落ち着いてから・・・改めて

 

「抱っこ、して、あげて?」

 

「うん・・・うわ」

 

そうして清正の腕に渡った赤ちゃん、顔は真っ赤でまだ目も開いていないけど・・・確かに腕の中にある温度と重さ

 

「!、髪色は芹彩と同じだね」

 

赤ちゃんにうっすら生えている髪の毛の色は芹彩と同じ色

 

「うん、貴方が褒めてくれた色よ」

 

「お日様に照らされた綺麗な色、だ。よかったね上凛、お母さんとそっくりなんて・・・」

 

そうして愛娘に話しかけるが・・・

 

「あー・・・清正?」

 

「ん?」

 

「じ、実はその子・・・えーと、その・・・」

 

「!、なにか問題!?まさか、病気とか!?「ち、違うの!体重体調ともに健康優良児だから!」な、なら一体なにが」

 

そうして、気まずそうに・・・芹彩が話す

 

「男の子・・・だったの」

 

「へ?」

 

「その子、男の子だったの・・・だから上凛って名前は少し可愛すぎるかしら?なーんて・・・」

 

「男の子?つまり息子?」

 

「そうに決まってるだろ」

 

夫婦のやり取りだと黙っていたが清治が耐えきれずにツッコむ

 

「だからお名前考え直さなきゃいけなくて」

 

「うわー、まじかどうしよう、そうだなぁ・・・」ウーン

 

「まぁまぁそんなに急ぐ話でもないんだし」

 

そう言って清正から赤ちゃんを抱っこする縁、おばあちゃんですよ~とあやす

 

「そうだな。時間はあるんだからゆっくりでいいだろう」

 

そういう清はどこから取り出したのかガラガラを振っておじいちゃんだぞ~と赤ちゃんをあやす・・・その二人の姿を見て

 

「僕と兄さんの名前って父さんからもらったんだよな?」

 

「ん?そうだな。私の『清』という文字を『清』治と『清』正に」

 

「女の子が生まれたら私の『縁』って文字をつけてあげるって約束だったのに・・・生まれたのは男二人!全く・・・」

 

「そこであきれられても困るんだけど」

 

「そっかそっか・・・それならウチはお母さんの名前をあげよっか」

 

「え?」

 

「『上』を向いて『凛』と立てる人になってほしいっていう願いに『母』の名を乗せる

 

この子の人生がつまらないものじゃなく『彩』りのある人生を送れるように、この子の名前は・・・」

 

・・・

 

「上凛彩だって、その時決まった。君の名前には芹彩さんだけでなく清正の願いも籠ってるんだ」

 

「意味はずっと聞いていました。けどそんな風につけられたんだって初めて知りました」

 

ずっと大切にしてきた名前、色々あってその意味を忘れてしまっていたこともあったけど・・・大切な家族が思い出させてくれた

 

「これからもそれに恥じない生き方をしていこうと思います」

 

「そう言ってくれるのならあの二人だって大満足だろう・・・さて、それじゃあそろそろ話そうか」

 

「!」

 

「君のもう一人のお祖父さんとお祖母さんとのことをね。

 

君が生まれてから暫くは和田の家で過ごしたんだ・・・というより母さんが離さなかった」

 

「?離さなかった?なにをですか?」

 

「娘と初孫を」

 

「あ、あはは」

 

「それでもやっぱり申し訳ないからと元々のアパートに引っ越して、一年が経ったころだった。エリア君の誕生日会をする!という母さんの号令の元、和田の家に集まった。その時の話だったよ」

 

・・・十数年前、和田家

 

「ほーらエリアちゃーん、おばあちゃんよー」

 

まだよちよちと歩くエリアが縁の方進む

 

「ふふっ、可愛い」

 

「一年で歩けるようになるんだな」

 

「うん、僕もビックリ。本当毎日ビックリすることばっかりだよ」

 

「ほー」

 

「早く兄さんもいい人見つけなよ?」

 

「やめてくれ、最近母さんも上司も結婚はまだか、しないのかって煩いんだ」

 

「ははっ、いい年して実家暮らししてるから」

「家事全部奥さんにおんぶに抱っこなやつに言われたくないな」

「兄さんは僕より初めての彼女できるの遅かったけどね!」

「お前は長続きしなかったけどな!」

 

「「あぁ!?」」

 

「ほらほら、清正も清治さんも落ち着いて、ご飯にしましょう?」

 

一触即発の二人を納めたのは芹彩、今日のためにと用意したごちそうを運んでいく

 

「もちろんエリア専用メニューもあるからね~。ほら今日の主役が待ってるから二人も手伝って?」

 

母になりたしなめられるかのように言い聞かせられた二人は

 

「「はーい」」

 

準備のために動こくこととした。その時

 

「清正、ちょっと来なさい」

 

「?父さん?」

 

清に呼ばれ、別室へと向かう

 

・・・現代、病院

 

「お祖父ちゃんと父さんはなんの話をしてたんですか?」

 

「芹彩さんの・・・丹治の家のご両親についてだよ」

 

「!!」

 

「一応エリア君が生まれる時や生まれたことの連絡はしていたんだが・・・それからの連絡はなにもなくてね」

 

「・・・」

 

「芹彩さん自身も会うことには消極的だった。清正も芹彩さんの意思を尊重していたんだけど、ちゃんと会うべきじゃないかって父さんが話したんだ」

 

「それでどうなったんですか?」

 

「ちゃんと会いにいった。これもまた清正から聞いた話だけどね」

 

・・・

 

現在清治とその妻が住み、守っているエリアの実家、しかしそこは元々芹彩の実家であった

 

家出同然で飛び出した芹彩とまだ幼いエリアを連れて清正はその家へとやってきた

 

「お義父さん、お義母さんお久しぶりです」

「・・・ただいま」

 

「挨拶はいい、今日はなんの用かね」

 

そう言うのは芹彩の父『千明(せんめい)』、母は飲み物をいれるために席をはずしている

 

「エリアもだいぶ大きくなったのでご挨拶に来ました」

 

「そうか、もう一年だったな」

 

「はい」

 

「そうか」

 

「「「・・・」」」

 

そうして会話が止まり沈黙・・・そこに芹彩の母『彩巴(さいは)』がお茶を持ってきた

 

「お待たせしました。どうぞ」

 

そして出されたのはコーヒー入ったカップと・・・

 

「清正さんは緑茶、エリア君はこのジュースとお菓子は食べても大丈夫かしら?」

 

コーヒーが苦手な清正には緑茶を、そしてエリアには子供用のジュースとお菓子を出した

 

「!、大丈夫です。ありがとうございます・・・けど何故」

 

「以前来られた時にあまりコーヒーに手をつけていなかったので、苦手なのかと」

 

「そ、その通りです・・・」 

 

「・・・よく見てるのね」

 

「えぇ。それからエリアくんのものはお父さんが用意しろと言ったんですよ。お茶だけじゃなくお菓子も」

 

「よかったなエリア・・・ほら芹彩」

 

「・・・気遣ってもらってありがとう」

 

「お前が昔使っていたものはもう置いていないからな」

 

「それに置いていたとしても女の子用の物、その子には可愛すぎるでしょう」

 

「「・・・」」

 

思わず呆然とする清正と芹彩、思っていたよりも歓迎されている

 

「それで今日は「それはさっき話したでしょうお父さん」む」

 

「えっと、ご挨拶は勿論なんですがそのお二人とエリアを会わせたくて今回は来ました」

 

「そうか」

 

「抱いてあげてくれませんか?」

 

「!、いいのか?」

 

そういって千明は芹彩に視線を向ける

 

「パパとママがよければ抱っこしてあげてほしい」

 

「!」

 

「エリアがたくさんの人に愛されて大きくなってほしいって思ってる。それは私達だけじゃなくてパパとママにも愛されてほしい。それにお祖父ちゃんとお祖母ちゃんがいないなんてかわいそうだから」

 

「・・・そうか、おいで」

 

そうして芹彩から千名の腕に移ったエリア

 

初めはポカン、としていたが千明の顔を見てニコッと笑みを浮かべた

 

「!」

 

「お祖父ちゃんだって分かってるんですね」

 

「清正君のお父さんの時もこうだったのかね?」

 

「えぇ、でもウチの父も母も孫バカなのでおもちゃやらで気を引きまくってましたけどね」

 

「そう、なのか・・・ほら、お前も」

 

「はい、いらっしゃいエリア君」

 

そうして次は彩巴の腕に抱かれるエリア、また笑顔で腕をバタバタと振っている

 

「人懐っこいのね・・・芹彩そっくり」

 

「!」

 

「それにこの髪色はお前と同じだ。お前から芹彩、そしてエリアに受け継がれたんだな」

 

千明と彩巴がエリアを見る目はとても優しかった・・・それはかつて芹彩にも向けられていたものだった

 

そう、二人はちゃんと芹彩を愛してくれていた

 

厳しい指導は全て芹彩を想っているからこそのものだった

 

二人の教えてくれていたことは芹彩が苦しむことのないように、間違えないように、傷つくことのないように教えてくれていたことだった

 

それを嫌がり、逃げ出したのは自分だった

 

本当に愚かだったのは、それに気づくとともに想いが溢れだす

 

「本当は・・・」

「芹彩?」

 

「本当は、もっと早く会わせたかった」 

 

涙が溢れていく

 

「「!」」

 

「けど私がバカだから、パパとママの言ってることをちゃんと分かってなくて、家出して、帰りづらくなって、どうすればいいのか分からなくなった」

 

「そうか、それでも今日はエリア君のために会いに来てくれたのか?」

 

「・・・うん」

 

千明の問いかけに頷く芹彩、それを見て

 

「清正さん、エリア君を」

「えっ?」

 

彩巴からエリアを渡されて、その彩巴は・・・ギュッと優しく芹彩を抱き締めた

 

「!、ママ?」

 

「ごめんなさい芹彩」

 

「え、え?」

 

「私達は芹彩に期待して、期待していたから厳しくしてしまった」

 

幼少の頃から両親に憧れて音楽に触れてきた芹彩

 

そしてそれを優しく見守り、時に教えてあげていた千明と彩巴

 

次第にその期待は大きくなり、優しさは影に潜み、厳しくなっていった

 

「謝って許されることじゃないのは分かってる。それでもごめんなさい」

 

「違う、違うのママ、悪いのは私なの」

 

「いやお前は悪くない・・・私達の反対を振り切って遠くの高校に進み、そして清正君と出会い、また音楽の道に戻ってきた。私達は初めそれを許せなかった」

 

「パパ・・・」

 

「それでも清正君と出会い、そして私達の知らないところで沢山の経験を重ねたお前の音楽はとても素晴らしかった」

 

「!!」

 

「許せなかった気持ちもあるがそれ以上にお前にその音を出すことができたのが私達でないことが悲しかった。そして私達もお前とどう接すればいいのか分からなくなった」

 

「だからせめて、芹彩の進む道を邪魔しないようにしようと決めたの」

 

「もしかして結婚のご挨拶をした時に好きにすればいいって仰っていたのは?」

 

清正が気づき、問いかける。その膝上にいるエリアはお菓子をボロボロこぼしながら食べていた

 

「あぁ、私達の了承などなく芹彩と清正君の好きに生きてほしいと、思ったんだが・・・」

 

「!そういうことか・・・でもエリアが生まれた時に忙しいって言っていたのは」

 

「あの時は演奏会で遠征していてどうしても向えなかったんだ。すまなかった」

 

物理的に無理だったようだ

 

「あ、本当に来られなかったんですね」

 

「そうだったの?」

 

「えぇ、その後からいくのは気まずくてそれからはもう連絡するタイミングがなくて、その・・・今日に至るわね」

 

気まずそうに彩巴が答える

 

事実を知ると、なんとも拍子抜けだ

 

誰も誰かを憎んでいなかった

むしろちゃんと想い合っていた

ただ言葉が足りなかった、それだけのこと

 

「本当は私達も会いたかったって言うのは今頃遅いかしら」

 

「そんなこと、ない」

 

ずいぶんと回り道をしてしまったが・・・もう一度家族に戻れるのなら、戻ってもいいのなら・・・

 

「これからもエリアにも清正にも私にも会ってほしい。私が聴いて育ったパパとママの音楽をエリアに聴かせてあげたい」

 

「!、いいのか?」

 

「許可なんていりませんよお義父さん。おじいちゃんとおばあちゃんと遊びたいよな?エリア?」

 

その問いかけに?、という表情を浮かべながらジュースを飲むエリア

 

「ははは、食いしん坊め。とにかくおじいちゃんとおばあちゃんに会うのに理由がいりますか?」

 

「「!」」

 

「これからは芹彩とエリアとそれから私もお二人と仲良くしたいです。それに私の両親もお二人に会ったら絶対仲良くなれると思うんです」

 

「大した自信だね」

 

「俺が好きな人達と芹彩の好きな人達が仲が良いと幸せだと思いませんか?私達も、エリアも」

 

「!、なるほど芹彩が君を選んだ理由が分かったよ」

 

「へ?」

 

「いや、とにかく・・・これからもよろしく頼む」

 

・・・

 

「それからは良好な関係を築けていたよ。私も何度かお会いした」

 

「え?えぇ?」

 

「どうかしたのかな?」

 

「だってもう絶縁状態だったって、どこよ馬の骨がって・・・」

 

だが実際はかなり仲良しのようだが・・・

 

「それはあくまでもその時点では、の話だよ。安心したかい?」

 

「っ!、清治さんまさかわざと言わなかったんですか!?」

 

そう言うエリアの顔を見て、クックッと笑う清治

 

「すまない、エリア君が深刻そうなかおをしているからつい、けど順に話そうと言っただろう?」

 

「っ~!その顔父さんにそっくりですよ」

 

「そりゃ兄弟だからね」

 

からかわれて真っ赤になった顔を冷ましながら話していると・・・

 

「和田さんすみません」

 

看護師さんがやってきた

 

「はい、どうなさいましたか?」

 

「奥様が分娩室に移動します」

 

「!、早いですね」

 

「それは差がありますから、立ち会い出産のご予定ですのでこちらにお願いします」

 

「分かりました、エリア君すまないが・・・」

 

「はい、俺は待ってます」

 

「ありがとう」

 

そうして清治は看護師さんに連れて、妻の元へと向かった

 

「はぁ~・・・いよいよってことかな」

 

先ほど語られた自分のヒストリーはもちろんだが、いよいよエリアの従姉妹が生まれるのだ

 

「・・・けど」

 

丹治の家の祖父と祖母はエリアが物心がつく頃に会うことはあまりなかった

 

それが忙しかったからなのか、ほかに理由があったからなのかどうかは分からなかったが、それでも盆と正月は必ず会っていた

 

そしてとても優しい二人だったということは覚えている

 

そうして小学生になった年に祖父が亡くなった、そしてそれを追うかのようにすぐ祖母も亡くなった

 

普段滅多に涙を見せない母が父に抱き締められて涙を流していたのを覚えている

 

そしてエリア達はあの家に引っ越したのだ

 

芹彩の家族の思い出が詰まったあの家に

 

だから父があの家を大切にして離れなかった

 

その想いはエリアがあの家にいたいと願ったあの日の想いと同じなんだと、今なら分かる

 

「・・・」

 

自分がたくさんの人に想われて生まれ育ったこと、それがたまらなく嬉しかった

 

そして今度は自分がこれから生まれる生命に想いと愛を届けたい・・・そう考えていると

 

『ウェッ、ウェッ!ウェェェェンッ!!』

 

「!?、生まれた!?」

 

またいつかと同じように元気な泣き声が響く

 

それは新しい生命の産声

 

・・・

 

それからすぐには会えずしばらくしてから清治と妻がいる病室に案内された

 

「お待たせエリア君、さっき電話したけど父さんと母さんはそんなに早く生まれるとは思ってなくて今急いで向かってるけらこの後来るだろう」

 

「そ、そうなんですね」ソワソワ

 

話しはもちろん聞いているが視線はベッドの方へ向けられていた

 

「ふふっ、エリア君待ちきれないみたいね。ほ~らエリアお兄ちゃんよ~」

 

清治の妻が抱いている赤ちゃんをエリアの方に向けてくれた

 

「わ、わわ、小さい」

 

「抱っこしてあげて?」

 

「えぇ!?いいんですか?」

 

「もちろん!」

 

「まだ首がすわっていないから腕で首を支えるように横にして抱っこしてあげるんだ」

 

「は、はい・・・うわぁ」

 

エリアの腕に抱かれたおくるみにくるまれた小さくて暖かくて軟らかい赤ちゃん

 

まだ会って数分だというのに愛くるしくて堪らない

 

「可愛い、可愛いなぁ・・・」

 

思わず言葉が溢れた

 

そんな様子を微笑ましく見ながら、教えてくれた

 

「女の子なの」

 

「女の子、そっかぁ・・・名前は決まってるんですか?」

 

「和田家の習わしにならって母親から一文字あげようと思ってるんだ・・・だから」

 

「私の『華』の文字をあげるの」

 

清治の妻・・・和田 華の『華』の一文字と

 

「それから『彩』をつけて『彩華(あやか)』だよ」

 

「!!」  

 

「彩りある華のように美しく!」

「そして芹彩さんのような素敵な女性になってほしいと願ってね」

 

「い、いいんですか?」

 

「いいもなにもむしろこっちからお願いしたいくらいなの!」

 

「どうかな、エリア君さえよければなんだけど」

 

「っ!!・・・そんなの、いいに決まってる」

 

清治と華の想いが優しく感じられて、エリアの瞳から涙が溢れた

 

赤ちゃん・・・彩華に涙が当たらないように顔を上げて鼻を啜る

 

だけど腕の力は抜かないように気をつけて

 

一度ギュッと目をつぶって涙を止めて、そして

 

「こんにちは彩華ちゃん、これからよろしくね」

 

ようやく出会えた自分の従姉妹に挨拶を交わすのだった

 




喫茶店こそこそ話!

今回無事に誕生した彩華ちゃん!
エリアはもちろんメロメロですが、後に写真を見せてもらったごちうさメンバーももれなくメロメロになりました(笑)

そう遠くない未来では彩華の従姪になる子が誕生するのですが・・・それはまた別のお話!!
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