主人公補正の無い主人公の妹に転生したので兄の強化に尽力したのにいざ本編が始まると微妙に別人でした 作:緒河雪那
十二月三十一日、追記改編
「ヒノカミ神楽を見せて欲しい、ですか?」
蝶屋敷に竈門家揃って保護された、翌日の朝食後、しのぶは炭治郎にヒノカミ神楽を見せて欲しいと頼んで来た。
因みに禰豆子もヒノカミ神楽は修得しているのだが、食人行為の代替か『前回』同様、快復の為に休眠状態に入っている。
「はい。先日も少し触れましたが、鬼舞辻無惨が直々に出張る程に警戒するその神楽……より正確には神楽に使われる呼吸とその先、『透き通る世界』に興味が有りまして。御館様……鬼殺隊の長を勤めておられる御方へ報告して禰豆子さんの事を認めてもらうのにも必要です」
「解りました」
炭治郎は親指を突き立てた拳を掲げてしのぶに返答する。
「? 何ですか、これ?」
疑問符を浮かべながら、しのぶも自らの手を同じ形する。
「あ……これ、禰豆子の癖なんですけど、俺や下の弟や妹もいつの間にか真似する様に成ってて……。確か意味は……『了解』や『合格』、それと『称賛』……だったかな」
「もしかしてこれ、親指を下に向けると逆の意味になったりします?」
「はい。後追加で、『地獄へ逝け』だそうです」
「……………」
アイツを斃すまで下向きは封印しよう。そうケツイを漲らせるしのぶだった。
(…………)
しのぶの背中を追いながら、炭治郎は親指を突き立てた自身の拳を見詰める。
(禰豆子の癖? そんな癖『以前』は無かった……それ処かこんな仕草もそんな意味も知らなかった。悪い事じゃ無いとはいえ、俺の記憶は……それと『今回』の禰豆子はどう成ってるんだ?)
それから道場にて、炭治郎によりヒノカミ神楽の演舞が行われた。
「わー、炭治郎さん凄いですー」
「炭治郎さん、本当に火の精みたい……」
「これなら悪いモノなんてイチコロです」
そんな称賛を炭治郎に送るのは、寺内きよ、中原すみ、高田なほの仲良し三人組。その以心伝心な一糸乱れぬ連携に三つ子かと勘違いするのは、蝶屋敷を訪れた者の恒例となっていた。
そんな三人組とは対称的に、しのぶと神崎アオイは炭治郎に剣士としての目を向ける。
「気のせいでしょうか? 五つの基本型となる呼吸、そのどれでも無い様にも、逆に全ての特徴と要素を一つに纏めた様にも見えます」
「貴女も感付きましたか? あの動き、私達鬼殺隊が使う呼吸そのものですよ。それに炭治郎君、常中とはいかないまでも後一歩の所まで鍛えてますね」
そんなしのぶの感想に、炭治郎の母葵枝は「そうなんですか?」と問い返す。
「あの神楽は炭十郎さん……あ、少し前に亡くなった主人曰く、ヒノカミ様に無病息災を祈願する、厄祓いの神楽だそうです。特別な呼吸を意識する事でヒノカミ様に成りきって、害をなす悪いモノを斬り祓う……と」
その説明を受けて、しのぶとアオイは顔を見合わせる。
「その悪いモノ、当初は鬼を想定していたなんて話……」
「無いとは言い切れないわね。実際禰豆子さんは、この神楽を転用して鬼舞辻無惨を撃退したと言う話だし」
「ああ、あの『家族の為なら水と空気だけで生きてみせる!』とか仙人みたいな事
二人の考察がはかどる中、十二の型が二巡して三巡目に突入しようかという処で、不意に炭治郎は躍りを止めて荒い息を吐く。
「兄ちゃん?」
「お兄ちゃん?」
「にーちゃ?」
心配そうに兄に駆け寄る竹雄と花子と茂そして六太に、炭治郎は「兄ちゃんなら大丈夫だ」と笑顔を返す。
そんな弟妹達に少し遅れて、しのぶの義妹栗花落カナヲが炭治郎に歩み寄り、濡れタオルを渡して汗を拭く様に促す。
「炭治郎、肩で息しながら言っても説得力無い」
「面目無い」
そんな息子達の仲睦まじい様子を葵枝が微笑ましく見守る一方で、蝶屋敷旧来からの住人である三人娘達の間では衝撃と戦慄が駆け巡っていた。
「カナヲさんが……硬貨投げ無いで自分から動いた!?」
「て……天変地異の前触れです!」
「明日の天気は地震雷火事親父です!」
「貴女達ねえ……カナヲを何だと思ってるのよ」
呆れの視線を三人娘に向け窘める蝶屋敷の主しのぶ。だが……。
「そう言うしのぶ様だって、大量の照る照る坊主造ってるじゃ無いですか!?」
アオイが指摘する様に、いつの間にやらしのぶの傍らには大量の照る照る坊主が小さな山を成していた。言ってる事とやってる事が矛盾している。
次回、柱合会議(予定)